A08: 動的な構造をもつネットワーク上の資源割当て問題の研究

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Transcript A08: 動的な構造をもつネットワーク上の資源割当て問題の研究

A08: 動的な構造をもつネットワーク上
の資源割当て問題の研究
藤田 聡
中野浩嗣
(広島大学)
森本康彦
研究組織
• 藤田 聡(広島大)
– ネットワーク上のサーバ配置問題
– オンラインアルゴリズム
• 中野浩嗣(広島大)
– 無線ネットワーク上のアルゴリズム
– 無線ネットワーク上の省電力ルーティング
• 森本康彦(広島大)
– センサーネットワーク上のデータマイニング
成果の概要
 支配集合に基づく資源割当て問題
 サービスの安定性を保証するための要件
 安定性をパラメータ化して必要なコストを評価
 連結支配集合分割問題(→センサーネット)
 ルーティングにおける資源割当て
 無線ネットワークにおけるチャネル割り当て
 ルーティング性能をいかにして保つか(ホップ数, QoS, 低
電力)
 輻輳制御(AIMD, Active Queue管理)
 マルチパスルーティング
支配集合に基づく資源割当て問題
 すべての頂点に対して均一なサービスを提供
– 支配集合がサーバ集合に対応
 さまざまなバリエーションが存在
 連結支配集合:センサーネットワークのバックボーン
 支配集合分割:負荷分散、省電力化
 r-configuration:ファイル配置問題
 最大極小支配集合:用意すべきサーバ数の上限
【動的な構造をもつネットワークへの適用】
 支配集合間の遷移可能性 (PDCAT’04, ISAAC’05)
 欠陥を許した支配集合分割
支配集合間の遷移
a
d
a
b
d
a
b
d
b
c
c
c
(a)
(b)
(c)
 支配集合の集合D’⊆D(G)は、D’中の任意の集合間で
互いに遷移可能なとき、相互遷移可能であるという
• ただし遷移の途中でD’中に含まれない様相を経由してもよい
主要な結果 (ISAAC’05)
 n頂点のグラフのクラスCnを考える
 Cnに含まれる任意のグラフ上で相互遷移可能性を保
証するような支配集合サイズの上界をg(n)とし、
 相互遷移可能ではないグラフがCn中に存在するような
支配集合サイズの下界をf(n)とする
木(tree)のクラスに対して
g(n) = f(n)+1 = ceil((n-1)/2)
ハミルトングラフのクラスに対して
g(n) = f(n)+1 = ceil((n+1)/3)-1
木に関する証明の概要
十分性は、根の方向に向けて
支配頂点を繰り返し遷移させて
いくことで証明できる
任意のグラフの支配数は
葉に隣接している頂点数
以上である
支配数がceil((n-1)/2)になるグラフの例
ハミルトングラフG
ring edge
 ハミルトングラフG=(V,E)のハミ
ルトン閉路Rを固定する
 グラフGのサイズceil((n+1)/3)
の支配集合S⊆V を考える
 Gからchord edgeを繰り返し除
去しながら、SをRの支配集合
に遷移させていく
Gがサイクルのとき、サイズ
ceil((n+1)/3)の支配集合は相互遷
移可能
chord edge
9
10
8
11
7
0
6
1
5
2
4
3
Graph G
Step 1: 冗長な辺の除去
規則1: もし除去によって支配
集合であることが崩れなけれ
ば、そのchord edgeを除去
 規則1をそれ以上適用できなく
なるまで繰り返し適用
⇒Gと同一の支配集合Sをもつ部分
グラフG’ が得られる
 G’の任意のchord edgeでは、
いっぽうの端点がSに属し、もう
いっぽうの端点はちょうどひとつ
のchord edgeと接続している
9
10
8
11
7
0
6
1
5
2
4
3
Graph G’
Step 2: 森への分割
• Chord edgeで支配される頂点
に接続するすべてのring edge
9
10
8
を除去
T中の支配頂点をうまく遷移させて、Tに接続
– 得られるグラフをG”
とする
11
するchord edgeが取り除けるようにできる
• G”は森である
0
↓
– すべての葉はV-Sの要素であり、
同様の処理をすべてのchord
edgeが
次数3以上の頂点はすべてSの要
1
素である 除去されるまで繰り返せばOK
2
4
• |S| ≧ ceil((n+1)/3)より、森の中
3
には少なくともひとつの木Tが存
在し、その木の中の支配集合数
Graph G”
が頂点数の1/3を上回っている
7
6
5
欠陥のある支配集合分割
• 支配集合分割C ={C1,C2,…,Ck}
– 各Ciは支配集合
– 各頂点は、すべてのCiによって支配されている
• 各頂点を支配する集合数をkからk-dに減らす
– 点彩色で類似の概念はすでにある
• 動的な環境下で支配する集合数が一時的に減る状
況をモデル化(⇒ディペンダビリティの尺度)
• パラメータdの値によって計算複雑度はどのように
変化するか
• 動的な変化が起こった際にdを低く抑える方法は?
