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シンポジウムⅠ 障害学生支援を語る
精神障害者と障害学生支援
桐 原 尚 之
Kirihara Naoyuki
1.自己紹介
12歳6月・・・初めて精神科の門をくぐる。中学校1年生の6月だった。
7月・・・自分の首を常に絞める。関係妄想から神話妄想へと発展し、
幻聴や幻覚も現れる。
14歳7月・・・7月には、中学校から「責任もてないから来るな」と言わる。親が他の学校を
探して若葉養護学校(病弱校)に入学することになる。
15歳3月・・・自宅から40キロ離れた浪岡養護学校の高等部だけしか進学先がない。投
薬治療の副作用で真っ直ぐ歩くことができないため、学校には母が車で1時
間かけて、送り迎えすることになった。
浪岡養護学校は、進学コースと就職コースがあり、私はなぜか就職コースに入れられた。
就職とは、授産施設への就職である。もちろん、充分な勉強をする場所ではなかった。
小学校をやり直すか、それ以下の水準の教育であり、学校に通うのも一苦労、学校でも
ある意味一苦労。
2-1.強制入院法制化の障害学生支援
教育の障害
そもそも、「精神病」者にとっては、教育(現場)こそが障害である。久富善之は、「教育は
競争問題の中心にある」、「学校の競争が社会の競争に連動する」など、社会問題は教
育から始まる問題ととらえている(久富,1993)。一方で、教育現場での精神病の発症は
多いと思う。これは上記社会問題こそが、Psychosocial disability であるからと考える。
強制入院の対象者
そもそも、我々は「精神病」と診断されたその日から、強制入院の対象者として生きていか
なければならない。精神保健福祉法には措置入院、医療保護入院が規定され、更には移
送制度が規定されている。
また、医療法施行規則10条では、精神病患者は精神病室以外に入院できないと規定さ
れ、極めて、生きづらい法的差別をうけている。
「統合教育になれば前進」、「障害学生支援があれば前進」というわけではない。統合教
育も、結局は障害に基づき教育を分離しないだけで、強制入院によって教育の場から排
除されることまでは防げない。
我々にとっては、まず、強制の廃絶こそが、すべての最低条件である。
2-2.障害学生支援の現状
大学名
対象の障害種別
札幌学院大学 対象・・・視覚障害、聴覚障害、肢体障害)内部障害(受
験可否未定)、知的障害(受験可否未定)、(教務部入試
課,2002)
日本学生支援機構の拠点校は障害学生支援を各大学教員に
指導する為のネットワークであり、本学に障害学生支援室
等の設置はしていないし、障害学生に対する助言もしてい
ない(教務部入試課私信,2009.8.4)。
宮城教育大学 対象・・・主に、聴覚障害、視覚障害、肢体不自由
要望に応じて支援をしている。精神障害の学生から要望が
ないため、現在は精神障害の学生支援はしていない。支援
の可能性については教員の回答による。
富山大学
対象・・・視覚障害、聴覚障害、肢体障害、内部障害、発
達障害
精神障害は保健管理センターと提携。コミュニケーション
障害の場合、発達障害支援の中でも行っている。(西村様
私信,2009.8.4)
筑波大学
対象・・・視覚障害、聴覚障害、運動障害、発達障害、内
部障害
2-2.障害学生支援の現状
大学名
対象の障害種別
日本福祉大学 対象・・・視覚障害、聴覚障害、肢体障害、その他
「その他」では「通院時の出欠取り扱いへの配慮」で、
精神障害の学生支援を積極的にしている。
同志社大学
対象・・・聴覚障害、視覚障害、肢体不自由
精神障害は対象としていない。
関西学院大学 対象・・・主に視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、
広島大学
対象・・・身体等に障害があり、障害者手帳や医師の診
断書でそれらが確認でき、本人が支援を必要としている
者。
2-2.障害学生支援の現状
大学名
群馬大学
対象の障害種別
対象・・・視覚障害者,聴覚障害者及び肢体不自由者等の障
害のある学生
京都大学
視覚や聴覚の障害、肢体の不自由、その他病弱や怪我など
身体障害学生支援の名称のため病弱に精神障害を含まな
い。
大阪大学
対象・・・身体障害、発達障害及び精神障害等
東北福祉大学 対象・・・聴覚障害
障害学生支援室では聴覚障害者のノートテイクボランティア
