Transcript ビタミン A
ビタミン
とは
ビタミンの供給と排泄
ビタミン A
脳圧亢進
骨粗鬆症
ビタミン D
食欲不振
石灰化
ビタミン vitamin
1)三大栄養素(糖質,脂質,タンパク質),無機質とともに必須の栄養素
2)微量で生理作用を示す有機化合物であり,体内では合成されない
(トリプトファンからのニコチン酸,コレステロールからのビタミンDを除く)
3)ビタミン K, B2, B6, B12,H (ビオチン),葉酸は,腸内細菌により作られる.
菌叢が未熟な新生児期や抗生物質の長期投与期には,ビタミン欠乏
症を起こしやすい
4)ビタミン B群は,補酵素として働き,一部は情報伝達物質である
腸内細
ビタミンの
種類と作用
ビタミンの種類
脂溶性ビタミン
ビタミンA
ビタミンD
ビタミンE
ビタミンK
ビタミン
ビタミンB群
水溶性ビタミン
ビタミンC
ビタミンB1
ビタミンB2
ビタミンB6
ビタミンB12
ナイアシン
パントテン酸
ビオチン
葉酸
脂溶性
ビタミン
脂溶性ビタミン fat-soluble vitamin
補酵素(ビタミンB群)とは関係しない,独自の生理作用を持つ
脂溶性ビタミン
ビタミンA
ビタミンD
ビタミンE
ビタミンK
ビタミン
ビタミンB群
水溶性ビタミン
ビタミンC
ビタミンB1
ビタミンB2
ビタミンB6
ビタミンB12
ナイアシン
パントテン酸
ビオチン
葉酸
ビタミン A
ビタミン A
retinol
成長因子
・網膜 retina にあるアルコールの意
・淡黄色を呈し,紫外線により破壊される
・ビタミン A 欠乏症として,夜盲症がある
*成人1日あたりの必要量
ビタミン A
ビタミン A 全てをさしてレチノイド retinoidという
ビタミン A は,動物性食品の他,緑黄色野菜に含まれるプロビタミン A(ビタミン A前駆体)とし
ても供給される.
プロビタミン Aには,α- カロチン, β- カロチン, γ- カロチン,
クリプトキサンチンがあり,これらが体内で切断されてビタミン Aを生じる
網膜における視覚調節
視細胞
視覚
桿体
暗所視力,無色
錐体
明所視力,色覚・視力
光受容器
補酵素
細胞数/網膜
ロドプシン(視紅)
11-cis-レチノール
300万個
光受容器(青色)
11-cis-レチノール
光受容器(緑色)
11-cis-レチノール
光受容器(赤色)
11-cis-レチノール
1億個
視覚
暗所
cGMP
ナトリウムチャンネル
明所
cGMP (結合)
cGMP (減少)
開放
閉鎖
膜電位(1mV)
発生
桿体細胞
rhodopsin
視紅
ビタミン Aの作用
ロドプシン(視紅)は,オプシンopsinというタンパク質部分と補酵素の
11-cis-レチノールから構成されている
11-cis-レチノールの前駆体は,all trans-レチノール(ビタミン A)であり,
哺乳類は体内合成ができない
視細胞
桿体細胞の興奮
all trans-レチノール(活性化ロドプシン)
色素上皮細胞
ビタミンA 欠乏症
1)夜盲症(暗順応障害)nyctalopia
2)糖タンパク質生合成障害
・眼球乾燥症
・角膜軟化症
・上皮組織の角質化
3)歯牙形成不全
ビタミンA 過剰症
1)体重減少
2)骨・関節痛
3)口唇のひび割れ
4)出血
急性
・脳圧亢進による頭痛,嘔吐,悪心,下痢,不安,傾眠
慢性
・四肢疼痛性腫脹
・食欲不振
・体重減少
・脱毛
・掻痒
・肝脾腫
・骨粗鬆症
・1日所要量の150倍までが安全限界量
ビタミンA 所要量と含む食品
所要量 1,000 µg
・男 600 µg (2,000IU)
・女 540 µg (1,800IU)
・β-カロチン1,800 µg (6,000 IU):腸からの吸収が1/3であるため
多く含む食品
・ビタミンA:
レバー,うなぎ,魚肝油,バター,全乳,卵黄
・カロテン:
にんじんなどの緑黄色野菜,黄色果実
ビタミン D
ビタミン D
calciferol
紫外線
プロビタミンD2/3
活性型
ビタミンD2/3
・紫外線によりプロビタミン D から活性化ビタミン Dが生成される
・ビタミン D 欠乏症として,くる病(小児),骨軟化症(成人)がある
*成人1日あたりの必要量
ビタミン D
ビタミン D は,カルシトールcalcitolであり,ビタミン D2とビタミン D3がある.
