Transcript 「映像」を表現する言葉
教員と学生の協働による
映像制作教育の構築
「授業を豊かにするメディア」あるいは
「教師が体を張ったメディア授業」の報告
私の問題意識
■映像メディア教育の理念をいかに形成するか
-ことに“制作実践”をどう意義づけるか
■“実践してこそ(映像番組を自分で作ってみて
こそ)メディア全般の理解は深まる”
メディアの表現力を身につけることでメディアの読解
力、社会への関心が高まり、生涯を通じて学習できるよ
き市民を育てる
学生たちにメディアの「読解力」&「表現力」をいかにバランスよく学習でき
るような教育プログラムを構築していくか
■前提: 「表現力」を高めることと、「読解力」を高める
ことは相関している(仮説)
■課題: 「表現力」と「読解力」を、どう“測る”のか
*「制作実習の科目を履修しているA君は、していないB君よりも、表現力の
みならず、メディアの読解力も42%高い」などということは可能なのか?
メディアリテラシーの「能力」を採点したり計測したりすることは可能か?
■方法: ある例示を読解してもらうことで、問題意識を
共有し、自分たちでもこの問題意識を映像作品のうえ
で表現してもらう
■結果: ねらいと結果に(いつも)“ズレ”が生じている
このズレの部分に「ある教育的真理」(のようなもの)
が見えたような気がするーという報告
東京情報大におけるビデオ制作教育
課題(見本)のステップ
学年
2年次前期
課題として実作する作品
3年次前期
①インタビュー番組
②図書館利用案内 →2009「ニュース」
③スタジオ番組
(ニュース・クイズ ・料理番組・
バラエティ・語学講座・・・)
④ショート・ドラマ
(規定課題1本・自由創作1本)
⑤ドラマ/ドキュメンタリー/CM
3年次後期
⑥アニメ/プロモーション・ビデオ/特撮
2年次後期
“見本”は“テンプレート”なのか?
■ある学生が“見本”のことを“テンプレート”と呼んだ
■テンプレート : template(型板・雛形)
・テンプレート:数箇所の空白への書き込みで目的の文書とな
るように準備されたフォーマット
・たとえば、結婚式場の上映映像番組テンプレ:テンプレート上
で映像データを載せ替えるだけで番組ができてしまう
■番組が作れるようになる、上手に見える番組
が作れるようになる
■「プロの仕事として当然」という側面はある
→ある型やスタイルに上手に落としこむことが
できるようになることが“上達”・・・なのか?
今回の実践
「2つのテンプレート:ニュースのAとB」
1.
同じ取材先で得られた素材を使いながら
異なる2つのテンプレート(スタイル)で編集した
2つの“見本”を示す
2.
この2つの“テンプレート”は、どこが共通していて、どこ
が相違しているのか意識・発見させ、「アンケート」に記述さ
せる。この授業の「ねらい」を考えさせる。(1~4年生)
2´. この見本の素材を自分でも編集してみる。(3年生)
*見本の素材と完成形をデータDVD教材にして自習させる
3.
ねらいに沿った番組を自分たちで作ってみる(2~4年生)
アンケート
■表(記述時間5分×2回)
上映された2つのニュース番組のどこが同じでどこが違うかを記入してください
■裏(記述時間8分)
1)あなたは、今回見た番組のAとBは、どちらを好意的に受けとめることができましたか?
□ 「A」のほうを好意的に受けとめた
□ 「B」のほうを好意的に受けとめた
□ 「A」も「B」も両方とも好意的に受けとめた
□ 「A」も「B」も好意的に受け止めることはできなかった
□ わからない。どちらともいえない。
2)それはなぜですか?理由は?
3)自分がこのような比較用の番組を作るとしたら、どのようなことをテーマにしますか?
(同じ素材が構成によってAにもBにもなるようなテーマには、どんなものがあると思います
か?)
4)あなたは、この試み(AとBの比較)には、どんな目的があると思いましたか?あるいは、
このような授業に、どんな感想を抱きましたか?
