Cosmology_Imai_2009_4
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Transcript Cosmology_Imai_2009_4
観測的宇宙論
第8回: 銀河の誕生
今井 裕
(鹿児島大学大学院理工学研究科物理・宇宙専攻)
今日の講義の内容
• 銀河の基本的性質
– 星の大集団/星形成現場としての銀河、 「銀河天文学」参照
– 銀河の形状・光度・化学組成の進化、 銀河ハローの星々
• 最初の星と最初の銀河
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第7回「最初の星」参照
宇宙の再電離、クェーサー吸収線系
遠方銀河の探査: ライマン・ブレイク法、 ライマン輝線法
銀河形成と星形成活動の変遷
• 原始銀河とは?
– “Himiko”の発見(2009年)
• 銀河の軌道と宇宙論: M31
河野孝太郎氏
集中講義必受講
(12/1-5)
参考文献: シリーズ現代の天文学
3巻:宇宙論II ―宇宙の進化― 4巻: 銀河I ー銀河と宇宙の階層構造
銀河の基本的物理量
• 108 Msun < Mgal <1013 Msun
109個以上の星々
c.f. 宇宙の最初は広がったガス雲のみ
銀河=星形成の現場
• 様々な形態: ハッブル分類(渦巻銀河、楕円銀河)等
– 銀河の形状は何が決める?
力学進化+星形成活動:力学的なフィードバック
– 宇宙最初の銀河の形状は?
• 銀河の色: 恒星の質量関数
– 大質量星形成(爆発的星形成=スターバースト)の頻度
– 銀河内恒星群の化学組成(金属量)
銀河の形態と相関がある
銀河の基本構造
銀河系に学ぶ
• 銀河円盤(~10 kpc): 銀河回転、渦状腕を形成
– 力学的年齢が若い(<109年)、星間ガスが多い
– 銀河間相互作用の痕跡
以下の項目についての理解には宇宙論的視点が必要
• バルジ(~1 kpc): 銀河中心部の大恒星集団
• (活動)銀河中心核(<1 pc)
第10回「宇宙の灯台:ガンマ線バースト・遠方銀河・活動銀河」
– 巨大ブラックホール(M●>106Msun)+中心星団
– バルジ(>1 kpc)の質量とブラックホール(<1AU)の質量に相関
• ハロー: 球対称的構造 (>100 kpc)
– 球状星団・高速度星: 球対称的速度場+α
– ダークハロー: 低密度、銀河の質量/光度比より存在確認
宇宙論的視点から見た銀河(1/3)
• 星形成現場
– 現在は円盤部+スターバースト領域(銀河中心部+渦状腕)
– 原始銀河ではハロー部でも形成されていたのでは?
ヒント: 球状星団の存在
• 恒星群分布
– (可視)銀河円盤半径の
10—100倍まで広がる
– 多数矮小銀河の存在
銀河潮汐力による
円盤の引き延ばし
宇宙初期では両方とも
何度も起きているはず
宇宙論的視点から見た銀河(2/3)
• 銀河ハローの構造
内側と外側で軌道の向きが正反対になっている(Carollo et al. 2007)
宇宙論的視点から見た銀河(3/3)
銀河=大量のガス/塵を伴う天体
• 星間ガスの相(HII, HI, H2) 第7回「最初の星」参照
– HII: ライマン系列紫外線⇒(赤方偏移)⇒可視光・赤外線
– HI: 21cm超微細構造線
– H2: 赤外線放射 or CO輝線
宇宙の晴れ上がり直後については弱すぎて見えない
宇宙の暗黒時代直後を狙う
• 銀河の化学進化: 第9回: 「宇宙の化学進化」参照
– 吸収線: 主に恒星表面とクェーサーの元素組成を反映
– 輝線: 主に星間ガスの元素組成を反映
• 電離ガス: O, Nからの可視光輝線
• 星間分子雲: 進化が進むほど12CO/13CO比が低くなる⇒CNOサイクル
– 連続波放射: 電離ガスからの紫外線、星間塵放射(電波)
原始銀河誕生のシナリオ
• 原始ガス雲: ~103―4Msun~10 -7 ー -5Mgal
• 超大質量星形成: 宇宙の再電離
– 周辺ガスを吹き飛ばさなければ星形成は進む
– 一部を残して全宇宙が電離する
ガン・ピーターソンの谷(後述)
• ダークハロー(バリオン/光子との相互作用なし)の形成
小さな原始銀河の誕生 (「冷たい暗黒物質」のモデル)
集合・合体による巨大銀河の形成
原子・分子ガス銀河円盤の形成
※反階層的進化(down-sizing)
大きな銀河ほど先に進化して活発な星形成が先に終わってしまう
矮小銀河では今でも活発な星形成が進んでいる ⇒CDMモデルと相反
原始銀河の探査 (1/3)
• ライマン・ブレイク法
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より遠方でより大きな赤方偏移
手前の中性ガス雲が背景銀河のライマン連続光を吸収/散乱
赤方偏移したライマン連続光より短波長側で多数の吸収線
背景光源が暗い、吸収線検出はさらに困難
• ライマンα輝線天体探査法
– 銀河形成初期における強烈なライマンα輝線の放射
– 狭帯域フィルタを用いて効率的に探査
– 輝線の判別のためにライマン・ブレイク法と併用
• HD輝線(サブミリ波)の検出(新分野)
原始銀河の探査 (2/3)
• 宇宙初期の広範な電離域⇒宇宙の晴れ上がり
強い紫外線連続光吸収は作らない
• クェーサー吸収線系(ライマンαの森)
• 銀河になりかけの多数の(中性)原始ガス雲の存在
Sadakane et al (1993)
原始銀河の探査 (3/3)
ー ガン・ピーターソンの谷 ー
• 非常に大きな
赤方偏移(z>6):
僅かな中性ガス
でも非常に深く
て広いライマン
α線吸収を作る
• 再電離直後に
残った原始
ガス雲の痕跡
ガン・ピーターソンの谷
http://skyserver.nao.ac.jp/jp/sdss/discoveries/discoveries.asp
古代宇宙の不思議な原始銀河状天体
「Himiko」
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Lyman alpha emitter
z=5.595 (129億年前)
Mstar=0.9-5.0 1010 Msun
φ≧17 kpc
Ouchi et al. 2009
原始宇宙における星・銀河形成
Ouchi et al. 2009
• 星形成率
dM/dt>34 Msun yr-1
(銀河系では
dM/dt~1 Msun yr-1)
宇宙初期にしては異様に
大きい原始ガス雲
• 巨大ブラックホー
ルの有無は未確認
銀河の軌道と宇宙論 (1/2)
• 居部銀河群の軌道角運動量
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M31: 宇宙膨張を振り切って銀河系に接近
局部銀河群に相当大きい軌道角運動量があるかも
まっすぐ銀河系に向かっていないかもしれない
宇宙密度ゆらぎパラメータΩ0
0 b c
b : cosmic mean density
c 3H02 8G : critical density
b b
: mean density of the Local Group
銀河の軌道と宇宙論 (2/2)
• M31の固有運動(天球面横断運動)
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M31の軌道角運動量が大きい >>> δが大きい
最大~100μas/yearが期待される
δ⇒大 >>> Ω0⇒小
宇宙の曲率がユークリッド空間
(平坦な宇宙)からはずれていく
– WMAPの結果⇒δ大は期待薄い
– Ω0上限値を与えることになる
– M31の運動計測
• 水メーザー源を探して位置変化を追跡
(まだ未検出)
• 多数の恒星運動を検出:10年後打ち上げ
予定の位置天文衛星
(SIM, GAIA)による研究課題