Transcript 公共経済学
6.投票のパラドックスと一般(不)可能性定理
6.1 (多数決)投票のパラドックス
6.2
単峰性と投票のパラドックス
6.3 アローの一般(不)可能性定理
6.4 補論**:アローの一般(不)可能性定理の証明
6.1 (多数決)投票のパラドックス
<選好のプロファイル>
3 人の個人あるいは投票者(投票者 1、投票者 2、投票者 3)がいるとする。
x i y
⇔ 投票者iが選択肢 x を選択肢 y より好む(選好する)。
推移性:
x i y かつ y i z
⇒
x i z
「投票者iの選択肢 x と y に関する選好順序」
⇔
x i y と y i x のうちの正しい(成立している)もの
なお、簡単化のため投票者に無差別な選択肢はないとする。
評価対象とする選択肢は a, b, c の 3 つであるとする。
「投票者 i の選好(順序)」
⇔ 投票者 i の評価対象とする全ての選択肢に関する選好順序
(例) a i b i c (つまり、 a i b かつ b i c )
「(投票者の)選好のプロファイル」
⇔ 各投票者の選好(順序)を集めたもの
(例)
a 1 b 1 c 、 b 2 c 2 a 、 c 3 a 3 b
(6-1)
<多数決投票均衡と投票のパラドックス>
ある選好のプロファイルのもとで考える。
xMy
⇔
⇔
x i y である投票者の人数が y i x である投票者の人数以上
x と y を多数決投票すると x が y に負けない(「勝つ」か「引き分け」)
M を「多数決関係」と呼ぶ。
x と y を多数決投票すると x が y に勝つ。 ⇔
yMx ではない。
ある選好のプロファイルのもとで考える。
x が多数決投票均衡である。
⇔ 任意の(評価対象とする選択肢)y に対して xMy が成立する。
「投票のパラドックス」 ⇔ 多数決投票均衡が存在しない。
(6-1)の選好のプロファイルのもとで
「投票のパラドックス」が発生することを示そう。
(6-1)の選好のプロファイル
a 1 b 、 b 2 a 、 a 3 b
⇒ 選択肢 a が2票、選択肢 b が 1 票
⇒ 選択肢 a と b で投票をすると a が多数決投票で選択される。
⇒ bMa ではない。
⇒
a 1 b 1 c 、 b 2 c 2 a 、 c 3 a 3 b (6-1)
(問題 6-1)(6-1)の選好のプロファイルのもとで、選択肢 b と c 、選択肢 c と a
に関する多数決関係 M を求めなさい。
a 1 b 1 c 、 b 2 c 2 a 、 c 3 a 3 b (6-1)
選択肢 b と c で投票すると b 1 c 、 b 2 c 、 c 3 b だから選択肢 b が
選択肢 c が
1
2
票、
票である。
c M b ではない。
(ii)
選択肢 c と a で投票すると a 1 c 、 c 2 a 、 c 3 a だから選択肢 c が 2 票、
選択肢 a が 1 票である。
a M c ではない。
(iii)
(問題 6-2)(6-1)の選好のプロファイルのもとで、投票のパラドックスが
生じていることを説明しなさい。
(i)より bMa ではない。
b は多数決投票均衡ではない。
(ii)より cMb ではない。
c は多数決投票均衡ではない。
(iii)より aMc ではない。
a は多数決投票均衡ではない。
多数決投票均衡が存在しない。
「投票のパラドックス」(voting paradox)
「コンドルセの逆理」 (Condorcet paradox)
6.2
単峰性と投票のパラドックス
どのような選好のプロファイルのもとで多数決投票均衡が存在する
(投票のパラドックスが生じない)かについて検討する。
選択肢を 1 列に並べる「順序」に着目する。たとえば (a, b, c) である。
(問題 6-3)選択肢を1列に並べる順序の数は幾つあるだろうか。
(a, b, c), (a, c, b), (b, a, c), (b, c, a), (c, a, b), (c, b, a)
6通り
<単峰型順序(single-peakedness ordering)>
ある選好のプロファイルの下で、
「(選択肢を 1 列に並べる)順序」が「単峰型順序」である。
⇔ 全ての投票者に関して、
どの選択肢の両側にもより好ましい選択肢が存在しない。
どれかの選択肢の両側により好ましい選択肢が存在する投票者がいる。
⇔
その順序は「単峰型順序」ではない。
単峰型順序の概念を理解するために、選好のプロファイルが
(6-2)
a 1 b 1 c 、 b 2 c 2 a 、 c 3 b 3 a
で与えられているケースについて考えよう。
(6-2)の選好のプロファイルのもとで、
選択肢を 1 列に並べる順序 (a, c, b) は
「単峰型順序」ではない。なぜならば、投票者1は選択肢 c の左にある選
