自閉症児の注目・模倣行動の促進 ―好きな遊びを用いた確立操作 (多田

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自閉症児の注目・模倣行動の促進
―好きな遊びを用いた確立操作―
(多田 昌代)
確立操作(establishing operation)
動機付けとしての働きを持たせるような先行事象
① 強化子の確率効果
(Reinforcer establishing effects)
② 喚起効果
(Evocative effects )
(Michael,1993)
目的
確立操作を発達障害児の注目・模倣行動の促進
に応用
その効果を検討
対象児
養護学校小学部在籍の男児1名
(以下A児)
指導開始時の生活年齢:9歳5ヶ月
社会生活年齢:2歳9ヶ月
知能検査:測定不能
標的行動
標的検査の結果
保護者の要望
養護学校
B大学プレイルームでの行動観察
上記をふまえ
“モデルに注目・模倣しながらプリファレンスの高い遊
びにおいて必要な道具を作成する課題を遂行するこ
と”
場面と課題
B大学プレイルーム
異なる2つの課題を用意
介入課題―簡単な工作―
紙折り・色ぬり・シール貼り
プローブ課題
線ひき
手続き
遊びのプリファレンスについてのアセスメント
鬼ごっこに関する行動連鎖の形成
ベースライン(以下BL)
介入
プローブ
遊びのプリファレンスについてのアセスメント
遊具を撮影した複数の写真カードをランダムに対提示
し、A児に一方を選択させた
① 各遊具カードの選択回数を記録
② 選択した遊具で実際に遊び、その際の活動従事の
程度
③ 正・負の情動の程度
(Kennedy & Haring,1993)
を観察した
↓
“鬼ごっこ”
ベースライン(第1~4セッション)
① シール貼りのみ。ただし第4セッションは全
行程遂行。
② A児と仲間モデル役トレーナー(Mo)にメイン
トレーナー(MT)は着席を促し、着席後課題提
示、及び声掛け。
③ Moは課題の各ステップをA児よりわずかに先
行して遂行
④ Moが作業開始後5秒経過してもA児が課題遂
行しない場合MTは次の順でプロンプト
(a) 声掛けや指さしでMoへの注意を促す
(b) 遂行すべき箇所を指す
(c) 課題の遂行を身体的に誘導
⑤ 課題完成後、A児が選択した自由遊びを行っ
た。ただしこの際必ず鬼ごっこが選択される
よう選択肢を提示。
介入
① 課題の遂行の動機付けのため、BLと同一課題
を行い、鬼ごっこを行う際、鬼の面として用い
られた
② 課題開始前自由遊びで行う遊びを、BL同様の
手続きで選択させ、MTは面をもってきたA児
に声掛けと着席を促した
③ 課題完成後、MTは声掛けを行い鬼ごっこを
始めた
介入
2
以下の3フェイズから介入は成立した
(a) フェイズ1(第5~9セッション)
→ シール貼りのみ
(b) フェイズ2(第10~14セッション)
→ 色ぬりとシール貼りのみ
(c) フェイズ3(第15~17セッション)
→ 工作課題全行程
プローブ
① A児にBL同様課題を遂行してから自由遊びを
選択させた
② 課題提示や課題遂行及びその促し・修正、課
題完成後の自由遊びはBLと同様であった
観察手続き
記録及び分析
課題提示~完成までVTR録画
インターバル・レコーディング法を用いて次の
分析を行った
① 自発的な注目行動の生起率
② 課題の正誤率
課題遂行に先行するA児の行動に基づき次の7
つに分類
Moが遂行している課題に
a) 自発的に注目して正反応
b) 非自発的に注目して正反応
c) 注目しないで正反応
d) 自発的に注目して誤反応
e) 非自発的に注目して誤反応
f) 注目しないで誤反応
g) 身体的誘導による遂行
結果
自発的な注目行動の生起率と課題の正誤
シール貼り
色塗り
紙折り
プローブ課題における結果
考察
プリファレンスの高い遊びに必要な遊具の作成が課題
の遂行を動機付ける効果
→介入によってMoが遂行している課題への注目行動、及び課
題の正反応率は増加
注目・模倣行動の般化
→介入の結果プローブ課題においてもMoを注目・模倣するよう
になった
自発的な注目行動と課題の正反応率との関係
→a)BLでの注目行動が課題遂行の仕方の模倣には必ずしも反映
されていない
考察
b)課題の遂行を動機付けてはじめて模倣行動が安定して生起
することを示唆
注目しても課題の遂行が動機付けられていなければ後の模倣行
動には反映されない
今後の課題
→確立操作の概念はモデルへの注目・模倣行動の促進にも応用
できることが示された
しかし注目行動や正反応率の増加の理由が分離できていない
また介入に伴う家庭や学校場面でのへんかはエピソードによ
る記述のみ
確立操作の概念は他の適切な行動の促進にも用
いることができる
文献
Hall, G.,& Sundberg, M.L. 1987 Teaching mands by manipulating conditioned establishing
operations. The Analysis of Verbal Behavior, 5, 41-53.
Iwata, B. A., Smith, R. G., & Michael, J. 2000 Current research on the influence of
establishing operations on behavior in applied setting. Journal of Applied Behavior
Analysis, 33, 411-418
Kennedy, C. H., & Haring, T. G. 1993 Teaching choice making during social interactions to
students with profound multiple disabilities. Journal of Applied Behavior Analysis, 26, 6376
McGill, P. 1999 Establishing operations; Implications for the assessment, treatment, and
prevention of problem behavior. Journal of Applied Behavior Analysis, 32, 393-418
Michel, J. 1988 Establishing operations and the mand. Journal of Applied Behavior
Analysis, 6, 3-9
Michel, J. 2000 Implications and refinements of the establishing operation concept.
Journal of Applied Behavior Analysis, 33, 401-410
小野浩一 2005 行動の基礎―豊かな人間理解のために 培風館
Sundberg. M. L., 1993 The application of establishing operations. The Behavior Analysis,
16, 211-214
Yamamoto, J., & Mochizuki, A. 1988 Acquisition and functional analysis of manding with
autistic students. Journal of Applied Behavior Analysis, 21, 57-64