第31回リウマチ中央教育研修会

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第31回リウマチ中央教育研修会
平成17年7月30日・31日
京都市勧業館 みやこめっせ
京都大学医学研究科附属ゲノム医学センター
山田 亮
リウマチ性疾患の感受性遺伝子
リウマチ基本テキスト[第2版]
2 リウマチ性疾患の基礎知識
2-1) 臨床免疫
D. 疾患遺伝子
p46
遺伝要因と環境要因、偶然性
Commmon diseasesとその遺伝性
偶然性要因
遺伝的要因
環境的要因
単一遺伝子病
生活習慣病
アレルギー性疾患
感染症
悪性腫瘍
リウマチ性疾患
イメージ
外傷
単一遺伝子疾患の場合
日本人1億2千万人・・・
原因遺伝子変異を持ち、ほぼ
確実に発症する家系構成員
(100人)
原因遺伝子変異を持たず、
発症しない大多数
(1億1999万9千9百人)
HLADR4の分布とRA患者の分布
~複合遺伝性疾患の例~
日本人1億2千万人・・・
DR4陽性で発症者
DR4陰性で非発症者
(50万人)
(8400万人)
DR4陽性で非発症者
DR4陰性で発症者
(20万人)
(3600万人)
単一遺伝子疾患と
複合遺伝性疾患の比較
遺伝要素を
持っていなく
ても発症する
遺伝要素を
持っていても
発症しない
リウマチ感受性遺伝子としての
HLADR4
• HLA DR4とRA
– 日本人におけるDR4陽性率は約30%
– RA患者におけるDR4陽性率は約70%
•
•
•
•
日本では、RAの罹患率が約0.6%である
DR4(+)の個人の罹患率:約1%
DR4(-)の個人の罹患率:約0.3%
相対危険度(Relative Risk) ~ 3.3
– DR4(+)の個人はDR4(-)の個人に比べて、約3.3倍
RAに罹患しやすい
関節リウマチの遺伝性と遺伝解析
• 双生児・家系研究
– 一卵性双生児再発危険度λMZ
• 12~62
– 同胞再発危険度λsib
• 2~17
– HLA はRAの遺伝要素の1/3-1/2
– それ以外に複数の感受性遺伝子
• 複数の連鎖解析
• 多くの候補遺伝子アプローチ解析
自己免疫疾患の遺伝性
Wandstrat A. and Wakeland E. Nat Immunol 2(9) 802,2001
HLA と自己免疫疾患
単一遺伝性疾患の遺伝子解析と
複合遺伝性疾患の遺伝子解析の違い
• 原因・関連遺伝子の強さ
• 最適解析手法の違い
– 連鎖解析(家系データ、疎な遺伝マーカー)
– ゲノムワイド関連解析(ケースコントロール解析、
密な遺伝マーカー)
疾患の遺伝因子の解析手法
• 大規模家系連鎖解析
– 発病者に共通して受け継が
れている変異を検出する
• 罹患同胞対解析
– 複数の家系で発病同胞(兄
弟姉妹)に共通して受け継
がれている変異・多型を検
出する
• ケース・コントロール関連
解析
– 発病者と非発病者とを比較
し、発病者が共通して保有
する多型を検出する
遺伝子マッピング
解析するべき遺伝子はどこにある?
• ヒトゲノム配列決定前
常染色体22本と
2本の性染色体(X,Y)
ここだ!
でもそこに何の遺伝子がある
のかわからない・・・
ヒトゲノムプロジェクト
30億塩基対解読終了宣言
2003年春
解析するべき遺伝子はどこにある?
• ヒトゲノム配列決定後
ここだ!ここにある遺伝子は「X」だ。
Gene
ゲノム解読とともに、本当にヒト遺伝子のすべてとその
位置がわかったか、というと・・・
遺伝子数の推移
プロジェクトスタート
2000
Gene
50k
40k
30k
20k
10k
2001
2002
2003
2004
2005
27,283Genes
Common Diseasesの
感受性遺伝子解析
•
•
•
•
1塩基多型(SNP)を用いた、関連領域の検出
感受性遺伝子・感受性多型の同定
感受性の分子生物学的根拠の解明
解析成果の臨床への展開
Number of Samples for Genome-wide
Case-control Association studies
5000
必
4000
RR=1.5
要
検
体
RR=3
3000
RR=4
2000
数
RR=2
1000
0.2
0.4
0.6
疾患アレル頻度
0.8
1
Common Diseasesの遺伝子解析
• Hypothesis-free のアプローチ
– 未知の病因の発見のために
– ホールゲノムアプローチ
• 従来の連鎖解析よりも関連解析
• 遺伝マーカーとしてSNPが最適
SNPを用いた大規模 連鎖不平衡解析
(LDマッピング)
ヒトゲノムの多様性
• どのくらい違うもの?