択肢 a と右にある選択肢 b を、選択肢 c より選好するからである。
投票者1
投票者 3
第1位
投票者 2
第2位
第3位
a
c
b
選択肢
(問題 6-4)(6-1)の選好のプロファイルのもとで、単峰型順序が存在しないことを
示しなさい。また、(6-2)の選好のプロファイルのもとで、単峰型順序を
求めなさい。
a 1 b 1 c 、 b 2 c 2 a 、 c 3 a 3 b
(6-1)
ある順序の中央にある選択肢の選好順位が第 3 位である投票者が存在する。
⇒ その順序は単峰型順序ではない。
(6-1)のもとで選好順位が第 3 位の投票者が存在しない選択肢は存在するか。
⇒ No
選択肢 a に関する投票者 2 の選好順位は第 3 位である。
選択肢 b に関する投票者 3 の選好順位は第 3 位である。
選択肢 c に関する投票者 1 の選好順位は第 3 位である。
(問題 6-4)(6-1)の選好のプロファイルのもとで、単峰型順序が存在しないことを
示しなさい。また、(6-2)の選好のプロファイルのもとで、単峰型順序を
求めなさい。
a 1 b 1 c 、 b 2 c 2 a 、 c 3 b 3 a
(6-2)
ある順序の中央にある選択肢の選好順位が第 3 位である投票者が存在する。
⇒ その順序は単峰型順序ではない。
ある順序が単峰型順序である。
⇒ その順序の中央にある選択肢の選好順位が第 3 位である投票者は存在しない。
(6-2)のもとで選好順位が第 3 位の投票者が存在しない選択肢は存在するか。
⇒ Yes
⇒
⇒
それは選択肢 b である。
単峰型順序 = (a, b, c) と (c, b, a)
(6-2)
a 1 b 1 c 、 b 2 c 2 a 、 c 3 b 3 a
投票者1
投票者 3
第1位
投票者 2
第2位
(a, b, c)は単峰型順序であ る。
第3位
a
b
c
選択肢
<単峰性>
選好のプロファイルが単峰性を満たす。
⇔
その選好のプロファイルのもとで、単峰型順序が存在する。
(6-1)の選好のプロファイルのもとでは単峰型順序が存在しない(問題 6-4)
。
⇒
(6-1)の選好のプロファイルは単峰性を満たしていない。
(6-2)の選好のプロファイルのもとでは単峰型順序が存在する(問題 6-4)。
⇒ (6-2)の選好のプロファイルは単峰性を満たしている。
<単峰性と多数決投票均衡>
以下で、選好のプロファイルが単峰性を満たしているときは、「投票のパラドックス」
が発生しない(
「多数決投票均衡」が存在する)ことを示そう。
一般性を失うことなく、投票者1の最も好む選択肢に a 、2 番目に好む選択肢に b 、
3 番目に好む選択肢に c と名前をつける( a 1 b 1 c )。そして、投票者 2 と投票者 3
の選好がそれぞれ 6 通り存在するので、表 6-1 のように合計 6×6=36 通りの選好の
プロファイルが存在する。
a 1 b 1 c
表 6-1
a 3 b
b 3 c
a 2 b
b 2 c
a 2 c
c 2 b
b 2 a
a 2 c
b 2 c
c 2 a
c 2 a
a 2 b
c 2 b
b 2 a
a 3 c
c 3 b
b 3 a
a 3 c
b 3 c
c 3 a
c 3 a
a 3 b
c 3 b
b 3 a
=対応する選好のプロファイルに単峰型順序が存在するときには、
その順序の中央の選択肢を記入し、存在しないときは*を記入している。
=対応する選好のプロファイルのもとで多数決投票均衡が存在するときは、
その均衡の選択肢を記入し、存在しないときは*を記入している。
= 単峰型順序の中央の選択肢
= 多数決投票均衡
a 1 b 1 c 、 b 2 c 2 a 、 c 3 b 3 a (6-2)
a 1 b 1 c
a 2 b
b 2 c
a 2 c
c 2 b
b 2 a
a 2 c
b 2 c
c 2 a
c 2 a
a 2 b
c 2 b
b 2 a
表 6-1
a 3 b
b 3 c
a, b
a
a
a
a 3 c
c 3 b
a, b
a
a
a
*
a
c 3 b
b 3 a
b
a
a
*
a
a
b
b
b
*
a
*
a
b
*
b
a
a
b
b
a
a
c 3 a
a 3 b
a
a
a
b
a
*
a
b
b
a
b
a, b
a
a
a
a
b 3 c
c 3 a
a
a
b
b 3 a
a 3 c
a, b
a
a
a
b
*
*
*
b
b
a 1 b 1 c 、 b 2 c 2 a 、 c 3 a 3 b (6-1)
c
b
b
c
c
= 単峰型順序の中央の選択肢
(問題 6-5)表 6-1 の
= 多数決投票均衡
に a 、 b 、 c 、または*を記入しなさい。
a 1 b 1 c
a 2 b
b 2 c
a 2 c
c 2 b
b 2 a
a 2 c
b 2 c
c 2 a
c 2 a
a 2 b
c 2 b
b 2 a