キュービックグラフの場合
d (許される欠陥の数)
0
k
(
分
割
の
サ
イ
ズ
)
1
1
P
2
P
3
NP
P
4
NP
P
5
6
7
2
3
4
5
P
P
P
8
P
9
P
ルーティングにおける資源割当て
• アドホックネットワーク
– ランキングアルゴリズム、チャネル割り当て
• QoSルーティング
– パス選択問題 (ICIS’05)
– 輻輳制御問題 (ICON’06, PDPTA’07)
• マルチパスルーティング
– 耐故障性、通信帯域の確保 (PDCS’06)
• 無線LANにおける通信機会割当て
– ビン詰め問題の一種 (PDCAT’06)
無線ネットワーク上でのランキング
n個の無線端末がキーを1個ずつもつ
32
41
85
57
29
各キーのランク(何番目に小さい値か)を求める
2
3
5
4
1
ソーティングと本質的に同じ
通信チャネルが1つのときの
自明な時間最適アルゴリズム
32
各無線端末がキーを順に
ブロードキャスト
32
41
85
57
29
 各端末は受信したキーと自分のキーを比較し,自分より小さい
キーの個数をカウント
 自分より小さいキーの個数+1がランクと一致
アルゴリズムは時間最適:自明な下界Ω(n)時間と一致
(各キーは少なくとも1回は送信される必要があるので)
欠点: 各端末はO(n)回の受信動作を行うので受信による消費電力が大きい
通信チャネルが1つのときの自明な
消費電力最適アルゴリズム
アイデア:並列ソーティングネットワークを無線ネットワークでシミュレート
32 41
85 57 29
比較交換器
並列ソーティングネットワークの既知の結果を用いる
O(n log n)個の比較交換器でソーティングが行える
比較交換を通信チャネル上で行うと
O(n log n)時間でソーティングが行える.
利点: 比較交換に関係ない無線端末は送受信を
行わなくてよいので,各無線端末が行う送受信
動作はO(log n)回
29
32 41 57
85
欠点: 時間最適でない.(下界はΩ(n))
問題: O(n)時間,O(log n)送受信動作の時間最適,消費電力最適
ランキングアルゴリズムは作れるか?
マルチチャネルの場合
マルチチャネル無線ネットワークでの時間最適,消費電力最適なランキングを考える.
32
57
マルチチャネル:複数の通信チャ
ネルを使って同時に通信が行える
32
41
85
57
29
k個の通信チャネルを用いる場合
計算時間の自明な下界: Ω(n/k) (各キーは少なくとも1回送信する必要があるので)
各送受信回数の下界: 通信チャネル数に関係なくΩ(log n)
問題: O(n/k)時間,O(log n)送受信動作のランキン
グアルゴリズムは存在するか?
決定的手法ではむずかしそう → 確率的手法を用いる
確率的ランキングアルゴリズム
アイデア:ランダムサンプリング
1. 約n/log n個の無線端末をランダムに選ぶ
2. 選んだ無線端末だけでランキングし,ランキング結果から,約n/(log n)2個のキー
を選ぶ.選んだキーをピボットとして用い,全ての無線端末をグループに分割.
<
<
< <
< <
各グループはほぼ等しく平均(log n)2個の端末をもつ.
3.グループ内でランキングし,全体のランキングを求める
結果
1≦k≦n/log nのとき,少なくとも1-n-1の確率で,O(n/k)時間,
O(log n)送受信回数で,ランキングを行うことができる.
転置グラフ上の点素なパス
 転置(transposition)グラフ:Cayleyグラフの一種
– 次元nのとき、次数がd=n(n-1)/2
– star graphやpancake graphに比べて、選ぶべきパスの
数が大きい(つまり難しい)
 最大フローによる求解:
– 頂点数に関して多項式時間
– 次数に関して多項式時間のアルゴリズムを求めたい
 提案手法の実行時間は、次数dに対してO(d2.5)
– マッチングに要する時間が支配的(Hopcroft-Karp)
 得られるパスの長さは、 n≧7のとき、同じ目的頂点
までの最短パスの長さよりも高々14長い
4-TG
1234
4132
2134
1432
2314
1342
3214
3142
3124
3412
1324
4312
4231
4123
長さ2のsuffixが同一である頂点をまとめる→vertical
cluster
2431
Vertical cluster全体の集合をTとする(|T|
= 2|D|) 1423
2341
1243
3241
2143
3421
2413
4321
4213
基本アイデア
• D中の頂点をT 中の
vertical clusterに単射
• TはDの2倍の要素をもつ
– 異なるsuffixの数はn(n-1)
• 各パスに別々のvertical
clusterを通過させることで
互いに素なパスを実現
First Part
(Length 1 or 2)
Second Part
Third Part
– 問題は、前後の部分をどう
うまく実現するか
– Horizontal clusterという考 異なるvertical clusterは異なる長さ2の
え方を用いる(class)
suffixをもつため、頂点を共有しない
目的頂点のクラス替え
• すべての目的頂点が異なるクラス
に属していれば、うまく接続できる
• そうでない場合は、適切な中間頂
そのような頂点集合Iを構成できるか、
点を入れて、クラスの変換を行う
• D中の多くの頂点が特定のクラスに集中しているか
中間頂点の集合をI (⊂ Vn)とする:
のいずれかが成立していることが証明できる
1) 集合Iの頂点は異なるクラスに属
している (頂点集合の構成にマッチングを使う)
2) DとIはマッチング辺たちによって
結ばれている(single hop)
3) DはソースからI中の各頂点を結
Set I
ぶパス集合と互いに素
検討課題
• 支配頂点の“自律分散的な”遷移
• 欠陥を許した支配集合間の遷移可能性
– ランダムウォーク(交換)の解析
• 許される欠陥数のどのあたりでP→NPになる
のか(Pの範囲が広がればうれしい)
• オンラインアルゴリズムとしての輻輳制御問題