《PPT資料》 社会保険未加入対策に係わるQ&A集

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社 会 保 険 加 入 促 進 に
関
す
る
Q
&
A
平成27年3月
一般社団法人 送電線建設技術研究会 関西支部
は
じ
め
に
社会保険等の加入促進にあたり、社会保険等の未加入状態に関する疑問、加入に
あたっての疑問、元請会社として協力会社に対して加入を指導する際の疑問等が多
く出てくると思われます。
そこでこれらの疑問解決の参考として、下記項目別にQ&Aを集約しましたので
参考にしてください。
1、建設業における社会保険未加入問題とは
2.社会保険未加入による当該者への影響
3、未加入状況の調査方法と加入の指導方法
4、施工体制台帳、再下請通知書、作業員名簿の作成
5、社会保険の加入に関して
尚、Q&Aについてはインターネット等で公開されている情報をもとに参考資料と
して作成したものであり、回答内容について当会が責任を負うものではありません。
具体的な相談については社会保険労務士等にご相談してください。
目
次
1、建設業における社会保険未加入問題とは
Q1-1、建設業における社会保険未加入問題とは何か?
Q1-2、なぜ国土交通省が加入を推進するのか?
Q1-3、国土交通省が加入を推進している社会保険とは何か?
Q1-4、保険未加入企業は今後現場から排除されるのか?
2、社会保険未加入による当該者への影響
Q2-1、事業主は必ず社会保険・労働保険に加入しなければならないのか?
Q2-2、未加入業者を将来的に現場から排除することについての法令の根拠は?
また社会保険未加入の作業員の入場を禁止する必要があるか?
Q2-3、保険未加入企業は工事請負が難しくなるのか?
元請企業が保険未加入の下請企業を使った場合の罰則は?
Q2-4、未加入で建設業許可を新規申請したら?
Q2-5、国民健康保険や国民年金の加入者や、社会保険に該当しない短期の雇用者は保険未加入という
扱いになるのか?
Q2-6、元請会社は社会保険に加入しない個人経営会社をどのような指導をすればよいのか?
Q2-7、社会保険の加入促進で、ダンピング対策が挙げられているが、送研関を西支部の活動として、独
占禁止法上の問題はないのか?
3、未加入状況の調査方法と加入の指導方法
Q3-1、 国土交通省文書を踏まえて、元請は何をしなくてはいけないのか?
Q3-2、元請企業による下請企業の保険加入状況の把握方法は?
Q3-3、元請企業は工事現場にいる全従業員の保険加入状況を把握する必要があるか?
Q3-4、 元請企業が下請企業の保険加入の指導を行うのはなぜか?
Q3-5、元請企業による保険加入の下請に対する指導の具体的な方法は?
Q3-6、元請企業による指導の対象となる下請企業の範囲は? 元請企業は2次、3次など下位の下請
企業も直接指導するのか?
Q3-7、 建設業許可を持たない下請企業も元請企業による指導の対象となるのか?
Q3-8、 保険加入の指導に従わない下請企業の取扱いは?
Q3-9、 2・3次協力会社には、施工期間中にアルバイトを雇い入れる場合があり、その際社会保険の
加入について元請会社としてどのようなに指導すればよいのか?
Q3-10、作業員名簿による確認・指導方法は?
4、施工体制台帳・再下請通知書・作業員名簿
Q4-1、施工体制台帳とはどのようなものか?
Q4-2、施工体制台帳や再下請負通知書、作業員名簿の平成24年度の改正内容は?
Q4-3、台帳や名簿等の確認は必ず工事現場で行わなければならないのか?
Q4-4、再下請負通知書による保険加入状況の確認はどのように行うのか?
Q4-5、再下請通知書の「健康保険等の加入状況」欄には具体的にどのように記載すればよいか?
Q4-6、施工体制台帳の中で、一人親方については国民健康保険の番号を記載するのか?
Q4-7、下請企業が「健康保険等の加入状況」欄が空欄の再下請負通知書を提出した場合の取扱いは?
Q4-8、作業員名簿の作成は法律で義務付けられているのか?
またその様式は?
Q4-9、技能労働者が生活保護受給者の場合の作業員名簿の記載方法は?