表 6-1
a 3 b
b 3 c
a, b
a
a
a
a 3 c
c 3 b
a1
a
a
a
a
a, b
a, b
a
a
*
b
b
a
a
a
*
5
a
3
a
*
a
a
b
a
b
b
*
b
*
b
a
b
a
*
c
*
*
b
b
c 3 b
b 3 a
b
a
a
*
b
c 3 a
a 3 b
a
a
a
b
b
a
a
b 3 c
c 3 a
2
b
b
a
*
b
b
a
a
a
4
b 3 a
a 3 c
a, b
a
a
a
b
6
c
b
c
c
上の表より
に a 、 b 、 c の何れかが入っているときは、
にも必ず a 、 b 、 c の何れかが入っている
選好のプロファイルが単峰性を満たしているときは、
必ず多数決投票均衡が存在する。
= 単峰型順序の中央の選択肢
(問題 6-5)表 6-1 の
= 多数決投票均衡
に a 、 b 、 c 、または*を記入しなさい。
a 1 b 1 c
a 2 b
b 2 c
a 2 c
c 2 b
b 2 a
a 2 c
b 2 c
c 2 a
c 2 a
a 2 b
c 2 b
b 2 a
表 6-1
a 3 b
b 3 c
a, b
a
a
a
a 3 c
c 3 b
a1
a
a
a
a
a, b
a, b
a
a
*
b
b
a
a
a
*
5
a
3
a
*
a
a
b
a
b
b
*
b
*
b
a
b
a
*
c
*
*
b
b
c 3 b
b 3 a
b
a
a
*
b
c 3 a
a 3 b
a
a
a
b
b
a
a
b 3 c
c 3 a
2
b
b
a
*
b
b
a
a
a
4
b 3 a
a 3 c
a, b
a
a
a
b
6
c
b
c
c
6.3 アローの一般(不)可能性定理
社会的選好順序を決定する「社会的選択ルール(social choice rule)」は
どのような性質を満たすべきであろうか。
そのような条件を満たす社会的選択ルールは存在するだろうか。
2 人の個人(個人1、個人 2)と 3 つの選択肢(対象) a 、 b 、 c が存在し、
個人はどの2つの選択肢も無差別ではないとする。
社会的選好順序を表現する記号を導入する。 social preference order (ordering)
社会的に選択肢 x を選択肢 y より選好することを、
x y (あるいは y x )
と表し、社会的に x と y が無差別であることを、
x~ y
と表すことにする。
「選択肢 x と y に関する社会的選好順序」
⇔ x y 、 x y 、 x ~ y のうちのどれか一つ
<推移性> Transitivity
x yかつ y z x z
x yかつ y z x z
x ~ yかつ y ~ z x ~ z
「社会的選好順序」
⇔ ある選好のプロファイルが与えられたもとでの、
全ての評価対象とする選択肢に関する推移性を満たす社会的選好順序
(例) a b c (つまり、 a b かつ b c かつ a c )
「社会的選択ルール」
⇔ それぞれの選好のプロファイルに社会的選好順序を対応させるルール
<社会的選択ルールが満たすべき 4 つの条件>
(1) 普遍性(広範性)
:社会的選択ルールは、如何なる選好のプロファイルに
対しても社会的選好順序を定めなければならない。 Unrestricted Domain
(2) パレート基準:社会的選択ルールは、パレート基準と整合的でなければな
Pareto Postulate (Unanimity)
らない。
社会的選択ルールは、如何なる選好のプロファイルに対してもパレート基準を満
たす社会的選好順序を定めなければならない。
(3) 独立性(情報的効率性)
:社会的選択ルールは、選択対象 x 、 y 以外の選
択対象に関する個人の選好順序が変化しても x 、y に関する社会的選好順
Independence of Irrelevant Alternatives
序を変化させない。
(4) 非独裁性:社会的選択ルールは、独裁者の存在を認めない。なお、個人 i
が独裁者であるとは、全ての選好のプロファイルに対応する社会的選好順
序がどれも個人 i の選好順序に一致していることである。 Nondictatorship
アローの一般(不)可能性定理: Arrow’s General Impossibility Theorem
条件(1)、(2)、(3)、(4)を全て満たす社会的選択ルールは存在しない。
評価対象とする選択肢が3つ以上存在する場合は、
この定理の証明は「6.4 補論」で行う。
この節では条件(1)、(2)、(3)の意味について検討しよう。
条件(1)、(2)、(3)の意味について検討しよう。
2 人の個人の選好順序は 6 通りあるので選好のプロファイルは 6×6=36 通り存在
する。
上記の条件(1)は、社会的選択ルールが 36 通りの選好のプロファイル全てに社会的
