(2)個人的倫理と社会的倫理

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コミュニケーション ダイナミクス
担当者
総合政策学部
深谷昌弘
第Ⅰ部
ヒューマンコミュニケーションと
社会現象
人間同士のコミュニケーション、つまり、ヒューマンコミュニケーショ
におけるダイナミックな意味の社会的編成可能性が多様性豊かな
文化を地球上に発展させてきた。 しかし、このようなヒューマン
コミニケーションを取り扱うには、情報理論的コミュニケーション論
には限界があることを指摘する。そして、新しい理論の必要性と
その理論が備えるべき条件を明らかにする。
(1)人間の問題解決能力を考える:フレーム問題
(2)社会関係の成立を考える:
ダブルコンティンジェンシー問題
(3)情報理論的コミュニケーション論の限界と新理論の必要性
(1)
ヒトの問題解決能力を考える:
フレーム問題と人間の柔軟な情況編成
情報・意味づけ・行為
(2)
社会関係の成立を考える:
ダブル・コンティンジェンシー問題
ヒトの社会性を見つめ直す
生物としてのヒトとその社会性
ヒトは種として一つでありながら多種多様な文化・社会を
地球上に発展させてきた
それを可能にしたのはときに創造的に問題解決する知力と
知の創造を社会的なものにしうるコミュニケーション能力
である。
ヒトの知力はたんなる情報処理能力ではないし
コミュニケーションもたんなる情報伝達ではない
社会現象とは
人々の行為の遣り取りの
複合・集積です
そして
人々の諸行為の間には
共同・交換・交渉・戦闘・無関係
あるいは
友好・支配・干渉・対立・無関心
などさまざまな関係が見られます
これらの関係は一時的であったり
継続的であったりします
もし
人々の諸行為がてんでにバラバラだったり
対立や戦闘だけだったりすれば
社会はもはや社会ではありません
社会が社会であるためには
少なくともそこに協力的ないし非対立的な
諸関係が成立してなければなりません
また
その中にはある程度の継続性を備えた
諸関係が含まれてなければなりません
では
人々はどうやって協力的ないし非対立的
関係を築くことができるのでしょうか?
(社会関係の成立・形成)
また
どうやってそのような関係を継続的な
ものにすることができるのでしょうか?
(社会の継続性・組織化・制度化)
ここではこれらの問題を
意味づけの視点から考察します
取り上げるのは最も単純な社会関係である
相互作用モデルです
ここで発生する
ダブル・コンティンジェンシー問題は
大変示唆的です
(参照)
橋爪大三郎、1985、
『言語ゲームと社会理論』、勁草書房
上掲書にある参考文献も併せて参照のこと
ダブル・コンティンジェンシー問題
ジャンケンポン
交差点が渡れない?
学生・教師関係
社会現象とは
人々の行為の遣り取りの
複合・集積です
そして
人々の行為は
人々の意味世界の所産です
相互作用モデル
(最も単純な社会関係)
社会関係と情況編成の相互的編成
2人の主体は互いに状況を意味づけし行為する
自らの行為の価値は相手の意味づけに依存する
各自の情況編成は開いており閉じていない
相手の意味づけが不明では行為を決定できない
→ → →ダブル・コンティンジェンシー
(二重偶有性)
社会関係の成立・形成
ダブル・コンティンジェンシー問題は
人々の心の中の意味世界で展開する情況編成や個々
の物事についての意味づけがお互いに協力的ないし
非対立的に進展しなければ社会関係が成立しないこ
とを明らかにしています
また初期情況が対立的ならばそれを非対立的なもの
に再編成しなければ協力的ないし非対立的な関係を
築くことができないことを示しています
人は社会関係の縺れを解消しようとして
話し合いをします ・・・だが・・・
ダブル・コンティンジェンシー問題は
コトバによって
解消するのだろうか?
相互作用モデル
この単純な相互作用モデルでも相互的な情況編成の二重の
不確定性がダブル・コンティンジェンシー問題を発生させる
会話モデル
行動とコトバ
相互作用モデルにおける
主たる意味づけの対象は互いの行動です
会話モデルにおける
主たる意味づけの対象はコトバです
コトバは行動一般とは
どこがどう違うのでしょう?
もし同じなら会話の成立も被説明項です
ダブルコンティンジェンシー問題
再考
私たちはどうやってお互いの意味世界を
噛み合わせて展開させ
社会的相互行為や社会関係や会話を
成り立たせているのだろうか?
われわれはフレーム問題から
情況を適宜柔軟に編成できることが
人間らしい問題解決能力の特性だ
ということを理解しました
しかし
情況編成の開かれた不確定性は
ダブル・コンティンジェンシー問題を
不可避にします
ダブル・コンティンジェンシー問題は
人間の意味世界が
開かれた不確定性をもつから生じるのです
AIロボットやプリミティブな生物に
この問題は生じません
情況の意味づけを適宜柔軟に編成できること
情況編成の開かれた不確定性が
人間らしい問題解決能力の特性であるとともに
この原理的問題の発生源なのです
むやみにダブル・コンティンジェンシー問題に
陥ることなく社会生活が営まれるためには
他者情況を自らの情況の中で忖度しつつ
お互いの意味世界を展開できることが不可欠
なのです
私たちはこれから人間のコミュニケーションを
徹底的に見つめることを通じて人々の意味
世界と社会関係との関連について迫って
いくことになります
そのためにはまず
コミュニケーション論
の
視座転換を図る必要があります
(3)
情報理論的コミュニケーション論
の
限界と新理論の必要性