債務の履行・弁済

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Transcript 債務の履行・弁済

債務の履行(債務の弁済)
名古屋大学大学院法学研究科教授
加賀山 茂
(参考)法を学ぶということは,
どういう作業をすることか?
1
契約の履行
(債務の弁済)



契約の流れ
履行と弁済との関係
履行の内容









→ 本旨に従った履行(民法415
条)
→ 債務の目的(民法399条~
411条)
選択的履行(406条~411条)
履行の時期(民法412条)
履行の順序(民法533条, 624
条)
履行の充当(民法488条~491
条)
履行の場所(484条,574条)
履行の費用(485条,558条)
履行の証明(民法486条,487条)

履行の主体



履行の相手方




債権者・弁済受領権者(民法479
条)
債権の準占有者(民法478条)
受取証書の持参人(民法480条)
履行の効果






債務者
第三者(民法474条~477条)
債権・債務の消滅
代物弁済(民法482条)
弁済の提供(民法492条~493
条)
供託(民法494条~498条)
第三者の弁済による代位(民法
499条~504条)
練習問題11,12,13
2
契約の流れ
START
契約成立
契約不成立
No
Yes
不当利得
契約有効
契約無効 (取消) No
Yes
効力発生
条件・期限
No
Yes
契約履行
Yes
強制履行
No
免除・
時効等 Yes
No
債務不履行
損害賠償
契約解除
END
3
履行と弁済との関係

履行と弁済とは同じ意味である。


日常用語では,「弁済」は「金銭の支払」の場合にし
か使わないが,法律用語としては, 「履行」 と「弁
済」とは同義であり,「履行」としての「物の引渡」も
「弁済」ということができる。
現行民法の用語法


「債務」という言葉の後には, 「債務の履行」 ,「債
務の弁済」というように,どちらも利用可能である。
ただし,「債権」という言葉の後には,例えば,「債権
の弁済を受ける」,「債権の弁済に充当する」,「債
権の弁済期」というように,弁済という言葉しか用い
ることができない。
4
履行の内容


債務の本旨に従った履行(民法415条)
債務の種類に応じた履行の内容

与える債務

引渡債務




金銭の支払債務(民法402条~405条)
物の引渡債務
 特定債権(民法400条)
 種類債権(民法401条)
 選択債権(民法406条~411条)
なす債務(民法414条2項)
なさない債務(民法414条3項)
5
選択債権(1/2)

第406条〔選択債権〕


第407条〔当事者の選択権の行使〕



債権ノ目的カ数個ノ給付中選択ニ依リテ定マルヘキ
トキハ其選択権ハ債務者ニ属ス
(1)前条ノ選択権ハ相手方ニ対スル意思表示ニ依リ
テ之ヲ行フ
(2)前項ノ意思表示ハ相手方ノ承諾アルニ非サレハ
之ヲ取消スコトヲ得ス
第408条〔選択権の移転〕

債権カ弁済期ニ在ル場合ニ於テ相手方ヨリ相当ノ期
間ヲ定メテ催告ヲ為スモ選択権ヲ有スル当事者カ其
期間内ニ選択ヲ為ササルトキハ其選択権ハ相手方
ニ属ス
6
選択債権(2/2)

第409条〔第三者の選択権〕



第410条〔不能による選択債権の特定〕



(1)第三者カ選択ヲ為スヘキ場合ニ於テハ其選択ハ債権者又ハ
債務者ニ対スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス
(2)第三者カ選択ヲ為スコト能ハス又ハ之ヲ欲セサルトキハ選択
権ハ債務者ニ属ス
(1)債権ノ目的タルヘキ給付中始ヨリ不能ナルモノ又ハ後ニ至リ
テ不能ト為リタルモノアルトキハ債権ハ其残存スルモノニ付キ存
在ス
(2)選択権ヲ有セサル当事者ノ過失ニ因リテ給付カ不能ト為リタ
ルトキハ前項ノ規定ヲ適用セス
第411条〔選択の遡及効〕

選択ハ債権発生ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス但第三者ノ権利ヲ害
スルコトヲ得ス
7
選択的履行のルール

PECL 7:105条: 選択的履行


(1) 債務が選択的な履行によってなされうる場合には,
別段の事情がない限り,選択権は,履行すべき当事
者に属する。
(2) 履行すべき当事者が,契約によって要求された期
間内に選択権を行使しない場合は,次の2項に従って
選択権は,相手方に移転する。


(a) 選択の遅滞が重大であるときは,選択権は相手方に移転
する。
(b) 選択の遅滞が重大でないときは,相手方は,選択権を有
する当事者に対して,相当な長さの付加期間を定め,その期
間内に選択権を行使するよう通知を行なうことができる。選択
権を有する当事者がその期間内に選択権を行使しないときは,
選択権は相手方に移転する。
8
催告による選択権
(形成権)の消滅と移転