選好順序を定めるものでなければならないことを要請している。
表 6-2 は、それぞれの選好のプロファイルに対応する社会的選好順序が、条件(2)を
満たすためにどのような性質を満たさなければならないかをまとめたものである。
個人 1 が上から m 番目の選好順序で、個人 2 が左から n 番目の選好順序になって
いる選好のプロファイルを「選好のプロファイル(m, n)」と表すことにする。
条件(2)は、たとえば「選好のプロファイル(3,2)」に対応する社会的選好順序が a c
を満たしていなければならないことを要請する。
選好のプロファイル(3,2)
表 6-2
1
2
a 2 b
b 2 c
1
a 2 c
c 2 b
a 1 b
b 1 c
2
3
4
5
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
b 1 a
6
c 1 b
条件(2):
パレート基準
ac
3
b 2 a
a 2 c
4
c 2 a
b 2 c
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
c 2 b
(問題 6-6)条件(2)から、各選好のプロファイルに対応する社会的選好順序の満たす
べき性質が、表 6-2 のように定まる理由を説明しなさい。
表 6-2
1
2
a 2 b
a 1 b
1
b 1 c
2
3
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
a 2 c
c 2 b
ab
ac
5
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
b 2 a
a 2 c
4
c 2 a
b 2 c
bc
ab
bc
ab
bc
ab
ab
ac
bc
ab
bc
bc
ab
bc
ac
ac
bc
bc
ab
ac
ac
bc
bc
ab
ac
c 1 b
ac
ab
ac
6
ac
bc
ab
b 1 a
c 2 b
ac
ac
bc
ab
b 2 a
ab
ab
ac
a 2 b
c 2 a
bc
bc
ac
6
ac
ab
ac
5
ab
bc
bc
4
3
(問題 6-7)条件(2)の要請する条件だけでは、対応する社会的選好順序が定まらない
ものの、投票均衡が存在するのは表 6-2 のなかのどの選好のプロファイル
であろうか。
表 6-2
1
2
a 2 b
a 1 b
1
b 1 c
2
3
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
a 2 c
c 2 b
ab
ac
5
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
b 2 a
a 2 c
4
c 2 a
b 2 c
bc
ab
bc
ab
bc
ab
ab
ac
bc
ab
bc
bc
ab
bc
ac
ac
bc
bc
ab
ac
ac
bc
bc
ab
ac
c 1 b
ac
ab
ac
6
ac
bc
ab
b 1 a
c 2 b
ac
ac
bc
ab
b 2 a
ab
ab
ac
a 2 b
c 2 a
bc
bc
ac
6
ac
ab
ac
5
ab
bc
bc
4
3
このケースでは、
全ての選好のプ
ロファイルに対し
て単峰性が成立
することは明ら
かである。
条件(3)が社会的選択ルールにどのような要請を課すことになるかを検討しよう。
「選好のプロファイル(1, 2)」と「選好のプロファイル(1, 5)」に着目してみよう。
選択肢 b と選択肢 c について考えてみると、どちらの選好のプロファイルに対応す
る個人1(個人 2)の b と c に関する選好順序も b 1 c ( c 2 b )である。
「選好のプロファイル(1, 2)」
したがって、普遍性の条件(1)と独立性の条件(3)から、
と「選好のプロファイル(1, 5)」に対応する社会的選好順序は、両方ともに、
b c 、 b c 、あるいは b ~ c
のうちのどれか1つの関係が成立している必要がある。
「選好のプロファイル(1, 5)」
「選好のプロファイル(1, 2)」
表 6-2
1
2
a 2 b
1
a 1 b
b 1 c
2
3
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
a 2 c
c 2 b
ab
ac
5
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
b 2 a
a 2 c
4
c 2 a
b 2 c
bc
ab
bc
ab
bc
ab
ab
ac
bc
ab
bc
bc
ab
bc
ac
ac
bc
bc
ab
ac
ac
bc
bc
ab
ac
c 1 b
ac
ab
ac
6
ac
bc
ab
b 1 a
c 2 b
ac
ac
bc
