ガイダンス/研究における理論の意味

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Transcript ガイダンス/研究における理論の意味

台日異文化比較研究
マクドナルド化(MCDONALDIZATION)
/グローカリゼーション
導入
マクドナルド
【質問】
 みなさんはよくマクドナルドへ行きますか。
 どのように利用していますか。

アメリカ合衆国におけるマクドナルドの分布状況
【質問】
 マクドナルドは、世界何カ国に展開しているか。
 →121カ国
 マクドナルドの世界の総店舗数はどのぐらいか。
 →3万2737店(2010年末時点)
 外食産業で世界2位
 (1位は「サブウェイ」)
【参考】
「世界のマクドナルド~マクドナルド世界一周~」

http://www.airtripper.net/mcmain.html
討論
【課題】
 グローバル・フォーマットが「ローカルなも
の」を生みだす、という現象の事例を調査し
てきてください。
 (例)マクドナルドと世界各地のローカル・
メニュー
 ※pptを使いたい場合は、来週の授業までに
mailで送ってください。
課題論文
課題論文

前川啓治(2004)「グローカル化するマク
ドナルド」『グローカリゼーションの人類学
――国際文化・開発・移民――』新曜社
著者紹介
前川啓治(まえがわ けいじ)
 専門分野:文化人類学・民俗学
 現所属:筑波大学人文社会科学研究科国際公共
政策専攻 教授
 主著:『グローカリゼーションの人類学ー国際
文化・開発・移民』(新曜社、2004年)
 『開発の人類学』(新曜社、2000年)
 (データは、「J-GLOBAL」
[http://jglobal.jst.go.jp/?d=0]より)

『グローカリゼーションの人類学――国際文
化・開発・移民――』論構成

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はじめに
Ⅰ 国際文化論と人類学
第一章 グローカル化するマクドナルド
第二章 文化と文明の連続性
Ⅱ 文化と開発
第三章 システムの変容
第四章 文化の構築
Ⅲ 移民と多文化主義
第五章 国境を越える共同体――ミクロネシア連邦共和国
チューク人移民の民族学
第六章 多文化主義と移民――オーストラリアにおけるベ
トナム系移民の民族誌
「グローカル化するマクドナルド」論構成
1
グローバリゼーション
「グローバリゼーション」=「西欧世界にお
ける近代世界システム(ウォーラーステイン
1981[1974])の形成、そしてその後、
パックス・ブリタニカを経たパックス・アメ
リカーナという、国際政治上の枠組みにおけ
る資本主義世界経済体制の確立という過程の
延長上に現れてきた現象」(p.18)

「モノの移動」+「ヒトの移動」+「カネ
の移動」+「技術移転」+「情報の移動」



「アンダーソン(1987[1983])は、新聞や本といった
メディアの発達が近代の国民意識、そしてそれに基礎を
おく近代国民国家を形成する鍵となったことを指摘した。
近代世界を幅広く網羅して例証したのは、国民が「想像
された共同体」ということであった。」(p.19)
「かつて国境を構築するのにメディアが大きな役割を果
たしたように、現在そのメディアが国境を流動的にして
いる。もちろん国境そのものはなくならないし。国家を
基盤とした「国際関係」によって世界の現状が形成され
ていることに変わりはない。…移民の共同体はいまや
「国境を超える共同体」(前川2003)として、本国の社
会が世界各地に分散・拡大している状況とも捉えられよ
う。アパデュライは、こうした世界の状況を、アンダー
ソンの用語を応用して「想像された世界」
(Appadurai1996:33)と呼んでいる。」(p.19-20)
2

マクドナルドの合理性
「ライドナーは、「マクドナルドは、対話形
式のサービスのルーティン化の先駆者であり、
極端な規格化の例」であり、「マクドナルド
型のルーティン化の特徴は、画一性がそれ自
身目標の大部分となっていることである」と
している。」(p.23)
リッツア『マクドナルド化する社会』
■ジョージ・リッツア(1999[1996])
『マクドナルド化する社会』