第19条〔制限能力者の相手方の催告権〕



第547条〔催告による解除権の消滅〕


(1)制限能力者ノ相手方ハ其制限能力者カ能力者ト為リタル後之ニ対シテ一
箇月以上ノ期間内ニ其取消シ得ヘキ行為ヲ追認スルヤ否ヤヲ確答スヘキ旨
ヲ催告スルコトヲ得若シ其制限能力者カ其期間内ニ確答ヲ発セサルトキハ其
行為ヲ追認シタルモノト看做ス
(3)特別ノ方式ヲ要スル行為ニ付テハ右ノ期間内ニ其方式ヲ践ミタル通知ヲ発
セサルトキハ之ヲ取消シタルモノト看做ス
解除権ノ行使ニ付キ期間ノ定ナキトキハ相手方ハ解除権ヲ有スル者ニ対シ相
当ノ期間ヲ定メ其期間内ニ解除ヲ為スヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ
得若シ其期間内ニ解除ノ通知ヲ受ケサルトキハ解除権ハ消滅ス
第556条〔売買の一方の予約〕→申込の誘引・申込との関係


(1)売買ノ一方ノ予約ハ相手方カ売買ヲ完結スル意思ヲ表示シタル時ヨリ売買
ノ効力ヲ生ス
(2)前項ノ意思表示ニ付キ期間ヲ定メサリシトキハ予約者ハ相当ノ期間ヲ定メ
其期間内ニ売買ヲ完結スルヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ相手方ニ催告スルコトヲ
得若シ相手方カ其期間内ニ確答ヲ為ササルトキハ予約ハ其効力ヲ失フ
9
履行の時期

第412条〔履行期〕



(1)債務ノ履行ニ付キ確定期限
アルトキハ債務者ハ其期限ノ
到来シタル時ヨリ遅滞ノ責ニ任
ス
(2)債務ノ履行ニ付キ不確定期
限アルトキハ債務者ハ其期限
ノ到来シタルコトヲ知リタル時ヨ
リ遅滞ノ責ニ任ス
(3)債務ノ履行ニ付キ期限ヲ定
メサリシトキハ債務者ハ履行ノ
請求ヲ受ケタル時ヨリ遅滞ノ責
ニ任ス

UNIDROIT Art. 6.1.1 - 履行期




当事者は以下の各号に掲げる時
にその債務を履行しなければなら
ない。
(a) 履行期が契約によって定め
られ、または、契約によって決定
できる場合には、その時
(b) 期間が契約によって定めら
れ、または、契約によって決定で
きる場合には、相手方が履行期を
選択すべき事情がない限り、その
期間内のいずれかの時
(c) その他の場合には、契約締
結後の相当な期間内
10
履行の順序

UNIDROIT Art.
6.1.4 - 履行の順序


(1) 契約当事者の
履行が同時になさ
れうる限度で、当
事者は、別段の事
情がない限り、履
行を同時にしなけ
ればならない。
(2) 当事者の一方
の履行のみが一
定の期間を要する
限度で、その当事
者は、別段の事情
がない限り、その
履行を先にしなけ
ればならない。

第533条〔同時履行の抗弁権〕


第633条〔報酬の支払時期〕


双務契約当事者ノ一方ハ相手方カ其債
務ノ履行ヲ提供スルマテハ自己ノ債務ノ
履行ヲ拒ムコトヲ得但相手方ノ債務カ弁
済期ニ在ラサルトキハ此限ニ在ラス
報酬ハ仕事ノ目的物ノ引渡ト同時ニ之ヲ
与フルコトヲ要ス
但物ノ引渡ヲ要セサルトキハ第624条第
1項〔賃金の後払〕ノ規定ヲ準用ス
第624条〔報酬の支払時期〕


(1)労務者ハ其約シタル労務ヲ終ハリタ
ル後ニ非サレハ報酬ヲ請求スルコトヲ得
ス
(2)期間ヲ以テ定メタル報酬ハ其期間ノ
経過シタル後之ヲ請求スルコトヲ得
11
弁済の充当(1/3)

第488条〔指定弁済充当〕



(1)債務者カ同一ノ債権者ニ対シテ同種ノ目的ヲ有スル数
個ノ債務ヲ負担スル場合ニ於テ弁済トシテ提供シタル給付
カ総債務ヲ消滅セシムルニ足ラサルトキハ弁済者ハ給付ノ
時ニ於テ其弁済ヲ充当スヘキ債務ヲ指定スルコトヲ得
(2)弁済者カ前項ノ指定ヲ為ササルトキハ弁済受領者ハ其
受領ノ時ニ於テ其弁済ノ充当ヲ為スコトヲ得但弁済者カ其
充当ニ対シテ直チニ異議ヲ述ヘタルトキハ此限ニ在ラス
(3)前二項ノ場合ニ於テ弁済ノ充当ハ相手方ニ対スル意思
表示ニ依リテ之ヲ為ス
12
弁済の充当(2/3)

第489条〔法定弁済充当〕

当事者カ弁済ノ充当ヲ為ササルトキハ左ノ規定ニ
従ヒ其弁済ヲ充当ス




一 総債務中弁済期ニ在ルモノト弁済期ニ在ラサルモノ
トアルトキハ弁済期ニ在ルモノヲ先ニス
二 総債務カ弁済期ニ在ルトキ又ハ弁済期ニ在ラサルト
キハ債務者ノ為メニ弁済ノ利益多キモノヲ先ニス
三 債務者ノ為メニ弁済ノ利益相同シキトキハ弁済期ノ
先ツ至リタルモノ又ハ先ツ至ルヘキモノヲ先ニス
四 前二号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ債務ノ弁済
ハ各債務ノ額ニ応シテ之ヲ充当ス
13
弁済の充当(3/3)

