Transcript 固体電子物性特論
固体電子物性特論 第6回 石橋隆幸 今日の内容 • • • • p-n接合 金属-半導体接合 光学特性 磁性 p-n接合 p-n接合の電荷分布(熱平衡状態) キャリアの拡散 - - - 正孔 - - - - 電界によるドリフト - - - - - 電子 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + 電界 - - - - + + + + p-n接合の電荷分布(熱平衡状態) 中性領域 キャリアの拡散 - - - - - 中性領域 - - - + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + 空乏領域(空乏層) 正孔、電子ともに拡散による電流とドリフトによる電流 が釣り合っている。 この時キャリアの存在しない(ドナーイオン、アクセプタ イオンはある)領域、すなわち空乏領域が形成される。 空間電荷分布 電界分布 電位分布 バンド構造 キャリアのドリフト n型半導体を考える 半導体中の電子は、熱によるエネルギーにより 運動エネルギーを得ている。3次元の場合、3/2kT 1 3 2 mnvth kT 2 2 mn 電子の有効質量 v th 電子の熱速度 の平均値 Si, GaAsで107m/s程度 キャリアのドリフト 電界がある場合、平均緩和時間の間に 電子が受け取る運動量は q mnvn q vn mn ここで q n mn 平均緩和時間は電子 がなににも衝突しない で進む平均距離すなわ ち平均自由行程だけ進 むのに要する時間 は、移動度である。 従って電子は電界によってvnの速度を得る。 半導体に電界を加えると? 電界 n形 EC Ei EV EF V EF EC Ei EV プラス側が 下になる 電子の受ける力はポテンシャルエネルギーの勾配に等しい dEi q dx 半導体に電界を加えると? 電界 n形 V ドリフト電流 EF EC Ei EV 電子の受ける力はポテンシャルエネル ギーの勾配に等しい dEi q dx この時流れる電流は Jdrift qnn 拡散電流 半導体中のキャリア密度に勾配があるときに流れる電流 拡散の式 dn F D dx Dは拡散係数 電流で考えると(n形の場合) dn Jn qF qD dx ここで1次元の場合の 拡散係数Dは kT D n q p-n接合に流れる電流 p-n接合には拡散電流とドリフト電流が流れるが それらは向きが逆でつり合っている。しがたって、 J p Jdrift Jdiffusion dn qnp qD dx 正孔密度の式 p ni expEi EF kT を使うと dEF 0 dx を得る フェルミレベルは 至る所で一定 p-n接合のバンド図 熱平衡状態 フェルミレベルが 同じになる EC EF EV 正孔 価電子帯 p型 n型 p-n接合の電流ー電圧特性 順方向に電流が 流れやすい 逆方向には ほとんど流れない 整流性 p-n接合のキャリア分布 金属ー半導体接合 p-n接合と同様の整流作用を示す場合、 示さない場合がある。 この特性は仕事関数によって説明される。 仕事関数 真空準位とフェルミ準位の差 M S (整流作用を示す) 大きさ M S のエネルギー障壁ができる M S 整流作用を示さない。 オーミック接触 ショットキー接合のバンド図 発光特性 光学遷移(3つの基本形) 間接遷移、直接遷移型半導体 発光ダイオード light emitting diode (LED) 可視域付近にバンドギャップが ある材料 LEDのスペクトル 白色LEDのスペクトル Philips LEDカタログより 光源の発光効率 入力エネルギーが 可視光になる割合 白熱電球 10% 蛍光ランプ 約 25% 白色LED 約 32% 化学と工業 2007年8月号 磁性 原子の磁性 磁性体の磁化の担い手は 磁性原子の磁気モーメント 原子核 電子 e 磁気モーメントはどこから? • 電子の軌道運動 • 電子スピン • 核スピン r ボーアの原子模型 軌道運動による磁気モーメント 電子による電流 磁気モーメントは I e 2 r e ボーアの原子模型 M 0iS 0 e 2 S 0er 2 2 0e P 2m 強磁性体の物理 (近角聡信著)より ここで P mvr mr 2 は角運動量 軌道運動による磁気モーメント 角運動量はプランク定数を2で割った の整数倍の値をとる