宇宙の様々な加速源

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Transcript 宇宙の様々な加速源

宇宙の様々な加速源
~粒子加速への入門~
磯部直樹
(理化学研究所宇宙放射線研究室)
フラックス [m-2 s-1 sr-1 eV-1]
地上に降り注ぐ宇宙線
∝E-3
べき型のスペクトル
 1 eV cm-3 (@ GeV)
10-4 eV cm-3 (@knee)
 組成は
p, He, C, O, Fe, etc

knee
1015.5 eV
GZK cutoff
1020 eV
ankle
1019 eV
宇宙線粒子のエネルギー [eV]
高エネルギー宇宙線の発生源・加速源は、
現代宇宙物理学の重要な謎のひとつである。
粒子をどうやって加速するのか?


荷電粒子の運動方程式
dp / dt = q ( E + 1/c v×B)
de / dt = q v E
粒子加速には
電場
が必要である
宇宙で大局的な静電場を維持するのは困難
宇宙は中性である
荷電粒子が移動して、静電遮蔽する

加速に有効な電場とは何か?
Maxwell 方程式
∇ x B = 1/c dE / dt
∇ x E = -1/c dB / dt
運動する磁気流体が
生み出す電場で加速する
加速に都合のよい天体
Hillas diagram (Hillas 1984)
Makishima diagram ??
系の大きさ L
> ラーマー半径
gmv / qB


磁場が強く、コンパクトな天体
磁場が弱く、大きなスケールの天体
粒子加速源をどう特定するか?
宇宙線は、星間磁場などで向きの情報を失っている
加速源からの放射を探査する
陽子より、電子のほうが放射を出しやすい
単位時間当たりの
電子のエネルギー損失
制動放射
シンクロトロン放射
逆コンプトン散乱
Lorents 因子 g -1
101
103
105
E = mc2 g
加速された粒子からの放射
制動放射(Bremsstrahlung, free-free emission)
hn
電子 -e
振動数 hn ≦ Ee
フラックス Fbremss ∝ ne ni V
+Ze
シンクロトロン放射
逆コンプトン放射(Inverse Compton scattering)
hn
(Synchrotron Radiation)
電子 -e
磁場 B
電子 -e
hn
nsync = 120 MHz
x (g / 104)2 (B / 1 mG) sinf
Fsync ∝ ue um
(um = B2 /8p : 磁場のエネルギー密度
ue : 電子のエネルギー密度)
hnsoft
nIC = 4/3 g2 nsoft
FIC ∝ ue usoft
(usoft : 種光子のエネルギー密度)
soft = CMB → uCMB = 4.1 x 10-13(1+z)4 erg cm
nCMB = 1.6 x 1011 (1+z) Hz
-3
nIC = 2.1 x 1017 (g / 103)2 Hz
eIC = 0.87 keV (g / 103)2
宇宙の様々な加速源
今日は、以下の加速源を取り上げてみる。
太陽フレア
 中性子星(パルサー)
 超新星残骸
 ジェット
ブレーザー
電波銀河ローブ、ホットスポット
 銀河団

太陽フレアでの加速
適度に加速されてるね
太陽フレア
「ようこう」衛星による太陽の軟X線画像
TRACE衛星(米)が紫外線でとらえた
太陽表面の磁場の様子
太陽表面では、磁場が激しく活動
太陽フレアでの粒子加速
磁気リコネクション(磁力線の再結合)
反対向きの磁力線が近づく
太陽表面での、
磁気リコネクション
の様子
磁力線のつなぎかえが起こる
磁力線に巻きついたプラズマが
加速
松本さんの博士論文(2002年)
古徳さんの博士論文(2004年)を参考に
回転駆動型パルサーでの粒子加速
かなり加速されてるぞ !
回転駆動型パルサーでの粒子加速