第490条〔一個の債務についての法定弁済充当〕


一個ノ債務ノ弁済トシテ数個ノ給付ヲ為スヘキ場合ニ於
テ弁済者カ其債務ノ全部ヲ消滅セシムルニ足ラサル給付
ヲ為シタルトキハ前二条ノ規定ヲ準用ス
第491条〔費用・利息・元本間の法定弁済充当〕


(1)債務者カ一個又ハ数個ノ債務ニ付キ元本ノ外利息及
ヒ費用ヲ払フヘキ場合ニ於テ弁済者カ其債務ノ全部ヲ消
滅セシムルニ足ラサル給付ヲ為シタルトキハ之ヲ以テ順
次ニ費用,利息及ヒ元本ニ充当スルコトヲ要ス
(2)第四百八十九条〔法定弁済充当〕ノ規定ハ前項ノ場合
ニ之ヲ準用ス
14
履行の充当のルール

UNIDROIT Art. 6.1.12 - 支払いの充当



(1) 同一の債権者に対して複数の金銭債務を負う債務者は、支払時に、
その支払いが充当されるべき債務を指定することができる。ただし、この
支払いによって、まず、諸費用に、次に、利息に、最後に元本に充当され
る。
(2) 債務者が前項の指定をしない場合には、債権者は、債務の弁済期
が到来しており、かつ、争いがないものであるときは、支払いの後の相当
な期間内に、債務者に対して、支払いが充当される債務を指定すること
ができる。
(3) 前2項の充当が存在しない場合には、支払いは、以下の基準のひと
つを満たす債務であって、かつ、以下に示された順序の債務から充当さ
れる。





(a) 支払期の到来した債務、または、最初に支払期が到来する債務
(b) 債権者が最小の担保しか有しない債務
(c) 債務者にとって最も負担の大きい債務
(d) 最初に発生した債務
前記の基準のいずれをも満たさない場合には、支払いは、すべての債務
に、比例的に充当される。
15
履行の場所

第484条〔弁済の場
所〕


売買ノ目的物ノ引渡
ト同時ニ代金ヲ払フ
ヘキトキハ其引渡ノ
場所ニ於テ之ヲ払フ
コトヲ要ス
第484条・改正案〔弁済の場所〕

弁済ヲ為スヘキ場
所ニ付キ別段ノ意
思表示ナキトキハ特
定物ノ引渡ハ債権
発生ノ当時其物ノ存
在セシ場所ニ於テ
之ヲ為シ其他ノ弁済
ハ債権者ノ現時ノ住
所ニ於テ之ヲ為スコ
トヲ要ス
第574条〔代金支払場
所〕




(1)弁済をすべき場所について別段の意思表示
がないときは,特定物の引渡の場合は,債権発
生の当時その物の存在した場所で,種類物の引
渡の場合は,種類物の特定の当時その物の存
在した場所で,その他の引渡債務(金銭債務)の
弁済は,債権者の現時の住所でこれをしなけれ
ばならない。
(2)その他の債務(作為債務)については,債務
者の現時の住所で弁済をしなければならない。
第574条・改正案〔代金支払場所〕


(1)売買代金の支払は,第484条1項の規定に従
い,債権者である売主の住所でこれをしなけれ
ばならない。
(2)売買の目的物の引渡と同時に代金を払うべ
きときは,買主は,第533条の規定の趣旨を援
用して,その引渡の場所で支払うことができる。
16
履行の費用

第485条〔弁済の費用〕


弁済ノ費用ニ付キ別段ノ
意思表示ナキトキハ其費
用ハ債務者之ヲ負担ス但
債権者カ住所ノ移転其他
ノ行為ニ因リテ弁済ノ費
用ヲ増加シタルトキハ其
増加額ハ債権者之ヲ負
担ス
第558条〔売買の契約費
用〕

売買契約ニ関スル費用
ハ当事者双方平分シテ
之ヲ負担ス

第485条・改正案〔弁済の費用〕


弁済の費用について別段の意思
表示がないときは,その費用は,
債務者がこれを負担する。但し,
債権者が住所の移転,その他の
行為によって弁済の費用を増加し
たときは,その増加額は債権者が
これを負担する。
第558条・改正案〔売買費用〕

売買契約に関する費用は,その結
果が双方に利益をもたらすもので
あることに鑑み,民法485条の但し
書きの法理,および,民法427条
の趣旨に基づいて,当事者の双方
が平分してこれを負担する。
17
履行の証明

第486条〔受取証書
請求権〕


弁済者ハ弁済受領
者ニ対シテ受取証
書ノ交付ヲ請求ス
ルコトヲ得
第487条〔債権証書
返還請求権〕

攻撃的
主張
債権ノ証書アル場
合ニ於テ弁済者カ
全部ノ弁済ヲ為シタ
ルトキハ其証書ノ
返還ヲ請求スルコト
ヲ得
請求
履行請求,損害賠
償請求
否認
契約の不成立
延期的
抗弁
防御的
主張
抗
弁
永久的
抗弁
同時履行の抗弁権
催告の抗弁権
検索の抗弁権
無 取消的無効,狭
効 義の無効
弁済,相殺,更
消
改,免除,混同,
滅
消滅時効
18
履行の主体
債務者
本来の債務者 債務者本人
保証人(通説) 保証人(通説)
負担部分を超えて弁済する
利害関係を有 連帯債務者,保証人
する第三者
物上保証人,抵当不動産の
第三者
第三取得者
利害関係を有
債務者の親戚,友人
しない第三者
19
第三者による履行

