20141224_200006

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腫瘍マーカー
はじめに
本邦では、昭和56年以降悪性腫瘍が死因の
第一位を占めています。生涯のうちにがんか
かる可能性は、男性の二人に一人、女性では
三人に一人とされています。
(厚生労働省発表)
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悪性腫瘍の6つの特性
Hanahan and Weinberg, Cell, 2011
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多段階発癌
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腫瘍マーカー とは?
一般に、各種がんや造血器悪性腫瘍の診断
に有用な検査を意味し、年々、その方法は多
様化してきています。
がんを正しく診断することは、治療方針の決
定や患者の予後予測にとても重要です。
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遺伝子から蛋白質の発現までの流れ
GAT C
CT AG
DNA
DNAの情報をもとに
RNAが作られます。
転写 (transcription)
pre-mRNA
翻訳されないRNAがスプラ
イシングを受けます。
ncRNA
スプライシング
mRNA
mRNAの情報をもとに
蛋白質が作られます。
翻訳 (translation)
蛋白質
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腫瘍マーカー検査
1. 血中腫瘍抗原の測定
1. 自己抗体の測定
1. Circulating Tumor Cells の検出
1. 癌遺伝子の検出
1. cDNA microarray プロファイリング
1. 体液中のmicro RNAの検出
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α-fetoprotein (AFP)
プロフィール
1963年 、Abelevらがマウスの肝細胞癌で血中に出現することを見い出
した糖蛋白です。正常では、胎児の肝細胞や卵黄嚢で産生されます。
臨床的意義
肝細胞癌、肝芽腫および卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor)患者の血清中で
増加します。
問題点
慢性肝炎の約20%、肝硬変の約50%でAFPの上昇がみられます。肝細
胞癌と診断された症例の約70%が200 ng/ml以下であり、特に腫瘍径
が2cm以下の早期症例では、半数以上が100 ng/ml未満です。
AFPは、レンズマメ•レクチンに対する親和性により3分画されます。慢性
肝炎や肝硬変では主としてL1分画比が、肝細胞癌ではL3分画比が増加
します。
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神経腫瘍
NSE
甲状腺髄様癌
CEA
腫瘍マーカー
食道癌
SCC, CEA, TPA
BFP, CA19-9
乳癌
CA15-3, BCA225
CSLEX, CEA
NCC-ST-439
胃癌
CA72-4, STN,
CA19-9, CEA,
NCC-ST-439, TPA
膵癌
CA19-9, CA50
Span-1, KMO1
DU-PAN-2
NCC-ST-439
SLX,CEA, PSTI
elastase1, POA
大腸癌
CA19-9, CA72-4
STN, CEA
NCC-ST-439
子宮癌
SCC, CA125, CA602
CA130,hCGβ-CF
TPA, IAP
卵巣腫瘍
CA125, CA602,
CA130, GAT, SLX
CA72-4, CA54/61
STN, TPA, hCGβ-CF
IAP
肺癌
扁平上皮癌
SCC, CYFRA21
腺癌
SLX, CEA, CA19-9
小細胞癌
NSE, Pro-GRP
肝癌
AFP, PIVKAⅡ
肝内胆管癌
CA19-9, CEA
胆嚢・胆管癌
CA19-9, CA50
Span-1, KMO1
DUPAN-2, SLX
CEA, PSTI
elastase1, POA
NCC-ST-439
腎癌
BFP
膀胱癌
NMP22, BFP
TPA, IAP
前立腺癌
PAP, PSA, γ-SM
精巣腫瘍
AFP, BFP
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理想的な検査
健常
疾患
疾患
健常
陽性
100
0
陰性
0
100
感度
100%
特異度 100%
実際の検査
健常
偽陰性
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疾患
偽陽性
疾患
健常
陽性
90
2.5
陰性
10
97.5
感度
特異度
90%
95%
測定値
カットオフ値
健常者
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癌種A
癌種B
腫瘍マーカーの測定値を解釈する際の注意点
1.健常者でも陽性になることがある。(偽陽性)
•カットオフ値を設定する上で、健常者でも陽性となる群がある。
2.腫瘍に特異性がない場合がある。(偽陽性)
•良性胆道系疾患でも、CA19-9が上昇することがある。
•ワーファリンの使用時には、PIVKA-IIが上昇する。 etc.
