科学技術コミュニケーションの目指す目標でもある

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Transcript 科学技術コミュニケーションの目指す目標でもある

科学情報発信セミ
ナー
2008年1月17日
「市民の科学」プロジェクトと
サイエンスカフェ神戸
伊藤真之
(神戸大学 人間発達環境学研究科/発達科学部)
1
要旨
(1) 現代は高度科学技術社会とされるが
科学が高度化する中で 科学に対する市民の関心が
低下する傾向がある
(2) 大学の支援のもとで 市民が科学を より身近なものとし
さらに自らが科学的調査や研究を行う力を獲得してゆくような
(エンパワーメント) システムを構築する実践的研究を行っている
「市民の科学」プロジェクト
(3) こうした取り組みを通じて「持続可能な社会」の構築に貢献でき
ると期待している
2
概要
1. 背 景
2. プ ロ ジ ェ ク ト の 趣 旨
3. プ ロ ジ ェ ク ト 展 開 の 考 え 方
4. 現 状
5. サ イ エ ン ス カ フ ェ 神 戸
6.「市民の科学」と「持続可能な開発の
ための教育」(ESD)
3
1.背景
(1) 「神戸大学発達科学部」の理念と状況
・ 個々の教員の積み上げた実績
・ 発達科学部 学生の関心
・ HCセンターの発足
(2) 社会的背景
・ 日本における市民と科学技術の関係が持つ問題
・ 環境問題等の解決のための市民参画の重要性
4
神戸大学発達科学部人間環境学専攻
(大学院総合人間科学研究科)
市民生活と密接に関わる環境の問題に取り組んできた実績
<例>
・ 琵琶湖・淀川水系や瀬戸内海の水環境問題
・ 阪神・淡路大震災によって生じた地質汚染
斜面崩壊などの土砂災害と防災の問題
・ 粒子状物質による大気汚染
・ 植物多様性と里山の保全など
5
神戸大学大学院総合人間科学研究科
発達支援インスティテユート
(2005年設置)
大学と地域をつなぐプラットホームとして
NPO、NGO、行政、企業、学校などと連携しつつ
実践的研究(アクション・リサーチ)を行う
・ ヒューマン・コミュニティ創成研究センター
・ 心理教育相談室
・ 社会貢献室
6
ヒューマン・コミュニティ創成研究セン
ター
(略称 HCセンター)
総合人間科学研究科の豊富で多様な学問的
資源を活用し、地域のさまざまな活動と
交流・連携しながら、人間の発達を支援する
コミュニティ創りを目指すとともに、
実践的研究(アクション・リサーチ)を行う
7
8
社会的背景
日本における市民と科学技術の関係が持つ問題
「科学技術コミュニケーション拡大への取り組みについて」
2005年2月
科学技術政策研究所 第2調査研究グループ
渡辺政隆 今井 寛
(http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/dis039j/html/dis039j.html)
「科学技術と社会に関する世論調査」
内閣府大臣官房政府広報室
http://www8.cao.go.jp/survey/h15/h15-kagaku/index.html
より
9
日本における市民の科学技術に対する意識
ーまとめー
• 若い人の科学技術への関心が低下している
• 科学技術について知る機会は少ないと感じている
人が多い
• 機会があれば科学者や技術者の話を聞いてみたい
と思っている人は、やや減っている
• 科学技術に対して関心の薄い人々は
– 科学技術情報を知ることの必要性を感じない
– 話を聞いても専門的すぎてよくわからない
– 科学技術者は身近な存在ではない
等の意識を抱いている
10
報告書の提言
• 単にわかりやすい情報を提供するだけでは不十分
• 科学技術をより身近な存在と感じさせるための
アプローチが必要
・ 従来の「科学技術は役に立つ」「科学はそもそも
おもしろい」といった認識に加えて
たとえば科学は楽しい、美しいといった
新しい見方を積極的に広めることも重要
11
• 「科学技術のおもしろさ、楽しさを広めるだけでも
不十分である。科学技術に対する無関心は、科学
技術への不信感と裏腹の関係にあるとも考えられ
るからである。科学技術研究や行政との疎遠さが
無力感を生み、科学技術に対する不満や無関心
を醸成しつつあるのかもしれない。このような悪循
環を絶つためには、研究者や科学技術研究機関、
科学技術行政当局と一般国民は互いに意見を交
換する場や機会を増やす努力が必要であろう。そ
して、科学技術に関する話題が、プラス面もマイナ
ス面も含めて、日常生活で頻繁に語られるような
土壌を醸成する必要がある。これが、科学技術コ