– 任意の2つの卵子(23本の染色体を持つ)を取っ
てきてそのすべての塩基を比較すると、
平均して、
30億塩基対のうち、
約300万塩基対は異なる(約1000塩基対に1)
多型とは
•
•
•
•
RFLP(制限断片長多型)
VNTR
マイクロサテライトマーカー
SNP(1塩基多型)
SNPとは
• Single Nucleotide Polymorphism(1塩基多型)
• 最も高密度に分布する遺伝子多型
– ゲノムワイドに約100-1000塩基対に1個の
密度で分布
• タイピングが容易
– 大量・高速タイピングに適する
SNPのもたらす機能変化
Two Ways of Whole Genome LD
Mapping
Map-based Approach
2
1
6
3
7
5
4
9
Gene D
Gene A
Gene B
Gene C
Gene-based Approach
12 3
89
7
4
56
Gene D
Gene A
Gene B
Gene C
8
Whole Genome LD Mapping
• Prospects
– Map-based approach
• “Whole Genome” を一様に
• 500,000 – 1,000,000 SNPsが必要
– Gene-based approach
• 遺伝子存在領域を重点的に
• 50,000 – 100,000 SNPs が必要
D. Botstein & N. Risch Nat Genet 33 Suppl,228-237(2003)
公共データベースSNP
• dbSNP on NCBI (Nov 4, 2003:build 118)
– Submitted SNPs 10,384,535
– RefSNPs
5,798,183
• Validated by Resequencing 2,359,534
2000
2001
2002
2003
2004
2005
10m
7.5m
dbSNP
5.0m
2.5m
>1000万SNPs
LDマッピングの原理
組み換えが多く発
生した箇所
snp
snp
snp snp
snp
snp
SNPがマーカーとして
機能しうる範囲
すべての隣接する塩基間で連鎖が平衡に達していれば、SNP
はマーカーにはなりえない
snp
snp
snp snp
snp
snp
組み換えが一様であれば、マーカーが検出できる範囲もまた一様
snp
snp
snp snp
snp
snp
実際には、組み換えが多かった部位は局在している
真の疾患ローカス
LDマッピングの手順
SNP
遺伝子
ブロック
ハプロタイプ
&htSNP
A C G T A
G G G T G
A
A
C
G
G
C
C
G
C
G
G
T
T
G
T
C
C
C
T
G
G
G
C
C
C
G
C
G
G
G
T
A
A
T
G
C
C
G
G
T
G
T
C
A
C
A
C
G
G
C
A C G T T C C A A C A
G G T C G C G T C G A
A C T C G C G T A C C
ミレニアムプロジェクト
理研 SRC 関節リウマチチーム
•
•
•
•
2000年春から開始
遺伝子領域を中心に100,926SNPを配置
ケース・コントロール解析でスクリーニング
連鎖不平衡解析によるLDマッピング
「バーコード管理」
「自動分注機」
遺伝子のカバー率
SNPもしくはblockによって、一部で
常染色体総遺伝子数:21,153
も検証された遺伝子の数
12,890 (60.9%)
カバーされず
 遺伝子あたりのSNP数および密度
8,263
8,381
5.0±6.4 個/遺伝子
12,890
Blockでカバー
0.2±0.3 個/kb

4,509
プロジェクトスタート
SNPでカバー
2000 2001
Gene
50k
40k
30k
20k
10k
2002
2003
2004
2005
27,283Genes
全染色体への分布
主な成果
• PADI4
– 抗シトルリン化ペプチド抗体の抗原産生酵素
• SLC22A4
– Mono/Mφ酸化還元分子トランスポータ
• FCRL3
– B細胞抗原認識コファクタ
RA-susceptible variant transcript is
more stable.
RA-susceptibleタイプを2コピー持つRA患者は
抗シトルリン化フィラグリン抗体価陽性率が高い
感受性アレル所有本数別
抗シトルリン化フィラグリン抗体 陽性・陰性率
100
P-0.04
80
抗シトルリン化フィ 60
ラグリン抗体陽性
/陰性率
40
Positive
Negative
20
0
2 copies
1 copy
感受性アレル保有数
0 copy
FCRL3とは
Fc Receptor-like 3
・Ⅰ型膜貫通タンパク (734a)
・FcγRとの高い相同性
・細胞外:6つの免疫グロブリン様ドメイン
細胞内:チロシンモチーフ
(ITAM,ITIM,hemi-ITAM)
・Bリンパ球(特に胚中心の)に発現
FCRL3の転写調節領域のSNPに転写し
やすいタイプとしにくいタイプが存在する
転写しやすいタイプを持つと自己免疫疾患にかかりやすい
ジェノタイプ別のFCRL3発現量
末梢血B細胞での発現をTaqMan-PCR法により定量
SLC22A4
*
Nucleotide binding motif
*
*
+
*
1
2
3
C
+
+
+
4
5
6
+
N
Sugar transporter signature
sequence motif
7
8
9
10
11
RA関連SNPのアレル別効果
EMSAs
Luciferase assay
T alleleとの結合性が高い.