ab
b 2 a
ab
ab
ac
a 2 b
c 2 a
bc
bc
ac
6
ac
ab
ac
5
ab
bc
bc
4
3
C1 、 C1 、あるいは C1 ~
普遍性の条件(1)と独立性の条件(3)
表 6-2
1
2
3
a 1 b
a 1 c
b 1 c
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
1
2
3
a 2 b
a 2 b
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bC1c
ab
ac
bc
b 2 a
a 2 c
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
ac
bc
4
5
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
5
6
b 2 a
c 2 a
b 2 c
a 2 b
c 2 a
c 2 b
ab
bc
bc
bc
ab
bc
ab
bc
ab
ab
ac
bc
ab
bc
bc
ab
bc
ac
ac
bc
bc
ab
ac
ac
bc
bc
ab
ac
c 1 b
ac
ab
ac
6
ac
bc
ab
b 1 a
bC1c
ab
ac
ac
bc
ab
c 2 b
ac
ab
ac
4
表 6-3 はこのような要請を全てまとめて記したものである。たとえば、
「選好のプロファイ
ル(1, 2)」と「選好のプロファイル(1, 5)」に対応する社会的選好順序はどちらも bC1c とい
う関係を満たす必要がる。すなわち、
C1 、 C1 、あるいは C1 ~
のうちのどれか1つが成立する必要がある。
普遍性の条件(1)と独立性の条件(3)
表 6-3
1
2
a 2 b
a 1 b
1
b 1 c
2
a 1 c
c 1 b
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
bC2 c
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bC1c
ab
ac
bc
3
b 2 a
a 2 c
aA1b
ac
bc
aA1b
ac
bC2 c
4
c 2 a
b 2 c
aA1b
aB1c
bc
aA1b
aB1c
bC2 c
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
aB1c
bC1c
ab
aB1c
bc
c 2 b
aA1b
aB1c
bC1c
aA1b
aB1c
bc
(問題 6-8)条件(1)、(2)、(3)を満たすためには、少なくとも社会的選好順序が Ai 、Bi 、Ci
を用いて表 6-3 のように表される必要があることを説明しなさい( i 1, 2 )
。
表 6-3
1
2
a 2 b
a 1 b
1
b 1 c
2
3
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
bC2 c
aA2 b
ac
bc
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bC1c
ab
ac
bc
aA2 b
ac
bC1c
3
b 2 a
a 2 c
aA1b
ac
bc
aA1b
ac
bC2 c
ab
ac
bc
4
c 2 a
b 2 c
aA1b
aB1c
bc
aA1b
aB1c
bC2 c
ab
aB1c
bc
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
aB1c
bC1c
ab
aB1c
bc
aA2 b
aB1c
bC1c
c 2 b
aA1b
aB1c
bC1c
aA1b
aB1c
bc
ab
aB1c
bC1c
普遍性の条件(1)と独立性の条件(3)
表 6-3
1
2
a 2 b
1
a 1 b
b 1 c
2
3
4
5
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
b 1 a
6
c 1 b
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
bC2 c
aA2 b
ac
bc
aA2 b
aB2 c
bc
ab
aB2 c
bC2 c
aA2 b
aB2 c
bC2 c
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bC1c
ab
ac
bc
aA2 b
ac
bC1c
aA2 b
aB2 c
bC1c
ab
aB2 c
bc
aA2 b
aB2 c
bc
3
b 2 a
a 2 c
aA1b
ac
bc
aA1b
ac
bC2 c
ab
ac
bc
ab
aB2 c
bc
aA1b
aB2 c
bC2 c
ab