PECL Art. 7:106条 第三者に
よる履行

(1) 契約によって債務者の個人的な
履行が要求されている場合を除き,
債権者は,次の各項の一つに該当
するときは,第三者による履行を拒
絶することができない。



(a) 第三者が債務者の同意を得て
行為するとき
(b) 第三者が履行について正当な
利益を有する場合において,債務
者が履行をせず,または,履行期に
履行しないであろうことが明らかな
とき
(2) 第三者が,前項に従って履行を
したときは,債務者は債務を免れる。

第474条〔第三者の
弁済〕


(1)債務ノ弁済ハ
第三者之ヲ為スコ
トヲ得但其債務ノ
性質カ之ヲ許サ
サルトキ又ハ当
事者カ反対ノ意思
ヲ表示シタルトキ
ハ此限ニ在ラス
(2)利害ノ関係ヲ
有セサル第三者
ハ債務者ノ意思
ニ反シテ弁済ヲ為
スコトヲ得ス
20
履行の相手方

弁済受領権者に対する弁済

第478条〔債権の準占有者への弁済〕


第480条〔受取証書持参人への弁済〕


債権ノ準占有者ニ為シタル弁済ハ弁済者ノ善意ナリシトキニ限リ其効力ヲ有
ス
受取証書ノ持参人ハ弁済受領ノ権限アルモノト看做ス但弁済者カ其権限ナ
キコトヲ知リタルトキ又ハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス
弁済受領権者以外の者に対する弁済

第479条〔受領権なき者への弁済〕


前条ノ場合ヲ除ク外弁済受領ノ権限ヲ有セサル者ニ為シタル弁済ハ債権者
カ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル限度ニ於テノミ其効力ヲ有ス
第481条〔差押債権の弁済〕


(1)支払ノ差止ヲ受ケタル第三債務者カ自己ノ債権者ニ弁済ヲ為シタルトキ
ハ差押債権者ハ其受ケタル損害ノ限度ニ於テ更ニ弁済ヲ為スヘキ旨ヲ第三
債務者ニ請求スルコトヲ得
(2)前項ノ規定ハ第三債務者ヨリ其債権者ニ対スル求償権ノ行使ヲ妨ケス
21
民法478条と民法480条
との関係
第478条
〔債権の準占有者への弁済〕
第480条
〔受取証書持参人への弁済〕
債権ノ準占有者ニ為シタル弁済 受取証書ノ持参人ハ弁済受領ノ権限
条 ハ弁済者ノ善意〔且無過失〕ナリ アルモノト看做ス但弁済者カ其権限ナ
文 シトキニ限リ其効力ヲ有ス
キコトヲ知リタルトキ又ハ過失ニ因リテ
之ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス
現行法:a∧b〔∧c〕→R
a→R; not(b)∨not(c)→not(R)
論
理 (a:準占有者への弁済,b:善意, (a:受取証書の持参人への弁済,b:
c:無過失,R:弁済としての効力) 善意,c:無過失)
債権の準占有者になした弁済は,弁済としての効力を有する。ただし,弁
統 済者が,受領者に弁済受領権限がないことを知っていたとき又は知らない
一 ことに過失があったときは,この限りでない(最判昭37・8・21民集20巻921
号)。
22
民法478条の拡大・
類推解釈
類推的
視点
銀行取引
分析的視点
判例
定期預金
の期限前
払戻し
定期預金契約の解約+
弁済
弁済と
同視
最判昭41・10・4民集20巻8
号1565頁
預金担保
貸付にお
ける相殺
定期預金への担保設定
+貸付+相殺予約+相
殺
期限前
払戻し
と同視
最判昭48・3・27民集27巻2
号376頁,最判昭52・8・9民
集31巻4号742頁,最判昭
59・2・23民集38巻3号445頁
総合口座
取引にお
ける相殺
同上
普通預金の払戻請求に
よって生じた貸金債権と
定期預金債権との相殺
期限前
払戻し
と同視
最判昭63・10・13判時1295
号57頁
23
練習問題11
(民法478条と民法480条)

事例問題



毎月25日にA新聞の購読料の集金に来るはずの
集金人Bが,今月に限って24日にやってきた。A社
の社印のある領収書を持参していたので, Cは,B
に新聞代を支払った。
翌日の25日に,別の集金人Dがやってきて,A社
の新聞購読料の請求をした。昨日の集金人Bは,
先月クビになったのだという。
Cは,再度,Dに新聞購読料を支払わなければな
らないか。
24
履行の効果

債権・債務の消滅






履行の効果としての債権・債務の消滅
履行以外の債権・債務の消滅原因
代物弁済とその効果
弁済の提供とその効果
供託とその効果
第三者の弁済とその効果(弁済による
代位)
25
債権の消滅原因
契約
代物弁済,更改,供託
法
債権者の
免除
律
単独行為
単独
債 行
行為 債務者の
権 為
相殺
単独行為
の
契約 債権譲渡
消
法律
滅
弁 行為 単独
準法律行為(通説)
寄付行為
原
済
行為
因
事実行為
競業避止,労務に服する
事件
混同,
債務者の責めに帰すべきでない履行不能
26
履行の効果としての
債権・債務の消滅