を募集。発達障害については別の部署で行っている。精神障
害は保健管理室及び医務室で対応。
2-3.障害、学生、そして支援
障害学生支援という言葉を聞くと、ジグソーパズルのピースを、形が合わないのに
無理やりつなげて、最終的にいびつな四角形が出来上がったような感覚を連想する。
障害も、学生も、支援も、まったく異なる概念であるように思う。
まず、障害学生と学生はどう違うのか。これまでは、あまり考えられることはなく、障害
者の学生が障害学生とされてきた。では、学生支援と障害学生支援はどう違うのか。
また、障害学生を障害者の学生として、障害者の学生支援と、そうでない学生支援で
は、違いが必要なのか。精神障害者という立場からして、この疑問は大きい。
精神障害者に限定される特別な支援は、恐らく存在しないし、してはならない。精神
保健の領域では、精神障害者の特殊性を売りにしているが、そもそもそれらが我々へ
の介入の根拠とされていく。また、後に述べる、実際に求めた支援についても、誰も
が、当たり前に受けて然るべき支援であることと思う。
最後に、学生と大学の立場について基本的認識を示すが、大学は、学術の中心と
して、知的、道徳的適応能力の発展と、研究を行い提供し社会を発展させる場である
(学校教育法83条)。学生は、知的、道徳的適応能力の発展を目的として大学に入学
する者で、金を払っている消費者でもある。知的道徳的適応能力の発展には、場合
によっては必要な支援もあるし、金を払っている以上、目的達成のために大学は学生
に義務として提供すべきものがある。
3-1.実際に求めた支援と大学の対応 〈生命科学〉
事前に、障害学生支援室について問合せたら、「精神障害は対象外。発達障
害のコミュニケーション支援なら別の部署で受けられる。精神障害は、基本的
に医務室が所轄している」との回答があった。
コミュニケーション支援は必要ないし、どうしても医務室は上述の理由から嫌
だったので、特に支援要請を出さなかった。
そもそも、講義中にPCを使用してメモをとる、疲れた時に椅子の上で横になる
など、予め大学が特別になにかを用意するわけではない。申請する必然性は
ないと判断し、講義中にPCを使用してメモをとり、疲れた時に椅子の上で横に
なっていたら、担当教員に怒鳴られた。
3-2.実際に求めた支援と大学の対応 〈医学〉
・求めた支援
氏
名
桐 原
尚 之
希望事項
8月11日~8月13日、仙台、医学一般SRの参加にあたり、以
下の支援を求めます。
1.PCを使用します。
2.椅子を二つ重ねて寝ます。
理
1.筆記ではなくPCで講義の記録をします。
2.体調管理のため必要な休息は取ります。
由
1.2.とも、精神障害故必要な支援であり、医師にも上記支
援を求めるように助言を頂いております。
以
上
3-2.実際に求めた支援と大学の対応 〈医学〉
・大学の対応
PC使用は認められたが、最前列席に着席することが義務付けられた。
・対応への疑問
コセントは至る個所にあり、最前列である必然性はない。弱視の学生が隣に
座っていたが、聾の学生は最前列ではなかった。最前列の義務が科せられ
た決定的な理由はやはり不明である。また、他の学生は自由に席を選び着
席しているのに対して、私だけ席を指定されたことについても、差別と考える。
3-3.実際に求めた支援と大学の対応 〈スポーツ〉
・求めた支援
氏
名
桐 原
尚 之
希望事項
9月4日~9月6日、仙台、バーンゴルフSR参加にあたり、以下
の支援を求めます。
1. どのようなことがおこるか解り兼ねるので、支援が必要と
感じたときは、担当教員に申出ます。
2.講義には、PCを使用します。
理
1.体調管理のため必要な休息は取りますが、それ以外のこ
とは予め想定し兼ねるので、随時相談とさせてください。
由
2.体調管理のため、筆記ではなくPCで講義の記録をします。
双方とも、精神障害故必要な支援であり、医師にも上記支援
を求めるように助言を頂いております。
以
上
3-3.実際に求めた支援と大学の対応 〈スポーツ〉
・大学の対応
障害学生支援の申請書に医師の診断書を添付すること。
・対応への疑問
診断書が必要な理由が見えないし、診断書と支援の直接関係性も認めら
れない。また、私が診断書料を負担することも不服があった。
3-4.実際に求めた支援と大学の対応 〈史学〉
・求めた支援
氏
名
桐 原
尚 之
希望事項
