公共経済学

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20. 租税の帰着と中立性
租税の帰着・転嫁の問題について検討(個別消費税のケース)
直接税と間接税の相違について説明
20.1 帰着と超過負担
p d =消費者価格(需要者価格)
p s =生産者価格(供給者価格)
t =個別消費税(従価税)の税率
p d = (1  t) ps
(20-1)
x  xd ( pd ) :需要関数
x  xs ( ps ) :供給関数
(20-2)
(20-3)
pd
ps 
1 t
pd  (1  t ) ps
x  xs  pd /(1  t ):供給関数
(20-4)
pdt =税率 t のもとで均衡消費者価格
pst =税率 t のもとで均衡生産者価格
x t =税率 t のもとで均衡取引量
(20-2)と(20-4)⇒
xd ( pdt ) = xs  pdt /(1  t ) [  x t ]
(20-5)
(20-1)⇒
pst = pdt /(1  t )
pd0 = p s0
[≡ p ]
0
(20-6)
(問題 20-1)
① x  xd ( pd ) 、 x  xs ( pd ) 、 x  xs  pd /(1  t )?
0
t
0
t
t
x
x
②
、 p 、 、 p d 、 p s を図示しなさい。
pd
x  xs  pd /(1  t )
x  x s ( pd )
t  pst
pdt
p0
pst
x  xd ( p d )
xt
x0
pdt  (1  t )  pst  pst  t  pst
x
<帰着(tax incidence)>
租税負担額=( p dt - p st ) x
t
[= t p st x ] (tax burden)
t
0
t
t
t
消費者の租税負担額(=帰着)=( p dt - p ) x
0
生産者の租税負担額(=帰着)=( p - p s ) x
⇒
租税負担額
=消費者への租税の帰着 + 生産者への租税の帰着
<超過負担(excess tax burden)>
消費者の実質的租税負担額=消費者余剰の減少分
生産者の実質的租税負担額=生産者余剰の減少分
実質的租税負担額
=消費者の実質的租税負担額 + 生産者の実質的租税負担額
租税の超過負担
=実質的租税負担額-租税負担額
財 x の所得効果がゼロ(財 x が中級財)のケースに着目
⇒ 費者余剰の増分=補償変分=等価変分
(問題 20-2)
租税負担額、消費者の租税負担額、生産者の租税負担額、
消費者の実質的租税負担額、生産者の実質的租税負担額、
実質的租税負担額、租税の超過負担を求めなさい。
租税負担額=Ⅰ+Ⅱ
消費者の租税負担額= Ⅰ
生産者の租税負担額= Ⅱ
消費者の実質的租税負担額=Ⅰ+Ⅲ
pd
生産者の実質的租税負担額=Ⅱ+Ⅳ
実質的租税負担額=Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ
租税の超過負担= Ⅲ+Ⅳ
pdt
p0
pst
Ⅰ
Ⅱ
Ⅰ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅰ
xt
x0
x
(問題 20-3)
課税対象となる財の消費(あるいは生産)が外部性をもたらす場合には、
租税の帰着により余剰が減少する経済主体以外にも、消費者余剰や生産
者余剰が増加する経済主体も存在する可能性があることを、タバコ税を
例として検討しなさい。
20.2 転嫁と直接税・間接税
<納税義務者と租税負担者>
納税義務者
=政府へ納税する義務を負っている者
徴収義務者
=納税義務者に代わって納税する義務を負っている者
主な租税負担者
=租税負担額(帰着)の割合が大きい者
=「その経済主体の租税負担額/租税負担額」が大
(問題 20-4)
① 給与所得税における納税義務者と(源泉)徴収義務者は誰か。
② 利子所得税における納税義務者と(源泉)徴収義務者は誰か。
③ 個別消費税の納税義務者は誰であろうか。
<転嫁(tax shifting)>
転嫁=租税負担が納税義務者から他の経済主体に移転すること
後転(backward shifting)
=租税負担が生産要素価格の低下を通じて生産要素供給者へ転嫁
前転(forward shifting)
=租税負担が生産物価格の上昇を通じて消費者の負担に転嫁
生産要素(労働投入、資本)
→
企業
→
生産物
(問題 20-5)
一般消費税を例として後転と前転とはどのようなことかを説明しなさい。
<直接税と間接税>
直接税=「納税義務者=主な税負担者」
間接税=「納税義務者≠主な税負担者」
(問題 20-6)
給与所得税、利子所得税、個別消費税、一般消費税を
直接税と間接税に分類しなさい。
直接税
法人擬制説=企業は出資者(株主)の集合体である。
法人実在説=企業は株主からは独立した経済主体である。
経済学的には法人擬制説の立場のほうが標準的である。
(問題 20-7)
① 法人擬制説の立場からは法人税の納税義務者、徴収義務者、
主な租税負担者は誰であろうか。
② 法人税は直接税であろうか間接税であろうか。
20.3 超過負担と課税の中立性
課税の中立性
=課税されたときに均衡取引量が変化しないこと
中立的な課税
=中立性を満たす課税
(問題 20-8)
0
t
0
① x 、 p 、 x 、 p dt 、 p st を図示しなさい。
② このケースは中立的な課税と呼べるか。
③ 超過負担の大きさを求めなさい。
=
pd
消費者余剰
= 税収
の減少分
x  xd ( p d )
x  xs  pd /(1  t )
pdt
x  x s ( pd )
pst = p 0
x0
=
xt
x
(問題 20-9)
① 「供給曲線が垂直な部分で需要曲線が交わっているとき」
について問題 20-8 と同様の分析を行い、超過負担の大きさ
を求めなさい。
② 中立性と超過負担の大きさがどのような関係を持っている
かを検討しなさい。
(問題 20-10)
① 需要曲線が垂直に近い財の例?
② 供給曲線が垂直に近い財の例?
複数の財に同時に課税するケースの中立性の議論 ⇒ 一括税
一括税=行動を変化させても税負担額が変化しない税
課税が中立的
=『その課税のもとでの税収=一括税のもとでの税収
⇒ 両者の課税のもとでの経済主体の効用水準が一致』
一般消費税や賃金所得税のケースは中立的な税である。
<法人課税の実効税率とは?>
資本金1億円以上の
普通法人のケース
法人税額+法人事業税額+法人住民税
実効税率 = 額
(事業税控除前の)法人所得
30%
法人税額=法人税率×(法人所得-法人事業税額)
7.2%
法人税額=法人事業税率×(法人所得-法人事業税額)
17.3%
法人住民税額=法人住民税率×法人税額
(1+法人住民税率)×法人税率+法人事業税率
実効税率 =
≒39.5%
1+法人事業税率