HⅠ輝線観測による高銀緯分子雲の観測的研究

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Transcript HⅠ輝線観測による高銀緯分子雲の観測的研究

HⅠ輝線を用いた
高銀緯分子雲の観測的研究
國安 ヨハン
分子雲形成及び星形成
分子雲とは主に水素分子(H2)
からなる恒星誕生の場
分子雲は宇宙空間に広がる原
子ガス(主に中性水素ガス)から
形成される
しかし,どのように形成されるか
(起源・要因etc),詳しいことは
良くわかっていない
中性水素とは電離していない水
素のことで,天文学では[HⅠ]と
表記する
ところで,右図のようにガスが
徐々に収縮していく過程を
「分子雲の進化」と呼ぶ
原子ガス
HⅠ
分子雲
H2
分子雲
CO
恒星
高銀緯分子雲(銀河から離れた位置に存在する分子雲)
高銀緯領域:約|b(銀緯)|≧20°の領域
1.太陽系に近い MBM53~55の場合150pc程度(推定値)
2.視線方向上で他の天体と重なる可能性が低い
3.金属量が少ない(ハロー中に存在する為)
分子雲形成の研究に適している
今回は電波輝線(HⅠ)を用いて観測を行った
スペクトルとは
電波も可視光も電磁波の一種
電波は可視光と比べると波長が長い
太陽光をプリズムに通すと光が分散する
所々に暗線が見える
熱した塩化ナトリウムの光をプリズムに
通す
連続スペクトル
吸収線
輝線スペクトル
電波においても
・波長の長さが色に対応する(連続波という)
・決まった周波数で,様々な分子・原子に対
応するスペクトルがある
電波によるHⅠ輝線観測
電波領域におけるスペクトル線
HⅠ,CO,H2O,etc…
・これらのうち,HⅠの静止周波数は1.42GHzであり
アマチュア無線用の機材でも観測可能
自作2m電波望遠鏡
和歌山8m電波望遠鏡
観測機材の特性
自作2m電波望遠鏡
・分解能:9.61°(理論値)
・Tsys:1500~2500K
・帯域:25kHz
・積分時間:1sec
・検出限界感度:
(Tsys2000Kとして)22000Jy
・観測日時:9月22~27日
和歌山8m電波望遠鏡
・分解能:2°(理論値)
・Tsys:626K(観測当日)
・帯域:約15kHz(32MHz,
2048ch)
・積分時間:25sec
・検出限界感度:70Jy
・観測日時:9月29日
感度は,当然の事ながら8m電波望遠鏡の方が上
角度分解能,速度分解能も8mの方が上
開口能率はともに50%を想定(詳しい測定が必要)
1Jy=1.0*10-26Wm-2Hz-1
観測結果(2m電波望遠鏡)
1420.500
1420.675
1420.775
1420.900
1420.675
1420.775
1420.900
1420.325
1420.325
1420.500
1420.225
1420.225
1420.450
1420.100
1420.100
2000.00
4000.00
6000.00
8000.00
10000.00
1420.450
1420.000
1420.000
freqency
1419.900
7.00E+00
6.50E+00
6.00E+00
5.50E+00
5.00E+00
4.50E+00
0.00
HⅠ輝線
1419.900
power
power
200709271049
h1
freqency
輝線
ノイズ
スペクトルは受信機の周波数コンバータ(ラジオのチュ
ーニング機構と同じ)により手動で取得
Tsys=1818K,Tk(輝度温度)=4000K,
観測領域:(赤経,赤緯)=(23h,00min,20°)付近
観測結果(8m電波望遠鏡)
total(time=25*4)
h1(y=-0.3x+6050)
power
200
40
20
100
0
0
20000
-20
19500
-100
-40
-200
-60
-300
-80
-400
-100
16.0973246
20200
20000
20400
20600
20500
20800
21000
21000
21500
HⅠ輝線
freqency
freqency
4つのデータを平均,図中の式でベースラインを補正
また,ベースラインは図の点線(-44.5K)で取った
Tsys=626K,Tk=60K
2m電波望遠鏡で観測した点の一部
2m電波望遠鏡で得られたマップ(MBM53~55付近)
0-0.5
0.5-1
1-1.5
1.5-2
2-2.5
2.5-3
3-3.5
3.5-4
22°
21h30min
21h45min
MBM53~55
14°
付近で速度分
布の異常10°
22h00min
22h15min
22h30min
22h45min
23h00min
23h15min
23h30min
23h45min
0h00min
18°
赤 → 緑 → 青 の順で相対的に地球に向かってくる速度が大
きくなる
紫は多数の速度成分を持つ輝線スペクトルが検出された点
但し後に述べるように、この結果については考察中
考察(不可解な観測結果)
自作した2m電波望遠鏡でHⅠスペクトルを検出できた?
但し,感度が劣る2m電波望遠鏡の方がTkが高い(約66倍)
銀河中心に向け,スペクトルが検出されることは確認した
さらに、開口能率測定等、重要な測定が残っている
原子ガスが空間的な拡が
りを持っている可能性?
図の大円内では一様に
Tk=60Kと仮定
2m電波望遠鏡
のビームサイズ
ビームサイズ→円で仮定すると,2mは
8mの23倍程度
ガスの拡がりが5°程度であれば,予想
される2mのTk=60*23=1380(K)
8m電波望遠鏡
のビームサイズ
考察(不可解な観測結果)
分子雲が速度的にも拡がりを持っている?
観測帯域内に当方に分布していると仮定
2mの帯域幅(25kHz=5.3km/s)
1km/s当たり60/3.3=18.2K(8mでの結果)
さらに空間的な拡がりを考慮すると
予想される2mのTk=18.2*23*5.3=2216K
2mの感度,条件などを考慮すると明らかに
低い値
8mの帯域幅
(15kHz=3.3km/s)
その他の要因としてはポインティング(望遠鏡の向き) 誤差
・8mは観測当日追尾装置が不調だった
・2mの角度調整は手動
さらには,開口能率の詳しい測定が必要
今後の課題
解析の妥当性
8m電波望遠鏡での観測は当日悪天候の為,ベースライ
ン(輝線がないと見なせる場所)のうねりが見られた
これらを合成して平均を取っている為,誤差が入ってい
る→実際にはTkはもっと高い?
2mも8mも銀河中心(強度がよくわかっている天体)を観測
したデータがあるので,それを使った解析(2mと8mにおけ
る観測値の相互関係)
基本的な方針としては追観測を行いたい(2mの観測結
果が偽である可能性もある)
但し,諸事情により2m電波望遠鏡は一月まで撤去される
観測してみたい対象:HLCG92-35
なんてん電波望遠鏡無バイアス
サーベイ(過去のデータに捕ら
われない)により発見
東側では,12CO(J=1-0)の強度
が弱い→原子ガス内での進化
の不一致を示している?
過去の爆発的現象が関与?
Yamamoto.et al.(2003)
次に8m電波望遠鏡で観測を行う機会
があれば,ぜひ観てみたい天体
特に速度構造を知りたい
カラー:HⅠ
コントア:12CO(J=1-0)