1.PCを使用します。
2.椅子を二つ重ねて寝ます。
3.後ろの席に着席します。
理
1.体調管理のため。
2.体調管理のため。
3.体調管理のため。
由
1.2.3.とも、精神障害故必要な支援であり、医師にも上記
支援を求めるように助言を頂いております。
以
上
3-4.実際に求めた支援と大学の対応 〈史学〉
・大学の対応
記載に不足箇所(SR科目名、受講日、開催地の未記入)があるため、補足
するように。また、精神病の診断書を提出するように。
・対応への返答
未記入は補足したが、診断書には、疑義あり。
(次のスライドで、抗議メールを照会)
障害学生支援申請(事前報告)の不足箇所を補足します。
スクーリング受講科目名:歴史を見る眼
スクーリング受講日
:09年9月21日~23日
スクーリング開催地
:仙台(本学)
診断書の提出:
本SRにおいては、診断書の提出はしません。
また、現段階では今後も診断書を提出することは考えておりませんので、予めご
了承ください。尚、理由につきましては、以下に箇条書きします。
1.診断書を提出する必要性が不明であるため。
2.本来的には、PC持参、空席の使用に、許可や検討は不要と考えるため。
3.障害者基本法第2条を証明するだけで、充分であると考えるため。
4.当方が必要とする支援は、大学が用意するわけではなく、当方が用意するわ
けであり、障害学生支援の申請書記載事項は、事前報告であるため、診断書提出
の裁量権は当方にあるものと考えるため。
5.診断書は法的拘束力を持つことから医師も慎重に作成することが常であり、
作成にも時間がかかる。普通、前回のSR時(9月4日)から、1週間で作成できる
ものではない。
6.当方が大学の要請で、診断書料6300円を出費するのは不当であり、要請した
大学が支払うことが妥当と考えるため。
以 上
3-4.実際に求めた支援と大学の対応と私の考え 〈史学〉
・その後の大学の態度と私の考え
教室に入ると「桐原さん予約」と書かれた紙が前の席にあった。どうやら、ここ
しか座ってはいけないらしい。ただ、コンセントが前方にしかないため合理的
ではある。診断書の件は「①障害学生支援を受ける者は全員提出する義務
がある、②障害学生支援の申請書の下部に診断書の添付義務についての記
述がある」とのことであった。「学習の手引」という大学に関する説明書が存す
るのだが、そこからは診断書提出義務規定は見つからず、また、障害学生支
援の申請書(様式17号)にも診断書提出に関する記述は見当たらなかった。
一方で私は「診断書の必要性と使途を明確にせよ」と問うた。大学は「大学の
規定にあるから」との返答であり、必要性・使途についての説明はされなかっ
た。他の事務職員が対応し、「PC使用はイレギュラーな支援申請だから、必
要か否かの診断が欲しいのだと思う」との話しをしてきたが、自分のPCで学
内の無線LANを使用する申請書様式が「学習の手引」にあり、レアケースだと
しても、イレギュラーとは言えないだろうと思った。また、隣にいた肢体不自由
の学生に、「診断書提出した?」と聞くと、「していない」と返答、彼もPCを使用
していた。どうにも、騙されているように思えてならないのだ。
4.障害学生支援の障害
1.複学
排除を前提にする。排除してから、再び戻す。「社会的入院に対する地域
移行支援」や「仕事から排除しておいて就労支援」と同じで矛盾のかたまり。
2.支援のカテゴリ化
コミュニケーション障害支援という・・・・意味不明。
3.医務室の所轄化
医務室は、強制入院による排除の温床。教室内で継続して学習するもの
ではなく、学習を中止し医務室に行って、行う。支援じゃない。
5.結論
1.最低限の人権水準で学びたい
いつ通報されるか解らない、いつ強制入院、或いは移送されるかわからない、
また、一般の入院に入院できないでは、学ぶための環境が整っているとは言
えない。
2.「精神障害の特性」という障害
これまで障害学生支援は、確かに精神障害を無視してきた。「だが、今後は精
神障害と対象とする」という話には当然なるが、その際に、精神障害に限定し
た支援が言われるようになる可能性がある。全学生的支援又は生活全般にお
ける障害者援助こそが、我々に必要なものである。
最後に・・・・・
「障害学生支援」とか、「精神保健福祉」とか言っているうちは、まだまだ、我々
にとっては障害(disability)でしかない。
ご静聴、ありがとうございました。