履行の効果としての債権・債務の消滅


債務者による履行
第三者による履行


代位という観点からの説明
債権の法定移転という観点からの説明
27
債務者の履行(弁済)
による債務の消滅
債権者
債務者
目的物
28
第三者の履行(弁済)
による代位
債権者
債務者
求償
目的物
第三者
29
第三者の履行(弁済)に
よる代位(法定移転)
債務者
位
代
る
によ
によ
よ
代
求償
弁済
済
弁
に
る
位
る代
弁済
位
債権者
目的物
第三者
30
代物弁済

第482条〔代物弁済〕


債務者カ債権者ノ承諾ヲ以テ其負担シタル給付ニ代ヘ
テ他ノ給付ヲ為シタルトキハ其給付ハ弁済ト同一ノ効力
ヲ有ス
仮登記担保契約に関する法律

第一条(趣旨)

この法律は、金銭債務を担保するため、その不履行がある
ときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他
の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の
予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契
約による権利について仮登記又は仮登録のできるもの(以
下「仮登記担保契約」という。)の効力等に関し、特別の定
めをするものとする。
31
弁済の提供

第492条〔弁済提供の効果〕


弁済ノ提供ハ其提供ノ時ヨリ不履行ニ因リテ生
スヘキ一切ノ責任ヲ免レシム
第493条〔提供方法・現実の提供と口頭の
提供〕

弁済ノ提供ハ債務ノ本旨ニ従ヒテ現実ニ之ヲ為
スコトヲ要ス但債権者カ予メ其受領ヲ拒ミ又ハ債
務ノ履行ニ付キ債権者ノ行為ヲ要スルトキハ弁
済ノ準備ヲ為シタルコトヲ通知シテ其受領ヲ催告
スルヲ以テ足ル
32
供託(1/2)

第494条〔供託による免責〕


債権者カ弁済ノ受領ヲ拒ミ又ハ之ヲ受領スルコト能
ハサルトキハ弁済者ハ債権者ノ為メニ弁済ノ目的物
ヲ供託シテ其債務ヲ免ルルコトヲ得弁済者ノ過失ナ
クシテ債権者ヲ確知スルコト能ハサルトキ亦同シ
第495条〔供託の方法〕



(1)供託ハ債務履行地ノ供託所ニ之ヲ為スコトヲ要ス
(2)供託所ニ付キ法令ニ別段ノ定ナキ場合ニ於テハ
裁判所ハ弁済者ノ請求ニ因リ供託所ノ指定及ヒ供託
物保管者ノ選任ヲ為スコトヲ要ス
(3)供託者ハ遅滞ナク債権者ニ供託ノ通知ヲ為スコト
ヲ要ス
33
供託(2/2)

第496条〔供託物の取戻〕



第497条〔自助売却金の供託〕


(1)債権者カ供託ヲ受諾セス又ハ供託ヲ有効ト宣告シタル判決
カ確定セサル間ハ弁済者ハ供託物ヲ取戻スコトヲ得此場合ニ
於テハ供託ヲ為ササリシモノト看做ス
(2)前項ノ規定ハ供託ニ因リテ質権又ハ抵当権カ消滅シタル場
合ニハ之ヲ適用セス
弁済ノ目的物カ供託ニ適セス又ハ其物ニ付キ滅失若クハ毀損
ノ虞アルトキハ弁済者ハ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ競売シ其代価
ヲ供託スルコトヲ得其物ノ保存ニ付キ過分ノ費用ヲ要スルトキ
亦同シ
第498条〔供託物還付の要件〕

債務者カ債権者ノ給付ニ対シテ弁済ヲ為スヘキ場合ニ於テハ
債権者ハ其給付ヲ為スニ非サレハ供託物ヲ受取ルコトヲ得ス
34
第三者の弁済による
代位(1/5)

第499条〔任意代位〕



(1)債務者ノ為メニ弁済ヲ為シタル者ハ其弁済
ト同時ニ債権者ノ承諾ヲ得テ之ニ代位スルコト
ヲ得
(2)第467条〔指名債権譲渡の対抗要件〕ノ規
定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第500条〔弁済者の法定代位〕

弁済ヲ為スニ付キ正当ノ利益ヲ有スル者ハ弁
済ニ因リテ当然債権者ニ代位ス
35
第三者の弁済による
代位(2/5)

第501条〔弁済による代位の効果・代位者相互の関係〕

前二条ノ規定ニ依リテ債権者ニ代位シタル者ハ自己ノ権利ニ基キ求償ヲ
為スコトヲ得ヘキ範囲内ニ於テ債権ノ効力及ヒ担保トシテ其債権者カ有セ
シ一切ノ権利ヲ行フコトヲ得 但左ノ規定ニ従フコトヲ要ス






一 保証人ハ予メ先取特権,不動産質権又ハ抵当権ノ登記ニ其代位ヲ附記シ
タルニ非サレハ其先取特権,不動産質権又ハ抵当権ノ目的タル不動産ノ第三
取得者ニ対シテ債権者ニ代位セス
二 第三取得者ハ保証人ニ対シテ債権者ニ代位セス
三 第三取得者ノ一人ハ各不動産ノ価格ニ応スルニ非サレハ他ノ第三取得者
ニ対シテ債権者ニ代位セス
四 前号ノ規定ハ自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ担保ニ供シタル者ノ間ニ之ヲ
準用ス
五 保証人ト自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ担保ニ供シタル者トノ間ニ於テハ
其頭数ニ応スルニ非サレハ債権者ニ代位セス但自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務
ノ担保ニ供シタル者数人アルトキハ保証人ノ負担部分ヲ除キ其残額ニ付キ各
財産ノ価格ニ応スルニ非サレハ之ニ対シテ代位ヲ為スコトヲ得ス
右ノ場合ニ於テ其財産カ不動産ナルトキハ第1号ノ規定ヲ準用ス
36
第三者の弁済による
代位(3/5)