*このほかの点でも、自由にご意見ご感想をお書きください。
対象者・サンプル数 東京情報大学情報文化学科の1~4年生 105名
e:4年生
映像ゼミ生
9名
1年:2009.6.8「映像メディア論」の授業にてアンケート実施
2年:2009.6.1「映像表現論」の授業にてアンケート実施
2009.6.17~7.22「ビデオ制作映像編集演習」にて
履修者が映像作品制作実施
3・4年:2009.5.27ゼミ授業内にてアンケート実施
2009.7.1~7.22ゼミ授業内にて映像作品制作実施
d:3年生
映像ゼミ生
16名
2年生映像表現論の履修者 40名
c:2年生
b:2年生
映像実習の履修者
20名
映像実習の非履修者
20名
a:1年生
映像メディア論の履修者 40名
アンケート実施前の予測
■共通点と相違点の記述数
予想1・メディアについて学んだ者ほど、記述数が多く、
適切なものになる
予想2・同学年でも、実習体験を持つ履修者のほうが、
記述数が多く、適切なものになる
期待される結論:映像メディアの読解と表現の学習が
進んだ者ほど、映像メディアを読み解く力が強くなる
*「AよりもB,BよりCが、○%リテラシーが高い」という言い方も可能となる-かもしれない
■共通点と相違点の記述内容
予想3・実習体験を持つ履修者のほうが、
技術的な指摘が増える
予想4・メディアについて学んだ者ほど、より鋭い(辛らつ
な)批評を述べるようになる
→「AよりBを好む」or「AもBもダメな番組」と切り捨てる
→「わからない・どちらでもない」の回答は少なくなる
上の結論をより強化する結果が得られる
ニュースのAとB 共通点と相違点の指摘数
第1回
共通点
a
b
c
d
e
相違点
第2回
計
共通点 相違点
計
1年生40名
2.00 2.60 4.60 0.65 1.85 2.50
2年生非履修
20名
1.75 3.10 4.85 0.75 2.55 3.30
2年生実習履修
20名
1.60 3.80 5.40 0.55 2.55 3.10
2年生全体40名
1.68 3.45 5.13 0.65 2.55 3.20
3年生映像ゼミ生
16名
2.50 7.00 9.50 0.81 4.81 5.63
4年生映像ゼミ生
9名
3.44 7.11 10.6 0.67 6.11 6.78
ニュースのAとB 共通点と相違点の指摘数
12
10
e:4年ゼミ生,
10.6
d:3年ゼミ生,
9.5
8
6
4
6.78
c:2年生実習
履修, 5.4
b:2年非履
5.13
修, 4.85
a:1年生,
4.6
5.63
3.3
3.2
2.5 3.1
2
0
第1回計
第2回計
ニュースのAとB 共通点と相違点の指摘数の「指標」
第1回上映 第2回上映
a
b
c
d
e
計
指標
1年生40名
4.60
2.50
7.10
1.00
2年生非履修
20名
4.85
3.30
8.15
1.15
2年生実習履修
20名
5.40
3.10
8.50
1.20
2年生全体40名
5.13
3.20
8.33
1.17
3年生映像ゼミ生
16名
9.50
5.63
15.13
2.13
4年生映像ゼミ生
9名
10.6
6.78
17.38
2.45
「EはAにたいして2.45倍リテラシーが高い…」?
明らかに誤った読み取りを行った例
a
b
c
d
e
「Aには楽しい・明るいBGMが、Bに
は暗いBGMがあった」とする回答
%
1年生40名
7人 / 40人
17.5%
2年生非履修
20名
4人 / 20人
20%
2年生実習履修
20名
4人 / 20人
20%
2年生全体40名
8人 / 40人
20%
3年生映像ゼミ生
16名
0人 / 16人
0%
4年生映像ゼミ生
9名
0人 / 9人
0%
予想1・メディアについて学んだ者ほど、
記述数が多く,適切なものになる →○
ニュースのAとB 共通点と相違点の指摘数の「指標」
第1回上映 第2回上映
a
b
c
d
e
計
指標
1年生40名
4.60
2.50
7.10
1.00
2年生非履修
20名
4.85
3.30
8.15
1.15
2年生実習履修
20名
5.40
3.10
8.50
1.20
2年生全体40名
5.13
3.20
8.33
1.17
3年生映像ゼミ生
16名
9.50
5.63
15.13
2.13
4年生映像ゼミ生
9名
10.6
6.78
17.38
2.45
予想2・同学年でも、実習体験を持つ履修者のほうが、
記述数が多く適切 →×
2年生どうしでは、ほとんど傾向がかわらなかった
AとB どちらを好意的に受け止めることができたか?