回転



回転駆動型パルサーは、高速回
転する強力な磁石(磁気双極子)
B ~ 1012 G
粒子が磁場とともに回転し、遠心
力で加速される(慣性系から見る
と、磁力線に沿った電場で加速さ
れる)
回転速度が光速度を超えるとこ
ろ(光円柱)で、磁場と粒子が外向
きに噴出す。
→ パルサー風
パルサー風が周囲のガスと衝撃
波を起こし、シンクロトロン放射で
輝く
→ パルサー星雲
(宮崎大の森さんの発表を参考にした)
かに星雲・パルサー
Chandra によるX線画像
かに星雲のスペクトル
(Spectral energy distribution; SED)
シンクロトロン 逆コンプトン
HST による可視光画像
電波
可視
X線
γ線
g ~ 1010 (1015 eV)
( http://chandra.harvard.edu/photo/2002/0052/movies.html )
超新星残骸での粒子加速
Knee までの宇宙線の起源は、超新星残骸らし
い
超新星残骸 SN1006
内部
「すざく」
2-5 keV
Chandra
へり
へり : シンクロトロン
内側 : 熱的な放射
ヘリの部分では、
1014 eV程度まで
電子が加速
SN1006については、理研の馬場さんに聞いてみよう
超新星残骸 SN 1006 からのγ線?
多波長スペクトル(SED)
ASCAが示してないねぇ(Allen et al. 2001)
CangarooによるTeVγ線画像
HESSによるTeVγ線画像
有意なγ線が検出されなかった
> 25
B =B6.5
± mG
2 mG
超新星残骸での陽子加速の証拠?
RXJ1713.7 – 3946
CangarooによるTeVγ線画像
p + p → p + X ( X = ハドロン )
p+g →p+X
e+ + e - + X
多波長スペクトル
p0 → 2g
超新星残骸での粒子加速
衝撃波加速(Fermi加速、diffusive shock acceleration)
超新星残骸は、超音速(>1000 km /s)
膨張するので、衝撃波(shock)が生じる
磁場 B
強い衝撃波でのRankine-Hugoniotの関係
(質量保存、運動量保存、エネルギー保存)
v2 = (g-1 / g+1) v1
r2 = (g+1/ g-1) r1
g= cp / cV = 5 / 3 (非相対論的)
4 / 5 (相対論的)
一部の粒子は、磁場の揺らぎ(Alfven波)で
散乱され上流と下流を往復する。
v1 > v2 なので、散乱されるときに
上流で得るエネルギー
>下流で失うエネルギー
密度小
流体速度 v1
密度
r1
密度大
v2
r2
何度も往復すると、粒子加速になる
(統計加速と呼ばれることもある)
得られる電子のエネルギースペクトル
N(E) ∝ E – (r+2)/(r-1)
r = g+1 / g-1 (圧縮比)
ジェットでの粒子加速
けっこう、いけてる
でももう少しがんばれる?
NGC 6251 の電波画像
500 kpc
ジェットとは?
NGC4261の可視光と
電波の画像
Centaurus A の
X線画像 (Chandra)
10 kpc
10 kpc
細く絞られた、超高速のプラズマ流
活動銀河中心核(AGN)、ブラックホール、中性子星、
白色矮星、原始星など、あらゆる天体から噴出
ジェットを持つAGNは、全体の10%程度
ジェットでの加速
1. ジェット自身の駆動
2. ジェットでの粒子加速
ジェットをどう駆動するのかは、
宇宙物理学の謎のひとつ
3つの問題
加速 ( G~10 )
磁場
収束 ( < 1°)
方向性の維持( >100 kpc )
中心核は、絶えずプラズマの塊を放出
良く信じられているジェットの駆動方法
G1 > G2 ならば、どこかで追いつく
中心核
G1
G2
→衝撃波が起こる(内部衝撃波)
→衝撃波で粒子加速が起こる
ブレーザー






ジェットを正面から見たAGN
ジェットの根元近くの内部衝
撃波を観測している
ジェットの相対論的な運動で、
放射が強調されている
(Beaming)
多波長で変動が激しい
多波長にわたる非熱的スペ
クトル
シンクロトロンと逆コンプトン
Seed 光子は、
SSC : シンクロトロン光子
ERC : 外部からの光子
Mrk 421
(Takahashi et al. 2000 )
TeVγ線
硬X線
X線
紫外線
シンクロトロン
逆コンプトン
電波 可視 X線
γ線
ブレーザーでの粒子加速
粒子加速に関連したパラメタ
(Kubo et al. 1998)
Mrk 421
明るくなると、粒子が増える
Mrk 501
(Kataoka et al. 2001)
明るくなると、加速が盛んになる
電波銀河
ジェットを持つAGNを横から見ると、電波銀河になる
Cygnus A の電波画像(1.4GHz)
ジェット
中心核
ローブ
(>100 kpc)
ホットスポット : ジェットの終端衝撃波


