234_243_1 - 自然と人間を行動分析学で科学する

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中学部自閉症生徒の
感情コントロールに関する
指導の試み
1
指導目標

長期目標:
相手の意見を受け入れる
(同じものを見ても人によって感じ方が違う
ことを知る)

短期目標:
相手の意見を聞き、自分の意見を言う
(双方向の会話)
2
標的行動
 相手の意見を聞き、自分の意見を言う
(双方向の会話)
→

3
暴言や暴力の頻度を下げる
目的:本人が気になる部分についての
質問と説明の時間を確保する
方法

本生徒のプロフィール

Aさん(特別支援学校中学部3年男子、
中学部より本校に、小学校支援学級卒業)

自閉症 WISC-Ⅲ 全検査IQ43
言語性IQ51 動作性IQ47
平成23年8月6日実施


コミュニケーション手段:音声言語
自分の興味関心事には流暢な日本語を話す(能や歌舞伎
や怪談、友達の事など)。自分の思っている答えでない時には、「どうして?」「な
ぜ~じゃいけないの?」とすかさず切り返してくることが多い。教師の簡単な指示
を聞き逃したり、思い込みして的を射てない答えをしたりする。
4
事例にとりあげたいきさつ

問題となること:

(泣き声に関すること)

中2後期頃より、子どもの泣き声に対する過敏さが再び目
立ち始め、小学部の女児や同学年の特定の女子Bが泣くと
「うるさい、だまれ!」と叫んだり、物をドンと叩き付ける、蹴
る、ことがあった。

中3でBさんと同じ学級になり、Bさんの泣き声に接すると、
昨年同様に「うるさい!」と叫ぶ。
→ イヤーマフの使用、
「更衣室に行って落ち着く」ことの促し。
5
本事例への対応
~今本繁先生のコンサルテーションより~

(7月○日)
今本先生のアドバイス
1,ルールを確認したり教えたりすることと同時に、本生
徒が気になる部分についての説明や理由付けが必要。
ルールの伝え方:いけない訳をプロセスを踏んで繰り
返し話すこと、適切な関わり方も同時に教える。
*すぐには行動変容は見られないし、指導を重ねても問
題はどんどん出てくるかもしれないが根気よく続けること
が大切。
6
本事例への対応
~今本繁先生のコンサルテーションより~

改善点
1,9月より3組から6組にて学校生活を送るようにした。
2,自立活動の時間における指導において、3・6組
合同でゲームを行った。(トランプのばば抜き、
カルタ取り、絵あわせゲーム、ジェンガー等)
3,本人が気になる部分についての説明を行った。
放課後週2回程度、勉強会として前担任の先生と
話をしたり話を聞いたりできる時間を設けた。
7
指導場面: 勉強会のとりくみ
指導者:
前年度担任
 指導の形態:
週2回、放課後30分
1対1 を基本に時々グループでも
 指導場所:
中学部3年5組教室(指導者の教室)

8
指導手続き(1)

指導手続き:30分の流れ:
1,その日の話題について決める
2,話題についてのフリートーク
思っていることを、どんどん発言(表出)させる
*意見を一度受け止める(そう、それで・・・)
*修正や教師の意見は、後で。(そうなんだ、
でも、もしかしたら~なんじゃないの?
こんな意見もあるかもよ。
先生は、こう思うけど、君はどう思う?)
3,その日のまとめ
9
指導手続き(2)

教材教具など:
ノート(話をした内容を、目で見ることが
できるように教師が書き留める)
ボールペン(文字が太めに書ける分)
10
勉強会のとりくみ

実施日:H23.11月~12月
11月9日(火)
11月15日(火)
11月22日(火)
11月29日(火)
12月13日(火)
12月20日(火)






合計11回

11
11月11日(金)
11月17日(木)
11月24日(木)
12月2日(金)
12月16日(金)
勉強会のとりくみ

実施日:H24.1月~2月
1月10日(火)
1月17日(火)



1月31日(火)


2月15日(水)
2月21日(火)


合計11回

12
1月12日(木)
1月19日(木)
1月27日(金)
2月3日(金)
2月10日(金)
2月24日(金)
結果(1)問題行動の回数
25
6月21日~
別室
20
15
暴言
叩くふりや物にあたる
6組での指導
暴力
合計
10
勉強会
開始
5
0
4月
13
5月
6月
7月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
結果(2)

教室環境の調整で、いったん大幅に不適
応行動の出現頻度が下がった。
(環境調整の重要性)
放課後に、SST的な指導の機会を設け、
本生徒の感情の受容や適切なコミュケー
ションスキルの獲得に努めた。この取組み
以降も、不適応行動の頻度は下がった。

14
考察
この事例では、
1教室環境(物理的距離)、2 「自立活動の時
間における指導」でのSSTの指導、3個別で
の、本生徒が気になる部分についての説明等
の取組み、を一気に実施した。
そのため、特に2と3に関しては、どちらの要
素が効果があったのかは厳密に測定できてい
ないが、相乗的な効果やお互いが般化の場面
として機能したことが考えられる。

15
今後の課題(1)
不適切な行動は減少しているが、依然表われ
ることがある。不適応行動に代わる代替行動
を獲得する支援が引き続き必要である。その
際、家族との共通理解による対応が欠かせな
い。
 自分の行動をコントロールするスキルの学
び。
 知的に比較的高い子どもについては、言語面
において、正確な理解かどうかの確認と、必
要に応じた丁寧な文脈の説明が必要である。

16
今後の課題(2)
環境調整
 感情のコントロール面等のスキル指導、
教師の関わり方、
学部を超えて引き続き包括的に指導・支援を
継続すること。

大きく環境が変わる次年度は、特に引き継
ぎとそれに基づく配慮が必要である。
17