Q4-10、作業員の社会保険加入番号の把握は個人情報保護法に抵触する恐れがあるのではないか?
5、社会保険の加入に関して
Q5-1、社会保険加入はなぜ義務化されたの?~義務化の背景~
Q5-2、労働保険(雇用保険・労災保険)の適用は?
Q5-3、社会保険(医療保険・厚生年金)の適用は?
Q5-4、社会保険等加入の適用事業所の要件は?
Q5-5、雇用保険の加入要件は?
Q5-6、雇用形態ごとの加入要件は?
Q5-7、加入・未加入による従業員の手取り額及び事業主の負担額は?
Q5-8、雇用保険は失業給付を受けるだけと思われていますが、他にもメリットがあるのか?
Q5-9、健康保険(協会けんぽ、組合保険等)に加入するとどのようなメリットがありますか?
Q5-10、厚生年金保険に加入すると、どのようなメリットがありますか?
Q5-11、社会保険等に加入しないとどのような影響がでるのですか?
Q5-12、社会保険等に加入していない場合は罰則規定がありますか?
Q5-13、保険の適用外になる人はどんな人?
Q5-14、従業員5人未満の企業は保険加入しなくて良いのか?
Q5-15、どうしても保険加入をしたくない場合は?
Q5-16、一人親方の取り扱いは?
Q5-17、1人親方はなぜ問題なのか?
Q5-18、建設業の許可を取得していない個人経営会社(一人親方・家族)は社会保険の加入は
適用外として考えてよいのか?
1、建設業における社会保険未加入問題とは
Q 1 - 1
建設業における社会保険未加入問題とは何か?
A
建設業では、法令によって加入が義務付けられている医療、厚生年金、雇用の各保険(社会保険等)につ
いて、下請を中心に、企業の未加入、労働者の未加入などによって、法定福利費を適正に負担しない未加入
企業が多数存在しています。
社会保険などへの未加入は、技能労働者の処遇の低下など就労環境を悪化させ、若年労働者が減少す
る一因となっています。そして若年労働者の減少により、経験の積み重ねによって磨かれる技能を熟練者か
ら若者へと継承することが困難となり、建設業自体の持続的発展が妨げられることになります。
一方、本来は法律上加入する義務のある保険に加入していない企業は、こうした必要経費を負担してい
ないため、その分コストがかからず、その結果法令を守っていないにも関わらず、競争上は有利というおかし
なことになります。
これは公共工事でも民間の工事でも同じです。
こうした状況が建設業における社会保険未加入問題であり、保険未加入企業の排除に向けた取り組みに
より、建設業の持続的な発展と必要な人材の確保をはかるとともに、健全な競争環境を構築する必要があり
ます。
Q 1 - 2
なぜ国土交通省が加入を推進するのか?
A
社会保険などは国の制度であり、これを所管しているのは厚生労働省ですので、これまで厚生労働省では
加入を進めるためのさまざまな取り組みが行われており、今後も加入促進に取り組むことには変わりありません。
一方、建設業の適正な競争環境の構築や、持続的な発展を確保することなど産業行政については国土交通
省の担当となります。
今回の保険加入対策の取り組みは、特に建設業において医療保険、年金保険、雇用保険の3保険への加
入状況が低いことによって
①適正に法定福利費を負担する企業ほどコスト高になって競争上不利になるという現在の不健全な競争市
場を改善する必要がある
②いざという時に公的保証が確保されない、賃金が低下するなど悪化が進む技能労働者の就労環境を改善
し、若年者の入職の減少と高齢化に歯止めをかける必要がある
以上から、国土交通省も建設産業行政の一環として、厚生労働省とも十分に連携しつつ、保険加入を徹底し
ていくことになりました。
国土交通省が加入を推進している社会保険とは何か?