ミュニケーションの目指す目標でもある。」
12
以上
「科学技術コミュニケーション拡大への取り組みについて」
2005年2月
科学技術政策研究所 第2調査研究グループ
渡辺政隆 今井 寛
(http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/dis039j/html/dis039j.html)
より
13
社会的背景(追加)
・専門家と市民の双方向コミュニケーションの重要性
・市民社会と科学技術の新しい関係をひらく可能性を
持つ人的リソース
- 中等教育等において主体的調査・研究活動
を経験した市民の成長
- 人口構造を背景として、多くの科学者、
技術者、教育者などが定年退職を迎える
14
ヒューマン・コミュニティ創成研究センター
研究プロジェクト
「 市民科学に対する大学の支援に関する
実践的研究 」
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
伊藤 真之
小川 正賢
武田 義明
丑丸 敦史
田結庄良昭
田中 成典
近江戸 伸子
蛯名 邦禎
白杉 直子
長坂 耕作
讃岐田 訓
信川 貴子
代表
科学技術社会論からの助言・評価
里山保全関係課題研究
植物学、植物生態学関係課題研究
地質環境関係課題研究
生命科学関係/科学コミュニケーション
植物工学、農学関係課題研究
物理学、環境物理学関係課題研究
食環境関係課題研究
数理・情報科学関係/科学コミュニケーション
水環境関係課題研究・環境教育
水環境関係課題研究支援/環境教育
15
2.プロジェクトの趣旨
科学・技術が高度に発達した現代社会において
(1)環境問題等の社会的課題解決手段として
(2) 知的探求活動として
市民の科学・技術にかかわる問題の調査・研究能力を
高めてゆくこと(エンパワーメント)が大きな意味を持つ。
本プロジェクトでは、欧米の事例(「サイエンスカフェ」
「サイエンスショップ」など)を参考にしつつ
日本の社会に適した 「市民の科学」に対する大学の
支援のあり方を、地域社会(神戸)をフィールドとして
実践的に探り、新しいモデルを構築することをめざす
16
Science Cafe
(カフェシアンティフィーク)
町のカフェなどで、科学者(専門家)と市民
が、コーヒーや酒を飲みながら、科学・技術
などの話題について、自由に語り合う科学技術コ
ミュニケーションの新しい形
1998年イギリスのリースで始まり、各国に
広がっている (パリの哲学カフェに着想)
17
Science Shop
(Community-based research)
地域社会や市民の科学技術的課題に対して大学
やNPOなどが相談にのり、調査・研究を行ったり
助言したりして、専門知を活かして解明や解決を
支援する
1970年代オランダの学生運動の中から生まれ
各国に広がっており、大学院生などが
調査・研究に大きな役割を果たす形も多い
18
3.プロジェクト展開の考え方 (1/2)
(1) 多様なレベルのリテラシーを持つ市民から構成される
コミュニティーをうまく機能させる社会的しくみを開発
することをめざす
(2) 市民による研究の課題としては、解決を必要とする
社会的課題のみではなく、知的関心に基づく探究活
動も視野に入れる
(3) 従来展開されてきた個々の研究者による取り組み
から、大学をコアとした「持続可能な」「システム」へと
発展させることをめざす
(4) 地域の特性を生かし、地域に根ざしたシステムを
構築する ( 後
述)
(5) 科学者を権威者として位置づけるのではなく、市民と
科学者の間に「隣人」としての関係をつくることを図る
19
プロジェクト展開の考え方 (2/2)
(6) 構築する「システム」の評価としては、市民の科学・
技術的課題に対するエンパワーメントの成果を中心と
して、システムの運営(マネージメント)、財政、人間関
係など幅広い視野から評価・検討を行ってゆく
(7) プロジェクトの展開にあたって、人材養成の視点も
重視する
- 大学学部・大学院学生が、活動に参加することを
通じて、非専門家とのコミュニケーション能力、課題
発見・解決能力を高める
(大学院教育の中に積極的に位置づける可能性)
- 市民自身が、主体的な研究課題の設定、遂行、
支援組織の運営などを行う能力を高めてゆき
自律的運営を支えることのできる指導者が生まれ
20
る ことを目指す
「キーワード 人間と発達」、小川正賢(2005)
「科学技術と教育」
(1) STSE (Science, Technology, Society
and Environment)教育
