Transcript セメントとは?
コンクリートとは? セメントとは? コンクリート工学研究室 岩城 一郎 コンクリートとは? コンクリート • 骨格材(骨材)をマトリックス(Matrix:母体となる材料)で結合 し,一体化したもの. • 通常のコンクリート:マトリックスとしてセメントを用いたもの (セメントコンクリート) • 他にアスファルトコンクリート,レジン(樹脂)コンクリート等 セメントコンクリート(以下,コンクリート) • 全体の7割を占める骨材(細骨材,粗骨材)の隙間をセメント ペーストで満たす. • セメントペーストで骨材を結びつけ,コンクリート全体を一体化 用語 • セメントペースト:水+セメント • モルタル:水+セメント+細骨材 • コンクリート:水+セメント+細骨材+粗骨材+α(混和材料) (マスコミでも,セメントとコンクリートの違いが認識されず.) セメントの歴史 • コンクリートの発達≒セメントの発達 • セメントのようなもの:古代エジプト,ギリシャ・ローマ時 代から存在,主として石材と石材の接着用(5000年前 の中国でも発見) • 1700年代中期 John Smeaton:水硬性(水と反応して 硬化する性質)石灰を発見→James Parker:ローマン セメントを発明 • 1824年:Joseph Aspdinが,ポルトランドセメントを発明 →特許(ポルトランドセメントの歴史:180年) • 1875年:我が国でも製造開始→我が国のセメントの 歴史:130年(鉄筋コンクリート100年程度,プレストレス トコンクリート50年程度) ポルトランドセメントとは? • ポルトランドセメント:石灰石,粘土,その他を 焼成し,粉砕したもの. • 石灰石(主成分:CaCO3)と粘土(主としてSi: シリカ,Al,H2O),若干の酸化鉄(セメントの 鉄分Feの補給,溶融点を下げる)を混合: 1450℃前後に焼成(半溶融状態)→クリン カー(石ころ状)を粉砕→粒度を調整→(この ままでは急結性を示すため,)緩結材として 3-4%の石こう(CaSO4)添加 セメント工場 実線:原料の流れ 点線:気体の流れ 予 熱 装 置 三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社 冷却機 1450℃ セメントの製造工程 (社)セメント協会HPより 生成化合物の種類 4種類 • C3S(3CaO・SiO2:エーライトまたはアリット) • C2S(2CaO・SiO2:ビーライトまたはベリット) • C3A(3CaO・Al2O3:アルミネート相) • C4AF(4CaO・Al2O3・Fe2O3:フェライト相) 表2.1参照 • 強度発現 • 水和熱,化学抵抗性,乾燥収縮→耐久性 ポルトランドセメントの種類 • 普通ポルトランドセメント • 早強ポルトランドセメント • 超早強ポルトランドセメント • 中庸熱ポルトランドセメント • 低熱ポルトランドセメント • 耐硫酸塩ポルトランドセメント • (白色ポルトランドセメント) 表2.2,表2.3参照 ポルトランドセメントの種類 早強性← →低水和熱 超早強←早強←普通→中庸熱→低熱 • 普通ポルトランドセメント: ↓耐硫酸塩性 最も汎用性の高いセメント 耐硫酸塩 (一般的な構造物,全体の約7割) • 早強ポルトランドセメント:普通よりも早く強度が出るセメント (工場製品,寒冷地) • 超早強ポルトランドセメント:早強よりもさらに早く強度が出るセメント (緊急工事用) • 中庸熱ポルトランドセメント:普通に比べ,水和熱の発生を小さくした セメント(ダム等マスコン) • 低熱ポルトランドセメント:中庸熱よりもさらに発熱を抑制したセメント (マスコン) • 耐硫酸塩ポルトランドセメント:硫酸塩に対する抵抗性を高めたセメント (硫酸塩を多く含む環境:海水,温泉,下水,工場廃水,化学工場等) • (白色ポルトランドセメント:色が白いため,これに顔料を加えることによ り種々の色のコンクリートを作ることができる.) 混合セメント(1) 混合セメント • ポルトランドセメントに他の材料を混合したセメント 高炉セメント • 鉄鉱石から鉄を採取する際に発生する廃棄物(高炉スラグ) を急冷し,微粉砕したもの(高炉スラグ微粉末)を混合.置換 率によってA種からC種まで.主としてB種を使用(表2.4参照) • 潜在水硬性:それ自身では水硬性をもたないが,セメントと水 との反応によって生じたCa(OH)2による刺激によって水和反 応を起こし,硬化する性質. • 高炉セメントコンクリートの性質:初期強度は小さい(特に低 温下で顕著),長期強度は大きい(ただし,十分に水分を供 給した場合).海水(塩化物,硫酸塩)に対する抵抗性が大き い.水密性が高い.緻密な細孔組織. シリカセメント • 反応しやすいシリカ(SiO2)を含むポゾランをポルトランドセメ ントに混合したセメント 混合セメント(2) フライアッシュセメント • 石炭火力発電所から発生する灰のうち,微細な 粒子を集塵機で集めたもの(フライアッシュ:ポゾ ランの一種)を混合. • ポゾラン反応:それ自身では水硬性を持たないが, セメントの水和反応で生じたCa(OH)2と水があると これらと反応し,硬化する.(一般に,潜在水硬性 とは区別される) • フライアッシュセメントの性質:初期強度は小さい, 長期強度は大きい.水密性,化学抵抗性が高い. フライアッシュの粒形は球状なため,一般にコンク リートの流動性がよくなる.(→悪い場合もある. 未燃炭素の影響) セメントに関する最近のトピックス • セメント製造に伴う環境負荷:天然資源の消費,焼成に 伴う燃料の消費・CO2の排出 • グリーン購入法の施行に伴う,混合セメント(高炉セメ ント,フライアッシュセメント)の需要拡大 • エコセメント:都市ゴミ焼却灰,下水汚泥を主原料にし たセメント.廃棄物問題を解決する一手段として,最近 注目.原料となる廃棄物の影響でセメントには約1%の 塩素が含まれるので,用途は鉄筋を使わないコンク リート分野が主流→速硬エコセメント.最近では脱塩素 技術が進歩し、より通常のセメントに近いものも開発→ 普通エコセメント(太平洋セメントHP参照) • その他特殊セメント:超速硬セメント等 コンクリートはなぜ硬くなるか? • 水とセメントが水和反応(化学反応)し, 生成した物質(水和物)が隙間を埋めて 一体化するため. セメント 水 水和直後 数時間後 数日後~数年後 13 セメントの水和反応 C&Cエンサイクロペディア (セメント協会)より引用 三浦尚著:土木材料学 (改訂版),コロナ社 • 水和反応:セメント化合物(C3S,C2S,C3A,C4AF)が水(H2O)と反 応し,水和物(C-S-H,Ca(OH)2,エトリンガイト等)を生成 • C-S-H:結晶質の低い水和物(ゲル), Ca(OH)2:結晶質 セメントの物理的性質 • 密度:普通ポルトランドセメント(OPC)で約 3.15g/cm3 • 比表面積(粉末度):OPCで約3000cm2/g • 凝結:セメントペーストのこわばりの状態(流動性 が失われていく状態),始発と終結,始発前:まだ 固まらない状態,終結後:硬化 • 強さ:決められた砂(標準砂),配合(W/C=0.5), 方法により得られたモルタルの圧縮強度で評価