Q 1 - 3
A
法律で国民の加入が義務付けられている保険制度には、医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険があり
ます。これらは、いずれも1人では支えきれない暮らしの中の避けがたいリスクを国民全体で支えるための仕組
みです。
医療保険は、病気やけがで病院にかかった際に医療費がかかるリスクに対し、一定の自己負担だけで治療を
受けられるようにするもので、組合保険、協会けんぽ、国民健康保険などがあります。
年金保険は、年をとって仕事ができなくなり、収入が無くなるリスクに対し、一定の年齢以上になったらそれま
での加入期間に応じて毎月年金(障害を負った時や本人が亡くなった時は障害年金や遺族年金)の給付を受け
られるもので、厚生年金や国民年金などがあります。
雇用保険は、失業して収入が無くなるリスクに対し、生活を安定させて就職活動ができるよう、一定期間手当
の給付を受けられるものです。
この4保険の内、労災保険は建設業の場合原則として元請けが一括して加入するのが一般的ですが、医療、
年金、雇用の各保険は企業ごとに加入することになっています。しかし建設業の場合下請を中心に企業の未加
入、労働者の未加入が多数存在しています。
このため医療保険、年金保険、雇用保険を対象として法律の規定に沿って加入を進めるための取り組みが進
められています。
【社会保険未加入対策の目途】
平成29年3月末を目途に、事業者単位では許可業者の100%、労働者単位では少なくとも製造業相当の加
入を目指す。
Q 1 - 4
保険未加入企業は今後現場から排除されるのか?
A
社会保険未加入問題への対策は、2016年度までの目標期間5年間の中で、行政と業界が一体となって取り組
むことにより、2017年度には事業所単位では加入義務のある許可業者について加入率100%を、労働者単位では
製造業と同水準の加入状況を目指すもので、今すぐに未加入企業の排除が求められているわけではありません。
「社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン」では、遅くとも2017年度以降は、健康保険、厚生年金保険、
雇用保険の全部または一部について、適用除外でないにも関わらず未加入である企業は下請として選定しないと
の取り扱いをするべきとされています。
※平成26年8月1日以降の国土交通省直轄工事においては以下のようになっています。
・社会保険未加入建設業者に対する指導監督を強化する。
・元請業者及び下請代金の総額が3千万円以上の工事における1次下請業者につき、社会保険加入業者に
限定する。具体的には
① 入札参加時に元請業者の保険加入状況を確認(未加入の元請業者は工事から排除)
② 未加入の一次下請業者との契約を原則禁止
③ 施工体制台帳等で全ての下請業者の保険加入状況を確認
④ 未加入の1次下請業者と契約したことが判明した場合の措置を実施(元請業者の請負代金減額、指名
停止等)
⑤ 全ての未加入業者を発注部局から建設業担当部局(許可関係)に通報
⑥ 建設業担当部局において未加入業者(2次下請以下も含む)への加入指導等を引き続き実施
2、社会保険未加入による当該者の影響
Q 2 - 1
事業主は必ず社会保険・労働保険に加入しなければならないのか?
A
社会保険や労働保険は労働者が安心して働くために必要な制度であるため、社会保険、労働保険は強制加入の
方式がとられている。
健康保険と厚生年金保険については法人の場合はすべての事業所について、個人経営の場合でも常時5人以上
の従業員を使用する限り、事業主は必ず加入手続きをとらねばならない。
なお、指導に従わない企業には厚生年金保険法に基づいて立ち入り検査が実施され、検査を拒むと6ヶ月以下の
懲役か50万円以下の罰金が科せられることもある。
【関連法令】
(1)健康保険法罰則規定第208条⇒6ヶ月以下も懲役又は50万円以下の罰金
(2)厚生年金保険法罰則規定第102条⇒6ヶ月以下も懲役又は50万円以下の罰金
(3)雇用保険法罰則規定第83条⇒6ヶ月以下も懲役又は30万円以下の罰金
Q 2 - 2
未加入業者を将来的に現場から排除することについての法令の根拠は
また社会保険未加入の作業員の入場を禁止する必要があるか?