• 高度科学技術に主導された社会に 受身でなく
「進展を批判的に考察し、その方向性を決めて
ゆく力」を身につけることが重要
• 「子どもたちだけでなく、大人も高齢者も含めて
すべての人にとって必要であるように思える」
• 問題例: 環境破壊、エネルギー問題、脳死、
安楽死、遺伝子組み換え食品など
21
「キーワード 人間と発達」、小川正賢(2005)
「科学技術と教育」
(2) 科学技術リテラシーについて
「すべての人に同等にかなり高いレベルの
科学技術リテラシーを求めるのか」
「多様なレベルのリテラシーを持つ人々から構成さ
れるが全体としては必要な高い質のリテラシーを
保持しているコミュニティ」
「コミュニティ内部での科学技術情報の
提供・解読・分配・流通といったしくみと
その機能を果たす人材やメカニズムの開発・
配置のしくみ」を開発する重要性
22
段階的展開
( 3つのフェーズ )
Phase 1 サイエンスカフェやセミナーなどへの参加を通じて、
科学・技術の話題に関心をもつ市民の緩やかな
ネットワークを形成
Phase 2 上のネットワークを利用しつつ関心をもつ市民が
大学の支援のもとに比較的しきいの低い
調査・研究活動に取り組む
(webで公開された電子情報を含む文献調査、
フィールドワーク、実験、アーカイブデータ解析
などを含む)
Phase 3 ある程度の高いモティベーションを持つ市民を中心
に、より高いレベルの調査・研究に取り組む
これらは、便宜的区分で、課題ごとに並行して進行しうるとともに、Phase1を
経ずにPhase 2 または 3 の調査・研究から始めるというケースもありうる
23
「充実した余暇活動」としての研究
米本昌平「知政学のすすめ」(1998)
「少なからぬ人が、生涯教育と称してガラクタを詰
め込まれるより、重要な課題について自ら研究す
ることの面白さと難しさを楽しみたいと思っている
はずである。公的研究が『投資としての研究』とい
う性格をもつとすれば、研究活動の一般市民へ
の解放は『消費としての研究』にあたるのかもし
れない。しかし、研究というものは持続することが
大切であり、面白がって研究を行ってしまうことの
広義の政治的力を決してあなどってはいけない。
これは、権威の再配分を実現させてしまうことな
のである」
24
フィールドとしての神戸
● 「神戸」の地域としての特性
・ 港湾都市として発展した歴史を持ち、海外の
多様な文化が持ち込まれ それらを先進的に
受容してきた精神的・文化的風土をもつ
・ 瀬戸内海と六甲山に囲まれ、市街地の近くに
豊かな自然が存する
・ 平成7年の大震災により甚大な被害がもたらさ
れたが、これを契機として、震災ボランティアや、
復興支援、街づくりなど多様な領域で、市民活
動が活発に成長、展開してきている
25
● 地域の特性を踏まえた展開
・六甲山、瀬戸内海をフィールドとした調査・研究の展開
・地域の文化やアートと親和したサイエンス・カフェの試行
(異国情緒豊かな北野のギャラリーや喫茶店、
文化活動の場として活用されている灘の酒蔵での
サイエンス・カフェなど)
・進行中の市民活動(里山保全など)との連携
・行政との連携
(行政のキーワードとしての「参画と協働」)
26
「研究」プロジェクトとしての研究課題
(a) 日本(神戸)型サイエンス・カフェ
(従来の講演会形式とは異なり、専門家と市民が
カフェ等で、科学・技術に関して自由に語り合う
双方向コミュニケーションの場)
(b) 市民と大学の連携による科学的調査・研究の
あり方(日本型サイエンス・ショップ)
(c) 大学院生を中心とした大学の市民科学支援の
可能性に関する実践的研究
27
市民による調査・研究の課題例
・ 都市ー山林境界域における生物多様性について
・ 水田生態系の保全と環境教育への利用
・ 神戸空港建設に伴う大阪湾の水質変化
・ 住宅用太陽電池パドル設置の得失
・ 核融合エネルギー利用の技術的課題と実現可能性
について
・ 電磁波の生体影響
・ インターネット上の公開データを用いた天文学
28
4.プロジェクトの現状
・ HCセンター開設記念シンポジウム (2005年5月)
分科会「市民の科学と大学」
・ 日本科学教育学会研究会 (岐阜大学) (9月)
「社会・実践者・研究者の真の協働による
新しい科学教育研究の構想」
にてプロジェクト紹介
・ キッズ・サイエンス@「あーち」
・ サイエンス・カフェ
(2006年10月より月2回程度のペースで開催)
29
サイエンス・カフェ@神戸酒心館
日時:10月29日(土)午後2時から5時
内 容: ☆ サイエンスカフェについて
☆ アインシュタインの相対性理論は間違っているか??