aB2 c
bC2 c
4
c 2 a
b 2 c
aA1b
aB1c
bc
aA1b
aB1c
bC2 c
ab
aB1c
bc
ab
ac
bc
aA1b
ac
bC2 c
ab
ac
bC2 c
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
aB1c
bC1c
ab
aB1c
bc
aA2 b
aB1c
bC1c
aA2 b
ac
bC1c
ab
ac
bc
aA2 b
ac
bc
c 2 b
aA1b
aB1c
bC1c
aA1b
aB1c
bc
ab
aB1c
bC1c
ab
ac
bC1c
aA1b
ac
bc
ab
ac
bc
6.4 補論:アローの一般(不)可能性定理の証明
以上の準備のもとで、条件(1)、(2)、(3)を満たす社会的選択ルールで条件(4)を満たすルー
ルが存在するかどうかを検討しよう。
[1] C1 としよう。
⇒「選好のプロファイル(1, 5)」に対応する社会的選好順序は a b かつ b c なので
a c (つまり B1 )が成立する。
⇒「選好のプロファイル(2, 6)」 に対応する社会的選好順序は a c かつ b c だから
a b (つまり A1 )である。
⇒「選好のプロファイル(5, 4)」 に対応する社会的選好順序は a b かつ a c だから
b c (つまり C 2 )である。
⇒「選好のプロファイル(6, 3)」に対応する社会的選好順序は a b かつ b c だから
a c (つまり B2 )となる。
⇒「選好のプロファイル(4, 1)」に対応する社会的選好順序は a c かつ b c なので
a b (つまり A2 )が成立する。
⇒全ての選好のプロファイルに対応する社会的選好順序が定まったことになる。
表 6-3 はこのような要請を全てまとめて記したものである。たとえば、
「選好のプロファイ
ル(1, 2)」と「選好のプロファイル(1, 5)」に対応する社会的選好順序はどちらも bC1c とい
う関係を満たす必要がる。すなわち、
C1 、 C1 、あるいは C1 ~
のうちのどれか1つが成立する必要がある。
表 6-3
1
2
a 2 b
a 1 b
1
b 1 c
2
a 1 c
c 1 b
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
bC2 c
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bC1c
ab
ac
bc
3
b 2 a
a 2 c
aA1b
ac
bc
aA1b
ac
bC2 c
4
c 2 a
b 2 c
aA1b
aB1c
bc
aA1b
aB1c
bC2 c
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
aB1c
bC1c
ab
aB1c
bc
c 2 b
aA1b
aB1c
bC1c
aA1b
aB1c
bc
以上の準備のもとで、条件(1)、(2)、(3)を満たす社会的選択ルールで条件(4)を満たすルー
ルが存在するかどうかを検討しよう。
[1] C1 としよう。
⇒「選好のプロファイル(1, 5)」に対応する社会的選好順序は a b かつ b c なので
a c (つまり B1 )が成立する。
⇒「選好のプロファイル(2, 6)」に対応する社会的選好順序は a c かつ b c だから
a b (つまり A1 )である。
⇒「選好のプロファイル(5, 4)」に対応する社会的選好順序は a b かつ a c だから
b c (つまり C 2 )である。
⇒「選好のプロファイル(6, 3)」に対応する社会的選好順序は a b かつ b c だから
a c (つまり B2 )となる。
⇒「選好のプロファイル(4, 1)」に対応する社会的選好順序は a c かつ b c なので
a b (つまり A2 )が成立する。
⇒全ての選好のプロファイルに対応する社会的選好順序が定まったことになる。
表 6-3 はこのような要請を全てまとめて記したものである。たとえば、
「選好のプロファイ
ル(1, 2)」と「選好のプロファイル(1, 5)」に対応する社会的選好順序はどちらも bC1c とい
う関係を満たす必要がる。すなわち、
C1 、 C1 、あるいは C1 ~
のうちのどれか1つが成立する必要がある。
表 6-3
1
2
a 2 b
a 1 b
1
b 1 c
2
a 1 c
c 1 b
個人1の選好順序に一致
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
bC2 c
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bC1c
ab
ac
bc
B1
3
4
b 2 a
a 2 c
aA1b
ac
bc