A
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、遅くとも平成29 年度以降においては、健康保険、厚生年
金保険、雇用保険の全部又は一部について、適用除外でないにもかかわらず未加入である建設企業は、下請企業
として選定しないとの取扱いとすべきとされていますが、これは法令で定められているものではなく、企業として期待
される対応方針を示しているものです。
社会保険の適用除外でないにもかかわらず未加入である建設企業は、社会保険に関する法令を遵守しない企業
であり、このような不良・不適格業者を放置することは、適正かつ公正な競争を妨げ、公共工事の品質確保、適正な
費用による施工等の支障になるだけでなく、技術力・経営力を向上させようとする優良な建設業者の意欲を削ぎ、ひ
いては建設業の健全な発達を阻害することとなります。このため、不良不適格業者の排除について「入札契約適正
化指針」(閣議決定)でも定められています。
元請企業においては、これらを踏まえ、遅くとも平成29年度以降においては、保険未加入企業を下請企業として
選定しない取扱いとすべきです。
また適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場
入場を認めない取扱いとすべきとされています。
Q 2 - 3
保険未加入企業は工事請負が難しくなるのか?
元請企業が保険未加入の下請企業を使った場合の罰則は?
A
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」においては、元請企業は未加入企業は不良不的確業者である
ことを踏まえて、下請契約に先立って下請企業を選定する際には、候補となる建設企業の社会保険加入状況を確認
し、適用除外でないにもかかわらず未加入である場合には、早期に加入手続を進めるよう指導を行うこととされてい
ます。
また、遅くとも平成29年度以降においては、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の全部又は一部について、適用
除外でないにもかかわらず未加入である建設企業は、下請企業として選定しない取扱いとすべきとされています。
保険未加入企業との下請契約を禁止する法令の規定はありませんが、建設工事について下請契約を結ぼうとす
る場合には、若年入職者の確保に必要な技能労働者の処遇改善と企業間の健全な競争環境の構築という、保険未
加入対策の趣旨を的確に踏まえた対応が望まれます。
保険未加入企業との下請契約を禁止したり、契約を結んだ際の罰則を定めた法令の規定はありませんが、建設
工事について下請契約を結ぼうとする場合には、若年入職者の確保に必要な技能労働者の処遇改善と企業間の健
全な競争環境の構築という、保険未加入対策の趣旨を的確に踏まえた対応が求められます。
Q 2 - 4
未加入で建設業許可を新規申請したら?
A
省令改正により、許可申請書に保険加入状況を記載した書面が追加され、同時に確認資料の提示も求められ
るようになっています。
しかし、建設業許可の要件として社会保険加入が求められているわけではありません。
未加入を理由に建設業許可を認めないということではないのですが、法律で定められており、未加入であれば
指導書が発行されるので加入をしておいたほうが良いでしょう。
Q 2 - 5
国民健康保険や国民年金の加入者や社会保険に該当しない短期の雇用者は保険未加入という
扱いになるのか?
A
社会保険等未加入対策の取組は、法人・個人事業主の別や、個人事業主にあっては従業員規模等を踏まえて、
現行制度で求められている適切な保険への加入を確保しようとするものであり、現行法制度に沿って適正に国民健
康保険や国民年金に加入している方については、改めて保険に入り直す必要はありません。
また、臨時に使用され一ヶ月以内で日々雇用される方等についても、健康保険や厚生年金保険の適用除外とな
りますので同様です。
作業員名簿には、加入している保険の名称と、被保険者番号を記載しますので、健康保険や厚生年金への加入
義務がない方は、国民健康保険や国民年金保険に加入していれば保険加入として扱われるため、作業員名簿に加
入している保険名等を記載することが必要です。
しかしながら、国民健康保険や国民年金保険に加入している方であっても、常時5人以上の従業員を使用してい
る場合又は法人であって常時従業員を使用している場合など、健康保険や厚生年金保険への加入義務がある事業
所で働く方については、適正な保険に加入するよう、元請企業は下請企業を指導しなければなりません。
Q 2 - 6
元請会社は社会保険に加入しない個人経営会社をどのように指導すればよいのか?
