高橋 宏明

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M1M2セミナー
すざく衛星による狭輝線1型セイファート銀河
TonS180のワイドバンド観測
2009年6月23日
M2 高橋宏明
目次
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始めに
TonS180について
すざくによる観測
データ解析
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イメージ領域(src領域とbgd領域の選出)
スペクトル解析(0.25~40keVのデータの再現)
時系列解析(スペクトル変化の原因)
まとめ
始めに
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活動銀河核(Active Galactic Nuclei,AGN)
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銀河の中心核に強力な放射源を持つ
一般に,可視光だけでなく,電波,X線,ガンマ線なども放出
太陽質量の100万倍から10億倍もの大質量を持つブラックホー
ルにガスが降着しているものと解釈されている
主な活動銀河核:クェーサー,セイファート銀河
狭輝線1型セイファート銀河


1型セイファート銀河のうちHβ線の輝線幅が2000km/s以下の銀
河
X線領域で2つの大きな特徴を示す。
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
べきの値が2~2.5の値をとるべき連続成分と2[keV]以下で見られる
超過成分
様々なタイムスケールによるX線強度の時間変動
AGNが出すX線
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エネルギーのべき関数で特徴付けられる
連続成分(直接光成分)
10keV以上で見られる高エネルギー側の
連続成分(反射成分)
低電離した鉄元素からの輝線
1keV以下の低エネルギー側で見られる超
過成分(軟X線超過成分)
TonS180
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赤方偏移0.062にある狭輝線1型セイファート銀河
低エネルギー側での吸収構造があまり見られない
現在でも極紫外~軟X線超過の研究対象として重要な天
体の1つ
これまでに様々なX線天文衛星による観測が行われた
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<例>
ASCA
XMM-Newton
Chandra
:1999年12月3日~15日
:2000年12月14日
:1999年12月14日
すざくによる観測
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2006年12月9日~12日にかけて観測
有効観測時間は約120[ks]
データはXIS(0,1,3)とHXD/PINのものを使用
解析には全体で0.25~40[keV]のエネルギー帯
域のX線スペクトルデータを使用
すざくによる観測で初めてこの天体で15[keV]以
上のX線スペクトルを検出することに成功した
(フラックスにしてNXBの約4%)
データ解析(XISイメージ)
src領域
中心(銀河座標で)
(14.3229,-22.3831)
内円・外円の半径
rin
=250[pixel]
rout
=400[pixel]
左の図で内側のcircle領域を
src領域,その外側の円環領
域をbgd領域としてライト
カーブ・スペクトルを作成
bgd領域
データ解析(スペクトル解析)

スペクトル解析の流れ
1.
2.
3.
2.5[keV]以上のX線スペクトルデータから硬
X線スペクトルのモデルの形を決める
1.で求めたモデルに鉄輝線,反射成分のモ
デルを加えて再度フィッティングを行う
2.で使ったモデルの組み合わせに低エネル
ギー側の軟X線超過成分を再現するモデル
を追加して全エネルギーバンドでのフィッティ
ングを行う
2.5~40keVのX線スペクトル
2.512  2.25(2.22  2.27)
2.5~40keVのX線スペクト
ルでフィッティングした時の
データとモデルの比
黒:FI-CCD(XIS0,XIS3)
赤:BI-CCD(XIS1)
緑:HXD/PIN
(ベキの値はベストフィット
の時の値と90%信頼限界)
鉄輝線を想定した,ガウシア
ンを加えた時の値は
鉄輝線
軟X線超過成分
Γ =2.32(2.29-2.62)
Epeak =6.73(6.57-6.88)
σ
=0.46(0.33-0.74)
フィッティング結果1
model:2power-law+pexrav
黒:FI-CCD(XIS0,XIS3)
赤:BI-CCD(XIS1)
powerlaw
powerlaw
緑:HXD/PIN
soft  1.15  0.11
hard  2.89  0.01
pexrav
 2 d .o. f  3360.07 2918
フィッティング結果2
model:diskbb+power-law+pexrav
powerlaw
diskbb
pexrav
黒:FI-CCD(XIS0,XIS3)
赤:BI-CCD(XIS1)
緑:HXD/PIN
Tin  0.16( fixed )
hard  2.74  0.01
 2 d .o. f  3271.65 2924
フィッティング結果3
model:compbb+power-law+pexrav
powerlaw
compbb
黒:FI-CCD(XIS0,XIS3)
赤:BI-CCD(XIS1)
緑:HXD/PIN
pexrav
kT  0.1( fixed )
kTe  78.44  24.85
hard  2.89  0.01
 2 d .o. f  3295.78 2917
フィッティング結果4
model:cutoffpl+power-law+pexrav
黒:FI-CCD(XIS0,XIS3)
赤:BI-CCD(XIS1)
powerlaw
cutoffpl
pexrav
緑:HXD/PIN
soft  2.33  0.08
Ecutoff  0.60  0.16
hard  2.28  0.07
 2 d .o. f  3198.46 2917
HXD/PINの領域で、
データとモデルとが合わ
ない!!
考察1