AとB どちらを好意的に受け止めましたか?
Aの方を好Bの方を ABとも ABとも
わからな
意的に受 好意的に 好意的に 好意的に い・どちら
容
受容
受容
受容しない でもない
a
b
c
d
e
8人
(20%)
8人
(20%)
4人
(10%)
5人
(12.5%)
15人
(37.5%)
2年生
非履修20名
1人
(5%)
7人
(35%)
4人
(20%)
5人
(25%)
3人
(15%)
2年生
実履修20名
8人
(40%)
3人
(15%)
2人
(10%)
4人
(20%)
3人
(15%)
3年生映像
ゼミ生16名
8人
(50%)
4人
(25%)
2人
(12.5%)
1人
(6.25%)
1人
(6.25%)
4年生映像
ゼミ生9名
4人
(44.4%)
1人
(11.1%)
2人
(22.2%)
2人
(22.2%)
0人
(0%)
1年生40名
AとB どちらを好意的に受け止めることができましたか?
0%
100%
90%
80%
6%
■わからない・ 15%
どちらでもない
38%
25%
20%
13%
20%
50%
6%
13%
■ABとも好意的に
受容しない 10%
70%
60%
15%
15%
22%
■ABとも好意的に
受容
22%
25%
■Bのほうを好意的に
受容
11%
10%
わからない・どちらでもない
40%
ABとも好意的に受容しない
30%
20%
35%
20%
10%
50%
40%
20%
ABとも好意的に受容
44%
■Aのほうを好意的に
受容
Bの方を好意的に受容
Aの方を好意的に受容
5%
0%
A:1年生
B:2年生非履修
C:2年生履修
D:3年ゼミ生
E:4年ゼミ生
予想4・メディアについて学んだ者ほど、より鋭い(辛らつな)批評を述べるように
なる →「AよりBを好む」or「AもBもダメな番組」と切り捨てる →×
→「わからない・どちらでもない」の回答は少なくなる
→○
ニュースのAとB 好意的な受け止め方の差の理由
その理由
Aのほうを好意的に
受けとめた理由
明るい、ほんわか、幸せな気分になれた、B
を見るとストレス感じる、Bの人は怒りにまか
せた話し方
Bのほうを好意的に
受けとめた理由
被害の実情伝えている、知識として知ってい
る、自分の家は農家、今の時代Aはブラック
ジョーク
ABとも好意的に受け 動物への愛情も農家の被害もわかる、村の
止めた理由
状況がわかる、2つがそろって意味がある
ABとも好意的に受け Aは自作自演でBは具体性がない、Aのグッ
止められない理由
ドニュースもBを見た後では印象悪くなる
わからない・どちらで
もない理由
餌付けと被害の関係性が不明である、見る
順番によって印象が違うだろう、どちらの言
い分もわかる
自分が作るとしたら?
3) 自分がこのような比較用の番組を作るとしたら、
どのようなことをテーマにしますか?
