日本における インターネットの 歴史と教訓

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Transcript 日本における インターネットの 歴史と教訓

わが国のインターネットの発展
— 歴史は教訓を与えるか —
2009年8月3日
後藤 滋樹
早稲田大学 理工学術院
情報理工学科・情報理工学専攻
1
1.個人は非力,社会が強力
長野大学
東北大学
津田塾大学
理化学研究所
図書館情報大学
山梨大学
静岡大学
NTT通研
東京大学
筑波大学
京都大学
大阪大学
九州大学
東京工業大学
慶応義塾大学
上智大学
KDD研
JUNET (徳田,bit 1986年臨時増刊7月 p.325)
2
ネットワークと人間社会
神様 → 人間 → コンピュータ △
会社 → コンピュータ ◎
人間社会 → ネットワーク ○
VT100
武蔵野
DEC 20
横須賀
1981
3
『遠くの親戚よりも近くの質屋』
• [例] 身近になったアジアの友人たち
メールに返事のない国内よりも
即答のシンガポールが頼りになる
→ 返事がくると思えば依存する
• パスカル的な一体感は,多くのSFの
モチーフになっている
[例] アーサー・C・クラーク
4
人間社会の一体感
哲学者パスカル
Blaise Pascal (1623—1662)
『パンセと小品集』
真空論序言
「一人一人の人間が日々に学問に進歩する
のみでなく,全体としての人類が,宇宙が
老いていくにつれてたえず前進するので
ある.」
http://www-groups.dcs.st-and.ac.uk/~history/PictDisplay/Pascal.html
5
個人としての人間は
とても弱い
• 走れば犬に負ける
• 力では馬に負ける
岩波講座インターネット 第2巻 「学習の手引き」
6
2.疲れを知らないコンピュータ
=== Mon Oct 20 23:04:05 JST 1986 ===
wanted CONNECT \015\012ATDT000118007001
234\015\015\012RRING\015\012\015\012CON
NECTgot that
send \r
RETURN
wanted ogin: 2400\015\012{u!^?{kO\015\
012\015\012StanF\033\011\0364m\0273 BSD
UNIX (Shast!)\004\012\015\015\012\0151
ogin:got that
send login
7
ノイズを除いた記録
=== Mon Oct 20 23:04:05 JST 1986 ===
wanted CONNECT
ATDT000118007001
234
RRING
CON
NECTgot that
send \r
RETURN
wanted ogin: 2400
StanF\033\011\036
4m 3 BSD
UNIX (Shast!)
ogin:got that
send login
8
wanted assword: ^?{i]^?{^?{ok^?{^?{^?{
^?{\015\012^?{\015\012\015\012Stanford
4.3 BSD UNIX (Shasta)\015\012\015\015\0
12\015login: g#^?{^?^?{]I^?^?{^?{i]^?{^
?{^?{q\013/}^?{^?{?;^?oks\027^?{s\027^?
{9Z\lq\005^?{7\0136.Kv{S7^?uuntmi}RJyxD
/7yPassword:got that
send password
uucp Shasta (10/20-23:02-8338) SUCCEEDED
uucp Shasta (10/23-23:04-8338) TIMEOUT
9
wanted assword:
Stanford
4.3 BSD UNIX (Shasta)
login:
uuntmi}RJyxD
Password:got that
send password
uucp Shasta (10/20-23:02-8338) SUCCEEDED
uucp Shasta (10/23-23:04-8338) TIMEOUT
人間はコンピュータには敵わない
10
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
WWW6
May- 8 7
Mar- 8 7
Jan - 8 7
Nov- 8 6
Se p- 8 6
Ju l- 8 6
May- 8 6
Mar- 8 6
Jan - 8 6
Nov- 8 5
Se p- 8 5
3.電子喧嘩の驚きと感動
Articles
By 野島久雄
喧嘩ができる優れたメディア
• 電子喧嘩は「しつこい」
私自身も経験:
細いチャネルでは大声になる
人間が適応している証拠
• 電子メールで感動が伝わる
12
4.意外にルールを守る米国
• ARPAnet、NSFnet
商用禁止(AUP: acceptable use policy)
• ベンチャービジネスの本場、米国でも商用
の発想は長らく欠如していた
• 社会の発展過程ではジャンプが起きない
13
ARPAネットのAUP
1980年代の中頃に、スタンフォード大学のGay and
Lesbian Clubの学生が、カリフォルニア大学バーク
レー校に催物の案内を送った。バークレーのネット
ワーク管理者は、案内をネットワークを経由して送
ったことに反発した。そのような行為はAUPに違反
しており、スタンフォード大学がARPAネットから切
り離されてしまう恐れがあると警告した。さて、スタ
ンフォード大学の学生の反応はどのようなものであ
ったか。言論の自由を重視する立場では何を送っ
ても良い。AUPを遵守するならば、Gay and Lesbian
14
の催物の案内を送るのは間違っている。
5.新奇の試みと手応え
OK
• 日本は「後追い」であるという非難
事実はやや複雑
米国に比肩できる先駆的な研究あり
• WWW (HTTP), Gopher // avenue
• Java // 遠隔実行言語
15
研究も社会的な活動
• 人間は自らの姿を直接に認識できない
• 社会は鏡の役割を果たす
研究者も俗世間と隔絶していない
• 周囲から反応がないと、研究を止
めてしまう
16
研究開発とリスク管理
• 研究開発は成功率が低い
95%は瞬時に失敗
• リスク管理は社会の知恵
一人の社会では保険という制度が無意味
• チャレンジする人を応援する仕組み
これは一種の分業である
17
シリコンバレーでの逸話
• 筆者のNTT研究所時代の部下(米国人)の
2人が、たまたま同じ会社(start-up)で働く
• その会社の応援演説を頼まれた
私は製品の詳細を知らないが、能力のある技
術者が2人いるのは事実と述べた
• これは教科書に載っている応援の方法
18
Silicon Valley Model
by Prof Masahiko Aoki
• It does not work in Japan.