A
元請会社としての責任ではなく、事業主の責任と考えるべきである。
元請会社としては、次の手順でチェツクすべきである。
近畿地方整備局の立入り検査時、元請会社の協力会社への指導行為が見られなければ、元請会社に対し
て処分命令が下されることになる。
①元請会社は、協力会社より提出された社会保険加入状況(有無)をチェツクする。
例えば、再下請通知書および作業員名簿により個人毎の社会保険の加入状況をチェツクする。
②元請会社は社会保険に加入していない協力会社に加入するよう指導する。
例えば、協力会社に対して、なぜ(個人毎)社会保険に加入していないのか、事業主責任として加入義
務があることを説明する。(パンフレット配布)
なお、指導した証し(議事録)を残すこと。
近畿地方整備局の立入り検査時、指導した証しを見せれば、元請会社が協力会社を指導していると
判断される。
Q 2 - 7
社会保険の加入促進で、ダンピング対策が挙げられているが、送研関西支部の活動として、
独占禁止法上の問題はないのか?
A
社会保険の加入促進でのダンピング対策では、法定福利費の適正な確保を狙いにしており、趣旨を適切に理解し
取り組むものとする。
送研会活動として、談合の助長・価格カルテル等自由競争の妨げで、独占禁止法に抵触する行為のないこと。
「建設業法法令遵守ガイドライン」
平成24年7月 国土交通省土地・建設産業局建設課
元請請負人及び下請負人は見積り時から法定福利費を必要経費として適正に確保する必要がある。
下請負人は見積書に法定福利費相当額を明示すべきであり、下請負人の見積書に法定福利費相当額が明示さ
れているにもかかわらず、元請負人がこれを尊重せず、法定福利費相当額を一方的に削減したり、法定福利費相
当額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結し、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額とな
る場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3不当に低い請負代金の禁止に違
反するおそれがある。
また、社会保険・労働保険への加入は法律で義務づけられているので、社会保険未加入
者は、その情状によっては、建設業法第28条第1項第3号のその業務に関し他の法令に違反し、建設業者として不
適切に該当するおそれがある。
【関連法令等】
(1)建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)
(2)建設業法第28条第1項第3号(営業の停止)
3、未加入状況の調査方法と加入の指導方法
Q 3 - 1
国土交通省文書を踏まえて、元請は何をしなくてはいけないのか?
A
元請企業においては、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」 *1に沿って、下請け企業の保険加入を
確認・指導することが求められます。
具体的には、施工体制台帳(再下請負通知書を含む)や作業員名簿を用いて、下請企業やその労働者の保険加入
状況を確認し、未加入の場合は加入するよう指導することになります。
また、遅くとも平成29年度以降は、未加入企業とは契約せず、未加入の作業員の現場入場を認めない(適用除外
は除く)との取り扱いをすべきであるとされている。
*1 ,「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」 平成24年11月1日施工
(1)元請企業としての役割と責任
・適正な契約の締結
・適正な施工体制の確立
・雇用、労働条件の改善
・福祉の充実等についての指導、助言
(2)協力会社組織を通じた指導
(ア)協力会社の社会保険加入状況の定期的な把握
(イ)協力会社組織を通じた社会保険の啓発や加入勧奨
(ウ)未加入が発覚した協力会社への早期加入指導
(3)下請企業選定時の確認・指導等
下請け契約に先立って、候補となる下請企業について社会保険の加入状況を確認し、適用除外に当たらな
い場合は早期に加入手続きを進めるよう指導する。
(4)再下請け通知書を活用した確認・指導等
再下請通知書の「健康保険等の加入状況」欄により、下請け企業が社会保険に加入していることを確認し、
未加入企業があれば、早期加入を指導する。
(5)作業員名簿を活用した確認・指導等
新規入場者の受け入れに際して、作業員名簿の社会保険欄を確認し、未加入が確認された場合は、下請け
企業に対し、作業員を適切な保険に加入させるよう指導する。
(6)施工体制台帳の作成を要しない工事における取り扱い
下請け企業の社会保険加入状況及び各作業員の保険加入状況について把握し、未加入である場合には指
導を行う。
(7)建設工事の施工現場等における周知啓発
(ア)ポスター掲示、パンフレット等提供、講習会開催による周知啓発
(イ)協力会社組織を通じた社会保険の周知啓発や加入勧奨
(8)法定福利費の適正な確保
元請負人及び下請負人は見積時から法定福利費を必要経費として確保する。
Q3-2
元請企業による下請企業の保険加入状況の把握方法は?