第502条〔一部弁済による代位〕


(1)債権ノ一部ニ付キ代位弁済アリタルトキハ
代位者ハ其弁済シタル価額ニ応シテ債権者ト
共ニ其権利ヲ行フ
(2)前項ノ場合ニ於テ債務ノ不履行ニ因ル契
約ノ解除ハ債権者ノミ之ヲ請求スルコトヲ得但
代位者ニ其弁済シタル価額及ヒ其利息ヲ償
還スルコトヲ要ス
37
第三者の弁済による
代位(4/5)

第503条〔弁済による代位と債権証書・担
保物〕


(1)代位弁済ニ因リテ全部ノ弁済ヲ受ケタル
債権者ハ債権ニ関スル証書及ヒ其占有ニ在
ル担保物ヲ代位者ニ交付スルコトヲ要ス
(2)債権ノ一部ニ付キ代位弁済アリタル場合
ニ於テハ債権者ハ債権証書ニ其代位ヲ記入
シ且代位者ヲシテ其占有ニ在ル担保物ノ保
存ヲ監督セシムルコトヲ要ス
38
第三者の弁済による
代位(5/5)

第504条〔債権者の担保保存義務〕

第500条ノ規定ニ依リテ代位ヲ為スヘキ者ア
ル場合ニ於テ債権者カ故意又ハ懈怠ニ因リ
テ其担保ヲ喪失又ハ減少シタルトキハ代位ヲ
為スヘキ者ハ其喪失又ハ減少ニ因リ償還ヲ
受クルコト能ハサルニ至リタル限度ニ於テ其
責ヲ免ル
39
練習問題12



AのBに対する6,000万円の債権について,C,D
が保証人となり,E,Fが物上保証人となった。
Eは価格4,000万円の不動産について債権者A
のために抵当権を設定し,Fは6,000万円の不
動産に債権者Aのために抵当権を設定したとす
る。
保証人Cが債務者Bに代わって6,000万円を弁
済した場合に,保証人Cは,債権者Aに代位して,
Fの不動産に対する抵当権を実行して,6,000万
円全額の回収ができるか。
40
保証の構造
債権者
債権
債務者
保証委託契約
保証契約
(支払請求) (事前・事後求償権)
保証人
41
債務者の弁済による
保証(債務)の消滅
Y1本来の
債務
保証
Y1
請求
X
請求
Y1の債務
の保証
Y1本来の
債務の弁済
Y2
Y1
請求権消滅
保証
付従性に
よって消滅
Y2
請求できない
X 満足
42
保証人の弁済による
代位と求償
Y1本来の
債務
保証
Y1
請求
X
Y1の債務
の保証
Y1本来の
債務を
保証人が弁済
Y2
Y1
求償
請求
X 満足
保証
Y1の債務
の保証
Y2
Y2の全額弁済による
X(債権者)への代位
Y2
43
練習問題12の解説



保証人Cは,6,000万円
支払った場合,C自身の
負担部分は,1,500万円
と計算されるので,それ
を超えて支払った分につ
き,それぞれの保証人の
負担部分の範囲で求償
することができることにな
る(民法465条)。
すなわち,Dに対しては
1,500万円,Eに対しては
1,200万円,Fに対しては,
1,800万円ということにな
る。
したがって,CはFの不動
産については,抵当権を
実行しても,1,800万円
の範囲でしか配当を受け
ることができない。
資格
責任財産 負担部分
計算式
債務者
B
全財産
6,000
6,000×(1/1)
保証人
C
全財産
1,500
6,000×(1/4)
保証人
D
全財産
1,500
6,000×(1/4)
物上保証人
E
(第三取得者)
4,000万
円
1,200
6,000×2/4×
(4,000/6,000
+4,000)
物上保証人
F
(第三取得者)
6,000万
円
1,800
6,000×2/4×
(6,000/6,000
+4,000)
44
練習問題13




債権者Aは,Bに対して6,000万円の債権を担保
させるため,C,D,E,Yを連帯保証人とし,さらに,
CとYとは,その所有するそれぞれの甲不動産
(2,000万円),乙不動産(3,000万円)に抵当権
を設定させた。
その後YはBに代わってBの債務全額を弁済し,A
に代位してCの抵当権を実行した。
Cの不動産に後順位抵当権を有するXは,Cの負
担部分が最も少なくなる説として,以下のC説を
主張している。
Xの主張は認められるか。
45
練習問題13の解説
(1/5)

A説(最高裁)


物上保証人を
兼ねる保証人
もすべて一人
の保証人とみ
なす。
C,Yの物上保
証人としての性
質が無視され
るのが難点。
資格
債務者 B
責任財産
全財産
負担部分
計算式
6,000万 6,000×(1/1)
全財産+
保証人 C
2,000万円
1,500万 6,000×(1/4)
保証人 D
全財産
1,500万 6,000×(1/4)
保証人 E
全財産
1,500万 6,000×(1/4)
全財産+
保証人 Y
3,000万
1,500万 6,000×(1/4)
46
練習問題13の解説
(2/5)

