太陽コロナ質量放出の3次元MHDシミュレーション

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太陽コロナ質量放出の
3次元MHDシミュレーション
D2
塩田 大幸
明日から地球シミュレータセンターの草野さんの下で研究を進めます。
コロナ質量放出とは?
コロナ質量放出(Coronal Mass Ejection; CME)
典型的物理量
大きさ:106~7 cm
速さ:102.3~3.3 cm s-1
質量:1014~16 g
エネルギー:~1032 erg
地球磁気圏の擾乱と相関。
宇宙天気予報にとって最も
重要な現象
SOHO/LASCO(白色光、人工日食)
CMEの他の活動現象の関係
• フレア・フィラメント噴出にともなって観測される。た
だし1対1対応ではない。
CMEのうち40%がフレアに伴い、75%がフィラメント消失などに伴う
(Munro et al. 1979; Webb & Hundhausen 1987)
• 「ようこう」の観測により、フィラメント噴出にともない、フレアと
同様の性質を持つ巨大なアーケードが観測された。
• フレア・フィラメント噴出・CMEなどの活動現象は、大局的な
磁場構造の不安定化によって生じる磁気エネルギーの解放
現象(大きな意味での「フレア」)の異なる側面である
(Shibata 1996)と解釈されるようになってきた。
Standard model of flares and CMEs
フィラメント噴出
prominence eruption (Hα, 1945, USA)
Hα two ribbon
(Shibata 1996; Shiota et al. 2005)
Hα two-ribbon
(Asai et al. 2002, Hα, 飛騨天文台)
巨大アーケード
カスプ型ループ
(Tsuneta et al. 1992, X線, ようこう)
(McAllister et al. 1996, X線, ようこう)
これまでの研究
(Shiota et al. 2005, ApJ, 634, 663–678, Nov. 20)
New Interpretations suggested by the Numerical Results
Three-Part Structure
edge?
cavity
core
SOHO/LASCO
density t=100
The numerical results reproduce the three-part structure.
It is thought that the cavity corresponds to the densitydecreased-region in the simulation.
solid lines: magnetic field lines
arrows:
velocity field
Dimming mechanism
Slow shocks
コロナ質量放出(CME)の観測的特徴
•Three Part Structure
SOHO/LASCO
多くのCMEで見られる構造
•明るいコア(core)
Hαフィラメント
•空洞 (cavity)
フィラメントを覆っている構造
(よくわかっていない)
•外側のループ (edge)
(cavityが上昇したためにかき
集められた磁気ループと考え
られている)
の3つの部分で構成されている
この構造は、らせん状の磁気フラックスロープが噴出・膨張する
ことで形成されることが2次元の数値シミュレーションで確認され
ている。
Coronal Dimming and CME
Hudson (1996)
Hiei et al. (1993)
time
• CMEの発生領域で観測されるX線または極紫外線
の輝度の減少
• 密度の減少によるもので、CMEに質量が供給される
ために起きると考えられている。
• どのように供給されるかはよく理解されていない。
• シミュレーション結果から、この現象はリコネクション
インフローと膨張の効果によって発生していることが
明らかになった。
X-ray Flux
Dimming
“dimming”
06:00 11:00 16:00 21:00 02:00
UT 24 Jan 1992
CMEについて解明すべき点
• フレア・CMEはどのようにして引き起こされる
のか?いつ、どこで、どれくらいの質量がどの
ように放出されるのか?
フレア・CMEのトリガー機構の解明は、宇宙天気
予報の分野にとって必要不可欠な問題!
3次元MHDシミュレーションを用いてこの問題を
明らかにしていきたい
CME initiation model
現在、MHDシミュレーションを用いた研究がいくつ
かのグループでなされている。
(To¨ro¨k and Kliem 2005) twist motion
(Rossev et al. 2004)
shear motion
(Fan 2005) 境界からねじれ
たflux ropeを押し込む
CME initiation model
これらを大まかに分類すると以下のようになる。
エネルギー(ねじれ、ヘリシティ)注入
•
•
•
•
初期に仮定、
境界からねじれたフラックスロープを押し込む
Shear motion
⇒force-free field
Twist motion
不安定化のプロセス
• converging motion ⇒リコネクション
• キンク不安定性
• 磁気圧増加による flux rope 膨張⇒リコネクション
など
一般化したモデルの構築が最終目的だが、どれも
まだその構築には至っていない
Chen & Shibata (2000)
• 浮上磁場によるフラックスロープの不安定化
Semi-analytic study: Lin, Forbes, Isenberg (2001)
フレアアーケードと浮上磁場
(Fe XII 195 A (1.5MK) EIT/SOHO, courtesy D. Tripathi)
フィラメント噴出と浮上磁場の相関:
Feynman & Martin (1995)
これからの研究計画
3次元球座標MHDシミュレーションを用いた
Chen & Shibata (2000)モデル3次元への拡張
• 初期条件 force-free field
– 将来的には観測された光球磁場をもとに構築
• 浮上磁場によるフラックスロープの不安定化
浮上磁場の位置・方向・大きさによる依存性
周辺の磁場構造による依存性
計算方法
• 3次元球座標MHDシミュレーション
– 初期磁場構築
空間中心差分
時間Runge-Kutta-Gill法
– CME time evolution
空間Halten-Lax-van Leer法
時間Runge-Kutta法
完成
開発中
• MHD-MHD連結階層コード開発
– 活動領域(fine grid)と全球を別々のノードで解く
球座標のメリット
• 境界を少なくすることができる
Yin-Yang grid
観測された太陽全球の磁場を底面の境界条件、外側をopen-field
として、現実的な条件の下で惑星間空間までを解くことができる
研究計画タイムテーブル
•
•
•
•
•
•
•
•
3次元MHDコードの開発
初期条件とするforce-free fieldの構築
最低限
目標
浮上磁場によるトリガー機構の解明
観測磁場に基づいた全球のコロナ磁場
静穏領域におけるフィラメントのモデル構築
観測された磁場の時間進化を境界に与える
計算領域を惑星間空間へ拡張(太陽風)
太陽表面から地球軌道までを同時に解く
MOVIE
乞うご期待!
