現代社会と暴力 エーリヒ・フロムの社会的性格論について

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Transcript 現代社会と暴力 エーリヒ・フロムの社会的性格論について

愛知大学名古屋校舎2006年度春学期 「思想文化総論」

現代社会と青少年暴力

エーリヒ・フロムの社会的性格論について 人はなぜ暴力をふるうのか(第 7 回) 法学部 竹中克英 2006/05/16 竹中克英 1

講義テーマ

  1989年東西ドイツを分断するベルリンの壁が崩 壊し、1991年ドイツは再統一された。しかし、そ の後青少年による外国人に対する極右主義的 暴力が(特に、旧東ドイツ地区)で頻発した。 この現象を取り上げ、ドイツ現代社会における青 少年暴力の原因を探るとともに、現代社会一般 における青少年暴力の心理的原因を、フロムの 「社会的性格論」を通して明らかにする。 2006/05/16 2 竹中克英

講義構成

1. はじめに

2.

フロムにおける人間の問題

3.

社会的性格とその機能

4.

精神の健康への要求

5.

暴力のナルシズム性

6. おわりに 2006/05/16 竹中克英 3

1.

はじめに

1.1 個人化・孤立化傾向 1.2 グローバリゼーション 1.3 青少年と暴力 2006/05/16 竹中克英 4

1.1

個人化・孤立化傾向

  フロム:『自由からの闘争』   「 …… 」からの自由 「 …… 」への自由 ベック:『危険社会』   血縁的関係の崩壊 人間の個人化 2006/05/16 竹中克英 5

1.2

グローバリゼーション

    経済のグローバル化 社会の個人化・孤立化のグローバル化 現代社会における疎外(自己感情)と無関心(他者感情)  疎外:存在の確信のなさ  無関心:共苦的感情の欠落 コントロール不能な巨大経済機構としての世界における 人間の無力 2006/05/16 6 竹中克英

1.3

青少年と暴力

   現代社会における青 少年暴力 犯罪の増加・凶悪化 に見られる破壊的ナ ルシシズム性 民主主義政治原理と 資本主義経済原理の 本質的矛盾 2006/05/16 7 竹中克英

2.

フロムにおける人間の問題

2.1 フロムの「暴力」をめぐる著書 2.2 存在的矛盾と実存的要求 2.3 現代社会の病理 2006/05/16 竹中克英 8

2.1 フロムの「暴力」をめぐる著書       『第三帝国前夜の労働者およびホワイトカラー』 ( 1980 ) 『自由からの逃走』 (1941) 『現代人の常態の病理学』 (1953) 『正気の社会』 『悪について』 (1955) (1964) 『人間の破壊性についての解剖学』 (1973) 2006/05/16 竹中克英 9

2.2

存在的矛盾と実存的要求

  動物的自然からの離脱     本能による支配の逓減・自然からの離脱 「時間と場所」における存在の偶然性 孤独と不安 課題としての存在の超越 「方向付けの枠組み」と「献身の対象」   方向づけの枠組みとは、世界において占める位置の 問題 献身の対象とは、世界における存在の意味の問題 2006/05/16 竹中克英 10

2.3

現代社会の病理

    社会の個人化・孤立化傾向が青少年に及ぼす影 響 資本主義的原理に基づく現代社会に対するフロ ムの批判 : 直接的関係性の喪失 現代社会の個人化過程についてのベックの指摘 「現代人の病理的関係性」についてのタウシャー の指摘 2006/05/16 11 竹中克英

3.

社会的性格とその機能

   「社会的性格」の定義 社会的性格の機能   社会が正常に機能し、維持される 社会適応的エネルギーの形成 社会が正常に機能することと社会が正常である こととの本質的相違 2006/05/16 竹中克英 12

4.

精神の健康への要求

    社会の人間に対する要求としての「適応性・順応 性」:健全なる社会 人間の社会に対する要求としての「精神の健 康」:健全なる人間 精神の健康とは 社会の歴史的制約性(不完全性)と社会的性格 の機能 2006/05/16 13 竹中克英

5.

暴力のナルシシズム性

5.1 現代社会の性格類型:「市場的構え」 5.2 青少年の極右主義的暴力(ドイツ) 5.3 「弱者に対する暴力」 5.4 「異者に対する暴力」 2006/05/16 竹中克英 14

5.1

現代社会の性格類型: 「市場的構え」

     不完全な社会と精神の健康への要求 市場的構えと自己に対する確信のなさ 所有への欲求と自己価値の低減 市場の流動性 人間関係における直接性の喪失 2006/05/16 竹中克英 15

5.2

青少年の極右主義的暴力

    社会主義体制の崩壊と極右暴力 社会構造の急変と精神の問題 現代社会における若い世代の課題 青少年と極右政党 2006/05/16 竹中克英 16

5.3

「弱者に対する暴力」

 社会主義の権威主義的体制  弱者に対する権威主義的暴力  支配・被支配の共生関係  暴力による存在意味の確認 2006/05/16 竹中克英 17

5.4

「異者に対する暴力」

 人格の核の弱体化  自己価値の補償としての ナルシシズム  自己の理想化と世界の完結化:閉じこもり  他者に対する無関心と敵対心  フンク:「疎遠なるもの」への暴力 2006/05/16 18 竹中克英

6.

おわりに

 社会構造的ナルシシズム性  「方向付けの枠組み」と「献身の対象」  自己防衛としてのナルシシズム  アイデンティティーの喪失と確立  暴力克服への基本的態度 2006/05/16 竹中克英 19