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管理栄養士を養成する
栄養学科の情報処理科目で行う
統計リテラシー教育の試み
西南女学院大学
保健福祉学部栄養学科
井ノ口 美佐子
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Ⅰ. はじめに
栄養学科における統計教育の必要性
栄養士・管理栄養士は
 各種の保健医療・栄養に関する統計情報
→ 正しく読みとって実践活動に活用

自らも成果を生み出して、情報を発信する
責任
データを集め、整理し、有用な情報を取り出
すデータ処理の方法論が必要
2
専門科目で扱うデータ


生理学・生化学・食品分析では量的データとく
に連続量
公衆栄養学などの実践栄養学では質的データ
ここでもデータ処理の方法論が必要
3
Ⅱ. 栄養学科の情報処理科目
① コンピュータ演習(基礎・応用) → 1年
Word・Excel・インターネットなど
② 健康情報処理(講義・実習) → 2年
統計・プレゼンテーション・データベース
③ コンピュータとマルチメディア → 4年
栄養教諭教職用マルチメディア教材の作成など
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Ⅲ. 情報処理科目の配置と時間数
前期
1 コンピュータ演習(基礎)
年
必修
90分х24回
2 健康情報処理論(講義)
年
必修
90分х12回
後期
コンピュータ演習(応用)
選択
90分х12回
健康情報処理実習
必修
135分х12回
4
年
コンピュータとマルチメ
ディア
選択
90分х12回
5
Ⅳ. 統計部分の講義・実習回数
前期講義
1.データの取り扱い
2.母数の推定と仮説検定
4回
8回
後期実習
3.母集団の分布にかかわらない統計方法 4回
4.多変量データの取り扱い方(相関と回帰) 2回
5.プレゼンテーション課題として
「統計のまとめ」
2回
6
Ⅴ. 2004年度の講義改善点
2003年度
(初年度)
2004年度
(次年度)
講義でもクラス別
55人×2
受講者数
講義では120人
教科書
適切な教科書が
得られない
新しい教科書
講義では講義室のみ
講義でも隔週演習室利用
環境
担当者
(電卓と分布表利用)
(Excelとインターネットが使える
環境)
統計教育未経験
経験1年
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Ⅵ. 新しい教科書の内容
水上茂樹編「栄養情報処理論」の統計部分(5~8章:p.64~121)
(統計部分は水上氏、演習問題はWebよりダウンロード可能)
5.データの取り扱い
5.1 データの整理
A. 量的データと質的データ
B. 母集団と標本
C. データの整理
幹葉図・メディアン・四分位点・箱ヒゲ図
「幹葉図と箱ヒゲ図」・度数分布表および度数分布図
累積度数と累積度数分布・見やすい度数分布図の描き方
D. 統計量と母数
代表値・「平均、メディアン、モード」・散布度
「度数分布表の平均、分散、期待値」・「自由度」
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5.2 母集団の分布と確率
A. データ処理になぜ確率が必要か
B. 離散量データの分布
離散型一様分布・二項分布・ポアソン分布
C. 連続量データの確率分布
正規分布・正規分布と確率・中心極限定理
標準正規分布・変換によって正規分布になる分布
その他の分布
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6.母数の推定と仮説検定
6.1 推測に使う標本分布
A. 標準誤差(SE)および平均の標準誤差(SEM)
B. スチューデントのt分布
C. カイ二乗分布
D. フィッシャーのF分布
6.2 母数の推定
A. 点推定
B. 区間推定
「有意水準に5%を使う理由」・母平均の推定・母比率の推定
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6.3
A.
B.
C.
D.