B説


物上保証人を
兼ねる保証人
は,物上保証人
とみなす。
C,Yの保証人と
しての性質が無
視される上,C
が単なる保証人
よりも負担が少
なくなるのが難
点。
資格
責任財産 負担部分
計算式
債務者
B
全財産
6,000万
6,000×(1/1)
保証人
D
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
保証人
E
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
全財産+
物上保証人 C
2,000万
6,000×2/4×
1,200万
全財産+
物上保証人 Y
3,000万
(2,000/2,000
+3,000)
6,000×2/4×
1,800万
(3,000/2,000
+3,000)
47
練習問題13の解説
(3/5)

C説


物上保証人を兼
ねる保証人は,
保証人と物上保
証人の二人であ
るとみなす。
Y,Cの負担部分
が極端に増加す
る一方で,Cの物
的負担が極端に
少なくなるのが
難点。
資格
責任財産 負担部分
計算式
債務者
B
全財産
6,000万 6,000×(1/1)
保証人
C
全財産
1,000万 6,000×(1/6)
保証人
D
全財産
1,000万 6,000×(1/6)
保証人
E
全財産
1,000万 6,000×(1/6)
保証人
Y
全財産
1,000万 6,000×(1/6)
6,000×2/6×
物上保証人 C
2,000万
800万
(2,000/2,000
+3,000)
6,000×2/6×
物上保証人 Y
3,000万
1,200万
(3,000/2,000
+3,000)
48
練習問題13の解説
(4/5)

D説


物上保証人を兼
ねる保証人は,
保証人と物上保
証人という競合
した責任を負担
する。
Dが全額弁済し
て,Aに代位し,
Yの不動産の抵
当権を実行して
1,800万円配当
を受け,C,Eか
ら1,500万円ず
つ回収すると,
回り求償が生じ
るという難点が
ある。
資格
責任財産 負担部分
計算式
債務者
B
全財産
6,000万
6,000×(1/1)
保証人
C
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
保証人
D
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
保証人
E
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
保証人
Y
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
6,000×2/4×
物上保証人 C
2,000万
1,200万
(2,000/2,000+
3,000)
6,000×2/4×
物上保証人 Y
3,000万
1,800万
(3,000/2,000+
3,000)
49
練習問題13の解説
(5/5)

E説


物上保証人
を兼ねる保
証人は,保
証人の責任
の範囲内で,
物件の価格
に応じた物
的負担をす
る。
D説の競合
責任の意味
を,保証人
の責任の範
囲に限定す
る理論的根
拠が明確で
ない。
資格
責任財産 負担部分
計算式
債務者
B
(その第三取得者)
全財産
6,000
6,000×(1/1)
保証人
C
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
保証人
D
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
保証人
E
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
保証人
Y
全財産
1,500万
6,000×(1/4)
物上保証人
C
(その第三取得者)
2,000万
1,000万
1,500×
(2,000/3,000)
物上保証人
Y
(その第三取得者)
3,000万
1,500万
1,500×
(3,000/3,000)
50
参考資料
51
強制執行の難易に基づいた
債務の分類
債務の種類
金銭債務
作
為
債
務
引
特定物の
渡 物の
債 引渡 引渡債務
務 債務 種類物の
引渡債務
民法
民事執行法
402条~405条 43条~167条
400条
168条~170条
401条
-
行為債務(引渡以外の
民法414条2項
作為債務)
171条~173条
不作為債務
民法414条3項
52
弁済の場所と代金支払場
所との関係(立法理由)
特定物の引渡
民法484条に従った
弁済の場所
民法574
条に従っ
た代金支
払の場所
債権発生時の物
の所在地
(債務者・売主の
住所)
種類物の引渡
代金の支払
債権者・買主の
住所
債権者・売主
の住所
同時履行 立法理由(民法533条の精神を生か
の場合 す)
物の引渡の
場所
異時履行 立法理由(民法484条の原則通りの
の場合 ため,旧民法の該当条項を削除)
債権者・売主
の住所
53
弁済の場所と立法例
債務の
種類
立法例
例
特定物の
引渡義務
不動産の
引渡
種類物の
引渡義務
ビール1ダース
金銭債務
代金支払
借金返済
その他の
作為債務
医療
理・美容
旧民法
合意時の目的物
の所在地(債務
者の住所)
特定の指定の 債務者の
場所(債務者の
住所
住所)
債務者の
住所
現行民法
債権発生当時の
目的物の所在地
(債務者の住所)
債権者の
住所
債権者の
住所
債権者の
住所
債務者の
住所
UNIDROIT
EU契約法
債務者の住所
債権者の住所
54
申込の誘引と予約との
関係
戦略
権限者
申込の誘引
予約
権限の要求
申込の誘引
予約の申込
権限の付与者
申込者
予約者(諾約者)
権限の取得者
被申込者(承諾者) 予約の相手方(要約者)
否定的 申込の拒絶
権限行使
肯定的
承諾(契約締結権
の行使)
予約の解除
予約完結権の行使
55
申込の誘引と予約との
実例での比較
戦略
権限
申込の誘引
予約
権限の要求
皆様。どうか当ホテル
をご利用ください。
権限の付与
ホテルの宿泊を申し込 お待ちしております。
みます。
(当ホテルにご宿泊下さい)
権限の取得者
ホテル
(契約締結権者)
予約の申込者
(予約完結権者)
否定的
残念ながら満室です。
予約を取りやめます。
肯定的
どうぞ。お待ちしており 予約を完結します。チェック
ます。
インをお願いします。
契約締結
権の行使
ホテルの予約をお願いしま
す。
56
最一判昭61・11・27
民集40巻7号1205頁(1/2)


