070921近代世界システム(1)序章

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史学講義8
近代世界システム2
第1回
上田信(立教大学)
序章
タラの芽の文化論
1.担当者
講師
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上田信(うえだ まこと)
立教大学 教授
専攻 中国社会史・生態環境史
1980年代に中国の南京に留学。このときに中
国の自然環境が、破壊にさらされていることを
知る。
• 2004年に家族とともに、中国西南部の雲南省
昆明で一年間、生活。雲南から見る世界史を
構想。
2.タラの芽の文化論
文化と文明
• 生態系と人間とのあいだの関係に二つの類
型がある
• ①生態環境とともに生きる人間のあり方。
自然から恵みを受けるときに、植生を破
壊するような行動をすると、その報いは自分
に戻ってくる。タラの芽を摘もうと林にはいり、
前年に自分が芽を取り尽くした木は枯れてい
れば、自らの誤りに気づく。
文化とは何か
• 生態環境史において「文化」とは
世代を超えて、その地の植生から恵みを得よ
うとする人は、野生の植物や動物たちとのつ
きあい方を自然のなかで学び、その知恵を身
をもって次の世代に引き継いで行く。
文化とは何か
• 一本のタラの木には、感謝の気持ちとともに
芽を一つは残す。
• 規則は文字として記録されることはまれで、
多くの場合は人から人へと伝承されて行く。
• このような植生とのつきあい方を、本書では
「文化」と呼ぶことにしたい。
文明とは何か
•
②生態環境から一方向に利益だけを上げ
ようとする人間のあり方。
よそから来てタラの芽を摘もうとする人には、
自分の行為のつけを自分が支払う必要はな
いので、残されたタラの木がどうなろうが気に
とめることはない。
文化とは何か
文明
タラの木をもし保護しようとすれば、入山規則を
作って看板を立てて周知させ、ときには見
回って違反者を処罰しなければならないだろ
う。
•
規則を守らせるために権威や権力が必要と
なり、その根拠として文字が必要となる。この
ような必要から生まれたものを、「文明」と呼
ぶことにしよう。
文化と文明
•
これまでの歴史学は、文字となった残され
たものに依存してきたものだから、文明に荷
担するものの見方を発達させ、文字にならな
い文化は未開なものとして低く見る傾向が強
かった。
文化と文明
• 文化として伝承されてきた知恵は、確かに保
守的で時代が変化したときに対応できないこ
ともある。しかし、植生とのつきあいのなかで
知恵を生み出す方法は、いまでもかけがえの
ないものであろう。
3.ヒトはなぜ生態環境を変容できるのか
ヒトの特色
• 動物として、ヒトの特色を挙げてみよう。
例・ ことば を用いる。…
そしてもう一つの特徴
交易
交易するヒト(1)
• 野生動物は、自分が生息している環境のな
かで必要なものをまかなっている。
• 動物が出した排泄物やその死体は、その生
態環境のまとまりのなかで、他の動物の餌に
なったり微生物が分解したりする。
• 物質はその生態環境のなかで循環している。
生態学的まとまり
消費者(肉食動物)
太陽光線
分解者(昆虫・微生物)
消費者(草食動物)
生産者(植物)
交易するヒト(2)
• ヒトだけが、まったく異なる地域から物資を運
び込んで消費することができる。
• この生態環境のまとまりを越えた物資のやり
取りを、この講義では交易と呼ぶことにしたい。
生態系のまとまりと交易
物質・エネルギー
生態系A
生態系B
生態環境に応じた文化
• 今日のような大規模な交易が始まる前、ヒト
は基本的に自分の生活する生態環境のなか
で生きていた。それぞれの生態環境に応じて、
個性的な文化を生み出していった。
宝物
• 自分たちが住んでいる土地には存在しなかっ
たり、需要に比べて希少であったりするもの、
それはその文化のなかで宝物と見なされる。
• 宝物をもっている人は、持っていない人から
羨望の目で見られた。宝物は権威の象徴とも
なったのである。
• 経済学ではこの宝物を「富」とか「財」などと呼
ぶ
鉱物資源
• その土地の生態環境の外側にある宝物には、
二つの来歴がある。一つは、特殊な技能を持
つ人々が大地から掘り出す宝石や金・銀など
の希少な鉱物である。
特産物
• もう一つは、香木や香辛料、絹織物や陶磁器
のように、特定の生産地でしか作られず、遠く
運ばれてくる特産物である。
交易の類型(1)
• 宝物を異なる文化のなかでやり取りするため
には、どうすればよいのか。その類型を考え
てみよう。
交易の類型(2)
• たとえば熱帯の島嶼で産する香木を、温帯の
農耕地域で作られる絹と交換しようとした場