仮説検定
有意性の検定
帰無仮説と対立仮説
両側検定か片側検定か
両側検定と片側検定の実例
「NORMSINV( )とTINV( )の違い」
E. 第1種過誤と第2種過誤
F. 仮説検定と標本の大きさ
「統計的に有意ならよいのか?」
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6.4 仮説検定の実際
A. 対応ある2群の平均の検定
アドインソフトによる検定・検定方法の詳細・基本統計量
B. 対応のない2群の平均の検定(母平均の差の検定)
等分散を仮定したときの検定
等分散が等しくないと仮定したときの検定(Welchの検定)
図による検定
C. 2群の分散の検定(母分散の比の検定)
D. 分散分析法(ANOVA)
一元分散分析・アドインソフトによる検定
検定過程の詳細・多重比較・二元分散分析
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7.母集団の分布に関わらない統計方法
7.1 測定の尺度とデータの取り扱い
7.2 分割表(クロス集計表)を使う仮説検定
A. カイ二乗法による適合性の検定
B. カイ二乗法による独立性(関連性)の検定
食中毒とランチの種類の関係
アザラシ肢症児の出生とサリドマイド服用の関連
7.3 その他のノンパラメトリック法
A. パラメトリックか、ノンパラメトリックか
B. ノンパラメトリック法の例
符号検定による対応ある2群の比較
ウィルコクソンの2標本順位和検定
「いくつかの検定法を比較してみる」
(スピアマンの順位相関係数法)
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8. 多変数データの取り扱い方
8.1 2種類の変数
「独立変数と従属変数(説明変数と目的変数)」
8.2 相関と回帰
A. 2変数の相互関係
「父親と息子の身長」
B. 相関係数
ピアソンの積率相関係数・母相関係数の推定
相関と因果・「統計手法の御三家」
C. 回帰
線形回帰・非線形回帰
「エネルギー調整栄養素摂取量(残差法)」
「ロジスティック曲線」
8.3 多変量解析
因子分析・主成分分析・重回帰分析・判別分析
「世界中で使われている疫学フリーソフトEpi Info」
(感染症情報センターのホームページから日本語版Epi Infoがダウンロードできる)
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Ⅶ. 2004年度4つの試み
1.使いやすい統計ツールの利用
1) 連続量ではExcelの分析ツール
2) ノンパラメトリック法では群馬大学青木氏の
統計ツール(インターネット利用)
15
青木氏Webの1画面
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2.簡単なアンケート調査の実施
1) 演習室LANでアンケート調査の実施
授業評価に関するもの(順序データの例)で
回答後のExcelファイルを各自適当な名前で提出し
クラス別に集計する(Excelの複数シート集計)
2) 青木繁伸氏のWebページ利用で検定(課題)
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/exact/
3) アンケート調査項目と検定結果(次のスライド)
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3) アンケート調査項目と検定結果
Aクラス
MannWhitney
U test は
どちらとも いい
A・Bクラス間の差の検定
はい
1.あなたはこの科目を積極的に
受講しましたか?
Bクラス
いえない
え
P値
い
どちらとも
いえない
いい
え
18
20
4
0.9560
18
29
1
2.仮説検定がどういうものか,
わかってきましたか
5
35
2
0.5569
12
30
6
3.統計の必要性を感じますか
12
27
3
0.9674
17
23
8
4.実習は熱心に受けましたか
19
19
4
0.6127
19
24
5
3
27
12
0.9421
3
32
13
6.課題は提出できましたか
30
11
0
0.0252
44
3
1
7.課題は役に立ちましたか
16
23
3
0.0534
10
31
7
5.理解はできていますか
18
3.身近な事柄で仮説検定の例題作成練習
1) 対応のない2群の平均値の差の検定
2) 対応のある2群の平均値の差の検定
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平均値の差の検定の例題作成(学生の作成例)
A校とB校における給食の提供量に対する残飯の割合に差があるといえるか
10代女性と20代女性のBMIに差があるといえるか
同じ定食を食べた人の中でデザートを食べたグループとそうでないグループに血糖値上昇に差があるか
スポーツ飲料を飲んだ組とオレンジジュースを飲んだ2つの組で血糖値の上昇に差があるといえるか
100gの天然ウナギと養殖ウナギに含まれる脂肪量に差があるといえるかどうか
A高校とB高校で、毎日の平均勉強時間に差があるといえるか
イライラすると回答した集団とそうでない集団の平均睡眠時間に差があるかといえるかどうか
ヨン様ファンとジャニーズファンではファンの年齢層に差があるといえるか
糖分を過度に与えた場合のマウスと与えなかった場合のマウスの興奮した行動の回数に差があるか
栄養学科AクラスとBクラスのテスト結果に差があるといえるか
あるグループに減塩調理の食事を一週間続けてもらい、血圧に変化が見られるかどうか調べなさい
高校生50人に一日30分間のマラソンを1ヶ月続けた結果、肺活量に変化が見られるかどうか調べなさい
糖尿病予防講座を受講したグループの受講前と後の血圧に差があるといえるか
クラスの学生が運動する前と後の血圧に差があるといえるかどうか
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あるグループで茶カテキンを多く含む緑茶を1日一定量、1ヶ月間飲み続けた前と後の体重に差があるか
Aクラスの学生の食事前と食事後の体温に差があるといえるかどうか
4.プレゼンテーションで「統計まとめ」の課題
WordとExcelで素材は提供
→ 時間があれば素材から作らせたい
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Ⅷ. おわりに(今後の対策)
アンケート調査による学生の授業理解度は「理解した」が少なく
「何ともいえない」の中間層が圧倒的に多い
1) 大学入学までに統計の学びがほとんどないため、「データの
取り扱い」の基本部分に十分な時間をとる必要がある
2) 講義や実習の内容を絞り込むなど、内容と時間配分の工夫
で理解しやすくすることが必要である
3) 簡単なアンケート調査や実験データ等を利用して、可能な範
囲で自分達で得た実際のデータを増やす
4) 仮説検定の例題作成は他の検定手法にも適用し、仮説検
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定を身近なものとして捉え、その利用能力をつける