→「ウェーバーの「合理
化」の議論を踏まえなが
ら、マクドナルドに代表
されるファーストフード
産業の効率主義が、近代
社会における非合理性を
逆説的に生じていると指
摘」(p.23)
ジョージ・リッツァ
(George Ritzer,
1940―)
「合理化された社会」
 =「規律、秩序、システム化、形式化、ルー
ティン化、一貫性、組織的な操作といったも
のを重視する社会」

○マクドナルドによる合理化
1.「効率性」
 「フォード・システム以来の作業の工程の簡素
化」、「扱う商品の単純化」
 「誰が行っても同じ製品が出来るようにマニュ
アルが作成されており、短時間で製品が出来上
がるように一切の無駄を省き、ほんの数分でハ
ンバーガーが出来上がるような厨房とサービス
のシステムができている。」
 「客が従業員に代わって働くシステムを導入し
ている」(p.24)
○マクドナルドによる合理化
2.「計算可能性」
 「マクドナルド化する社会では、計算できる
こと、定量化できることが重視される。それ
は「過程」すなわち生産労働と、「結果」す
なわち商品の両面で量が重視されることであ
る。そして、数量化できるということは、結
果的に質よりも量を重視することになり、薄
利多売を目指すことになる」(p.24)
○マクドナルドによる合理化
3.「予測可能性」
 「どの店(モーテル)でも同じ設備があり、
従業員の行動は予測可能で、出される商品も
数が限られており、予測可能なものであ
る。」
 「接客は極めて儀礼化され、ルーティン化さ
れ、マニュアル化されている。」(p.25)
○マクドナルドによる合理化
4.「制御」
 「マクドナルドは従業員と客の両方の管理の強
化を、技術の開発によって行ってきた。人間の
技能から人間によらない技術体系への置き換え
がその意味するところである。機械や道具に限
らず、官僚制的規則や、手順や技法を厳格に定
めたマニュアルもそうした体系を構成する。ド
ライブ・スルーはそうした技術体系による制御
の典型とされている。」(p.25)
「こうしたプロセスが、社会の隅々ま
で浸透し、ファーストフードにかぎら
ず、高等教育や医療の現場、家庭料理、
ショッピング、娯楽やスポーツといっ
た領域にまで拡大しているが、そうし
た合理化の過程が、実は逆説的に非合
理性を生じさせている、というのが
リッツアの結論である。」(p.25)
《非合理性の例》







◆「効率性を求めていくと、逆に長い行列ができて、
かえって非効率的な結果がもたらされる。」
◆ 「効率性の成果を受けるのは、会社の上層部で
あって、消費者には高いコストがかかることにな
る。」
◆ 「与えられるのは、楽しさや量の豊かさや安さの
幻想」
↓(非人間的ないし脱人間化システム)
「健康への害」「環境破壊」「従業員と客の脱人間
化」(たとえばマクドナルドの離職率は一年で三〇
〇パーセントで、客は餌を与えられる家畜のように
感じられ、人間関係は非人格的になる)
↓
「社会は鉄の檻になる」
マックス・ウェーバー( 1864-1920 )

「ウェーバーは、近代社会を脱呪術化の過程が
進み、それに対応する実質(目的)合理性と形
式合理性が支配的となる社会と考えた。形式合
理性とは、右で述べたマクドナルド化の過程に
見られる効率性、計算可能性、予測可能性、制
御に相当する。そして、重要なのは、ウェー
バーが、そうしたごく一般的な意味での合理性
だけではなく、価値合理性というものも合理性
の柱としていることである。」(p.26)
カール・マンハイム( 1893 - 1947 )