化学名
ビタミン D2: ergocalciferol(エルゴカルシフェロール )
ビタミン D3: cholecalciferol(コレカルシフェロール )
石灰化 calcificationの意
椎茸や
酵母
紫外線
エルゴステロール
(プロビタミンD2)
コレステロール
動物性食品
エルゴカルシフェロール
(ビタミンD2)
紫外線
7-デヒドロコレステロール
(プロビタミンD3)
コレカルシフェロール
(ビタミンD3)
活性型ビタミン D
OH
OH
25
25
肝臓
腎臓
1
コレカルシフェロール
(ビタミンD3)
活性型ビタミンD3
(25-ヒドロキシビタミンD3 )
OH
活性型ビタミンD3
(1,25-ジヒドロキシビタミンD3 )
活性型
エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)も同様の活性化を起こす
活性型ビタミンD
オステオカルシンなど
小腸上皮細胞
活性型ビタミンDは,粘膜上皮細胞,尿細管上皮,骨芽細胞,破骨細胞などの細胞内レ
セプターと結合し,カルシウム代謝に関与するタンパク質合成を促進する
ビタミン D 欠乏症
骨へのCa, Pの沈着不全
1)くる病
rachitis
・小児
・日光(紫外線)に当たらないと,プロビタミン D から活性化の
ビタミン Dが生成されない
・テタニー,発育障害,不機嫌,食欲不振,睡眠障害,下痢
・小児
2)骨軟化症
・成人,老人
osteomalacia
ビタミンD 依存症
1)染色体劣性遺伝 ビタミンD依存性くる病 タイプ I
・腎臓の1α-水酸化酵素の障害
・活性型ビタミンD剤投与のより治療
2)染色体劣性遺伝 ビタミンD依存性くる病 タイプ II
・標的組織の1,25-(OH)2ビタミンDレセプターの先天的欠損
・活性型ビタミンD剤投与は無効
ビタミンD 過剰症
1)骨の脱灰
2)血管や腎臓へのカルシウムの沈着
3)尿路結石
急性
・食欲不振,体重減少,吐乳,嘔吐,不機嫌,脱毛,
微熱,筋肉痛,尿意頻繁
慢性
・骨端の過度の石灰化
・腎臓,心臓,平滑筋の石灰沈着
・1日に10,000 IU以上の活性型ビタミンDの連用は過剰症を招く
ビタミン D 所要量と含む食品
所要量 7.5 µg
・男 2.5 µg (100 IU)
・女 2.5 µg (100 IU)
・乳幼児 10 µg (400 IU)
多く含む食品
・魚肝油,卵黄,マグロ脂身,かつお,うなぎ,干し椎茸,魚の肝油
ビタミン E
ビタミン E
tocopherol
クロマン環
とはメチル基
を持つもの
食物油
・トコフェロールとその近縁物質の総称で,クロマン環を持つ
・toco 分娩,phero 力を与える,ol アルコールの意味
・不飽和脂肪酸やビタミンA, Dの酸化防止,フリーラジカル消去作用
*成人1日あたりの必要量
ビタミン E
α-tocopherol(生体内の90%を占める)
β-tocopherol
γ-tocopherol
ビタミン E
δ-tocopherol
α-tocotrienol
β-tocotrienol
γ-tocotrienol
δ-tocotrienol
α-トコフェロール
ビタミン E
ビタミン Eの生理作用は,抗酸化作用である
Hypoxanthine
Xanthine
Fe3+, Cu2+
O2
e-
O2・superoxide
O2・-
e-
H2O2
hydrogen peroxide
superoxide dismutase
O2
e-
・OH
e-
H2O
hydroxy radical
glutathione peroxidase
catalase
O2
ビタミンEとがん化学予防
ビタミン E 欠乏症
ビタミン E 欠乏性神経・筋障害
