Transcript 発表PPの部分
日本産業カウンセラー協会
2008年4月月例会(080406)
対人援助学とは何か
-新しいヒューマンサービスの方法論-
立命館大学 応用人間科学研究科
+
望月 昭
R
ブログ:対人援助学のすすめ
http://d.hatena.ne.jp/marumo55/
目標
・職場などで、問題が生じたときに、特定個人のせい
にしたり、組織全体の宿命的欠陥などと
あきらめない。
・たえず組織のメンバーの「キャリアアップ」を念頭に
マネジメントをすすめるには・・・
・障害者雇用に向けての努力や工夫は、その組織を
活性化させるはず
すいません。
この話はあまりできませんでし
た。
コンテンツ
1.「対人援助学」とは?
*対人援助の3つの機能
*機能の連環的関係からみる「進歩」
*連携と融合、
2.対人援助の共有ミッション
「正の強化で維持される行動の選択肢の拡大」
3.教育場面での対人援助学的方法
「○から×」:スローな教育(当事者の選択を基本とする)
4.就労に関わる対人援助
「障害のある個人は、FA宣言した野球選手である」
養護学校・企業・大学の連携作業
対人援助学
Science for Human Services
立命館大学応用人間科学研究科の英語名でもあります。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsshs/index.html
対人的科学:
「知る(測る)」「教える」「治す」
じゃなくて・・・・
「助ける」
「助ける=援助」のキモ
Service
サービスゲームとかサーブという名称の
由来ですね
御主人(当事者)が、好きな方向(自己決定)へ打
つために最適なボールをあげる。
●既存学範:心理学、臨床心理学、教育学、社
会福祉学、社会学
●職制:臨床心理士、産業カウンセラー、
社会福祉士、精神保健福祉士、
ケースワーカー、PT、OT、教員、看護師
いったん、既存の学範や職制を離れて
実践現場で必要な「対人援助」の機能を
分析する。
★「対人援助学」(Science
Services)に再統合
for Human
対人援助実践の3つの機能
1)「障害 impairment」があっても先送りすることなく
社会参加を可能にする人的・物理的援助システムの
設計・設定(援助的アプローチ)
2)それを環境に定着させるために周囲に要請する作業(援
護的アプローチ)、
3)援助設定を前提にして諸行動を可能にするための
教育・訓練する作業(教授的アプローチ)
3つの機能的アプローチの連環的「連携」が可能な実践と研
究を行う。新たな「対人援助学」とよべる融合領域を創る
なぜ統合する必要が?
• 1)ミクロな人間関係、個人的属性の変容とい
った従来の「心理的アプローチ」ではダメ
• 2)といって、マクロな制度や構造の問題だけ
でも対応できない
例)スクールカウンセラー
↓
スクール・ケースワーカー?
学校教育については、「3.14か3か」などと呑気なことを議論していますが、「どう教えるか」
について生徒ひとりひとりのキャリアアップを確認できる方法を実現していく必要があります。
対人援助の「進歩」
• 当事者個人の労力を最小限にして、その個
人の求める行動の成立とその選択肢が拡大
する。
• 教授(治療・教育)とマクロ援助(福祉)の対立
として見ない。
• 個人への対応において、「今」行動が成立す
るために、具体的環境設定(援助)と、その定
着(援護)を前提とした作業ができているか?
対人援助作業の3つの機能の連環的発展
個人の行動(反応)形成
3
治療・教授
2
instruction
1
援助
援護
assist
advocate
行動成立のための
新たな環境設定
援助設定の定着のため
の要請
(%)
教授
援助
援護
重複実践
100
75
50
25
0
1970年代
1980年代
1990年代
10年を単位とした実践研究機能の推移
対人援助実践(実証的)研究の「機能」を中心とした
メタアナリシス
(望月昭、2007:「対人援助の心理学」(朝倉書店)
助けるには?
• 教える・治すとは違う作業が必要である。
それは何か?
助ける:当事者の選択した行動を成立するよう
に援助・援護・教授を過不足なく行う
2.対人援助の共有ミッション
“物を与える事ではなく、物を得るということに
「生活の質」の目標をおくこと”
「人を援助する際の倫理
(The ethics of helping people) Skinner, 1978
Given
Get
Getする=行動して結果を得ること
行動の記述方法
先行事象
反応(行動)
結果事象
たったこれだけ
当事者の反応だけではダメ、「できる」ための先行・結果事象ごと記述する
障害の軽重に関わりなく、先送りすることなく「今」、正の
強化で維持される行動を保証
「援助」を前提とした行動による社会参加
状況
ability
Support
(援助) 結果(社会参加)
Strength (援助つき能力)=これが行動
対人援助の共有ミッション
正の強化で維持される行動の選択肢の拡大
= (行動的)QOLの拡大
最終目標ではなく「手段」としても必要な
原則である
“問題行動がなくなったらQOL拡大”
ではない
一言でミッションを表現
× から ○
ではなく
○ から ×
(冨安芳和)
付帯ミッション
当事者の「属性」に帰さない
①当事者に原因・責任を
押し付けない
②対人援助行動を勇気づけ、
解決方法を探し続ける
●「教育したけどダメだった」なぜ?
×そこまで本人の能力(発達)がないから
○何か「援助設定」や教授方法に不足がある。
3.特別支援教育の中で
• 「発達障害」のある生徒の扱われ方
・医療専門家の診断を受けているか?
・障害特性にあった指導をしているか?