「マンハイム(1962[1940])も同様に近代社会の
合理化過程を問題にしている。その後期の概念化で
は、実質合理性と機能合理性という下位概念をおき、
この点を分析している。マンハイムのアプローチで
は、ある個人が社会のなかでどのように思考し行為
するかという視点から、前者すなわち知的行為を実
質的合理性、後者を機能的合理性として明確に分け
ている。この概念化は、ウェーバーの実質(目的)
合理性と形式合理性に対応すると考えられるが、
ウェーバーの場合は概念化がゆるやかで、社会全般
の価値観を前提とし、そうした価値合理性あるいは
実質的に目的合理的なあり方を実質合理性とし
た。」(p.26)
「平均的な普通人は、機能的に合理化された行為
複合に順応する新しい行動をする度に、彼ら自身
の文化的個性をいくぶんかずつ放棄する。彼らは、
ますます他人に指導されることに慣れるようにな
り。漸次独自の見解を捨てて他人が考えてくれる
ものを受け入れるようになる。かくして、社会生
活の合理化された機構が危機の時代に瓦解する場
合、個人は彼自身の見識によってそれを修復する
ことができず。自己の無力を痛感して恐るべき絶
望的な不安状態に陥るのである。(マンハイム
1962[1940]:70)」(p.27)
■組織の上層部→機能合理化を免れる
■組織の下層部→機能合理化が直撃し、個人の思考能力
に影響を与え、創造性が喪失される
 →「機能合理化がすすむと、それへの適応過程とし
て自己合理化が生じること。つまり、「個人の体系
的な衝動抑制」が行われ、そして、そのこと自体が
個人レベルでの機能合理化であり、その結果、実質
的合理性が衰退してゆく」(p.27)

↓
■客→ドライブ・スルーや限られたメニューや、硬くて
居心地の悪い椅子などを通して訓練され、自己合理
化される
■社会→実質合理性は存在しなくなる
前川の見解
「よく検証してみると、この議論は基本的に
西洋社会、とくにアメリカ社会を前提にして
なされており、そこには従来の、社会の単線
的な変化という歴史観が根強く反映してい
る」(p.28)
 「そこに「文化空間の差異」に関する議論が
すっぽり抜け落ちている」(p.28)

○実質合理性→価値ないしイデオロギーの対立
を潜在的に抱えている(イスラム教VSキリスト
教、など)
○形式合理性→「そうした困難をともなわない
から、価値の違いを超越して普遍化する力を持
つ。であればこそ、近代社会では、形式合理性
が実質合理性を上回って世界に浸透した」
(今田2001:53-4)
「文化は、単純に一本道を伝わっていくような
ものではない。文化的/地理的な領域間の物の
移動には、つねに解釈、翻訳、変形、脚色、そ
して「土着化」が伴う。受け取る側の文化が、
自分自身の文化的資源を持ち出してきて、「文
化的」輸入品に対して弁証法的な影響を与える
からである。
(トムリンソン2000[1999]:149)」(p.30)

「現代のグローバル化する社会を世界大とし
て捉えるためには、この「空間の差異」、さ
らには「文化の差異」を前提としたアプロー
チこそが重要である」(p.30)
3
洋食の歴史――和魂洋才
西洋文化に対する二つのイデオロギー的反応→
食生活の欧化主義と伝統主義
 ○欧化主義…「肉食奨励」(福沢諭吉など)
 ○伝統主義…「米飯優位論」(森鴎外など)

↓
 「歴史の過程を振り返れば、実際の慣行として
これらを折衷した「和魂洋才」が日本の近代化
を推進していった」(p.34)

(例)牛鍋、カレーライス、あんパン、トン
カツ

牛鍋
カレーライス
あんパン
トンカツ
4

日本の近代化――和魂洋才から洋才和魂へ
「明治時代には、日本はヨーロッパに学び、
そこから機械設備を導入し、「和魂洋才」型
の発展、すなわち「文明の形」はヨーロッパ
から。そして「文明の精神」は日本のものと
いう両者の「接合」された発展の形態が展開
されていった」(p.35)
東アジアの西欧文明受容
中国:「中体西用」
 朝鮮半島:「東道西器」

→なぜ日本だけがいち早く経済発展を遂げ
ることができたのか?