・未熟児の貧血,血小板増多,浮腫,湿疹
・無βリポタンパク血症,胆汁うっ血を伴う脂肪吸収障害
・腱反射消失,歩行失調,位置感覚喪失,振動感喪失,触覚(痛覚)消失,
眼筋麻痺,筋力低下,網膜症
・不妊
・筋萎縮
・溶血
ビタミン E 所要量と含む食品
所要量
・男 10 mg
・女 8 mg
多く含む食品
・ひまわり油,アーモンド(乾燥),綿実油,小麦胚芽,米ぬか油,
なたね油
ビタミン K
ビタミン K
・血液凝固 Koagulation(独)に由来する脂溶性ビタミン
・血栓症治療の一つとして,ビタミン K アンタゴニストを投与する
・腸内細菌により合成される
*成人1日あたりの必要量
ビタミン K
血液凝固に関連するカルボキシラーゼ(グルタミン酸残基を
γ-カルボキシグルタミン酸残基に変換)の補因子として機能する
ビタミンK1(フィロキノン phylloquinone):緑黄色野菜
ビタミン K
葉
ビタミンK2 (メナキノン menaquinone):腸内細菌の産生
ナフトキノン骨格
ガラス,血小板膜
コラーゲンなど
血液凝固の
カスケード反応
血友病では
遺伝的に
欠損している
ビタミンK
プロテアーゼ
不溶性
繊維タンパク質
前駆体タンパク質のプロセッシングにビタミンKが必要
ビタミン K
ビタミン K は,血液凝固因子に,Ca2+結合箇所としてのγ-カルボキシグルタミン酸残
基を形成するための補酵素である
Ca2+結合
を介して
血小板の
活性化
抗凝固剤のワルファリンは,
ビタミン Kと構造が似て
おり,拮抗阻害を起こす
プロトロンビン前駆体
プロトロンビン
ビタミン K
ビタミン K は,骨中のオステオカルシン osteocalcinという骨形成に関与するタンパク質
にγ-カルボキシグルタミン酸残基を形成するために必要である.
ビタミン K は骨形成に必須であり,骨粗鬆症の治療薬として用いられる
ビタミン K 欠乏症
・腸内細菌叢の定着していない新生児や抗生物質連用者で欠乏を起こし易い
・ビタミンKの吸収には,胆汁を必要とすることから,胆道閉鎖,肝不全, 吸収不
全症候群でも欠乏をきたす
・母乳に少ないため,乳児ビタミンK欠乏性出血症になりやすい
・出血傾向,血液凝固時間延長
突発性ビタミン K 欠乏症
・頭蓋内出血
ビタミン K 過剰症
・新生児に過剰に与えると,溶血性貧血,高ビリルビン血症,核黄疸を
生じる
水溶性ビタミン water-soluble vitamin
ビタミン B 群は,主に補酵素として働く
脂溶性ビタミン
ビタミンA
ビタミンD
ビタミンE
ビタミンK
ビタミン
ビタミンB群
水溶性ビタミン
ビタミンC
ビタミンB1
ビタミンB2
ビタミンB6
ビタミンB12
ナイアシン
パントテン酸
ビオチン
葉酸
ビタミン K の所要量と含む食品
所要量
・男 65 µg
・女 55 µg
多く含む食品
ビタミンK1
・緑黄野菜,マーガリン,植物油,豆類(きな粉,みそ),海草類,
魚介類(さば,あわび,さわら)
ビタミンK2
・納豆,肉類,青のり,卵,乳製品
ビタミン B 群
1)ビタミンB群の属するビタミンは,補酵素としての生理作用を持つ
2)酵素は,単独で機能を果たせず,金属イオンや低分子有機化合物と
合して機能を補強している.これらの分子を補酵素と呼ぶ
3)補酵素(coenzyme)の多くは,ビタミンである
4)補酵素を必要としない酵素として,ウレアーゼ,トリプシン,
プシンなどがある
キモトリ
結
ビタミン B 群
酵素と補酵素
・酵素タンパク質を構成するアミノ酸側鎖には求電性のものはなく,
タンパク質のみで触媒できる反応には限界がある.そこで,
非タンパク質性の補因子を含む酵素を進化の過程で獲得した.
これを補酵素もしくは補欠分子族とよぶ.