これでは、×から○
○から×:「今」を認めるには・・・
4.就労に関わる対人援助
立命館学生ジョブコーチシステム(RSJC)
• 総合支援学校(養護学校)の生徒の就労実習、
卒業生、地域に住む障害のある成人を対象に、
行動分析学の基礎礎知識と技術を持った学生が
対象者と共に事業所(企業)に入り、求められる
作業をより容易にするための教授・援助・援護を
行う。
連携的作業のねらい
• この対象者は、「これ(もの・人)があれば」、
当該の就労行動が可能になる(援助設定の
同定)
• この対象者はこうやって教えれば一人ででき
るようになる(最適な教授方法の同定)
・これらの資料を、「誰にでもわかる様式」で記
録として残す(最適な援護方法の同定)
SJC事例
• ユースホステルの清掃作業において、
●頻繁に教員に仕事の確認をする
●仕上げがいまいち
SJCの仕事
1.課題分析
2.ジョブコーチ
3.機能分析
4.対応
5.企業・学校への提案
―学生ジョブコーチ①―
総合支援学校生徒の就業体験実習における作業チェッ
ク表と振り返りシートの効果
「頻回な報告と不十分な仕上がり」
への対処
課題分析のみではなく、機能分析が必要
不必要な報告と不十分な仕上がりのまま、とい
うのは、実は同一の行動的機能に根ざす
―学生ジョブコーチ②―
総合支援学校生徒の就業体験実習における作業チェッ
ク表と振り返りシートの効果
山口真理子(立命館大学)
山本陽子(京都市立鳴滝総合支援学校)
目的:
知的障害のある総合支援学校生徒の職場実習場面にお
ける、対象生徒の作業完成度及びセルフ・マネージメント・
スキルの向上を可能にする環境設定(作業チェック表・振り
返りシート)の検討を行う
方法
従属変数
■清掃作業の作業遂行自立率(課題分析表による自立反応/全項目)
独立変数(介入内容)
■作業終了後の「振り返りシート」記入+「作業チェック表転記」B条件
■作業終了後の「振り返りシート」記入
C条件
※「作業チェック表」のチェック事項は、対象生徒が「振り返りシート」の「注意された
こと」の欄に記入したものを学生ジョブコーチが記入した。
実験デザイン A(ベースライン)-B-C
Table1. 振り返りシート
今日も1日、
おつかれさま
業務内容
時間 がんばったこと
Table2. 作業チェック表の一部
名前:
年 月 日 ( )
褒められたこと 注意されたこと(できなかったこと) 明日はどうしたいですか?
午前
午前
②
午後
客室せいそう
スリッパのてんけん
①
午後
業務内容
SJCが
記入
ハンガーのチェック
ごみぶくろのチェック
ざぶとんのチェック
( F) 廊下そうじきかけ
午前
③
午後
( F) 廊下そうじきかけ
< >
結果の詳細は、
2008年度の日本行動分析学会で発表さ
れます(@横浜国立大学)
―学生ジョブコーチ③―
スケジュール表とマニュアルの導入による
自律的作業遂行の獲得
本多恵美(立命館大学)
森井あす香(鳴滝総合支援学校)
目的
業務内容や順序が毎日異なる職場で、不要な報告・確認行
動が多く見られる障害者に対して、作業手順や作業の自己評
価を可能にするスケジュール表とマニュアルを導入し、その効
果を検討することを目的とした。
方法
実習期間 200X年10月24日から11月9日
対象生徒 N総合支援学校1年生S君
実習場所 R大学書籍部バックヤード
●
実験デザイン
ABAデザインであった。
従属変数
■作業の正反応率、報告・確認言語行動、積極的行動(
自発的な作業準備と環境整備行動)
独立変数
■ スケジュール表(11月1日~8日)、
■S君専用マニュアル(10月31日~11月9日)
スケジュール表
加算き(店員さんとレシートを
作る)
2
検収入力(伝票番号をパソコ
ンに入力する)
3
返品作業(書籍)
5
返品作業(文庫)
8
返品作業(雑誌)
11
POS外入力
15
本棚のせいり
16
昼休み
帰宅
マニュアル
RSJC独自の貢献
• 学生でしかできないことがある。
1)教員とは違う人間関係が作れる
2)詳細な記録がとれる
3)学校では検知しにくい当事者の能力を見つ
けることがある。
以上のことは、「個別の包括支援プラン(IEP)」へ
フィードバックして、改定を促進できる。
連携を進めるために
• 学校・企業(地域)・大学(理論・研究)という
異なるセクターが、ともにミッションを共有する
こと
• 上記のセクターの中で、対人援助の機能的
連環としての進歩を後退させる要素があると
連携は逆効果
• 学校・福祉関係よりも、企業の人事管理の方
がQOL拡大に向いている場合がある。
中小企業家同友会の代表の
学生ジョブコーチに対するコメント
「おたくらは、生徒の全員就労を目
指しているのか? それともQOLの
拡大を目指しているの?」
(就職させればそれでいいの?)
これまでの学校教育の問題
• 目標(ノルマ)があり、それに不足した部分を
「課題」として残す: ×から○
• 「何ができるか」は記録しても、どうやったらそ
れができるようになったか、という記録がない
• 内容ばかりで、「できやすくする」ように、自分
で環境を変えるスキルを教えない
• 「生徒を伸ばす」ことが担任の個人的・職人的
技術に任された
• 情報を蓄積し、移項する方法がなかった
障害のある個人は
FA宣言をした野球選手だ!
○から×なんて志が小さい!
対人援助に関わる諸学・諸職制の融合と連携
対人援助学会
2009 START!
Japanese(International?)
Association of
Science for Human Services
立命館大学人間科学研究所のHPを、ときどき見
てください。予告を出します。