(同じ素材が構成によってAにもBにもなるようなテーマには、どんなものがあると思いますか?)
a
1年生
音楽CDのコピー利用/空港の利便性と騒音問題/駆け
出しミュージシャンの路上ライブ活動の青春像と騒音
b
2年生非履修
24時間コンビニストアの是非/地球温暖化問題/禁煙
運動と喫煙愛好家
c
2年生実習履
修者
子供の携帯電話/食品の安売りと食品偽装/日光の猿
の餌付けと猿被害
d
3年生ゼミ生
夏の観光地の魅力と観光客のマナーの悪さ/ピアノを
練習する子供と近隣への騒音苦情/犯罪者の更正と再
犯率/夏の晴天のメリット(売り上げアップ等)・デメリット
(農作物被害)
e
4年生ゼミ生
読売ジャイアンツの連戦連勝/男(女)に生まれてよ
かった・男(女)に生まれかわりたい/花見の宴の賑わ
いと騒音問題
授業の目的について
4)あなたは、この試み(AとBの比較)には、どんな目的があると思いましたか?
あるいは、このような授業に、どんな感想を抱きましたか?
*このほかの点でも、自由にご意見ご感想をお書きください。
a
1年生
同じ事実でも立ち位置や見方によって印象が変わる / 映像を見る順序
によって印象が変わる / ABどちらかだけを見てしまわずに、広い考えを
もたなくてはならない / 映像プロパガンダ
b
2年生 ABどちらにも言い分、つまり答えが出ないことを考えるため? / メディア
非履修 によって人を動かすこと・洗脳することができるということ / リテラシーの
能力があるかどうかを測るため、学会発表のためのデータ収集、是非もっ
とやってほしい
c
2年生 素材は編集しだいで別の表現になること / 取材者は中立でいられるの
実習履 か / 同じカットの応用方法 / インタビューやナレーションのつけかたで
修者
こんなに違って見えるのか
d
3年生
ゼミ生
メディア・リテラシーを考えるため / 今放送されているニュースもこのよう
に情報操作されていると思うとショック / ニュースの構成の大事さがわか
り、この授業が勉強になった / 伝えたいことが違うと作品内容もこんなに
変わるものかと驚き編集の力に魅せられるとともに、恐怖を感じた
e
4年生
ゼミ生
物事への光の当て方によって印象を操作できる・番組を作る側として心に
刻んでおかなくてはならない / 先生の熱い思いがあったと感じた / オ
ピニオン・リーダーとしてどのように制作すればよいのか学ぶ時間だった
アンケートの予測と結果
予測
1.メディアについて学
んだ者ほど、記述数
が多く、適切なもの
になる
2.同学年でも、実習
体験を持つ履修者の
ほうが、記述数が多
く、適切なものになる
3.実習体験を持つ履
修者のほうが技術的
な指摘が増える
4.リテラシーの高い
者はより鋭く辛らつな
批評を述べる
結果
考察
○
・単に「年齢があがると」ということではないか?
・メディア教育の成果というわけではないかもしれない
・メディア教育というのは専門教育というよりは一般教
養教育であるともいえる
「AよりもB,BよりCが、○%リテラシーが高い」という
言い方も可能?「Eの4年生は、Aの1年生より2.45倍、
リテラシーが高い」のか?・高学年ほど記述数が多い
別の理由があるのではないか?
×
同学年の場合には、ほとんど傾向かわらない
△
記述数が増えるにおいて、技術面での指摘は増える
(字幕・ナレーション・音楽だけでなく、顔の向きなどを
計算して撮っているなども理解できている)が、構成と
論理、社会性などについての指摘も増える
×
・3-4年ゼミ生においては、そうならなかった
・Aのほうを「楽しい」「ほんわか」「明るい」ほうを好み、
Bには「ストレス」を感じている
高学年生の記述数が多い理由
■メディア・リテラシーが生は、映像を学んだから記述が多いのか?
■年齢が高い者ほど記述が増えるということか?
■ 「たくさん回答することに注力できる者」「その動機がある者」がたく
さん書いたという(当たり前の)現象が現われただけ?
■高学年生は、「映像メディアについて学習する」という授業の枠組
みに「慣れ」「親しみ」がある?
■自分は映像メディアについてゼミで専門に学んでいる」という自負
?
■ 「たくさん書けば先生が喜ぶ」「いい授業・意義深い授業だと書け
ば先生に好かれる」といった行動原理(打算)がある?