合、どうなるであろうか。私たちは香木一本の
値段を示し、その値段に見合う量の絹を求め
ればよいと考えるかも知れない。
交易の類型(3)
• 香木と絹というまったく性格が異なる物産を
統一の価格で評価するということは、人類の
歴史のなかでは、比較的新しい時代に確立し
てきた方法である。
交易の類型(4)
• もっとも単純な方法は、武力で相手を襲い、
めぼしいものを奪い取ること。
• 略奪
交易の類型(5)
• 異なる生態環境に育まれた文化に属する人
が、互いに納得できる量で折り合いをつけて
交換し合う 。
• 互酬
交易の類型(6)
• 軍事的武力や社会的権威を背景に、相手を
承伏させて定期的に決まった物産を届けさせ
るという方法 。
• 貢納
交易の類型(7)
• 政治的な権力が支配圏から物資を徴税など
の方法で調達して集中し、それを権力者の裁
量で必要とするところに分配する方法。
• 集中-再配分
交易の類型(8)
• 多様なモノが不特定多数の当事者によって
競争原理に基づいてやり取りされている。
• 市場
交易の類型(9)まとめ
1.略奪
2.互酬
3.貢納
4.集中と分配
5.市場
文明の自己拡大(1)
• 文明はその外部に位置する文化に影響を与
え、周辺の文化の側も文明の中心に向かっ
て働きかける。
• すると文明の仕組みは、新しい要素を加えな
ければならない。
文明の自己拡大(2)
• 文明の仕組みは、しだいに揺らぎはじめ、そ
の揺らぎがある水準を超えると、文明の求心
力が弱くなり、新しい文化を含み込んだ新た
な文明の萌芽が生まれる。
文明の自己拡大(3)
•
その過程は同時代を生きた人々にはなかな
か見通せないものであるから、試行錯誤の連
続で混乱は長く、さまざまな仕組みの可能性
が生まれては流血とともに消え去った。
文明の自己拡大(4)
• 苦しみの中から新たに産み出された文明は、
以前のものに比べると、より広範な植生区域
を包摂することになる。
• しかし、その文明もやがてその周囲の生態環
境に対応した文化を担う人々の影響を受け、
揺らぎ始めることが運命づけられていた。
文明のサイクル(1)
• 歴史を、このようなサイクルとして見るとどの
ような時代区分ができるだろうか。
• 「合」
一つの文明が安定している段階
• 「散」
しだいに揺らぎはじめる段階
文明のサイクル(2)
• 「離」
揺らぎのなかから新しい文明の可能性が
複数生まれ、その可能性を担うもののあいだ
で対立し覇権が争われる段階
• 「集」
一つの可能性が生き残り全体を統合する
段階
合→散→離→集
ユーラシア・ステージ
•
元代以降の中国史は、ユーラシア全域の百
年を単位とする景気変動のなかで展開するこ
ととなる。
• 環北大西洋という枠組み
←ウォーラーステイン
• 東ユーラシアという枠組み
4.全体の構成
イントロダクション
• 第1回 序章 タラの芽の文化論←今回
• 第2回 ウォーラーステインの
近代世界システムを知る
第1章 モノから見た東ユーラシア
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第3回
第4回
第5回
第6回
①銀と生糸をめぐる交易史
②砂糖めぐる交易史
③茶をめぐる交易史
④綿布をめぐる交易史
第2章 東ユーラシア列伝
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第7回 ①鄭和
第8回 ②鄭成功
第9回 ③新井白石
第10回④ジャーディン=マセソン
第11回⑤李鴻章
第12回⑥毛沢東
終章 今を考える
• 第13回 今を考える
評価方法
• 授業への参画度---主にリアクションペーパー
• 毎回のリアクションペーパーに評価
S(10)、A(8)、B(7)、C(6)、D(5)、×(0)
その総計を 「x」 とする。
最終レポートの評価 「y」
成績=√xy つまりxyが3600点以上だと合格
受講者へのメッセージ①
• 受講者の主体的な取り組みを重視します。
• 受講に当たっては、高校で使用した世界史の
教科書や用語集を手元に置いておくと良いで
しょう。
受講者へのメッセージ②
• 各講義のなかで興味を持った事柄について、
図書館で調べてください。
5.テキストと参考書
テキスト
• 上田信『海と帝国』講談社、2005年、\2,600。
•
海と帝国
• この講義の時代背景
を知るために、参考
にしてください。
参考文献
• 上田信『トラが語る中国史』山川出版社、
2002年、\1,300。
• 上田信『東ユーラシアの生態環境史』山川出
版社、2006年、\729。
東ユーラシアの生態環境史
• この講義の第1章に
対応しています。
トラが語る中国史
• この講義の第2章に
対応しています。