3.治療のモニタリングに使用する際の注意。
•抗癌剤や放射線治療の直後は、腫瘍の溶解により一過性に上昇する。
•治療前値が陰性の腫瘍マーカーの評価は難しい。(偽陰性?陰性腫瘍?)
4.異好抗体により、正しい結果が得られていない場合がある。
5.早期癌では必ずしも陽性にならない。
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異好抗体による抗体を利用したアッセイ系への干渉
用いられる抗体はマウスやラビットに免疫して作成されたものが殆
どですが、人体にはこれらの抗体を認識する異好抗体(heterophilic
antibody)が存在することがわかりました。特にマウスの抗体に反応
する異好抗体はHAMA (human anti-mouse antibody)と呼ばれます。
HAMA
例えば、検体中にHAMAが存在すると、
マウスの抗体を結合させたラテックス粒子が、
HAMAを介して凝集するため、偽高値を示します。
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腫瘍マーカー検査
1. 血中腫瘍抗原の測定
1. 自己抗体の測定
1. Circulating Tumor Cells の測定
1. 癌遺伝子の検出
1. cDNA microarray プロファイリング
1. 体液中のmicro RNAの検出
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通常、健常人ではp53やsurvivin蛋白が発現している組
織はありません。一方、固形癌の約半数でp53が、また、
多くの悪性腫瘍でsurvivinが過剰発現しています。
そのため、生体がp53やsurvivinに対する自己抗体を産
生することから、腫瘍の存在診断に用いることができる。
変異p53
腫瘍細胞
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Survivin
抗survivin抗体 抗p53抗体
札幌医大検査部の特異技です
大腸癌患者の抗p53抗体陽性率
Tang et al., Int J Cancer (2001)
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抗体を用いた腫瘍マーカーの特徴
1.腫瘍に特異性がない。
2.偽陰性がある。
3.病状の進行に伴い、抗体価が上昇することがある。
4.治療後に抗体価が低下することはあるが、陰性化はしない場合が多い。
また、陰性化するまでに時間を要する。(月単位)
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腫瘍マーカー検査
1. 血中腫瘍抗原の測定
1. 自己抗体の測定
1. Circulating Tumor Cells の測定
1. 癌遺伝子の検出
1. cDNA microarray プロファイリング
1. 体液中のmicro RNAの検出
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Williams S C P PNAS 2013;110:4861
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©2013 by National Academy of Sciences
癌転移の多段階過程
癌原発巣
増殖能,接着能
浸潤能
血管内皮,細胞基底膜
好中球
接着能
O2-
増殖能
転移巣
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運動能
サイトケラチン19 mRNAを標的とした乳癌リンパ節転移の解析
One-Step Nucleotide Amplification (OSNA)法
通常、リンパ節では発現していない、上皮系
のmRNA(サイトケラチン19など)を検出するこ
とで、上皮系腫瘍のリンパ節転移を診断する。
Tsujimoto et al., Clin Cancer Res, 2007
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サイトケラチン19 mRNA解析による末梢血中の微量癌細胞の検出
(乳癌)
Xenidis et al., J Clin Oncol, 2006
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腫瘍マーカー検査
1. 血中腫瘍抗原の測定
1. 自己抗体の測定
1. Circulating Tumor Cells の測定
1. 癌遺伝子の検出
1. cDNA microarray プロファイリング
1. 体液中のmicro RNAの検出
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SSCP(Single Strand Comformation Polymorphism)
および
Direct sequencingを用いたTP53の変異解析
PCR-SSCP
Direct Sequencing
Tumor
Normal
CGC
(Arg)
R175H
CAC
(His)
全ての変異遺伝子を検出できるが、正常遺伝子に対する変異遺伝子の比
