Transcript 野外集団を用いた研究
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 ：野外集団を用いた研究 生物多様性進化分野 A1BM3035 吉田 卓司 オスのみに見られる派手な形質 ♂ ♂ ♀ ♀ メスが派手なオスを交配相手に選好する ため進化した メスの選好性の進化仮説 (Anderson 1994) 間接的選択モデル • Runawayモデル • Good-geneモデル メスの選好性の進化仮説 (Anderson 1994) 間接的選択モデル • Runawayモデル • Good-geneモデル 必要条件 メスの好み 交配相手 メスが好みのオスと交配する メスの選好性の進化仮説 (Anderson 1994) 間接的選択モデル • Runawayモデル • Good-geneモデル 必要条件 メスの好みがオスの繁殖成功の差を 作り出す メスの好み オスの繁殖成功の差 交配相手 メスの選好性の進化仮説 (Anderson 1994) 間接的選択モデル • Runawayモデル • Good-geneモデル 条件 メスの好み 高いレベルでの実現が必要 (Kirkpatrick and Barton 1997) オスの繁殖成功の差 交配相手 ほとんど調べられていない 実際の野外での交配 好まれるオス オレンジ好き 好まれないオス 実際の野外での交配 オレンジ好き 実際の野外での交配 × 強制交配 好みのオスと交配できるとは 限らない 研究の目的 間接的選択によるメスの選好性の進化が 起こる可能性を検証する アプローチ メスの好み オスの繁殖成功の差 交配相手 本研究の目的 実際に実現されているか メスの好み オスの繁殖成功の差 交配相手 間接的選択によるメスの選好性の進化が 起こる可能性を検証する 研究材料 グッピー（Poecilia reticulata) オス • • • • メス オスのカラーパターンに高い遺伝率 メスはオスのカラーパターンに選好性を示す 体内受精、卵胎生の繁殖様式 縄張りや子育ての性質はない 研究材料 沖縄県名護市我部祖河に生息する 野外集団のグッピー 研究材料 野外集団 野外で交配済み 採集 ６１個体 ♀ ♂ 産仔 ♂ ５８腹 １５３個体 これら３タイプの グッピーを用いる 採集したオス （野外集団） 採集したメス （野外集団） 交 配 採集したオス （野外集団） 産 仔 採集したメス （野外集団） メスが産んだ 子供 採集したオス （野外集団） 採集したメス （野外集団） メスが産んだ 子供 オスの形質値 メスの選好性 オスの形質値 オスの形質の測定 デジタルカメラで撮影したオスの写真から 体や尾びれ、カラーパターンの サイズ・色（明度・彩度・輝度）を測定 メスの選好性の測定 Brooks (2000)の装置で 配偶者選択実験 メスが各オスの 側にいた時間 を測定 そのオスに対する メスの選好性 解析① メスは好みのオスと実際に交配しているか メスの好み ？ 交配相手 オスの繁殖成功の差 メスの選好性と実際の交配相手 交 配 産 仔 実際のメスの交配相手の特定は困難 メスが産んだ子供を交配相手の指標とする メスが好みのオスと交配しているかどうか 野外集団と交配相手のどちらが魅力的か 魅力的な オス 頻 度 野外のオスの魅力 好き 野外集団のオスの 交配相手のオスの ＜ 魅力の平均値 魅力 好みのオスと交配している メスがオスに示した選好性を オスの形質値で 個々のメスの選好性 メスごとに重回帰 それぞれのオスの魅力を推定 野外集団の 魅力の平均値 交配相手 の魅力 頻度 嫌い 選好性の 実現度 野外集団のオスの魅力 好き 結果②：メスの選好性と実際の交配相手 14 12 10 頻 度 8 6 4 2 0 -5 0 5 選好性の実現度 有意にゼロより大きい （一標本t検定：P=0.0012) メスは有意に好みのオスと交配している 解析② メスの選好性によって オスの繁殖成功に差ができるか メスの好み O.K 交配相手 ？ オスの繁殖成功の差 どのようなオスがメスに好まれるか メスがオスに示した選好性をオスの形質に 集団全体で重回帰 オスに示す 選好性 (p=0.0008) 0.0152 = 0.00270 － + × 全体面積 0.0116 + × 黒面積比率 0.0148 × オレンジスポット の明度 0.0143 + × 全体輝度 どのようなオスが高い繁殖成功を得ているか 野外集団の オス 頻 度 繁殖成功 形質値 メスが産んだ 子供 平均値の変化 交配・産仔 頻 度 形質値 どのようなオスが高い繁殖成功を得ているか • 野外集団のオス • 野外で交配したメスの子供 オレンジ面積比率 オレンジ明度 メスの子供 0.2 6 0.1 2 8 (p<0.0001) 0.1 95 85 (p<0.0001) 75 0 65 (p=0.0013) 55 メスの子供 45 15 0.2 メスの子供 野外オス 0.0 30 90 75 60 45 30 15 0 4 45 野外オス 0.0 60 0 野外オス 0.0 4 0.0 8 0.1 2 0.1 6 0 50 40 30 20 10 0 黒面積比率 オレンジ面積比率やオレンジ明度の低いオス、 黒面積比率の高いオスが高い繁殖成功 メスの選好性とオスの繁殖成功 形質 オレンジ面積比率 黒面積比率 オレンジの明度 選好性 繁殖成功 （小） 小 大 大 小 小 メスの選好性によって オスの繁殖成功に差が生じている 結果 間接的選択による選好性の進化 高いレベルでの実現が必要 (Kirkpatrick and Barton 1997) よく実現している メスの好み オスの繁殖成功の差 交配相手 本研究が はじめて 結論 間接的選択によるメスの選好性の進化は 実際に起こり得る 今後の課題 本研究で示したのは 複数の形質を総合した 選好性の実現性 グッピーの選好性は 形質ごとに独立な 進化ユニット (Brooks and Couldridge 1999) 形質ごとに メスの選好性の実現性 を明らかにする必要がある