民法501条但書四号,五号の規定は,保証人又は物上保証人が複数存
在する場合における弁済による代位に関し,右代位者相互間の利害を公
平かつ合理的に調整するについて,代位者の通常の意思ないし期待に
よって代位の割合を決定するとの原則に基づき,代位の割合の決定基準
として,担保物の価格に応じた割合と頭数による平等の割合を定めている
が,右規定は,物上保証人相互間,保証人相互間,そして保証人及び物
上保証人が存在する場合における保証人全員と物上保証人全員との間
の代位の割合は定めているものの,代位者の中に保証人及び物上保証
人の二重の資恪をもつ者が含まれる場合における代位の割合の決定基
準については直接定めていない。
したがって,右の場合における代位の割合の決定基準については,二重
の資格をもつ者を含む代位者の通常の意思ないし期待なるものを捉える
ことができるのであれば,右規定の原則に基づき,その意思ないし期待に
適合する決定基準を求めるべきであるが,それができないときは,右規定
の基本的な趣旨・目的である公平の理念にたち返って,代位者の頭数に
よる平等の割合をもって決定基準とするほかはないものといわざるをえな
い。
57
最一判昭61・11・27
民集40巻7号1205頁(2/2)


しかして,右の場合に,二重の資格をもつ者は他の代位者との関係で
は保証人の資恪と物上保証人の資格による負担を独立して負う,すな
わち,二重の資格をもつ者は代位者の頭数のうえでは二人である,と
して代位の割合を決定すべきであると考えるのが代位者の通常の意
思ないし期待でないことは,取引の通念に照らして明らかであり,また,
仮に二重の資格をもつ者を頭数のうえであくまで一人と扱い,かつ,そ
の者の担保物の価格を精確に反映させて代位の割合を決定すべきで
あると考えるのが代位者の通常の意思ないし期待であるとしても,右
の二つの要請を同時に満足させる簡明にしてかつ実効性ある基準を
見出すこともできない。
そうすると,複数の保証人及び物上保証人の中に二重の資格をもつ
者が含まれる場合における代位の割合は,民法501条但書四号,五
号の基本的な趣旨・目的である公平の理念に基づいて,二重の資格を
もつ者も一人と扱い,全員の頭数に応じた平等の割合であると解する
のが相当である。
58
CISG:
国連国際動産売買条約





国連国際動産売買条約(CISG: United Nations Convention on
Contracts for the International Sales of Goods)の略。
1966年に発足した国連国際商取引法委員会(UNCITRAL: United
Nations Commission on International Trade Law)によって,1978年
に草案が起草され,ウィーンで開かれた62カ国が出席する外交会議で,
1980年4月10日に採択された。
国連国際動産売買条約(CISG)は,1980年にウィーンで採択されたため,
「ウィーン統一売買法」とか「ウィーン売買条約」とも呼ばれている。
この条約は,1988年1月1日に発効し,現在,加盟国は,アメリカ合衆国,
ドイツ,フランス,カナダ,イタリア等の先進諸国,ロシア,中国等の社会
主義諸国,開発途上国を含め,52カ国となっている。先進諸国の中で
まだ加盟していないのは,イギリスと日本のみである。
この条約は,これまで不可能とされていた大陸法と英米法との私法の
融合を売買契約について初めて実現した画期的なものであり,各国の
民法改正,例えば,ドイツの債務法改正に大きな影響を与えている。
59
UNIDROIT Principles:ユニ
ドロワ国際商事契約法原則



1926年に国際連盟の一機関として設立され,1930年4月か
ら,国際売買に関する法の統一を推進してきた私法統一国
際協会(UNIDROIT: International Institute for the
Unification of Private Law;Institut international pour
l‘unification du droit prive)が作成した国際商事契約原則
(UNIDROIT Principles for International Commercial
Contracts,1994)の略(PICCとも略す)。
なお,私法統一国際協会(UNIDROIT)は,1940年にユニドロ
ワ法(政府間協定)によって,独立の組織としてローマで再設
立され,現在,イタリア,日本を含めて57の加盟国によって支
えられている。
ユニドロワ原則は,CISGと異なり,正規の条約ではないが,
CISGがカバーしていない売買以外の契約全般および契約の
有効・無効について体系的な規定を持つため,CISGを補うも
のとして,国際商事仲裁を中心に広く利用されている。
60
PECL:ヨーロッパ契約法
原則



EUにおける契約法の調和,ヨーロッパ契約法の作成を目的としてEU
加盟各国から選ばれた法律家によって構成される私的委員会である
ヨーロッパ契約法委員会(Commission on European Contract Law;
委員長オレ・ランドー(Ole Lando)教授)が作成したヨーロッパ契約法
原則(PECL: Principles of European Contract Law,1994, 1997)の略。
CISGにおける国際動産売買契約,ユニドロワ原則における国際商事
契約をさらに一歩進め,国際商事契約ばかりでなく,消費者契約法を
含め,EUの契約法全般について契約原則を明らかにしようとするも
のである。本稿は,PECLの1998年7月の最終版に基づいて比較を行
なっている。
1994年の第1版については,第1部についての解説書(The
Principles of European Contract Law, PartI: Performance, NonPerformance and Remedies, 1995)が公刊されている。
61