Solar-Bによるリコネクションフローの観測
inflo
(b)w
10
10
Emission
Measure
(c)
(
d
)
Inflow
behind
conduction
front
Emission
( Measure
eReconne
)ction
outflow
cm
  30 ,   30
XRT Thin Al poly image
(a)
Position
of Slit
Reconne
ction
outflow Fe XV 284.147 A log(T)=6.30
+
Line of sight
conducti
Emission
(
on front
(
g Measure
inflo
f
)
)w
Conduction front
Condu
ction Fe XV 195.119 A log(T)=6.15
front
Line of sight
Slow
Reconne
shock
ction
Ca XVII 192.82 A log(T)=6.70
outflow
Line of sight
(
hInflow
)outside of
conduction
front
(
i
)
Emission
Measure
Si VII 275.361 A log(T)=5.75
Line of sight
Solar-B 打ち上げまでに出版できるように年内投稿を予定
太陽フレア
Hα two-ribbon
カスプ型ループ
(Asai et al. 2002, Hα, 飛騨天文台)
(Tsuneta et al. 1992, X線, ようこう)
大きさ:108~10cm
多波長で急激な増光が見られる現象
タイムスケール:102~4s
黒点の近傍で起きることが多く、そのエネ
ルギー解放において磁気リコネクションが
重要な役割を果たしていると考えられてい
る。
エネルギ-: 1029~32erg
フィラメント噴出
prominence eruption (Hα, 1945, USA)
電波、野辺山ヘリオグラフ
Hαフィラメント(プロミネンス)がゆっくりと加速され噴出する現象
静穏領域で起きるフィラメント噴出はフレアを伴わない。
ideal MHD process で引き起こされると考えられていた。
磁気リコネクション
磁力線のつなぎ換えによって磁気エネルギーを爆発
的に解放するプロセス
Petschek model (1964)
•slow shock による加熱を考
えることで格段に速くなり、フ
レアを説明できるようになった
•しかし、slow shockの証拠は
まだ見つかっていない
フレアでは磁気リコネクションによるエネルギー解放が起きている
というコンセンサスは得られているが、どこでどのように起きてい
るかなどの詳しい物理はほとんど解明されていない
巨大アーケード
「ようこう」・・・静穏領域でのフィラメント噴出現象に伴い、
巨大なアーケードが形成されることを発見
空間スケールは大きい(>1010
cm)にもかかわらず、全体のX線
強度は低い。そのためようこう以
前ではフレアと認識されていな
かった
(Tsuneta et al. 1992, Hiei et al. 1993, McAllister
et al. 1996)
カスプ型ループ、アーケードなど
太陽フレアと同じ特徴をもつ
ようこう軟X線望遠鏡
太陽フレアと同じメカニズム
磁気リコネクション
CMEと他の現象との関係
• 統一モデルでは、ejection (plasmoid, or flux rope)
が重要な役割を果たしている。フレア・アーケードが
このモデルで理解できるとすると、すべての活動現
象でejectionが発生し、CMEとして外部に放出され
ると考えられる。しかし、CMEをともなわないフレア、
フレア・フィラメント噴出を伴わないCMEが観測され
ており、他の活動現象とCMEの関係性はいまだに
明らかにされていない。
• 本研究では、CMEが発生する条件を明らかにして
いくために、その足がかりとして、巨大アーケード形
成現象とCMEの関係性について統計的に調べた。
サーベイ結果
Year
1996
1997
1998
1999
2000
Total
Arcade
25
32
35
52
54
198
CME
9
22
27
37
34
129
Rate
36%
69%
77%
71%
63%
65%
大きさで分類してみる
Size
1
2
4 ×1021cm
3
CME associated events
1996
1997
1998
1999
2000
Total
19 3
20 12
18 11
34 22
46 27
137 75
55%
3 3
12 10
15 14
18 15
7 6
55 48
87%
3
3
1
1
1
1
1 1
5 5 1 1
100% 100%
フレアとの比較
Yashiro et al. (2005)
フレアのCME Association
Rate は、X線フレアのサ
イズ(peak intensity)とと
もに増加する。
巨大アーケード形成現象のpeak
X-ray intensityは非常に低く、A、
B、C-class程度になる。 C-class
flare のCME association rateは
およそ30%であるから、巨大
アーケード形成現象のCME
association rate 65%はかなり
高いことがわかる。