・タンパク質部分をアポ酵素,補因子が結合した活性型をホロ酵素とよぶ
金属酵素(1)
金属
鉄
亜鉛
酵素
機能
フェレドキシン
システイン残基の活性中心,酸化還元因子
ヘモグロビン
ヘムを持つ酸素運搬タンパク質
ミオグロビン
筋肉にある酸素貯蔵タンパク質
トランスフェリン
システイン残基を使う鉄輸送タンパク質
フェリチン
鉄イオン貯蔵タンパク質
シトクローム
プロトヘム含有タンパク質
カタラーゼ
抗酸化酵素
ペルオキシダーゼ
抗酸化酵素
アルコール脱水素酵素
エタノールを酸化してアセトアルデヒドへ
炭酸デヒドロラクターゼ
炭酸ガスの水和と脱水和反応
カルボキシペプチダーゼ
タンパク質のC末端からの加水分解
金属酵素(2)
金属
銅
カルシウム
マンガン
酵素
機能
ラッカーゼ
漆を酸化させ,黒色変化と強度
プラストシアニン
植物の銅タンパク質
ヘモシアニン
節足・軟体動物の酸素運搬タンパク質
Cu,Zn-SOD
抗酸化酵素
カルモジュリン
複数のタンパク質に結合して活性化させる
サーモリシン
熱耐性のタンパク質分解酵素
Mn-SOD
抗酸化酵素
ビタミン B1
ビタミン B1 thiamin
・ビタミンB1は,糖代謝に関わる補酵素
・ビタミンB1欠乏症は,脚気
*成人1日あたりの必要量
ビタミン B1(チアミン)
化学物質名チアミン thiamineは,体内でチアミンピロリン酸
(チアミン二リン酸) となり,糖代謝酵素(トランスケトラーゼ,
ピルビン酸脱水素酵素)の補酵素として働く
ピルビン酸 → アセチルCoA
ホスホエノールピルビン酸
カルボキシナーゼ
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ
複合体
脱水素反応
脱炭酸反応
オキサロ酢酸
リンゴ酸
膜輸送系
NADH: nicotinamide adenine dinucleotide, reduced
FAD: flavin adenine dinucleotide
CoA: coenzyme A
補酵素:
チアミンピロリン酸・
FAD・リポ酸
イソクエン酸 → オキサロコハク酸 → 2-オキソグルタル酸
補酵素:
チアミンピロリン酸・
FAD・リポ酸
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ
(酸化的脱炭酸)
脱水素反応
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ
(酸化的脱炭酸)
脱炭酸反応
NAD+: nicotinamide adenine dinucleotide
NADH: nicotinamide adenine dinucleotide, reduced
FAD: flavin adenine dinucleotide
ビタミン B1欠乏症
脚気
beriberi
・下肢の震えによる歩行障害を特徴とする多発神経炎.
・下肢の知覚麻痺や知覚異常は,次第に上部へ移行する.
・眼球運動麻痺,歩行運動失調,神経障害が主要な症状
・疲労感,食欲不振,便秘,腱反射消失,浮腫,循環障害,知覚鈍麻,
心肥大
・米を主食とする国に多発した
ビタミン B1の所要量と含む食品
所要量
・男 1.1 mg
・女 0.8 mg
多く含む食品
・米ぬか,乾燥酵母,小麦胚芽,豚肉,のり,うなぎ,ごま,落花生
ビタミン B2
リボフラビン,葉酸,
ニコチン酸,パントテン酸
リボフラビン
ビタミン B2 riboflavin
・ビタミンB2は,リボフラビン,葉酸,ニコチン酸,パントテン酸の総称
・熱にやや強いが,紫外線により分解する
・酸化還元のフラビン酵素の補酵素
*成人1日あたりの必要量
ビタミン B2 (リボフラビン)
3個の環を持ち直鎖状のリボースが結合しているものを
リボフラビン riboflabinという.橙黄色を呈する.