Follow-up trials mostly failed even in the US.
• A venture capitalist and an entrepreneur do help
each other.
19
6.インターネット博物館が必要
誰が記録をしているのか
「これほど古文書が残らない分野も珍しい」
朝日新聞・服部桂氏の嘆き
「苦労していない分野はドラマにならない」
NHKのプロジェクトX担当者
ヨーロッパから研究者が日本に乗り込む
変化する日本社会は絶好の対象
日記をつけるのも一案
20
WWW6
Sep-94
Aug-94
Jul-94
Jun-94
May-94
Apr-94
Mar-94
Feb-94
Jan-94
Dec-93
Nov-93
Oct-93
Sep-93
W W W Servers in Japan
120
100
80
60
40
20
0
hosts
By 坂本、佐藤、高田
社会は決してフラットではない
• 人間社会は急激な変化ができない
• 先進的な人が独走すると、不安定な
社会となる
• 変革には自動的にブレーキが作用
社会にはスタビライザが
組み込まれている
22
重要な中間層の役割
ゲートキーパ
23
2:8の法則
• 会社では、2割の人が全体の8割
の仕事をこなしている。
• 2:8の二乗法則
インターネットでは4%の人が、
社会の96%の面倒を見ている。
24
7.電子メールの返事は48時間以内
24
48
25
20:3 の比率では落第
• 返事をするために委員会を開いてい
たのでは間に合わない
• 確認の返事だけは出すようにしたい
沈黙は何も意味しない
説明しないのは不気味だ
26
付録:インターネットは汎用技術
• 著書 “Economic Transformations”
副題 General Purpose Technologies and
Long-Term Economic Growth
• 著者 Richard G. Lipsey,
Kenneth I. Carlaw, and Clifford T. Bekar
http://www.sfu.ca/~rlipsey/res.html
• 本書では人類の歴史の中で24の汎用技術を掲
げている。コンピュータが20番目、インターネッ
トは22番目に位置する
27
24 Technologies (8/24)
Chapter 5: A Survey of GPTs in Western History:
Part I
10,000 BC to 1450 AD
1.植物の栽培
9000—8000 BC
Process
2.動物の家畜化 8500—7500 BC
Process
3.鉱石の精錬
8000—7000 BC
Process
4.車輪
4000—3000 BC
Product
5.筆記
3400—3200 BC
Process
4.青銅
2800 BC
Product
7.鉄
1200 BC
Product
8.水車
中世初期
Product
中世とは西ローマ帝国の滅亡(476)からルネサンスまで
28
24 Technologies (16/24)
Chapter 6: A Survey Of GPTs in Western History:
Part II 1450 to 2000
9.3本マストの帆船
10.印刷
15th 世紀
16th 世紀
Product
Process
11.蒸気機関 18th 世紀末~19th 世紀初頭 Product
12.工場
18th 世紀末~19th 世紀初頭 Oganizational
13.鉄道
19th 世紀中頃
Product
14.鋼製汽船
19th 世紀中頃
Product
15.内燃機関
19th 世紀終り頃
Product
16.電気
19th 世紀末頃
Product
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24 Technologies (24/24)
Chapter 6: A Survey Of GPTs in Western History:
Part II 1450 to 2010
17.自動車
20世紀
Product
18.飛行機
20世紀
Product
19.大量生産
20世紀
Organizational
20.コンピュータ
20世紀
Product
21.Lean production
20世紀
Organizational
22.インターネット
20世紀
Product
23.バイオテクノロジー 20世紀
Process
24.ナノテクノロジー 21世紀(予想) Process
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汎用技術が社会を変革する
• 労働力の分布、人々の居住地
• 工場の物理的な形態、労働の慣習
• 工場の経営や財務の仕組
• 製造業の地理的な配置
• 産業の集中の度合
• インフラストラクチャの整備
• 私企業の金融分野の活動と方法
• 教育の制度や内容
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水車を動力として実現できた
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
ビールの製造 (987);
麻の加工 (1040);
織物の縮絨 (1086);
皮なめし (1138);
材木の加工 (1204);
製紙 (1238);
カラシの製造 (1251);
針金の製造 (1351);
顔料の製造(粉末) (1348);
金属の切断加工 (1443);
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