■ 「自分の親しい(好きな)先生が良い学会発表ができるように良い
データを提出したい」?
■ 「わからない」と回答すると「自分の判断能力を疑われる」、あるい
は「そういう回答は先生に迷惑かける」という配慮?
映像ゼミ生の回答の背景・心理は?
■ゼミの先生の人柄や、普段の発言・主張などに
沿って、学生の好む方向性あるいは回答の方向
性が誘導されているということではないのか?
■新人教員の頃の伊藤-舌鋒するどく批判的言辞を弄することが多
かったように思いだされる
■ここ数年の伊藤のスタンス-映像メディアを通じて社会性・人間性
を育成する、メディアを批判的にとらえるだけでなくメディアに携
わる人への尊崇の念を抱き地域の人に感謝や連帯の心を持とう
と主張している→優しく・甘くなった
伊藤敏朗の授業の思想的背景
■ レン・マスターマン「メディア・リテラシーの18の基本原則
Len Masterman, "Media Education : Eighteen Basic Principles", MEDIACY, vol.17,No.3, Association for Media Literacy, 1995.
5.メディア・リテラシーは生涯を通した学習過程である。ゆえに、学ぶ者が強い動機
を獲得することがその主要な目的である。
7.メディア・リテラシーの基本概念(キーコンセプト)は、分析のためのツールであっ
て、学習内容そのものを示しているのではない。
12.メディア・リテラシーはその探究を討論によるのではなく、対話によって遂行する
。
■「生涯を通じて映像メディアと関わったり考えていくことで自分自身の
人生を豊かにし社会の幸福に寄与しましょう」
●「私(伊藤敏朗)は映像メディアが大好きである。映像メディアに関す
ることでなら寝食を忘れて努力できる。好きなことのために懸命に努
力する人生は幸せである。」というテーゼを示して、ゼミを引っ張って
いる。
板倉賛治・後藤福次郎の主張
板倉賛治・後藤福次郎共著 図画教授宝典 大日本雄弁会講談社発行 昭和6年
p.1 第1篇 図画指導概説 第1章 図画書指導の態度
『指導』とは何か?それは、教師の精神活動が、
生徒の精神活動に触れて、それをより高くひきあ
げることである。そしてこれは、教師が児童と共に
ある時、たとへ何一言を云はずとも必ず存し、行は
れるものである。つまり、指導の無い教育などいふ
ものは決して存在せぬ。
■“教育とは教師と生徒の精神が共鳴することである”と読める
■現在の教育において、「指導」している教師のパーソナリティ、思想
や主張、普段の言辞や思考パターンをなぞっているというケースは
?(ほとんど教育とはそういうものか?理系・文系を問わず?)
今回の実践
1.同じ取材先で得られた素材も使いながら異なる番組(ニュース)のスタイルで編集した2つの“見本”を、授業の中で示す
2.この2つの“見本”は、どこが共通していて、どこが相違しているのか意識・発見させ、記述させる。
このような授業の「ねらい」を考えさせる。(1~4年生)
2´.この見本の素材を自分でも編集してみる。(3年生)見本の素材と完成形をデータDVD教材にして自習させる
3.このねらいに沿った番組を自分たちで作ってみる(2~4年生)
■実作結果 計26班43本が完成
c:2年生実習履修者 : 15班21本
AB両方を原則、AまたはBのスタイルのいずれか1本でもよい
AB両方を制作した班 ・・・6班12本
AまたはBで制作した班 ・・・9班9本
→結果として単なるパロディニュースにしか見えない
d:3年生ゼミ生 : 6班12本(全班がAとB両方作成)
e:4年生ゼミ生 : 5班10本(全班がAとB両方作成)
実作結果 2年生演習履修者 15班21本
班№
番組タイトル
班№
番組タイトル
1班
A:千葉県の平和のために
B:日本国憲法改正の闘い
9班
巨大生物襲来
2班
A:新時代の風-オタク文化
B:増えるオタ被害
10班 恐怖の銃声~不安に怯える住民たち
~
3班
大学生の変わった趣味~あな
たの趣味は何ですか?~
11班 人を襲うノラ犬~ツバサ君の実態~
4班
子犬の出産~増える無責任な
飼い主たち
12班 ついに発見か!?UFOの最新映像 大
公開!
