Transcript セメントの製造方法
セメントについて コンクリート工学研究室 岩城 一郎 ポルトランドセメントとは? ポルトランドセメント:石灰石,粘土,その他を焼 成し,粉砕したもの. 石灰石(主成分:CaCO3)と粘土(主としてSi:シ リカ,Al,H2O),若干の酸化鉄(セメントの鉄分 Feの補給,溶融点を下げる)を混合:1450℃前 後に焼成(半溶融状態)→クリンカー(石ころ状) を粉砕→粒度を調整→(このままでは急結性を 示すため,)緩結材として3-4%の石こう(CaSO4) 添加 セメント工場 実線:原料の流れ 点線:気体の流れ 冷却機 予 熱 装 置 1450℃ 三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社 セメントの製造工程 (社)セメント協会HPより 生成化合物の種類 4種類 C3S(3CaO・SiO2:エーライトまたはアリット) C2S(2CaO・SiO2:ビーライトまたはベリット) C3A(3CaO・Al2O3:アルミネート相) C4AF(4CaO・Al2O3・Fe2O3:フェライト相) 表2.1参照 強度発現 水和熱,化学抵抗性,乾燥収縮→耐久性 ポルトランドセメントの種類 普通ポルトランドセメント 早強ポルトランドセメント 超早強ポルトランドセメント 中庸熱ポルトランドセメント 低熱ポルトランドセメント 耐硫酸塩ポルトランドセメント (白色ポルトランドセメント) 表2.2,表2.3参照 ポルトランドセメントの種類 早強性← →低水和熱 超早強←早強←普通→中庸熱→低熱 ↓耐硫酸塩性 耐硫酸塩 普通ポルトランドセメント:最も汎用性の高いセメント (一般的な構造物,全体の約7割) 早強ポルトランドセメント:普通よりも早く強度が出るセメント (工場製品,寒冷地) 超早強ポルトランドセメント:早強よりもさらに早く強度が出るセメント (緊急工事用) 中庸熱ポルトランドセメント:普通に比べ,水和熱の発生を小さくしたセメント (ダム等マスコン) 低熱ポルトランドセメント:中庸熱よりもさらに発熱を抑制したセメント(マスコン) 耐硫酸塩ポルトランドセメント:硫酸塩に対する抵抗性を高めたセメント (硫酸塩を多く含む環境:海水,温泉,下水,工場廃水,化学工場等) (白色ポルトランドセメント:色が白いため,これに顔料を加えることにより種々の色 のコンクリートを作ることができる.) 混合セメント(1) 混合セメント ポルトランドセメントに他の材料を混合したセメント 高炉セメント 鉄鉱石から鉄を採取する際に発生する廃棄物(高炉スラグ)を急 冷し,微粉砕したもの(高炉スラグ微粉末)を混合.置換率によっ てA種からC種まで.主としてB種を使用(表2.4参照) 潜在水硬性:それ自身では水硬性をもたないが,セメントと水との 反応によって生じたCa(OH)2による刺激によって水和反応を起こし, 硬化する性質. 高炉セメントコンクリートの性質:初期強度は小さい(特に低温下 で顕著),長期強度は大きい(ただし,十分に水分を供給した場 合).海水(塩化物,硫酸塩)に対する抵抗性が大きい.水密性が 高い.緻密な細孔組織. シリカセメント 反応しやすいシリカ(SiO2)を含むポゾランをポルトランドセメントに 混合したセメント 混合セメント(2) フライアッシュセメント 石炭火力発電所から発生する灰のうち,微細な粒子を集塵機で 集めたもの(フライアッシュ:ポゾランの一種)を混合. ポゾラン反応:それ自身では水硬性を持たないが,セメントの水和 反応で生じたCa(OH)2と水があるとこれらと反応し,硬化する.(一 般に,潜在水硬性とは区別される) フライアッシュセメントの性質:初期強度は小さい,長期強度は大 きい.水密性,化学抵抗性が高い.フライアッシュの粒形は球状な ため,一般にコンクリートの流動性がよくなる.(→悪い場合もある. 未燃炭素の影響) セメントに関する最近のトピックス セメント製造に伴う環境負荷:天然資源の消費,焼成に伴う 燃料の消費・CO2の排出 グリーン購入法の施行に伴う,混合セメント(高炉セメント,フ ライアッシュセメント)の需要拡大 エコセメント:都市ゴミ焼却灰,下水汚泥を主原料にしたセメ ント.廃棄物問題を解決する一手段として,最近注目.原料 となる廃棄物の影響でセメントには約1%の塩素が含まれる ので,用途は鉄筋を使わないコンクリート分野が主流→速硬 エコセメント.最近では脱塩素技術が進歩し、より通常のセメ ントに近いものも開発→普通エコセメント http://www.taiheiyo-cement.co.jp/zero-hai/ecoc/index.html その他特殊セメント:超速硬セメント等 セメントの水和反応 三浦尚著:土木材料学 (改訂版),コロナ社 水和反応:セメント化合物(C3S,C2S,C3A,C4AF)が水(H2O)と反 応し,水和物(C-S-H,Ca(OH)2,エトリンガイト等)を生成 C-S-H:結晶質の低い水和物(ゲル), Ca(OH)2:結晶質 セメントの水和反応(概念図) セメント 水 水和直後 数日後~数年後 数時間後 残った セメント セメントが 固まったもの コンクリート橋 砂利 気泡 砂 コンクリート 空隙 セメントペースト C&Cエンサイクロペディア (セメント協会)より引用 セメントの物理的性質 密度:普通ポルトランドセメント(OPC)で約3.15g/cm3 比表面積(粉末度):OPCで約3000cm2/g 凝結:セメントペーストのこわばりの状態(流動性が 失われていく状態),始発と終結,始発前:まだ固ま らない状態,終結後:硬化 強さ:決められた砂(標準砂),配合(W/C=0.5), 方法により得られたモルタルの圧縮強度で評価