ホットスポットやローブは、最高エネルギー宇宙線の加速源の数少ない候
補になりうる(Hillas 1984)
磯部は、ローブのエキスパートである
ホットスポットでの粒子加速
Cygnus A のホットスポットの
ChandraによるX線画像
ホットスポットのスペクトル
(Wilson et al. 2000)
電波
シンクロトロン
X線
SSC
シンクロトロン放射がX線までのびる
激しいホットスポットもある
(Pictor A ; Wilson et al. 2001)
B ~ 150 mG
g ~ 105までは加速されている
ローブからのX線
電波銀河 Fornax A のX線画像
(Kaneda et al. 1995)
電波銀河 Centaurus B のX線画像
(Tashiro et al. 1998)
100 kpc
Low BGD
Wide band
High efficiency
Faint
Diffuse
Hard spectrum


「あすか」により、ローブから広がったX線を発見
ローブは非常に希薄なので、ICの種光子は CMB
→磁場と電子のエネルギー密度が正確にわかる
1 keV の X線は、g ~ 103の電子から出る
ローブからのX線
Newtonによる
3C 98 のX線画像
(Isobe et al. 2005)
Chandraによる3C452のX線画像 (Isobe et al. 2002)
Chandraによる
3C427.1
のX線画像
Newtonによる
Fornax A
のX線画像
(Isobe et al. in press)
ローブの電子と磁場のエネルギー
3 mG
電子優勢
ue > um
ジェットでの加速のまとめ
ホットスポット
B = 50 – 300 mG
ue / um ~ 1
(e.g Hardcastle et al. 2004, Kataoka et al. 2004)
Blazars (ジェットの根元)
B = 0.1 – 1 G
ue / um ~ 10
ローブ ; 磯部の成果
B = 1 – 100 mG
ue / um ~ 10
(e.g Inoue and Takahara 1996, Kubo 1998)
g = 104 ~ 105
までは加速されているようだ
銀河団での粒子加速 ?
もしかすると凄いかも
銀河団
かみのけ座銀河団(4億光年の距離にある)
1° (400万光年~1Mpc)
可視光 : 多数の銀河 10~1000個くらい
X線 : 高温ガスからの放射 (2~10 keV)
質量のうちわけ: 星 5 %, 高温ガス 10%, 暗黒物質 90 %
(可視光)
(X線)
+ 加速された粒子
銀河団での粒子加速の証拠


電波ハローやRelicをもつ銀河団
銀河団からの硬X線(SAX)
(Fusco-Femiano et al. 1999, Kastra et al. 1999,
Nevalainen et al. 2004)

硬X線の発生機構は良くわかっていない
GeV (γ=104)電子の逆コンプトン?
MeV電子の制動放射?
銀河群の硬X線(「あすか」)
(Fukazawa et al. 1999, Nakazawa 2000)

極端紫外線の検出(EUVE)
HXDに期待
(Lieu et al. 1996 など多数)
A3667の電波(Gray)
とX線の画像(等高線)
SAX PDSによる14個の銀河
団スペクトルの重ね合わせ
「あすか」による
銀河群HCG62のスペクトル
(560 ksec, Nevalainen et al. 2004)
Relic
Hard excess
1 Mpc
どうやって銀河団で加速が起こるか?

銀河団どうしのマージングにともなう衝撃波や乱流
(e.g. Ensslin et al. Fujita &Sarazin 2001, Takizawa et al. 2002,Fujita et al. 2003)


銀河団ポテンシャルに物質が落ち込むときに生じる
衝撃波(e.g. Fujita &Sarazin 2001)
銀河団中の銀河の運動で生じる電磁誘導
(牧島先生の説, Nakazawa 2000)

プロトンの衝突で高エネルギー電子が発生
(e.g. Colafrancesco & Blasé 1998)

などなどまだま諸説紛々
牧島先生の説によると
銀河
磁場
銀河の
運動や回転
磁気リコネクション
熱いプラズマ
冷たいプラズマ
北口君いかがですか? (太田さんより)
プラズマの加熱
と粒子加速
陽子の加速源を直接特定するには?
狙うべきは、
p0 → 2g
GLAST
GLAST
LAT
まとめ


地球に降り注ぐ宇宙線の加速源は宇宙物理の大き
な謎のひとつである
実際に宇宙に存在する加速源(候補)を紹介した


今日紹介できなかった様々な加速源も






太陽フレア、パルサー、超新星残骸、ジェット、銀河団
球状星団にともなう粒子加速(岡田さんの博士論文)
銀河面からのγ線放射
スターバースト銀河の宇宙線ハロー(NGC 253, Itoh et al. 2002, 2003)
ガンマ線バースト
加速源の多くは、HXDのよい観測対象である
陽子の加速源の特定は、GLASTに期待したい