aA1b
ac
bC2 c
c 2 a
b 2 c
aA1b
aB1c
bc
aA1b
aB1c
bC2 c
ac
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
aB1c
bC1c
ab
aB1c
bc
c 2 b
aA1b
aB1c
bC1c
aA1b
aB1c
bc
abc
推移性
以上の準備のもとで、条件(1)、(2)、(3)を満たす社会的選択ルールで条件(4)を満たすルー
ルが存在するかどうかを検討しよう。
[1] C1 としよう。
⇒「選好のプロファイル(1, 5)」に対応する社会的選好順序は a b かつ b c なので
a c (つまり B1 )が成立する。
⇒「選好のプロファイル(2, 6)」に対応する社会的選好順序は a c かつ b c だから
a b (つまり A1 )である。
⇒「選好のプロファイル(5, 4)」に対応する社会的選好順序は a b かつ a c だから
b c (つまり C 2 )である。
⇒「選好のプロファイル(6, 3)」に対応する社会的選好順序は a b かつ b c だから
a c (つまり B2 )となる。
⇒「選好のプロファイル(4, 1)」に対応する社会的選好順序は a c かつ b c なので
a b (つまり A2 )が成立する。
⇒全ての選好のプロファイルに対応する社会的選好順序が定まったことになる。
全ての選好のプロファイルに対応する社会的選好順序はどれも個人 1 の選好順序に一致し
ているので、この社会的選択ルールのもとでは個人 1 が独裁者になっている。
[2] C1 としよう。このときは、[1]と同様にして個人 2 が独裁者であることを示せる。
[3] C1 ~ としよう。このとき、
「選好のプロファイル(4, 5)」で A2 であり、
「選好のプロ
ファイル(3, 2)」で A2 である。したがって、これらは独立性の条件と矛盾している。
[1]、[2]、[3]より、上記 4 つの条件を満たす社会的選択ルールは存在しない。
(問題 A)条件(1)を要請するプロファイルを、
「選好のプロファイル(m,1)」と「選好のプ
ロファイル(1,n)」だけに制限したとしよう( m, n 1,,6 )
。そのとき、条件(2)、
(3)、(4)を満たす社会的選択ルールを求めなさい。
表 6-3
1
2
a 2 b
1
a 1 b
b 1 c
2
3
4
5
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
b 1 a
6
c 1 b
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
bC2 c
aA2 b
ac
bc
aA2 b
aB2 c
bc
ab
aB2 c
bC2 c
aA2 b
aB2 c
bC2 c
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bC1c
ab
ac
bc
aA2 b
ac
bC1c
aA2 b
aB2 c
bC1c
ab
aB2 c
bc
aA2 b
aB2 c
bc
3
b 2 a
a 2 c
aA1b
ac
bc
aA1b
ac
bC2 c
ab
ac
bc
ab
aB2 c
bc
aA1b
aB2 c
bC2 c
ab
aB2 c
bC2 c
4
c 2 a
b 2 c
aA1b
aB1c
bc
aA1b
aB1c
bC2 c
ab
aB1c
bc
ab
ac
bc
aA1b
ac
bC2 c
ab
ac
bC2 c
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
aB1c
bC1c
ab
aB1c
bc
aA2 b
aB1c
bC1c
aA2 b
ac
bC1c
ab
ac
bc
aA2 b
ac
bc
c 2 b
aA1b
aB1c
bC1c
aA1b
aB1c
bc
ab
aB1c
bC1c
ab
ac
bC1c
aA1b
ac
bc
ab
ac
bc
表 6-3
1
2
a 2 b
a 1 b
1
b 1 c
2
3
4
5
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
b 1 a
6
c 1 b
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
bC2 c
aA2 b
ac
bc
aA2 b
aB2 c
bc
ab
aB2 c
bC2 c
aA2 b
aB2 c
bC2 c
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bC1c
3
b 2 a
a 2 c
aA1b
ac
bc
4
c 2 a
b 2 c
aA1b
aB1c
bc