5班
A:世紀の発明
B:悪魔の発明
13班 A:インフルエンザ流行
B:増える若者の仮病欠勤
6班
A:幸せを呼ぶまぼろしの人魚
B:不幸を呼ぶまぼろしの人
14班 A:ニュースTomix軍事兵器展覧会
B:ニュースTomix西地区で戦争激化
7班
THE NEWS 東京情報大学
内で列車脱線事故
15班 いぬのきもち~アレキサンダーの場合
~
8班
社会現象~引きこもり問題
実作の結果 映像ゼミ生 11班22本
班№
番組タイトル
班№
番組タイトル
1班
A:人気の先生に密着 映像制作(人気の先生と
熱気のある授業)
B:実録 やる気のない生徒たち (口うるさい先
生とやる気を失った生徒たち
1班
A:夢に向かって~スケートボードにかける情
熱~ (スケートボード選手の活躍)
B:若者の今!~街にはびこるスケートボー
ダーの実態~ (若者たちの迷惑行為)
2班
A:情熱を燃やす留学生 (映像制作に情熱をも
つ留学生の日々)
B:増える被害の実態 ~盗撮犯の主張~ (カメ
ラを手離さない留学生に盗撮の疑惑
2班
A:楽しいタバコ生活~情報大生の場合~
(喫煙自由な大学で拡がる愛煙家の友情)
B:非喫煙者の叫び~情報大生の場合~
(非喫煙学生の怒り)
3班
A:学生とパソコン (ネットワーク完備のキャンパ
スライフの利便性)
B:ユビキタスの落とし穴 (授業中もノートPCで
遊んでいる学生たち)
3班
A:「mixi」~その新しい可能性 (ネットワーク
で拡がる人間関係)
B:見えない社会に迫る~インターネットの影
~ (ネット上での誹謗中傷問題など)
4班
A:みんな大好き学生食堂 (食堂オススメメ
ニューが学生の人気集める)
B:驚愕!大学食堂で食中毒 (大学食堂の人気
メニューで食中毒発生)
4班
A:住みよい街へ~シッピングモール開発~
(大型ショッピングセンターの建設推進)
B:御成台公園の自然を守れ!!地域住民V
S開発業者 (開発による自然破壊に反対す
る地域住民)
5班
A:学内にAV視聴コーナーがオープン (勉強に
も役立つAVライブラリー)
B:海賊版DVD販売で大学生逮捕 (大学施設を
悪用した犯罪行為)
5班
A:がんばれ!町の風紀委員 (町の美化に自
発的に取り組む78歳の老人)
B:恐怖!ゴミ漁り男を追う! (ゴミ屋敷の
主)
6班
A:快適な学生生活 (学内の喫煙所を撤去)
B:減らされる喫煙所~愛煙家の葛藤~ (喫煙
所の撤去で困惑ひろがる愛煙家たち)
実作の結果
●2年生より3年生、3年生より4年生のほうが内容(論理・構
成)・表現(撮影・編集技術)とも高い
●最もよく出来たと思われる4年生作品は、本授業のねらいを
よく理解し、よく表現もできていた
● 「テンプレート」を示して、映像制作実践を体験させる試み
は成功(この実力なら「テンプレート」なくても制作可能)
● 2年生は全体的に「パロディニュースの競作」の趣
AまたはBのみで制作した9班9本は、意図不明な作品に
見える。見本として示した「テンプレート」のパロディ的な側
面のみが影響を与えた印象
●良い作品:「論理性・構成力」と「表現技術力」とも高い
●良くない作品:「論理性・構成力」と「表現技術力」とも低い
→どちらに原因があるのか必ずしも判定し難い
結 論
1.本研究の「テンプレート」作品にたいする学生の
反応や、その読解力の分析
●映像学習の長い学生ほど、より良い回答を示す
傾向は確認できた
●リテラシー能力の向上によるものか、教師への
シンパシーによるものかは判然としない
●テンプレートに教師が出演したことで、興味は増
したが、客観的に見ることができなくなった
●教師の後ろ姿を見て映像メディアへの興味関心
を高めたという点でゼミ経営がうまくいっているら
しいという判断はできた
2. 本研究の「テンプレート」作品は映像制作演習に
適切だったか?実作の役に立ったのか?