率が10:1を切ると、検出ができなくなる。
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PNA-LNA PCR clamp法を用いたEGF受容体の変異解析(肺癌など)
正常遺伝子と比べ、変異遺伝子がは1:103まで希釈されても検出可能であ
るが、プローブを設定した部位以外の変異は検出できない。
PNA primer (Peptide Nucleic Acid) primer
DNA polymeraseのexonucleaseに耐性である。
また、相補鎖と強く結合するが、1塩基のミスマッチ
により結合性が著しく低下する。
Nagai, Y. et al. Cancer Res 2005
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RFLP/PCR法を用いたK-Rasコドン12の変異解析(膵癌など)
変異遺伝子を1:106まで検出できるが、検出できる変異部位はコドン12の
みである。
BstN1
CCTGG
BstN1
K-Rasコドン12
kRas exon1
157 bp
BstN1により切断
wt 111
mt 143
2nd PCR
mt 143
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シグナル伝達経路とセツキシマブやEGFR抗体と
遺伝子変異との関係
個別化医療(オーダーメイド医療)
コンパニオン診断薬
FISh法によるPh1染色体の検出
正常
Green: bcr (9番染色体)
Orange: abl (22番染色体)
Yellow: bcr/abl (ph1染色体)
慢性骨髄性白血病
Ph1染色体
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コンパニオン診断薬
遺伝子変異と治療薬との組み合わせ
非小細胞肺癌
大腸癌
CML
APL
GIST
非小細胞肺癌
EGFR変異
K-Ras変異
BCR-ABL
PML-RARa
KIT変異
EML4-ALK
ゲフィチニブ
セツキシマブ
イマチニブ
ATRA
イマチニブ
クリゾチニブ
腫瘍マーカー検査
1. 血中腫瘍抗原の測定
1. 自己抗体の測定
1. Circulating Tumor Cells の測定
1. 癌遺伝子の検出
1. cDNA microarray プロファイリング
1. 体液中のmicro RNAの検出
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cDNA microarray profilingによるAMLとALLの鑑別
Golub et al., Science, 1999
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cDNA microarrayの臨床応用への課題
1. 各疾患の診断に必要な遺伝子の抽出と、その基礎的検討
が必要である。
2. 標準化したジーンチップを用いた、データベースの作成。
3. ジーンチップの価格をどこまで抑えられるか。
4. 他の診断法との相関性あるいは優位性の確立。
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腫瘍マーカー検査
1. 血中腫瘍抗原の測定
1. 自己抗体の測定
1. Circulating Tumor Cells の測定
1. 癌遺伝子の検出
1. cDNA microarray プロファイリング
1. 体液中のmicro RNAの検出
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Kosaka et al., Cancer Science, 2010
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mRNA
実際、蛋白に翻訳されるDNAは、全ゲノムのうち1.5%に過ぎない。
この、蛋白に翻訳されないRNAは、noncoding RNAと称されている。
昔、noncoding RNAは単に、mRNAを合成し終わった後、ゴミ?でしかないと
考えられていた時代もあったが、研究が進むにつれ、様々な機能を有してい
ることが明らかとなってきた。
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Noncoding RNAの種類
tRNA;transfer RNA
rRNA;ribosomal RNA
Esteller, Nature Reviews Genetics, 2011
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Kosaka et al., Cancer Science, 2010
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microRNAを用いた腫瘍マーカーの特徴
1.これまでマーカーがなかった腫瘍でも、測定が可能になるかも?
2.測定技術が確立されていない。
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薬物検査
Therapeutic Drug Monitoring (TDM) とは?
