医療情報管理への信託法的発想の導入 2011年7月9日 医療

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医療情報管理への信託法的発想の導入
2011年7月9日
医療情報学会北海道支部会講演会
寺本振透(Teramoto, Shinto)*
* 九州大学大学院 法学研究院 教授、弁護士
[email protected]
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発表者の利害関係の開示
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主たる所属組織以外の、本件発表に関係する事業を行う研究資金提供者:株式会社
ジェイマックシステム(札幌)、株式会社三菱総合研究所(東京)
本件発表に関係する事業を行う組織における兼務:西村あさひ法律事務所(東京)
顧問
2
bona fides - 相互の信頼こそが法律関係の基本
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もちろん、全面的かつ無限定な信頼ではない。
検証にもとづいた、機能的な信頼である。
3
宝物を裏庭に埋めて隠すのか?
4
信頼できる人に託すのか?
5
以前からの主張=震災で再認識されたこと
6
医療は、患者を含む全員で支えるシステ
ム
医療
医師
ナース
国
医療機
関
技師
自治体
NGO
7
患者
企業
潜在的患
者
命と健康の価値は、情報よりも格段に重い
8
患者は移動する
9
医療従事者も移動する
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医療機関の命は有限
Mortal Hospital
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ライフサイクルにわたる医療情報の保持
を
一個の医療機関だけで行うことは
無理、無駄、無意味のおそれあり。
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震災で、
新たに、認識されたこと
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医療クラウドの実現は、待ったなし
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石巻市立病院の電子カルテ情報は、山
形市立病院済生館と共有していたため
に無事、との報道(2011年5月12日日
経夕刊9面)
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「究極の個人情報」であるカルテが津
波で流されて野ざらし、との報道
(2011年5月8日河北新報、
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys10
62/20110508_06.htm)
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国境を超える医療クラウドの必要性
•
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一国内だけでデータを保持することで、
十分に安全といえるのか?外国の政府機
関による介入の危険性と、データ保持の
必要性とのバランスをどうとるか?
国境を超える相互医療援助に対応できる
医療クラウドとは?
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医療情報の管理に新たな法理を
- 信託法的発想の導入 -
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その財は、管理者と運命をともにはしない。
•
•
信託の受託者の債権者は、信託財産にかかっていく
ことはできない。
特に、信託法22条、23条、25条
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その財は、管理者の利益のためにあるのではない。
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信託の受託者は、信託財産を自己の財産と分別し、
受益者の利益のために管理および運用しなければな
らない。
信託法34条
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管理者が機能不全に陥ったときは、代わりの管理者を用意する。
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信託の受託者を交替させる手続が法律によって用意
されている。
信託法56-78条
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信託法は、情報そのものの信託を想定してこなかったよう
にも見える。しかし、信託法の考え方は、応用に値する。
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信託の定義
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信託法第二条 この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法の
いずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除
く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的
の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
2 この法律において「信託行為」とは、次の各号に掲げる信託の区分に
応じ、当該各号に定めるものをいう。
一
次条第一号に掲げる方法による信託 同号の信託契約
二
次条第二号に掲げる方法による信託 同号の遺言
三 次条第三号に掲げる方法による信託 同号の書面又は電磁的記録(同
号に規定する電磁的記録をいう。)によってする意思表示
3 この法律において「信託財産」とは、受託者に属する財産であって、
信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう。
<<以下略>>
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参考文献
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木庭顕『ローマ法案内 - 現代の法律家のために』(羽鳥書店、2010年)
寺本振透編『解説 新信託法』(弘文堂、2007年)
第一東京弁護士会司法研究委員会(編集代表:寺本振透)『社会インフラとしての
新しい信託』(弘文堂、2010年)
西村あさひ法律事務所(編集代表:寺本振透)『クラウド時代の法律実務』(商事
法務、2011年)
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