Transcript 中本 創
次世代X線天文衛星(NeXT)搭載用 X線CCD素子の開発 中本 創 目次 NeXT衛星について X線CCDの基礎 NチャンネルCCD素子(CCD NeXT2) PチャンネルCCDの開発 PチャンネルCCD素子(BI1-21-4K-2) の性能評価 まとめ 次世代X線天文衛星(NeXT) NeXT衛星は 2005年に打ち上げた「すざく」 に次ぐ日本6号目のX線天文衛星 NeXT衛星イメージ HXI : CdTeピクセル型検出器 SXS : マイクロカロリメーター 2種類のX線望遠鏡 4種類の検出器を搭載予定。 Takahashi et al. at SPIE (2006) SXT : 軟X線望遠鏡 (0.3 – 12 keV) SXI : X線CCD HXT : 硬X線望遠鏡 (0.2 – 80 keV) SGD : 軟ガンマ線検出器 各検出器のエネルギーレンジ (SXS) ©ISAS/JAXA Takahashi et al. at SPIE (2006) SXI : Soft X-ray Imager (X線CCD) SXIのハウジング フレキシブル ケーブル 熱浴 ペルチェ素子 プリアンプ CCD 読み出し X線CCD素子の仕様 (ベースライン案) 画素サイズ 24 x 24 mm2 CCDタイプ Nch 撮像領域 5 x 5 cm2 読み出し雑音 <5 eエネルギー分解能 <135 eV(@5.9 keV) 空乏層 77 mm X線入射方式 表面照射型 エネルギー範囲 0.3 – 12 keV X線CCDの原理 CCD内部のポテンシャル 電極の手前で電子を止める (電極によるlossをなくすため) =GND 電荷の転送方向 CCDの電荷転送の様子 左が3相クロック、右が2相クロック 電荷の転送 各ピクセルの電荷の流れ 1.縦方向に転送され、一行下の段に電荷が送られる。 2.最下段の横転送ラインにきた電荷が読み出し口から各pixelごとに読み出される 3.HOC領域まで一列全てが読み出されると、再び縦転送を行う。 4.この一連の流れをVOC領域まで全て読み出すまで行う。 表面照射型CCDと裏面照射型CCD 表面照射型CCD(FI;左)と 裏面照射型CCD(BI;右) 表面照射型 裏面照射型 : : 高エネルギーで低Back Ground 低エネルギーで高検出効率 CCDの性能評価 目標とする温度、読み出しの速度でいかに高性 能を出せるか(55Feを用いて測定) →いかにノイズを落とすことができるか、など その付近での最適な温度、周波数はいくらか →いかに効率よく電荷を転送できるか、など 素子の空乏層の厚さ、検出効率はどれほどか (109Cdを用いて測定) →いかに効率よくX線を検出できるか CCDの読み出し波形 正常なCCDからの波形 一周期 Reset Floating-level 積分 Signal-level 積分した領域の差を読み出し、信号の 電荷を決定する。 実際にオシロスコープで読み 出したCCDのoutput波形(青) と積分波形(赤) Gradeとは? CCDに発生した荷電粒子が X線起源のものであるかどうか を選定するもの 矢印のものがX線である ↑じゃあこれは…? 性能を上げるには? 性能を上げる ≒ 1.ノイズを落とす エネルギー分解能を改善する と考えてよい 各ノイズはそれぞれの領域を用いて決定 HOC領域 読み出し(横転送)ノイズ VOC領域 縦転送ノイズ Active領域 (実際に素子のPixelがあるエリア) 暗電流 性能を上げるには?2 読み出しノイズ gain[eV / ch] (HOCの標準偏差) Si電子の平均解離Energy(3.65eV ) 縦転送ノイズ (VOCのCenterChannel HOCのCenterChannel) gain[eV / ch] Si電子の平均解離Energy(3.65eV ) 暗電流 ( ActiveのCenterChannel VOCのCenterChannel) 露光時間 gain[eV / ch] Si電子の平均解離Energy(3.65eV ) これのばらつきを ダークノイズとよく言う 僕だ け? 性能を上げるには?3 エネルギー分解能に影響するもの ・X線の発生による電子などの統計的なゆらぎ(統計誤差) ・読み出しノイズ、暗電流など(系統誤差) エネルギー分解能 FWHM 2.35 入射Energy(eV ) FanoFactor 2 Si電子の平均解離Energy(3.65eV ) Fano Factorによってエネルギー分解能の限界が決まる Siの場合F(Fano Factor)=0.12 2 2 2 read outnoise dark 縦転送など 性能を上げるには?4 2.CTIの改善 CTI : Charge Transfer Inefficiency 電荷転送非効率 電荷がトラップされてしまい、本来の電荷 の量よりも少ない電荷が読み出される 電荷転送 ただし、いつまでもトラップされたままではな く、時間が経つと電荷は開放される 格子欠陥に電荷がない場合、また電荷 がトラップされる CTIが最も悪化…転送の時間と電荷が 開放されるまでの時間が重なったとき (1.155±0.010)x10-4 CTIの温度依存性 -70℃ RAWX CTI (1.36±0.09)x10-5 NeXT SXI の駆動温度 -140℃ 転送の周波数は71.4 kHz 温度によってCTIは大きく異なる RAWX エネルギー分解能の CTI依存性 CTI CCD NeXT2でのCTIの温度依存 この依存性は素子によって大きく異なる エネルギー分解能には CTIが寄与している このCTIの値を小さくすることで エネルギー分解能が改善される エネルギー分解能 空乏層の厚さを測定 コリメータについた109Cdを用いて測定 109CdからのX線 Ag-Ka Ag-Kb : : 22.16 keV 24.94 keV ←NeXT2に取り付けた109Cd 109Cdを照射したCCD 検出効率を求めることで、空乏層の厚さが分かる 検出効率 1 exp( 平均自由行程 Ag-Ka Ag-Kb : : d空乏層厚 ) d平均自由行程 1444.9 mm2 1966.2 mm2 Pch15-6-26の画像↓ 実際の素子の開発 CCD NeXT2 CCDの仕様 独立した素子が2個付いたもの 1画素 24μm×24μm 撮像領域 24mm×24mm 読み出し口の数 各2 N-ch CCD 24 mm 表面照射型 シリアルNo. 