松田 卓也 先生 (神戸大学)
☆ 語らい
いくつかの話題のコーナーに分かれて、神戸大学の先生と
市民が科学の話題について自由に語らいます。
★ 神戸周辺の水と環境
(ゲスト:寺門 靖高 さん)
★ 宇宙とニュートリノ
(ゲスト:原 俊雄 さん)
★ 相対性理論とブラックホール
(ゲスト:松田 卓也 さん)
★ 最初の生命はどこで生まれたか?
(ゲスト:中川 和道 さん)
参加費無料 ドリンク1杯100円
要参加申し込み
30
プロジェクトの現状 (2/2)
・ 全国一斉サイエンスカフェに協力・参加
(日本学術会議によるイベント 2006年4月)
・ 日本科学教育学会研究会 (筑波学院大学)
「サイエンスカフェ神戸の創始」(8月)
・ 「サイエンスアゴラ」参加
(科学コミュニケーションに関するフォーラム
11月東京)
• 「市民と大学の環境フォーラム」開催
(2006年11月)
31
5.「サイエンスカフェ神戸」
について
5.1
5.2
5.3
5.4
考え方
開催状況
これまでの取り組みと評価
課題と展望
32
「 市民の科学に対する大学の支援に
関する実践的研究 」
プロジェクト
• 科学技術的課題に対する
市民のエンパワーメント
• 市民と科学・科学者の新しい関係
「隣人としての科学者」
• 「文化としての科学」のひろがり
33
5.1 サイエンスカフェ神戸の考え方
• 双方向コミュニケーションの場とする
• 地域の特徴を生かし、地域に根づいたものに
• 多様な場所・形を試みる
• 段階的に 運営主体を市民に移行
• 研究者のネットワーク形成(100人の桁)
• 神戸における「日常的」開催へ
⇒ 地域社会の文化の一部に
34
5.2. 開催状況: 場所
神戸酒心館ホール「豊明蔵」、
「北野工房のまち」
ギャラリー島田
兵庫県立美術館 原田の森ギャラリー カフェ KULUSKA
神戸市立博物館の館内喫茶店エトワール
神戸らんぷミュージアムカフェ
オーガニックカフェ tete a tete 、 エビアンコーヒー
にしむら珈琲御影店、
日本茶カフェ一日(ひとひ)
市民活動センター神戸 みみずくカフェ 他
地域性のある場所、 「おしゃれな」場所
文化的雰囲気、 アートとのつながり etc.
35
第1回目を開催した灘の酒蔵.
阪神淡路大震災で被災した酒蔵が改修され、地域の
文化活動等のためにホールとして提供されている.
(写真提供: 神戸酒心館)
36
37
開催状況: テーマ(1/2)
•
•
•
•
•
•
•
•
•
(相対性理論は間違っているか?)
相対性理論とブラックホール
宇宙とニュートリノ
最初の生命はどこで生まれたか?
神戸周辺の水と環境
量子と素粒子の世界
アートとサイエンス(1)ー大地と鉄ー
数学とテクノロジー
地球温暖化問題を考える
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開催状況:テーマ(2/2)
•
•
•
•
•
•
•
•
量子コンピュータ って何?
素粒子と宇宙
これからの科学者
What is ラジオあくてぃびてぃ?
-放射線が人体に与える影響についてスポーツとテクノロジー
地球にやさしい高分子
市民参加の生物環境保全-何をめざすか?