● 2年生の演習では、AとBを両方制作させなかっ
たことから結果は曖昧
●AとBを両方制作した班の場合も、このテンプレー
トがとりわけ有効だったとする確証はなし
● 3-4年ゼミ生は、この「テンプレート」のねらいを
よく理解して上手に模倣した
●ゼミ生は、その他にも多くの演習経験を有するの
で、今回の「テンプレート」のみの成果や適否につ
いては抽出不可
=研究としての目的が達せられたのかは不明
3.「教師が出演しているテンプレート」としての面白
さ・教師の熱意は伝わった
●学生の「精神活動に触れて、それをより高くひき
あげる」ことの意味あり
● 「授業を豊かにするメディア」の一実践例として
報告できるのではないか
●所期の研究目的からズレた結果ともいえる
=研究目的に対して、準備したテンプレートが
教師が出演してズレたので、結果もズレた
2009年度前期授業評価アンケート
知識、技術の習得度
5
4.5
3
2.5
全授業
平均
知識、
技術の
習得度
3.8
4.4
4.6
4.4
明瞭性
3.7
4.4
4.6
4.2
計画性、
授業進
度
3.8
4.3
4.4
4.1
熱意
3.9
4.5
4.7
4.5
満足度
3.8
4.4
4.6
4.4
2
満足度
1.5
明瞭性
1
0.5
0
全授業平均
伊藤敏朗 2年座学
伊藤敏朗 2年実習Aクラス
熱意
伊藤
2年
実習B
クラス
カテゴ
リー
4
3.5
伊藤
2年
実習A
クラス
伊藤
2年
座学
計画性、授業進度
伊藤敏朗 2年実習Bクラス
4.言及が尽くせなかった幾つかの問題提議の芽
■「映像」は例示としてはあまりに具体的すぎて、「例示」の抽象性が低い
=しかし、映像は常に「具体的」でなければ学べない
(絵カードの並べ替えと映像番組制作とはまったく異なる)
■「プロの作っている映像作品も、あるテンプレートに沿って無反省に量産されて
いるのではないかと」いう視点をもたせることはできたが、対象を、ある番組
のスタイルの中で「決め付ける」ことがすべて悪だということを言い
たいわけではない
映像という具体的なものから、言語化され抽象化される過程で、取捨されるこ
とや切り捨てられることがあるのは当然
多様な情報からノイズを捨て去って、抽象し、主張がこめられて効率が高まり、
意味(価値)のある情報となる
■現実の出来事は本来意味不明だが(あるいは意味など持ってすらいないが)、
その雑多な情報を捨象して構成された「情報」に意味を見出している
映像と言語の本質的相違に根ざす問題を考えることにならないか?
映像は何かを考察する一つの視座が与えられた
<これらを反省点に研究の枠組みを改良し再挑戦したい>
教員と学生の協働による
映像制作教育の構築
「授業を豊かにするメディア」あるいは
「教師が体を張ったメディア授業」の報告
2010年8月28日
クロス・メディア学会
伊藤敏朗
おわり
映像メディアの
「読解・批評力」と「実践・表現力」
■評論家とプレーヤー
野球解説者vs選手/映画評論家vs映画監督/音楽評論家vs音楽家
監督vsカメラマン、スタッフ
■学生の「読解・批評力」と「実践・表現力」の関係
(教師側のねらい:実績でもあり希望でもあること)
最初は好き勝手な評論
→いざ作ってみると、少しも思うように作れない
→挫折や苦悩、資金難、仲間割れ(コミュニケーション困難)
→実践を通じてスキルやマネージメントを学習
→苦労の末の完成、達成感(自己効力化)、仲間への感謝
→映像のプロや社会人への尊崇の念、人間的成長
映像制作教育の課題
■前提:「表現力」を高めることと、「読解力」を高める
ことは相関している(仮説)
■課題:「表現力」と「読解力」を、どう“測る”のか
“教育”としてどう具体化するか
*「A君はB君よりメディア読解力は3割高い」などという計測は可能か?