T alleleの転写活性は低い.
The SNPs associated with RA or
Crohn disease
10kb
Genes
RIL
SLC22A4
SLC22A5
Exons
RA & Crohn
Crohn
Psoriatic Arthritis
SNPs
Heat shock elementRUNX1 binding site
L503F
binding site
Tokuhiro, S. et al. Peltekova, V. D. et al.
Barton, A. et al.
日本人解析
コーカシアン解析
IRF1
3 genes with RUNX1 binding sequence
SLE
Psoriasis
RA
Table
Disease
SLE
Gene
PDCD1
Cytoband
Function of gene
RUNX1 binding motif
Location
Length evaluated
with reporter
assay
2q37.3
An
immunoreceptor
with tyrosinebased inhibitory
motif
TGCg/aGT
Intron 4
Not Done
TGTg/aGT
Intergene
102 bp
TGTGGt/c
Intron1
24 bp
SLC9A3R1
Psoriasis
17q24-q25
Nacetyltransferase
NAT9
Rheumatoid
arthritis
SLC22A4
Regulatory
molecule of
functional
membrane
5q31
Organic cation
transporter
MΦ
自己免疫疾患感受性多型のオーバーラップ
自己免疫疾患同士の関係(1)
• 複数の自己免疫疾患を合併することがある
• 自己免疫疾患合併は家族集積性がある
– 1型糖尿病と自己免疫性甲状腺炎と関節リウマ
チ
自己免疫性甲状腺炎
1型糖尿病
関節リウマチ
自己免疫疾患同士の関係(2)
• 異なる自己免疫疾患が症状をオーバーラップ
することがある
– 関節炎は関節リウマチに特徴的な症状だが、ク
ローン病(消化管疾患)と乾癬(皮膚疾患)はともに
関節炎を起こす
クローン病
乾癬
関節リウマチ
自己免疫疾患同士の関係(3)
• 異なる自己免疫疾患には共通する臨床検査
異常がある
– 全身性エリテマトーデスと強皮症
Environmental
Entry of Antigen
Production of Antigen
Genetic
Body
Response to Antigen
Presentation of Antigen
Recognition of Presented Antigen
Immune System
Transient Autoreaction
Manifestation of phenotype
Maintained Autoreaction
Medical Encyclopedia
From the Atlas of Renal Pathology
American Journal of Kidney Diseases, Volume 32, Issue 1
成果と今後の課題
1. 単一遺伝子・ローカスを検出した
A) 複数の遺伝子の複合効果は未解明
B) リウマチの病理解明には、今後もゲノム的解析
とその他の解析が必要
2. 民族・人種間差が確認された
A) アジア・日本人検体での解析が必須
3. 発病因子のスクリーニングであった
A) 病態別因子は未解明
リウマチの病理解明には、今後もゲノム的解析
とその他の解析が必要
多因子解析
免疫解析
分子生物学的解析
遺伝素因解析
民族・人種間差が確認された
アジア・日本人検体での解析が必須
• 発病率の人種・民族差
• 病型の人種・民族差
• 人種・民族差の構成要素
– 環境因子
– 遺伝因子
• 関連遺伝子数の違い
• 関連遺伝子セットの違い
• 同一遺伝子内関連多型の違い
コーカシアン
PDCD1
MIF1
PTPN22
CTLA4
TNFRSF1
Preliminary
calculation with
random-effect
model
Susceptible allele
日本人
SLC22A4/A5
PADI4
発病因子のスクリーニングであった
病態別因子は未解明
母集団
ゲノムアプローチ
疾患感受性多型
ケース対コントロール比較
発病
非発病
臨床病型分類
タイプ 1
タイプ 2
タイプ A
タイプ 3
タイプ B
・・・
タイプ N
タイプ C ・・・
疾患亜分類関連多型
ケース亜群 対 ケース亜群比較
疾患亜分類関連指標
同一ケース状態別比較
タイプ X
治療反応性分類
多数の遺伝子(DNA)
多様な転写調節(mRNA)
複雑な分子機能(タンパク質)
さまざまな疾患
入り組んだ民族関係
A network of protein–protein interactions in yeast
by Benno Schwikowski, Peter Uetz3 & Stanley
Nature Biotechnology 18 :1257 - 1261 (2000)