P 軌道角運動量量子数 軌道運動による磁気モーメント 0e 0e M P MB 2m 2m 0e ボーア磁子(Bohr magneton) MB 2m 磁気モーメントの 29 1.16510 Wb m 最小単位 磁気量子数 H m 2 軌道角運動量量子数 の軌道は 2 1 個の方向をとることができる 1 0 -1 このことを空間量子化という -2 またmを磁気量子数という 2 (3d軌道)の時 m=-2,-1,0,1,2の5種類 (ただしとびとびの値をとる) 電子密度分布 s p m=0では、 電子分布が丸いので、 軌道角運動量が0 となる d f 強磁性体の物理(近角聡信著)より 電子スピンによる磁気モーメント スピンによる磁気モーメント M 0e m P 0e m s MB s スピン角運動量 Ps s スピン角運動量量子数 スピン角運動量 1 2 2 全角運動量 自由原子の非閉殻電子の 軌道磁気モーメント s i スピン磁気モーメント l i 合成スピン S si i L li 合成軌道運動量 i 全角運動量 ラッセル-ソーンダーズ結合 強磁性体の物理(近角聡信著)より J S L すべてベクトルであることに注意 パウリの排他律 E 低い準位に +スピン、-スピン が配置される 基底状態に縮退がない 縮退した別の軌道に 同じスピンが配置 基底状態に縮退がある 3d軌道の場合5つの準位が縮退 電子は合計10個まで入る Ti2+ の場合 3d アルゴン殻 1s22s22p63s23p6 3d軌道には+-スピン が最大で5個ずつ 合計10個まで入れるが Ti2+では2つ フントの規則 (基底状態、縮退がある場合) • パウリの排他律の許す限り電子スピンは 平行になろうとする(可能な限り大きなS) • 可能な限り大きなL(=mの和)になるように 配置される 2 1 m 0 -1 -2 S L J 1/2 2 3/2 1 3 2 3/2 3 3/2 2 2 0 5/2 0 5/2 2 2 4 3/2 3 9/2 1 3 4 1/2 2 5/2 0 0 0 3d遷移金属イオン(3d電子配置) 2 3 4 5 6 7 8 9 10 電子数 1 Ti3+ Ti2+ V2+ Cr2+ Mn2+ Fe2+ Co2+ Ni2+ Cu2+ Cu1+ V4+ V3+ Cr3+ Mn3+ Fe3+ Co3+ Zn2+ 2 1 m 0 -1 -2 S L J 1/2 2 3/2 1 3 2 3/2 3 3/2 2 2 0 5/2 0 5/2 2 2 4 3/2 3 9/2 1 3 4 1/2 2 5/2 0 0 0 強磁性体 原子磁石間に平行になろうと する強い力が働き、すべての 原子磁石が同一方向に向き、 全体として大きな磁化を持つ。 原子間に働く力は量子力学 的な力である 交換相互作用によるもの。 強磁性体は自発磁化を持つ。 強磁性体 f キュリー温度 磁化 温度が上昇すると 熱エネルギーkTによって 磁化方向が揺らいでくる ある温度で磁化が消失 この温度をキュリー温度という キュリーワイスの法則 NM2 キュリー温度 3k(T f ) 以上で磁化率 3k(T f ) の逆数が温度 に比例 NM2 1 一般的にはTc f 温度 2種類の強磁性 遍歴電子モデル Fe, Co, Niなどの3d遷移金属の強磁性体 磁性を担う3d電子が結晶内を自由に運動している バンド構造を考える必要がある 局在モーメントモデル 酸化物のような絶縁体で強磁性を示す場合 磁気モーメントは原子の位置に局在している 原子間の超交換相互作用などが原因 強磁性金属のバンド図 磁性入門(志賀正幸著)より 強磁性金属のスピン分極率 スピン分極率 N(EF ) N (EF ) P N(EF ) N (EF ) 磁性入門(志賀正幸著)より トンネル磁気抵抗素子(TMR) スピントロニクス(宮崎照宣著)より スピントロニクス(宮崎照宣著)より 磁気ランダムアクセスメモリ (MRAM) スピントロニクス(宮崎照宣著)より 反強磁性、フェリ磁性 超交換相互作用 MnO(反強磁性) 強磁性体の物理(近角聡信著)より の構造 フェライト 化学式 MO・Fe2O3, M=Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, etc. 結晶構造 立方晶スピネル構造 Mは2価の金属 強磁性体の物理(近角聡信著)より サイト 配置 サイト数 A 4面体 8 B 8面体 16