21-10B0KH-7,8 浜松ホトニクス社製 24 mm Active area プリアンプ基盤 55Feエネルギー分解能 測定結果 1ch 読み出し Binning 1x1 総露光時間 撮像枚数 積分時間(signalのみ) split threshold : : : : : -140℃ 縦転送速度 : 2.5kHz 読み出し周波数 : 37.9kHz : 132±3eV 6.04±0.03e- ノイズから予想されるエネルギー分解能 PV 1/-8 PH 10/-5 RG 1/-7 SG 12/-12 OG 4 RD 15 602[sec] OD 22 36[frame] 10.7[ms] 55Feのスペクトル(G0の 3σ み) 駆動時の温度 エネルギー分解能@5.9 keV 読み出しノイズ : 駆動電圧(単位:V) : 130eV P-ch CCDの開発 PチャンネルCCDの開発 動機 : 10 keV以上のエネルギーを持つX線に対する感度を上げたい → 空乏層を厚くとる必要あり これまでに用いられていたNチャンネルCCDではなく、PチャンネルCCDを開発している。 (国立天文台(可視光)と京大、阪大(X線)、浜松ホトニクスで共同開発) 『あすか』、『すざく』などのX線CCD NチャンネルCCD : 電子を転送 新たに開発したX線CCD PチャンネルCCD : ホールを転送 ウエハ : P型シリコン ウエハ : N型シリコン メジャーキャリア : ホール メジャーキャリア : 電子 (ホールに対し易動度3倍) 比抵抗 : 5 kΩ以上が 入手困難 比抵抗 : 10 kΩ以上が 入手可能 空乏層厚 : 70~100 mm 空乏層厚 : 200 mm d: ρ: μ: V: 空乏層厚 比抵抗 易動度 印加電圧 PチャンネルCCDは 高エネルギーX線に対して高感度 SXI : Soft X-ray Imager (X線CCD) SXIのハウジング フレキシブル ケーブル 熱浴 ペルチェ素子 プリアンプ CCD 読み出し X線CCD素子の仕様 (ゴール案) 画素サイズ 24 x 24 mm2 CCDタイプ Pch 撮像領域 5 x 5 cm2 読み出し雑音 <5 eエネルギー分解能 <135 eV(@5.9 keV) 空乏層 290 mm X線入射方式 裏面照射型 エネルギー範囲 0.3 – 30 keV これまでのPチャンネルCCDの開発実績 PチャンネルCCDで深さ290 mmの空乏層厚 を確認。 ウエハを削り込むことにより、Pチャンネル CCDの完全空乏化に成功。また、Pチャンネ ルCCDで従来のNチャンネルCCDとほぼ同じ エネルギー分解能を達成。 12mm 4.8 mm 画素サイズ 画素数 ウエハ厚 空乏層厚 X線照射方式 読み出し雑音 エネルギー分解能 24 x 24 mm2 512 x 512 画素 600 mm 290 mm 表面照射型 14 e180 eV 画素サイズ 画素数 ウエハ厚 空乏層厚 X線照射方式 読み出し雑音 エネルギー分解能 14.5 x 15 mm2 328 x 320画素 200 mm 200 mm 表面照射型 7 e143 eV 新たに開発した素子の仕様 これまでの基礎開発を基に大面積のPチャンネルCCDを開発。 画素サイズ 画素数 読み出し口 ウエハ厚 空乏層厚 3.1 cm 撮像領域 蓄積領域 X線入射方式 15 x 15 mm2 2048 x 4176 画素 4個 200 mm 200 mm 裏面照射型 ※青い部分はARコーティング バックバイアス フレキシブル ケーブル 右図のように 真空槽内部にCCDを取り付けて測定 プリアンプ基板 印加可能 CCDの撮像領域 イベントの広がりとその対策 Binning なし 1有効画素 : 0.09% 2x2画素以内のX線 イベント : 5.4% その他 : 94.5% Binning 4x4 1有効画素 : 19.9% Binning 複数の画素を一つに まとめて読み出す動作 2x2画素以内のX線 イベント : 77.4% その他 : 2.7%Binning4x4で測定を行った バックバイアス 逆極性の電圧(バックバイアス) バックバイアス 電極の逆方向から印加する電圧 ・電子雲が空乏層を移動する時間を短縮 ・電子雲の拡散を抑制 バックバイアスの電圧値を上げると 広がったイベントが減少 空乏層 絶縁層 電極 電圧 Ratio Ratio バックバイアスの値を15~35[V](CCDの正常動作範囲)で変化 2x2画素に広がった イベント (Grade 6) 単画素イベント (Grade 0) Back Bias (V) Back Bias (V) P-ch 2K4K CCDの性能評価結果 動作温度 : -70 ℃ X線スペクトル(1有効画素イベントのみ使用) 読み出し速度 : 30 kHz Mn Ka 55Fe スペクトル Mn Kb バックバイアス : 35 V Counts 1ch 読み出し Binning 4x4 総露光時間 : 893 sec 撮像枚数 : 367 frame Energy (keV) 読み出し雑音 : 5.38±0.13eエネルギー分解能 (5.9 keV) : 139±2 eV