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行動分析学実習
大阪樟蔭(7)
問題行動への対処
望月昭
[email protected]
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問題行動ってなに?
1) 問題行動も、オペラント行動である。
2)問題になる以上、慢性化している
3)慢性化ということは、行動が環境との関係
において、膠着している(=何らかの強化
を受けて維持されている)
4)何が強化になっているのだろうか?
5)原因となる強化の要因を取り除こう
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ちょっと前までは・・・
• ともかく「行動」を減らすには。
1)罰を与える
2)消去する
正の強化を使えないか?
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分化強化(Differential Reinforcement)の方法
●分化強化:特定の行動(反応)を強化し、
別の行動は消去する手続き
→「反応の形態」だけではなく、反応の特定の
ペース(時間当たりの反応数:rate)に対して分化
強化する手続きもある。(DRH, DRL)
●問題行動に対して、
1)それが一定時間生じなかったら強化
→Differential Reinforcement of O rate (or Other
behavior): DRO
2)その行動とは「相容れない」行動を分化強化
→Differential Reinforcement of Incompatible
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Behavior(DRI)
DRO, DRI
○
ベースライン
□
DRO
▲
DRI
自傷行動に対する対処
Tarpley & Schroeder,1979
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機能分析にもとづく対応
問題となっている「行動」の機能は?
(=具体的にどのような強化によって維持されて
いるか?)
当該の問題行動に対する強化を停止し,同時に,
その行動と同じ機能を持った適応的行動を強化
(DRA)する(→DRIとの違いに注意)
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どんな機能による分類をするか?
Carr and Wilder (1998):「社会」と「自動」強化
正の社会的強化:注目や事物の出現など
負の社会的強化:課題からの逃避など
正の自動強化:問題行動による感覚的刺激など
負の自動強化:(問題行動によって)不快な身体
刺激が緩和される
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質問紙の例(1))
「入門 問題行動の機能
的アセスメントと介入」
(Carr & Wilder, 1998:
園山繁樹訳)二瓶社
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Durandによる分類
(代替する言語行動として表現すると)
要求:事物の呈示や行為実現による正の強化
「ほしい,やりたい」
注目:注目などの社会的強化による強化
「みてみて,かまって」
逃避:課題や場面からの負の強化
「いやだ,したくない」
感覚:身体的感覚などによる強化
平澤・藤原(1997)参照
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質問紙の例(2)
平澤ら(1996)
Durand (1990)を参照
して作成されたもの
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問題行動の機能を同定していくには?
1)関係者の「逸話的」な印象から?
(前出の質問紙参照)
2)観察記録をとる(相関はわかる)
3)実験してみる(因果に近い)
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観察記録表の例
「入門 問題行動の機能的
アセスメントと介入」
(Carr & Wilder, 1998:
園山繁樹訳)二瓶社
職員からの注意(社会的正の
強化のケースか?)
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実験による同定
Carr & Wilder, 1998:
前出
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研究例:
代替行動の獲得を含んだ問題行動の削減
DRA:正の強化を受ける機能的に「等価」な適応的な
代替行動の形成・強化をする。とりわけ言語的行動を
形成する
1)Carr and Durand (1985):
Reducing behavior problems through functional
communication training . Journal of Applied Behavior
Analysis, 18, 111-126.
2)平澤紀子・藤原義博(1997):問題行動を減らす
ための機能的コミュニケーション訓練。「応用行動分
析学入門」(二瓶社)
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(1) Carr and Durand, 1985
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実験的な機能分析(逃避と社会的強化)
課題の困難さ(Difficult vs Easy)と注目(33 vs100)
●Easy 100, Easy 33, Difficult 100
という3条件:
100:社会的注意や賞賛を適応的行動に十分に与えて
いる(NCR「問題行動に非随伴した強化刺激の呈
示」に近い状況)
33:部分的にしか注意や賞賛がない
Easy: 簡単な課題
Difficult:困難課題
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Jim
逃避型
Eve
逃避型
Tom
注意喚起型
混合型
Sue
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トリートメント(DRA)
それぞれの子供の問題行動と「等価」な「機能」を持
つ言語行動を表出させる。「課題逃避型」の子供には
「わかりません」に対して回答を教える、注意喚起型
の子供には「うまくできた?」に対して「やるじゃな
い」といった賞賛を与える(relevant条件)。統制条
件として、機能の異なる設定もまぜていく条件
(irrelevant条件)と、言語行動の機会のない条件
(Baseline条件)がある。
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それぞれの子供の問題行動と「等価」な機能を持つ言語
行動を表出させる場面で、問題行動が減っている。
課題逃避型の子供には「わかりません」に対して回答を
教える、注意喚起型の子供には「うまくできた?」に対
して「やるじゃない」といった賞賛を与える場合に、問
題行動が減る。それぞれの機能に即した言語行動を代替
することによって問題行動が減った。
機能的に等価な言語行動を教えることが重要。
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研究例(2)課題逃避の例(平澤・藤原,1997)
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●等価な機能を持つ行動に代替させているか?
逃避:嫌な課題を避けるための行動
→ 本来なら「やめたい」という言語行動
→
「嫌悪事態を停止する」で強化する
「理解できません」という行動を形成する
→ 必ずしも機能等価ではない。
(恣意的に適応的な行動を配置しているのでは?)
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●嫌悪事態の停止といった「負の強化」ではなく、
あくまでも「正の強化刺激」(課題解決・賞賛)の配
置が可能で、かつ本人の行動選択肢が増えるような代
替行動(例えば言語行動)を形成する。
→これがポジティブ・ビヘイビア・サポート(?)
●機能的アセスメントがどれほど必要か?
正の強化で維持される行動の選択肢の拡大という
方針の中に包含されてしまうのでは?
→Reactive approach vs. Proactive approach
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