どのモデルの組み合わせでもXISのデータを良く
再現できているが、HXD/PINのデータは再現で
きていない(系統誤差も考慮すると矛盾は無い)
XIS、HXD/PINの両方のデータを再現できるモデ
ルは本当に無いのか?
今までは反射成分の吸収を考えていなかったが、
吸収を考えると何か違いが見えてくるのか?
「pcfabs」というモデルを使って再びフィッティング
を行う
鉄の吸収端も「zedge」というモデルを使って考慮
方針
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
2.5~40keVの硬X線領域のスペクトルを2成分モデル(直
接光成分+反射光成分)でfitting
モデルの形は
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I(E)
=wabs*zedge*{pcfabs*pow+pcfabs*(pexrav+zgauss)}
wabsの値は0.016(10^22 /cm2)に固定
powとpexravの光子指数 (Photon Index) は共通にしてフリーパ
ラメータとする
pexravのEcutoffの値は300(keV)に固定
フィッティングに用いたデータは全観測時間で平均化した
ものを使用
Result (2.5~40 keV)
model:zedge*{pcfabs1*pow+pcfabs2*(pexrav+zgauss)}
Table1
average
edgeE( keV )  9.41 0.11
MaxTau  0.38  0.12
nH1  0.0  13.1
CvrFract1  0.05   1.00
hard  2.38  0.11
nH 2  73.6  25.9
CvrFract2  0.95  6.30
lineE( keV )  6.62  0.06
sigm a( keV )  0.027  0.229
EW (eV )  19
 2 d .o. f  1526.84 1715
考察2
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

pcfabsをかけていない時に比べて硬X線領
域までデータとモデルの合いが改善した!!
この結果を考慮してもう一度軟X線超過成
分に4つのモデルを仮定してフィッティング
を行う
フィッティングの際、Table1のΓ(hard)と
normalization以外は固定
フィッティング結果5
mod:wabs*zedge*{diskbb+pcfabs*pow+pcfabs*(pexrav+zgauss)}
SC : DISKBB
Tin keV   3.2  0.3
hard  2.903 0.007
 2 d .o. f  3324.15 2912
軟X線超過成分を説明する黒体放
射モデルの温度が高すぎる!!
中心のブラックホールの質量を
太陽質量の約100万から1億倍と
仮定したとき、黒体放射の温度は
せいぜい数十keV
HXD/PINでの領域も合っていない
ので、このモデルは却下
フィッティング結果6
mod:wabs*zedge*{pow+pcfabs*pow+pcfabs*(pexrav+zgauss)}
SC : POWERLAW
soft  2.91 0.01
hard  1.12  0.07
 2 d .o. f  3347.28 2912
0.25~40keVの範囲で良くデー
タを再現できているが、X線発
生源から直接見える成分のモ
デル(青色のpowerlaw)のべき
の値がフラットになりすぎてい
る。また、反射成分も見えてい
ない→却下
フィッティング結果7
mod:wabs*zedge*{compbb+pcfabs*pow+pcfabs*(pexrav+zgauss)}
SC : COMPBB
kTe  79.6  27.5
tau  0.70  0.10
hard  2.91 0.02
 2 d .o. f  3267.63 2911
compbb成分とpowerlaw成分
は同じ形を取っている
→compbbがpowerlawとほと
んど同じスペクトルを重複して
再現しているに過ぎない
→却下
フィッティング結果8
mod:wabs*zedge*{cutoffpl+pcfabs*pow+pcfabs*(pexrav+zgauss)}
SC : CUTOFFPL
soft  2.30  0.07
Ecutoff  0.58  0.05
hard  2.25  0.03
 2 d .o. f  3146.64 2911
•直接光成分のべきの値は硬
X線領域のみでフィッティング
した時と比べても大きな違い
はない
•Χ二乗も4つの組み合わせの
中で最も小さい
→採用
Spectral variability

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全観測時間による平均スペクトルでは
cutoffplを使ったモデルの組み合わせを採
用した。
全観測時間をX線強度が強い時間帯と弱
い時間帯に分割してそれぞれの時間帯で
cutoffplを使ったモデルでフィッティングを
行った。
時間帯の選別
TZ1
TZ2
それぞれの時間帯の
有効観測時間
•TZ1:46 [ksec]
•TZ2:81 [ksec]
それぞれの時間帯で
スペクトルを作成し、
cutoffpl を 使 っ た モ デ
ルでフィッティング
TZ1,2のX線スペクトル
mod:wabs*zedge*{cutoffpl+pcfabs*pow+pcfabs*(pexrav+zgauss)}
TZ1
TZ2
soft  2.40  0.18
soft  2.37  0.14
Ecutoff  0.61 0.14
Ecutoff  0.66  0.12
hard  2.26  0.013
 2 d .o. f  2434.53 2222
hard  2.22  0.12
 2 d .o. f  2860.61 2585
RMS(Root Mean Square)スペクトル
1ビンの時間幅512 [s]
のRMSスペクトル
全体的にフラットな形を
している
→X線強度の時間変動
はエネルギーに依存し
ていない
→軟X線超過成分と直
接光成分は何かしら強
い関係がある
まとめ
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すざく衛星で得られた狭輝線1型セイファート銀河
TonS180のX線データを使い、0.25~40keVによる解析を
行った。
0.25~40keVのX線スペクトルで軟X線超過成分におよそ
0.6keVのEcutoffplを持つcutoffplモデルでフィッティング
したとき、最も良くデータを再現することができた。
X線強度の異なる時間帯でそれぞれスペクトルを作成し、
その形からスペクトルに明らかな違いは見られないことを
突き止めた。
RMSスペクトルから軟X線超過成分と直接光成分には強
い相関関係があると考えた。