摩耶山城-教科書に載らない裏山の歴史-
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開催状況:テーマ(3/2)
•
•
•
•
•
•
遺伝子をみる
星界のルネサンス
カオスをみる
幻のヘリコプター昭和初期・高砂のダヴィンチ
点と線に隠れた数学を話そう
劣化ウランという問題群
‐医学の視点、科学の視点を通して‐
• 光が拓く新しい計測技術
-ナノサイエンスから医療診断まで-
• ナノテクノロジーと電子の世界
40
5.3. これまでの取り組みと評価
・ 2006年度以降、市民や学生が企画・運営に参加し、
その中から多様なスタイルが試みられている
(音楽演奏や朗読とのコラボレーション、地域の
歴史を取り上げたカフェ、市民活動グループから
推薦を受けたゲストなど)
・ 地域社会の諸活動をホームビデオで記録し、インター
ネット上でオンディマンド配信 するボランティア団体の
協力を得て、何回かの実施記録(動画と音声)が公開
されている
・ アンケート結果に見られるように、多様な参加者を得、
概ね良好な評価を得て科学コミュニケーションの新しい
スタイルとしての高い可能性が確認された
41
サイエンスカフェ神戸参加者アンケート結果より
(アンケート実施回数16回、回答数303)
その他
8%
会社員
21%
70代以上 10代未満10代
1% 10%
14%
20代
11%
無職
21%
教育関係
10%
主婦
10%
自営業
8%
学生・生徒
21%
アルバイト
1%
参加者の職業等
60代
20%
30代
18%
50代
10%
40代
16%
参加者の年齢分布
42
期待はずれ
1%
ゲスト
11%
ややはずれ
12%
期待以上
38%
その他
1%
場所
16%
時間
6%
参加費
10%
話題
29%
まあ期待通り
49%
サイエンスカフェに
対する参加者の評価
語らい
20%
人数
7%
よかった点
43
5.4 サイエンスカフェ神戸
の課題と展望







話題の拡散
ファシリテータの力量
議論の深まりにどうつなげるか
適正な規模をどう考えるか
参加者の年齢層
リピーターと参加者の固定化
当初想定していた学生の参画が少ない
...
44
5.5 サイエンスカフェの展開
・ 2007年度より兵庫県の科学技術振興の取り組みとして
県下で展開する「サイエンスカフェひょうご」事業に協力
(主催: 大学コンソーシアムひょうご神戸
(財)ひょうご科学技術協会
開催: 西宮、豊岡、洲本、姫路、明石(予定))
・ その他多様な組織との連携
カフェフィロ、 くらしとバイオ21(バイオカフェ)
日本ナショナルトラスト(駒井家住宅)
日本気象学会 ほか
・ 神戸市灘区 PTA研修会でのデモンストレーション
灘区小学校PTA役員 約200名の参加
⇒ 「科学を語る」文化の広がりへ
45
サイエンスカフェ神戸
今後の展開 (1/2)
• 「持続可能な」運営体制へ
より広範な市民や学生の運営への参加
大学院授業科目との連結
「サイエンスコミュニケーション演習」
• 支援研究者ネットワークの形成
大学コンソーシアムとの連携
• Webの利用
サイエンスカフェを補い、科学コミュニケーションを
展開させるインタラクティブな Web 上のシステムの
設計・開発
46
今後の展開 (2/2)
• ジュニアサイエンスカフェの試み
地域の学校との連携
• 科学・技術の枠を超えた展開
(医学・薬学、経済学、経営学、法学、
芸術、哲学など)
⇒ 市民社会における
「知のネットワーキング」
47
展望
「300人協力してくれる研究者がいれば
毎日神戸のどこかでサイエンスカフェが
開かれている なんてことが…」
サイエンス・コミュニケーション・サポート
コンソーシアム神戸
Science-communication Support
Consorsium KOBE
(SSCK)
48
アゴラ的広場
「心臓」創刊号(第1巻第1号,1969年)巻頭言より
前川 孫二郎
アゴラとは,古代ギリシャ都市の,行政や商業の中心
地で,市民の集会の広場であったと言われる.アテネに
もこのアゴラの遺跡が,アクロポリスの真北の山麓にあ
る.…(中略)…
そして,わたしは無意識のうちにそこにソクラテスと彼の
周辺に集まる市民の姿を心にえがいていた.ソクラテス
はこのアゴラにきて市民と対話することで彼の,いや市
民の哲学を設立したといわれる.