リボース
フラビン
ビタミン B2は,フラビンアデニンジヌクレオチド flavin adenine dinucleotide (FAD)およびフラビンモ
ノヌクレオチド flavin mononucleotide (FMN)に変化し,酸化還元酵素(キサンチン酸化酵素,L-ア
ミノ酸酸化酵素)の補酵素として働く
フラビン
脱水素反応
FMN
FAD
コハク酸デヒドロゲナーゼ(酸化)
FMN: Flavin Mono Nucleotide
FAD: Flavin Adenine Dinucleotide
FADH2: Flavin Adenine Dinucleotide, reduced
ビタミンB2 (リボフラビン)欠乏症
・口唇びらん・亀裂,口角炎,口内炎,舌炎,湿疹,脂漏性皮膚炎,
食欲不振,発育障害,角膜周辺の充血,角膜混濁,羞明,流涙,弱視
ビタミン B2の所要量と含む食品
所要量
・男 1.2 mg
・女 1.0 mg
多く含む食品
・やつめうなぎ,乾燥酵母,レバー,脱脂粉乳,卵,肉,魚,のり
葉酸
葉酸 folic acid
・葉酸の構造には,グルタミン酸が含まれている
・葉酸は,THFへ還元された後,C1代謝の補酵素として働く
・腸内細菌により合成される
・抗貧血作用,ほうれん草から抽出され,草 (folium)から命名
・葉酸欠乏症は巨赤芽球性貧血
*成人1日あたりの必要量
葉酸
葉酸の窒素原子N-5, N-10は,メチル基 (メチレン基,メテニル基,ホルムイムノ基,ホルミ
ル基) の受容体となり,基質にこれらの官能基を転移する
補酵素型がテトラヒドロ葉酸
5
10
葉酸
・葉酸の原料であるプリン塩基(アデニン,グアニン)
およびピリミジン塩基(の中のチミン)の合成に必要
還元型
葉酸
・テトラヒドロ葉酸は,細胞分裂の盛んな組織ほど多いことから,葉酸拮抗薬のメトトレ キセート
は,構造類似性を利用して葉酸をTHFに還元する酵素を 拮抗阻害してTHFの 生成を抑制する.
・リンパ性白血病,絨毛上皮がん,骨肉腫や 関節の細胞増殖が活発なリウマチなどの
治療薬として用いられる
・妊娠前からの葉酸投与は二分脊椎などの神経管異常の発生を抑制する
C1代謝
C1単位 (炭素1個のメチル基 -CH3, メチレン基 -CH2-, メテニル基 =CH-, ホルミル基 -CHO,
ホルムイムノ基 -CH=NHの)転移補酵素として葉酸は働き,核酸,アミノ酸代謝に作用する
葉酸欠乏症
巨赤芽球性貧血 megaloblastic anemia
・核酸合成障害のため,赤血球産生が低下し異常な赤血球前駆体が出現する
・心悸亢進,息切れ,易疲労性,めまい,舌炎,口角炎,鬱病
葉酸の所要量と含む食品
所要量
・男 200 µg
・女 200 µg (妊婦 400 µg,授乳期 280 µg)
多く含む食品
・ ほうれん草,レバー,大豆粉,ブロッコリー,落花生
ニコチン酸
ニコチン酸 nicotinic acid, niacin
・ニコチン酸とニコチンアミドは,一緒にしてナイアシンとよぶ
・ニコチン酸欠乏症は,ペラグラ (pellagra) [皮膚炎 (dermatitis),下痢 (diarrhea),
痴呆 (dementia)を3兆候 (3D)とする
・酸化還元酵素の補酵素
*成人1日あたりの必要量
ニコチン酸(ナイアシン)
ナイアシン(niacin)の化学名が,ニコチン酸. この補酵素型は,ニコチンアミドアデニン
ジヌクレオチド nicotinamide adenine dinucleotide (NAD)および
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 nicotinamide adenine dinucleotide
phosphate (NADP)である
酸化
ニコチン酸アミド
ニコチン酸
体内ではニコチン酸アミドとして存在し,ニコチンのような
神経作用はない
ニコチン
ニコチン酸(ナイアシン)
NAD,NADPHは,酸化還元酵素の補酵素や基質として働く.NADは,分解代謝(解糖系,TCA
回路,脂肪酸β酸化)に,NADPHは,生合成代謝(コレステロール,脂肪酸合成)として働く
ニコチン酸アミド
リボース
二リン酸
アデニン
リボース
リン酸になるとNADPHとなる
NAD: Nicotinamide Adenine Dinucleotide
NADPH: Nicotinamide Adenine Dinucleotide phosphate, reduced
ニコチン酸(ナイアシン)欠乏症
ペラグラ
pellagra
・皮膚炎 (dermatitis),下痢 (diarrhea),痴呆 (dementia)を3兆候
(3D)とする.