A
元請企業は、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」に沿って、直接の下請契約の相手方については、
下請企業の選定時に保険料の領収済通知書等のコピーを提示させて確認を行い、また、二次以下の下請負人につ
いては、再下請負通書の「健康保険等の加入状況」欄により下請企業が社会保険に加入していることを確認すること
になります。
また、元請企業は、新規入場者の受け入れに際して各作業員(建設業に従事する者に限る。)について作業員名簿
の社会保険欄を確認することで作業員単位での保険加入状況を把握することになります。
下請企業を選定する際、保険関係加入状況の記載、各保険関係適用済みである根拠書類(労働保険料申告書・適
用事業所票等)及び労災保険料・雇用保険料・社会保険料を適正に納付しているかどうかを確認するため納付書の
写しの提出を求めます。
また、建設工事に下請従業員を受け入れる際に作業員名簿で適正に保険に加入しているかを各作業員ごとに確認
します。
Q3-3
元請企業は工事現場にいる全ての従業員の保険加入状況を把握する必要があるか?
A
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、元請企業には、直接の下請契約関係のない下請企業を
含め、すべての下請企業に対し自ら直接指導を行うことが求められるものではなく、直接の契約関係にある下請企
業に指示し、又は協力させ、元請企業はこれを統括するという方法も可能とされています。
同ガイドラインにおいては保険加入状況の把握は、作業員(建設業に従事する者に限る。)を対象に行うものとさ
れており、事務員、清掃員や場内整備員、残土運搬運転手等、現場の建設労働者でない者を作業員名簿に記載さ
せ、保険加入状況の確認を求めようとするものではありません。
なお、派遣社員(事務員)については、派遣元会社が保険加入手続きを行いますが、建設業に従事する作業員の
派遣が認められているのは「建設業務労働者就業機会確保事業」(建設労働者の雇用の改善等に関する法律第5
章)による場合に限定されており、これによらない作業員の派遣は違法(偽装請負)ですので十分な留意が必要です。
Q3-4
元請企業が下請企業の保険加入の指導を行うのはなぜか?
A
建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51 年法律第33 号)においては、元方事業主に対して、関係請負
人の労働者の雇用保険その他建設労働者の福利厚生に関する事項等の適正な管理に関して助言、指導その他の
援助を行うように努めることが義務づけられています(第8 条第2 項)。
元請企業は、請け負った工事の全般について、下請企業よりも広い責任や権限を持っています。
元請企業が発注者との間で行う請負価格、工期の決定などは、下請企業の経営の健全化にも大きな影響をもたら
すものであることから、下請企業の企業体質の改善について、元請企業も相応の役割を分担することが求められま
す。
とりわけ社会保険等については、関係者を挙げて未加入問題への対策を進め、加入を徹底することが必要です。
このため、下請企業に対する指導等の取組を行い、技能労働者の雇用環境の改善や不良不適格業者の排除に取
り組むことが求められています。
また、元請企業は請け負った工事の請負価格や工期など下請企業の経営に大きく影響を及ぼす決定を握っている
ことから、国土交通省は社会保険未加入下請企業を確認した場合、元請企業に対して指導を行う事ができます。
国土交通省は実施から5年後の平成28年度末を目途に許可業者の加入率100%を目指し、厚生労働省と共同で、
元請企業に対し関係請負人の社会保険の未加入について厳しい指導を行い、未加入企業の排除と加入企業の増
加に取り組んでいます。
Q3-5
元請企業による保険加入の下請に対する指導の具体的な方法は?
A
元請企業は、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」に沿って、適用除外でないにもかかわらず未加入で
ある場合には、その企業に対して早期に加入手続を進めるよう指導を行うことになります。
また、現場の技能労働者についても、新規入場者の受け入れに際して作業員名簿の社会保険欄を確認し、加入す
べき保険に未加入である場合には、作業員名簿を作成した下請企業に対し、適切な保険に加入させるよう指導を行う
ことになります。
これらの指導に当たっては、状況に応じてまずは口頭による指導を行うことも考えられますが、最終的には文書によ
る指導を行うことで、指導の実績を残して今後の下請企業の選定等に役立てていくことが適切です。
Q3-6
元請企業による指導の対象となる下請企業の範囲は?