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
aB1c
bC1c
c 2 b
aA1b
aB1c
bC1c
表 6-3
1
2
a 2 b
a 1 b
1
b 1 c
2
3
4
5
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
b 1 a
6
c 1 b
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
bc
ab
ac
bc
ab
ac
bc
ab
ac
bc
ab
ac
bc
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bc
3
b 2 a
a 2 c
ab
ac
bc
4
c 2 a
b 2 c
ab
ac
bc
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
ac
bc
c 2 b
ab
ac
bc
<補足:「多数決関係 M による社会的選択ルール」について>
「多数決投票均衡」とは異なる概念であることに注意
x y
xy
x~ y
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
x i y である投票者の人数のほうが y i x である投票者の人数よりも多い。
yMx ではない。
x i y である投票者の人数のほうが y i x である投票者の人数よりも少ない。
xMy ではない。
x i y である投票者の人数と y i x である投票者の人数が等しい。
xMy かつ yMx である。
「選好のプロファイル(1,4)」に対応する社会的選好順序が定まらない。
1
2
3
a 2 b
1
a 1 b
b 1 c
b 2 c
ab
ac
bc
a 2 c
c 2 b
ab
ac
bC1c
a ~ b&a ~ c
b 2 a
a 2 c
aA1b
ac
bc
「推移性」
4
c 2 a
b 2 c
aA1b
aB1c
bc
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
aB1c
bC1c
「矛盾」
b~c
c 2 b
aA1b
aB1c
bC1c
表 6-3
1
2
a 2 b
1
a 1 b
b 1 c
2
3
4
5
a 1 c
c 1 b
b 1 a
a 1 c
c 1 a
b 1 c
a 1 b
c 1 a
b 1 a
6
c 1 b
b 2 c
ab
ac
bc
ab
ac
bc
a~b
ac
bc
a~b
a~c
bc
ab
a~c
b~c
a~b
a~c
b~c
a 2 c
c 2 b
ab
ac
b~c
ab
ac
bc
a~b
ac
b~c
a~b
a~c
b~c
ab
a~c
bc
a~b
a~c
bc
3
b 2 a
a 2 c
a~b
ac
bc
a~b
ac
b~c
ab
ac
bc
ab
a~c
bc
a~b
a~c
b~c
ab
a~c
b~c
4
c 2 a
b 2 c
a~b
a~c
bc
a~b
a~c
b~c
ab
a~c
bc
ab
ac
bc
a~b
ac
b~c
ab
ac
b~c
5
6
a 2 b
c 2 a
b 2 a
ab
a~c
b~c
ab
a~c
bc
a~b
a~c
b~c
a~b
ac
b~c
ab
ac
bc
a~b
ac
bc
c 2 b
a~b
a~c
b~c
a~b
a~c
bc
ab
a~c
b~c
ab
ac
b~c
a~b
ac
bc
ab
ac
bc
「多数決関係Mによ
る社会的選好順序」
が定まらない選好の
プロファイル
「多数決投票均衡」
は全ての選好のプ
ロファイルのもとで
常に存在する。
評価する選択肢が 2 つだけのとき、
「多数決関係 M による社会的選択ルール」
は条件(1) 、(2)、(3)、(4)を全て満たすことができる。
表 6-4
1
2
a 2 b
b 2 a
1
a 1 b
ab
a~b
2
b 1 a
a~b
ab
6.1 (多数決)投票のパラドックス
「
政「
公
治共
経選
済択
学論
」」
「(多数決)投票均衡」は、全ての選好のプロファイルに対して、常に存在
するわけではない。
投票均衡=どの選択肢にも「負けない」選択肢を決定
6.2 単峰性と多数決投票均衡
「投票均衡」は、単峰性を満たす選好のプロファイルに対しては、常に存在
する。
6.3 アローの一般(不)可能性定理
「
厚「
社
生会
経選
済択
学論
」」
「普遍性」、 「独立性」、「パレート基準」、「非独裁性」を全て満たす「社会
的選択ルール」は存在しない。
社会的選択ルール
=それぞれの選好のプロファイルに社会的選好順序を対応させるルール
社会的選好順序
=全ての評価対象とする選択肢に関する(推移性を満たす)社会的選好順序
「社会的選択ルール」 に対する「普遍性」と「推移性」の要請は強過ぎ?