・良質タンパク質の摂取不足は欠乏をきたす
・食欲不振,腹痛,めまい,神経の不安,皮膚の浮腫,水疱,舌炎,知覚・
運動麻痺,痙攣など
・貧血,血漿タンパク質減少,ポルフィリン尿
ニコチン酸の所要量と含む食品
ナイアシンは体内で合成されるビタミンで,トリプトファンから肝臓で
作られる.食事中のナイアシンと,トリプトファンから作られる
ナイアシンはほぼ同量である
所要量
・男 17 mg
・女 13 mg
・トリプトファン60mgは,ニコチン酸1mgに相当する
多く含む食品
・米ぬか,乾燥酵母,魚(かつお),干し椎茸,落花生,レバー
パントテン酸
パントテン酸 panthothenic acid
・パントテン酸は,β-アラニンと2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸
(パントイン酸)からなる
・腸内細菌により合成される
・補酵素Aの構成成分で,脂質,糖質,アミノ酸代謝に必要
*成人1日あたりの必要量
パントテン酸
補酵素 A (CoA; coenzyme A, CoASH)の原料
-SHと酸の縮合反応
パントテン酸
酢酸
2-メルカプトシステアミン
チオエステル結合
アデノシン3’リン酸
アセチルCoA
クエン酸シンターゼ
(縮合反応)
パントテン酸欠乏症
・成長停止(エネルギー生成不全),皮膚・毛髪の障害,精神抑鬱,
末梢神経障害(痛覚過敏,失調性歩行障害),消化器障害,脂質代謝異常
パントテン酸の所要量と含む食品
所要量
・男 5 mg
・女 5 mg
多く含む食品
・動植物界に広く分布する.
・パントテンは,広汎に分布する酸の意味
ビタミン B6
ビタミンB6
pyridoxal, pyridoxine, pyridoxamine
・ビタミンB6は,ピリドキサール,ピリドキシン,ピリドキサミンの総称
・抗皮膚炎因子であり,腸内細菌により合成される
・C-4にアルデヒド基(-CHO)を持つ
*成人1日あたりの必要量
ビタミン B6(ピリドキサール)
・ピリドキサールリン酸は,ビタミンB6の補酵素型
・アミノ酸のアミノ基転移,ラセミ化(光学異性体),脱炭酸,側鎖の離脱・ 置換に関
わる補酵素
アミノ酸
シッフ塩基
ピリドキサール
ピリドキサールリン酸
ピリドキサールは,1級アミンとシッフ塩基を形成して,
アミノ酸活性化に関わる補酵素の役割を果たす.
ビタミン B6 欠乏症
・皮膚炎
・痙攣,貧血,高コレステロール血症
・要求量の増加により,新生児や妊婦で起こることがある
・抗生物質,抗鬱剤,経口避妊薬によるビタミンB6欠乏
・抗結核薬(INH; イソニコチン酸ヒドラジド)による欠乏
ビタミン B6 依存症
・ビタミンB6依存性貧血,ビタミンB6依存性痙攣,シスタチオニン尿症,
キサンツレン酸尿症を含む
ビタミン B6の所要量と含む食品
所要量
・男 1.6 mg
・女 1.2 mg
多く含む食品
・魚(ひらめ,いわし,さけ),肉,くるみ,卵,大豆粉,レバー
ビタミン B12
ビタミンB12 cyanocobalamine
・微生物のみがビタミンB12をde novoに合成できる
・植物に存在しないため,菜食主義者に欠乏症がでる
・ビタミンB12欠乏症は悪性貧血
*成人1日あたりの必要量
ビタミン B12 (アデノシルコバラミン・メチルコバラミン)
ビタミン B12の化学物質名は,シアノコバラミン cyanocobalamineで,シアノ基(-CN)とコバルトを含
むことを意味する.赤色を呈し,小腸細菌によって合成される
アデノシルコバラミンは異性化・離脱・転移・還元反応に,メチルコバラミンはC1代謝・メチル基転
移反応に関与する
メチルコバラミン
アデノシルコバラミン
ビタミン B12欠乏症