元請企業は2 次、3 次など下位の下請企業も直接指導するのか?
A
「社会保険加入に関する下請け指導ガイドライン」による下請指導の対象は、元請企業と直接の契約関係に
ある者に限られず、元請企業が請け負った建設工事に従事する全ての下請企業が対象となります。
同ガイドラインによる下請指導に当たっては、元請企業が全ての下請企業に対して自ら直接指導を行うことが
求められているわけではなく、直接の契約関係にある下請企業に指示し、または協力させ、元請企業がこれを統
括するという方法で行うことも可能とされています。
ただし、直接の契約関係にある下請企業が指導を怠った場合や、直接の契約関係にある下請企業がその規
模にかんがみて明らかに実施困難であると認められる場合には、元請企業が直接指導を行うことが必要です。
Q3-7
建設業許可を持たない下請企業も元請企業による指導の対象となるのか?
A
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、建設業の許可の有無にかかかわらず下請企業に対する
加入指導を元請企業から行うこととされており、建設業許可を持たない下請に対する指導も必要です。
Q 3 - 8
保険加入の指導に従わない下請企業の取扱いは?
A
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、現在のところ保険加入の指導をしても従わない下請企業
について、下請契約を解除することまでは求められていませんが、下請企業について社会保険等の適用除外でない
にもかかわらず未加入である場合には、早期に加入手続を進めるよう指導を行っていくこととされています。
また、社会保険等に未加入の企業は、保険関係法令を遵守していない不良不適格業者という位置付けとなります
ので、下請企業の選定時には、こうした未加入企業と取引関係を持つことは望ましくないことから、将来的に下請か
ら排除することも選択肢となり得ます。
そして、遅くとも平成29 年度以降においては、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の全部又は一部について、適
用除外でないにもかかわらず未加入である建設企業は、下請企業として選定しないとの取扱いとすべきとされていま
す。
Q 3 - 9
2・3次協力会社には、施工期間中にアルバイトを雇い入れる場合があり、その際社会保険の加入に
ついて元請会社としてどのようなに指導すればよいのか?
A
元請会社としての責任ではなく、事業主の責任と考えるべきである。
アルバイトも1週間の所定労働時間が20時間以上等の条件により雇用保険に加入が可能である。
雇用保険の適用されている会社では、パートやアルバイトで働いている人でも、雇用保険に加入することができる。
この雇用保険の適用されている会社は、従業員を1人でも雇った事業所で、法人・個人を問わず、全て対象となって
いる。
※、社会保険の加入などの詳細については、近くのハローワークに確認して欲しい。
Q3-10
作業員名簿による確認・指導方法は?
A
元請企業は、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」に沿って、建設工事の施工現場で就労する建設業
に従事する作業員について、新規入場者の受け入れに際し、作業員名簿の社会保険欄を確認することになります。
確認の結果、
①全部又は一部の保険について空欄となっている作業員
②法人に所属する作業員であるにもかかわらず、健康保険欄に「国民健康保険」と記載され、又は(及び)
年金保険欄に「国民年金」と記載されている者
③個人事業所で5 人以上の作業員が記載された作業員名簿において、健康保険欄「国民健康保険」と記載
され、又は(及び)年金保険欄に「国民年金」と記載されている
このような作業員がある場合には、作業員名簿を作成した下請企業に対し、適用除外となる者を除き、作業員を適
切な保険に加入させるよう指導することになります。
4、施工体制台帳・再下請通知書・作業員名簿
Q 4 - 1
施工体制台帳とはどのようなものか?
