第9回講義の内容 - 東京医科歯科大学

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個体と多様性の
生物学
第7回 体を守る免疫機構Ⅱ
和田 勝
東京医科歯科大学教養部
免疫系に必要な機能
特異性
多様性
抗体の構造とクローンが用意
されていることで説明できる
記憶する能力
自己と非自己を見分ける能力
これは後で説明する
抗原結合部位多様性
抗体もタンパク質なのだから、遺伝子の
情報から作られる
抗原の数は無限に近い種類があるのに
どうして抗原結合部位の形が違う抗体を
作ることができるのか
この謎を明らかにしたのは次の実験で
あった
抗体遺伝子
の再編成
この実験結果は、胎児
の時に離れた位置に
あったVとCが、成獣で
は近づいたことを示す
抗体遺伝子の再編成
L鎖
多数のV
4つのJ
1つのC
分化の過程
でVとJの間
がランダムに
切り取られる
抗体遺伝子の再編成
H鎖も同じで、V,J,Cに加えて、D領域
がある
多数のV
12のD
4つのJ
1つのC
H鎖でもこれらの領域の組み替えが起
こる
L鎖とH鎖の組み合わせによって、多数の
クローンが作られる
体液性免疫と細胞性免疫
細胞性免疫
やけどで皮膚が損傷されたので、それを
補うために他人の皮膚を移植したとする
移植された皮膚はやがてはげ落ちてしまう
拒絶反応(rejection)である
ある個人の細胞には、その個人であること
をしめす「表札」のようなものがあることが
わかってきた
細胞の「表札」
すべての
細胞に
備わって
いる
抗原提示
細胞だけ
にある
MHCクラスⅠタンパク質
他人の皮膚の細胞には非自己のMHC
クラスⅠタンパク質(+ペプチド断片)が
ある
T細胞は表札が異なるのを見て、攻撃
する
このようなT細胞を、細胞損傷性T細胞
(キラーT細胞、CD8+T細胞)と言う
MHCクラスⅠタンパク質
MHCクラスⅠタンパク質の溝を真上から
見たところ(卵白アルブミン323-334がはさまっている)
ウイルスに感染すると
ウイルスの外被タンパク質は感染した
細胞の中で脱ぎ捨てられる
外被タンパク質は分解され、断片は合成
中のMHCクラスⅠタンパク質に取り込まれ
溝に挟み込まれて細胞表面に提示される
こうなるとMHCクラスⅠタンパク質は自己
ではなくなる(表札に泥が塗られた)ので
感染した細胞を攻撃
キラーT細胞はこれを見て細胞を攻撃する
T細胞受容体
どうやって「表札」を見ているのだろうか
T細胞受容体
T細胞の表面にはT細胞受容体という膜タン
パク質が埋まっていた
T細胞受容体は、抗体のY字型の腕の部分
と似たような構造で、α鎖とβ鎖の2本の
ポリペプチド鎖が、S-S結合で結合している
α鎖もβ鎖もN末端側は可変領域、C末端
側は定常領域である。
T細胞受容体
もう一つのT細胞
すでにB細胞による抗体の産生について
は説明したが、、、
じつはB細胞による抗体産生は、B細胞だ
けでは不十分であることがわかった
次の実験がそのことを示している
抗体産生にはT細胞が必要
クローン選択説
ヘルパーT細胞
B細胞は表面受容
体と結合した可溶性
の抗原と結合し、
細胞内へ取り込む
MHCクラスⅡタン
パク質に挟み込んで
表面へ提示
B細胞は抗原を提示
T細胞がこれをT細胞受容体で見る
ヘルパーT細胞
このようなT細胞を、ヘルパーT細胞
(CD4+T細胞)と言う
CD4によって結合がしっかりとできると、
ヘルパーT細胞はインターロイキンをだし
てB細胞を刺激する
インターロイキンは受容体に結合し、細
胞内にセカンドメッセンジャーをつくる
その結果、B細胞はG0から脱して細胞
周期へ復帰し、増殖分化する
マクロファージの役割
非特異的防御機構のところで出てきた
マクロファージは、特異的防御機構でも
重要な役割を演じる
マクロファージは、細菌やカビなどの病原
体を貪食し、分解して断片ペプチドをMHC
クラスⅡタンパク質に挟み込んで細胞表面
へ出して提示する
ヘルパーT細胞がこれを認識し、活性化し
インターロイキンを分泌する
記憶細胞
すべてが形質細胞
になるのではなく、
一部は記憶細胞
として残される
同じ抗原に2回目
に出会うと速やかに
増殖して形質細胞
をつくる
一次および二次免疫応答
リンパ球の分化・成熟
胸腺での訓練
B細胞やT細胞は、遺伝子の再編成に
よってランダムにつくられる
だとしたらあらゆる抗原に反応するB細胞
やT細胞が作られてしまうはず
これは不都合であるから、どこかで「自己」
抗原に対するB細胞やT細胞を消去する
はず
胸腺での訓練
自己免疫疾患
自己に対しては免疫機能が働かないように、
自己を認識するリンパ球は除去されている
このことを免疫学的自己寛容
(immunological self tolerance)と言う
何らかの原因で自己抗原を非自己と認識
して攻撃してしまうことがある。これを自己
免疫疾患と言う
自己免疫疾患
臓器特異性
血液
貧血、白血球減少症、血小板減少症
内分泌腺 慢性甲状腺炎(チログロブリン抗体)
バセドー病(TSH受容体抗体)
アディソン病(副腎細胞抗体)
糖尿病(インシュリン受容体抗体)
若年性糖尿病(膵臓ランゲルハンス
島β細胞抗体)
消化管
悪性貧血、潰瘍性大腸炎、限局回腸炎
肝臓
慢性肝障害
腎臓
グッドパスター型腎炎(腎糸球体
基底膜抗体)
筋肉
重症筋無力症(アセチルコリン
受容体抗体)
自己免疫疾患
全身性
全身性エリテマトーデス(SLE)
シェーグレン病
ベーチェット病
リウマチ性関節炎
その他
全身性自己免疫疾患に関しては不明な点
が多い
Igスーパーファミリー