血中薬物濃度を測定し、その結果をもとに投与
量や投与間隔を含めた治療計画を立て、有効
かつ安全な薬物療法を実施することです。
薬物を投与する際には期待する効果とそうで
ない効果(副作用)が現れますが、それらが薬
物の血中濃度と相関する場合に血中濃度を指
標として投与法を決定するわけです。
38/46
どのような時に、どのような薬剤がTDMの対象になるのでしょうか?
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
39/46
有効治療域が狭く重篤な副作用がある。(ジギタリス製剤や抗生物質等多
数。)
薬効および副作用の測定が容易でない。(効果=患者に何も起きないこと。
免疫抑制剤や抗てんかん薬)
投与量に対して得られる血中濃度の個体差が大きい薬剤(ジギタリス製剤
や抗生物質など)
用量と血中濃度の関係において、直線関係が成立しない薬剤。(フェニトイ
ン、サリチル酸やテオフィリンなど)
疾患の急激な変化。
併用薬剤の変更による薬物血中濃度の変動が予想される場合。(シメチジ
ンの投与でテオフィリンの血中濃度が上昇する。フェニトインの投与でテオ
フィリンの血中濃度が低下する。)
代謝酵素を自己誘導する薬剤。(カルバマゼピン)
患者が服用していないことが疑われる。
日本TDM学会より
治療域と中毒域
血中薬物濃度
中毒域
最小中毒濃度
(副作用発現濃度)
治療域
(安全域)
最小有効濃度
この幅が狭い薬剤はTDMが必要
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TDMの対象となる薬剤
気管支拡張薬:テオフィリン
強心配糖体 :ジゴキシン、ジギトキシン
抗てんかん薬:フェノバルビタール、フェニトイン、
カルバマゼピン、バルプロ酸など
抗不整脈薬 :リドカイン、ジソピラミド、キニジン
抗癌剤
抗生物質
:メトトレキセート
:ゲンタマイシン、アミカシン、
トブラマイシン、バンコマイシン
解熱鎮痛薬 :アセトアミノフェン、サリチル酸
免疫抑制薬 :シクロスポリン、タクロリムス
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血中薬物濃度の推移
血中薬物濃度
最高血中濃度(Cmax)
2時間値
(C2)
薬
物
投
与
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2時間
最低血中濃度
(トラフ)
薬
物
投
与
血中薬物濃度
連続投与時の血中薬物濃度の推移
最高血中濃度
(Cmax)
定常状態
最低血中濃度
(トラフ)
時間
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理想的には定常
状態が安全域で
あれば良い。
ジゴキシン(強心剤)
最高血中濃度到達時間:経口 0.8~2h、静脈内投与 投与直後
生体内半減期:成人 36h、小児 18h
治療域:0.5~2.0 ng/ml
主な中毒症状:食欲不振、下痢、神経異常、不整脈など
テオフィリン(気管支拡張剤)
最高血中濃度到達時間:経口 2~4h、静脈内投与 投与直後
生体内半減期:成人 8h、小児 4h
治療域:10~20 μg/ml
主な中毒症状:下痢、嘔吐、けいれん発作、不整脈など
タクロリムス(免疫抑制剤)
最高血中濃度到達時間:経口 1~5h、静脈内投与 投与直後
生体内半減期:7~12h
治療域:5~20 ng/ml
主な中毒症状:しびれ、けいれん、腎障害、高血糖など
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バンコマイシン(抗MRSA薬)
最高血中濃度到達時間:静脈内投与後1〜2時間
経口投与の場合、腸管吸収されない。
生体内半減期:成人 4〜6h、高齢者では遅延する
治療域:初期投与量はCcrを参考に設定。
トラフ値 投与後、3日目に測定。
10~20 mg/mlを目標にする。
15~20 mg/ml(重症例や組織移行が悪い臓器の感染)
主な中毒症状:腎毒性(トラフ値が20 mg/mlを超えると頻度上昇)
レッドマン症候群
ヒスタミンの放出による発疹。滴下時間を1時間以上
かけると予防可能。
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お疲れさま!