49
段階的展開
( 3つのフェーズ )
Phase 1 サイエンスカフェやセミナーなどへの参加を通じて、
科学・技術の話題に関心をもつ市民の緩やかな
ネットワークを形成
Phase 2 上のネットワークを利用しつつ関心をもつ市民が
大学の支援のもとに比較的しきいの低い
調査・研究活動に取り組む
(webで公開された電子情報を含む文献調査、
フィールドワーク、実験、アーカイブデータ解析
などを含む)
Phase 3 ある程度の高いモティベーションを持つ市民を中心
に、より高いレベルの調査・研究に取り組む
これらは、便宜的区分で、課題ごとに並行して進行しうるとともに、Phase1を
経ずにPhase 2 または 3 の調査・研究から始めるというケースもありうる
50
6.サイエンスショップ
• 「神戸大学サイエンスッショップ」の設立
人間発達環境学研究科
専任スタッフ2名(非常勤)、教員~20名の関与
• 目的と機能
(1) 市民社会の科学に関わる課題への
取り組み支援
(2) 「文化としての科学」の発展支援
(3) 大学・大学院教育
「創発的科学者養成システム」
- 課題発見・探求・解決能力
- コミュニケーション能力
- プロジェクトマネージメント能力
51
神戸大学サイエンスショップ
これまでの取り組み(1/2)
• サイエンスカフェ事業の展開、発展
• 市民と研究者が協力して気候変動に関するIPCC
レポートを精読する勉強会の実施
• 六甲山をフィールドとして活動する市民活動の
連絡協議会への参加と連携模索の為の意見交換
• 地域の親子が参加するビオトープづくり
• 神戸市の学校ビオトープの状況調査とネット
ワーク作りに関する相談と協力
52
神戸大学サイエンスショップ
これまでの取り組み(2/2)
• 地域の高等学校との連携による月観測プロジェ
クトの立ち上げと実施
• 地域の市民による環境問題調査に関するコンサ
ルティングと協力
• 野生動物問題に関する相談と協力の協議
• 地域の小学校保護者の要望を受けた理科実験教
室の開催
(このほか、高等教育プログラムの一環としての
さまざまな取り組み)
53
神戸大学サイエンスショップ
課題と展望
• これまでのところ、広義の科学教育に関わる取
り組みのウエイトが高くなっているが、市民に
よる調査・研究活動支援に関わる領域の一層の
展開を図る
• 学生、大学院生の参画を拡大する
• 大学内のより広範な部局に順次活動を拡大し、
全学的な取り組みへの発展を図る
• より安定的で持続可能な事業としての体制を構
築する
• 博士号を有する若手研究者の多様なキャリアパ
スの開拓に係る事業(日本物理学会)との連携
54
が図られている
6.「市民の科学」プロジェクトと
「持続可能な発展のための教育」(ESD)
持続可能な社会構築の重要な要件としての
社会関係資本(Social Capital)
社会をよりよく機能させるための
人々の間の信頼、規範、ネットワークなど
「知のネットワーキング」を通じた社会関係資本の形成
専門家と市民、 市民と市民
55
<国連大学高等研究所 鈴木克徳氏
presentation (2006年神戸大学)より>
「 持続可能な開発のための教育」とは
• ESD とは以下の点に関する批判的思考方法
(critical thinking)を身につけるための教育
– 人と事象との関わり合いの複雑さを理解
– 私たちの価値観について考察(パラダイム・シフト)
– 持続可能な社会づくりに向けた具体的方策を実践
• ESDは、人生のある時期に数週間で教えられるようなも
のではない。
・・・
56
<国連大学高等研究所 鈴木克徳氏
presentation (2006年神戸大学)より>
「持続可能な開発のための教育の10年」
のビジョン
- グローバルな学習の場の構築 誰しもが世界のどこにおいてでも
• 質の高い教育から恩恵を受ける機会があり、
• 持続可能な未来や好ましい社会の実現のために求め
られる価値観、行動、ライフスタイルを学ぶ機会がある
ような
社会を構築すること
“Global” Learning Space ⇒ “Universal” Learning Space
57
大学における「持続可能な開発のための教育」
「幅広い視野を持って
科学技術の高度化した時代に相応しい
新しい市民社会形成を担う」人材養成
「持続可能な社会のための教育」という
課題を契機とした
大学の多様な知のネットワーキング
による新しい高等教育の創造への挑戦
発達科学部
文学部(倫理学、哲学)、経済学部(環境経済学)
農学、 工学、海事科学、 医学…
58
要旨
(1) 現代は高度科学技術社会とされるが
科学が高度化する中で 科学に対する市民の関心が
低下する傾向がある
(2) 大学の支援のもとで 市民が科学を より身近な ものとし
さらに自らが科学的調査や研究を行う力を獲得してゆくような
(エンパワーメント) システムを構築する実践的研究を行っている
「市民の科学」プロジェクト
(3) こうした取り組みを通じて「持続可能な社会」の構築に貢献でき
ると期待している
59