これを「採点」するとはどういうことか?
■「読解力」は「表現力」ともいえる
*「自分はこのように読解した」と「言葉で表現」できないと点数が稼げない
「表現力」は「読解力」ともいえる
*その人の作品を見ると、「映像をどう読解しているか」は測れる
■「映像教育」とは映像をどう言語化して論理的に語り、
論理をどう映像化するかという教育
-では、その具体的な教育方法や教材は?
映像表現を教育する方法
■プロ-現場に投入しOJTで学ぶ
■学校-その疑似体験から学ぶ
*“見本”を示し、“課題”を与えて実際に作らせ、
その過程で自ら学んでいく
*見本・課題には、学ばせたいことのエッセンスがある
*学習者には視聴者としての体験がすでにある
■教育のねらいと結果には“ズレ”生じる
→考察し修正する試行錯誤
このズレの部分に「映像制作教育のある真理」が見えてくる
“見本”“テンプレート”に落としこむ(インフォーム)
する作り方・教え方の是非
■「先にスタイルありき」で取材し編集してしまう
●事実を歪めて伝えてしまう危険性を常に孕む:便利でもあるが注意必要
●現在のテレビ番組の多くも、内容よりもスタイル自体がメッセージとしてうけ
とめられている
マーシャル・マクルーハン「メディアはメッセージである」(1964『メディア論‐人間の拡張の諸相』
●起承転結・序破急・串団子・・・「あるパターンのもとで効率よく情報が得られ
感情的抑揚が味わえる(コントロールされる)」ための枠組みが与えられ期
待される
●スタイルにはまらない作品
=「ねらいが絞りきれてない、何を言いたいのか不明」などと言われ手直しを
命じられたり、コンテストで落選することも
●現実は常に混沌としている。雑多な情報を捨象した後に、わかりやすく再構
成された「情報=インフォーメーション」に対価が払われる。
●取材された側が、放映された自分の姿などを見て違和感を抱くことは多い
<以上のような問題意識はあっても具体的な教材がなかった>
板倉賛治・後藤福次郎共著 図画教授宝典 大日本雄弁会講談社発行 昭和6年
第1篇 図画指導概説 第1章 図画書指導の態度
『指導』とは何か?それは、教師の精神活動が、生徒の精神活動に
触れて、それをより高くひきあげることである。そしてこれは、教師が児
童と共にある時、たとへ何一言を云はずとも必ず存し、行はれるもので
ある。つまり、指導の無い教育などいふものは決して存在せぬ。
(p.1)
図画教育とても、もちろん、これの埒外のものでは無い。であるから、間々、図画
教育の上で云はれるところの、-教師は生徒に指導していいものか、悪いものか-
等といふことも決して問題にはならぬ。もし図画教育の上で『指導』といふことが問
題となるとしたならば、それは、その指導がどうあらねばならぬか、という一事である。
小学校の図画で大切なことは、一つの程よくまとまった絵をつくらせる事でなく、そ
の絵を書く描くことによって、事物に対する観照を深め、美醜を解し、美を愛する子転
ばせを培ふにある。
然るに、図画教育の上では、かの自由図画教育説の提唱に次いで、児童の素純な
る感覚に今更らしく驚異の目を瞠った美術家によって、
『児童はすべて天才である!』
(p.3)
といふ言葉が叫ばれた。然しこれは前述のごとき状態への対機説法としてみるべき
であって、往々にして見かける如く、実際児童に接する者が、これを鵜呑みにして、軽
々にさうした言葉をもって児童に呼びかけるならば、その弊は又従前の教育思潮、児
童観のそれに劣るまい。