・ビタミンB12は野菜・果物に含まれないため菜食主義者に欠乏症が見られる
・ビタミンB12は主として回腸から吸収されるが,その吸収には胃粘膜で作られ胃腔 へ分
泌される内因子 intrinsic factorという糖タンパク質が,結合しビタミンB12 を分解から保護
する.そのため,胃全摘者はビタミン B12を経口摂取しても吸収
されないので,注射で補給する必要がある
悪性貧血
・ビタミンB12欠乏症あるいはビタミンB12吸収障害は,内因子の欠損に
よる悪性貧血の原因となる.これは知覚異常としびれ感を伴う
・巨赤芽球性貧血,大赤血球性貧血
メチルマロン酸血症
ホモシスチン尿症
・ビタミンB12が補酵素として関与する代謝障害
・貧血,体重減少,知能低下
トランスコバラミン欠乏症
・ビタミンB12結合タンパク質の異常
ビタミン B12の所要量と含む食品
所要量
・男 2.4 µg
・女 2.4 µg
多く含む食品
・
ビタミン C
vitamin C, ascorbic acid
ビタミン C は,抗酸化作用・水酸化反応を司る
脂溶性ビタミン
ビタミンA
ビタミンD
ビタミンE
ビタミンK
ビタミン
ビタミンB群
水溶性ビタミン
ビタミンC
ビタミンB1
ビタミンB2
ビタミンB6
ビタミンB12
ナイアシン
パントテン酸
ビオチン
葉酸
ビタミン C
ビタミン C ascorbic acid
還元剤
・L-アスコルビン酸(2-オキソグロノラクトン)で水酸化反応に関与する
・グルコースからアスコルビン酸に変えるL-グロノラクトンオキシダーゼを
欠くヒト,サル,モルモットのみがビタミン C 要求性
・壊血病 scurvy (scorbutus)を防ぐことから命名された
・ビタミン C 欠乏症は,壊血病
*成人1日あたりの必要量
ビタミン C
アスコルビン酸
(還元型)
デヒドロアスコルビン酸
(酸化型)
・抗酸化力(還元力)を持つビタミン
・水酸化反応:
コラーゲン前駆体のプロリン残基とリジン残基の水酸化反応に必要
ステロイドホルモン,アドレナリン,ノルアドレナリンなどの生成時の電子供与体
・コラーゲン合成・保持
・チロシンの分解
・カテコールアミンの合成
・胆汁酸合成
ビタミンC欠乏症
壊血症
・皮下出血,歯茎からの出血,歯の脱落(正常なコラーゲンができず,
支持組織が脆くなり,皮下出血を起こすため),関節腫脹,潰瘍形成,
支持組織の形成不全,易感染
ビタミン C の所要量と含む食品
所要量
・男 100 mg
・女 100 mg
多く含む食品
・新鮮な野菜,果物,レバー,緑茶(紅茶には含まれない)
ビオチン
(ビタミンH )
ビオチン biotin
・腸内細菌によって合成される
・トランスカルボキシラーゼ,脱炭酸酵素の補酵素
・卵白のアビジンと高い親和性
・酵母増殖因子(bios)から命名され,抗皮膚炎因子のビタミン H (Haut)と同一
*成人1日あたりの必要量
ビオチン
ビオチンbiotinは,脱炭酸あるいは炭酸固定化酵素の補酵素として働き,
脂質,糖代謝に関与する 腸内細菌により合成される
ATP
ADP
カルボニルリン酸
炭酸イオン
ビオチン
ビオチンに
二酸化炭素
が結合
(炭酸固定)
ビオチン
ビオチンは,カルボキシル基が酵素活性の中心にあるリジン残基のアミノ基にアミドの形で共有
結合している
ビオチン欠乏症
・湿疹,皮膚の乾屑,舌乳頭萎縮,食欲不振,貧血,倦怠,筋無力,
高コレステロール血症,成長遅延
・卵白に含まれる糖タンパク質のアビジン avidinは,ビオチンと強く
結合し不溶化し,ビタミンの吸収を妨げるので,生卵を多量にとると
欠乏症を起こす
先天性ビオチン依存性酵素欠損児
ビオチンの所要量と含む食品
所要量
・男 30 µg
・女 30 µg
多く含む食品
・食品に広く存在する