↓


「文明が、あるいは西欧ないしアメリカ型の資
本主義が到来しても、既存の文明の精神(価値
観念)に基づく社会システムが一挙に刷新され
るわけではなく、むしろ西欧ないしアメリカ型
の資本主義と既存の社会経済システムが接合さ
れるのである。日本はそうした時期に、すでに
接合が可能な伝統的システムが構築されていた
と考えるべきであろう。他の東アジアの国々は、
そうした点で、伝統的社会システムがより脆弱
で、早い時期に西洋諸国によって植民地化され、
うまく接合されるべき社会構造の内的発展の余
地が摘まれたと考えられる。」(p.36-37)
○接合型資本主義(ハイブリッド・キャピタリ
ズム)
 アメリカ型の機能合理性(大量生産大量消費シ
ステムなど)を旧来的な社会システムに接合さ
せることで、経済発展を可能にする
↓
 「六〇年代以降「土着化」が始まり、七〇年代
には日本的システムとして定着」(p.38)
 (例)全員参加型のTQC(Total Quality Control)
運動、提案制度、JIT(Just in Time)など

 「和魂洋才」(明治時代)
↓
 「洋才和魂」(戦後)

↓
 「洋才洋魂」?(現在)

5
東アジアのマクドナルド――洋才和魂
「各国のマクドナルドは、…社会のアメリカ
社会との文化の違いを前提に事業を展開す
る」
 =ローカリゼーション(その基本的原理は、
ハイブリッド・キャピタリズムに対応)


(例)「ハンバーガー」
→(日本でローカライズ)
→「てりやきバーガー」→他の地域へ

「日本でローカライズされたメニューがまた汎
用性を伴って、他の地域で取り入れられている。
そして、その味はまたその土地の人たちの舌に
合うように微妙に変化(ローカライズ)させら
れている。このことは、グローバリゼーション
と、それに対するローカリゼーションの一対の
過程が、入れ子的に複層的に存在していること
を如実に物語っている。」(p.43)
■その他のマクドナルドのグローバル化作用
 後片づけのマナー
 行列をつくって待つという行為形態
 公衆衛生の感覚(トイレの清潔感)
■その他のマクドナルドのローカリゼーション

中国・台湾・韓国・日本の事例
 →「スローフード」化
6
文化の接合
「グローバリゼーションは、けっしてアメリ
カの価値を世界中にそのまま拡げる過程には
最終的にはなりえない。」(p.49)
↓
 英語の事例


「より強力な文化が到来しても、その文化は現地の文化
に読み換えられる。その結果ローカライズされた文化が、
また別の文化と接触することによって、さらなるローカ
リゼーションの過程を生じる。あるいは、逆に元の文化
に影響を与え返すこともある。……世界規模のこうした
「文化の接合の弁証法」の複層的で相互的なやりとりこ
そが、グローバリゼーションの時代の文化と社会の変化
のありようを規定する。決して、グローバリゼーション
すなわちアメリカナイゼーションということにはならな
いのである。マクドナルドが体現する機能合理性は、各
社会において各々の社会での価値合理性に読み換えられ
て受容される。一方、そうした機能合理性は日本初の
ファーストフードにも共通する。それらが世界に展開す
る時、大衆的な回転寿司がちょっとしゃれたすしバーに
変わることもあるように、その機能合理性は、各々の社
会での価値合理性に読み替えられて受容されてゆくので
ある。」(p.51)
KEYWORDS
■翻訳的適応
 「土着の社会は、自身の伝統的な観念や価値
に基づく基本的な文化形態を全面的に変えて
しまうわけではなく、むしろ既存の文化形態
によって新たな外的・文化的諸要素を「翻
訳」(読み換え)することにより、そうした
観念や価値を存続させるのであり、その結果
「適応的な変容」となるのである。」
(p.77)
W→L
影響
→
L→W
翻訳
(読み換え)
W…世界システム
L→L´
→
適応
L…地域システム
来週の課題
来週の課題








世界の国・地域に対してどんなイメージを持っているの
か、どこでもいいので3個所を決め、それらの国・地域
のイメージをそれぞれできるだけたくさん列挙してくだ
さい。
いいイメージも悪いイメージも両方挙げてください。そ
のとき、そのイメージがどこから来たのかもあわせて書
いてください。
(例)日本のイメージ
○清潔(テレビ、雑誌、自分の目で見た)
○時間観念が厳格(日本人の友人を見てそう思った)
●性倫理が厳しくない(インターネット)
↓
【できるだけたくさん】