A
施工体制台帳とは、工事施工を請け負うすべての業者名、各業者の施工範囲、各業者の技術者指名等を記
載した台帳であり、発注者から直接工事を請け負った特定建設業社が下請負人からの再下請通知書等に基づ
き作成することで、施工体制全般を把握させ、建設工事の適正な施工を確保することを目的としています。
締結した下請契約の請負代金の額が計3,000万円(建築一式工事は4,500万円)以上となる場合に、公共工事、
民間工事を問わず作成する義務が生じます。
施工体制台帳には、施工にあたる建設企業及びその請負契約・下請契約について記載することとされており、
建設業の種類、建設工事の名称、内容及び工期、健康保険等の加入状況、請負契約を締結した年月日、発注
者名・住所、当該請負契約を締結した営業所の名称・所在地、発注者等の監督員の氏名、現場代理人の氏名
及び通知事項、監理技術者等の氏名と有する技術者資格及び専任か否かの別などについて記載します。
また、施工体制台帳には、全ての請負契約書の写し、監理技術者が監理技術者資格を有することの証明書
の写し、管理技術者が直接且つ恒常的な雇用関係にあることを証明するものの写しなどの書類を添付する必要
があります。
Q 4 - 2
施工体制台帳や再下請負通知書、作業員名簿の平成24 年度の改正内容は?
A
平成24 年5 月1 日の建設業法施行規則の一部改正により、同年11 月1 日以降に特定建設業者が発注者と締結
した請負契約に係る建設工事について、施工体制台帳、再下請負通知書に健康保険等の加入状況を記載しなけれ
ばなりません。
これに伴い、施工体制台帳及び再下請負通知書の作成例が「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の
別紙1、2 のとおり変更され、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入状況と事業所整理記号等を記載することと
なりました。
また、この改正にあわせて作業員名簿の作成例も同ガイドラインの別紙3 のとおり変更となり、加入している健康
保険・年金保険・雇用保険の名称及び被保険者証番号(下4 けた)等を記載することとなりました。
Q 4 - 3
台帳や名簿等の確認は必ず工事現場で行わなければならないのか?
A
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、元請企業には、直接の下請契約関係のない下請を含め、
すべての下請企業に対し自ら直接指導を行うことが求められるものではなく、直接の契約関係にある下請企業に指
示し、又は協力させ、元請企業はこれを統括するという方法も可能とされています。
これを踏まえ、ガイドラインでは、下請企業に対する指導と確認の事務の相当部分を調達部門に担って頂くことを
想定し、効率的な事務の実施を図るために協力会社組織を通じた指導や下請企業選定時の確認等について記載さ
れています。
再下請負通知書の確認は場合によっては支店・営業所で一元的に行うことも可能であり、工事現場では、ポス
ター掲示による周知啓発や、作業員名簿を活用した定型的なチェックなどを行うものとされていますが、必ずしも現
場での書類確認が求められているものではなく、元請企業が、各作業員の保険加入状況が記録された情報システム
を利用するなど、作業員名簿の確認以外の方法により各作業員の保険加入状況を把握できる場合には、当該方法
による確認も可能とされています。
Q 4 - 4
再下請負通知書による保険加入状況の確認はどのように行うのか?
A
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」においては、特定建設業者たる元請企業は、再下請負通知書
の「健康保険等の加入状況」欄により二次以下の下請企業が社会保険に加入していることの確認をすること、また、
確認の結果、適用除外でないにもかかわらず社会保険等に未加入である場合には、早期に加入手続を進めるよう
指導を行うことが求められています。
この加入状況の確認に当たっては、必要に応じ、下請企業に保険料の領収済通知書等関係資料のコピーを提示
させるなど、真正性の確保に向けた措置を講ずることが望ましいでしょう。なお、雇用保険については厚生労働省の
労働保険適用事業場検索サイト(http://chosyu‐web.mhlw.go.jp/LIC-D)において適用状況を確認することができます。
平成24 年11 月以降に発注者と特定建設業者が請負契約を締結した工事に係る施工体制台帳については、同ガ
イドライン別紙2 の作成例を参考として作成し、適正な施工体制の確保に努めることが求められます。
Q 4 - 5
再下請通知書の「健康保険等の加入状況」欄には具体的にどのように記載すればよいか?
A
再下請負通知書には、「自社に関する事項」ページと、「再下請負関係」ページがあり、両方のページにそれぞれ
「健康保険等の加入状況」欄があります。
それぞれの記載内容は以下のようになります。
保険加入の
有無
健康保険等
の加入状況
事業所整理
記号等
健康保険
厚生年金保険
雇用保険
加入
未加入
加入
未加入
加入
未加入
適用除外
適用除外
適用除外
営業所の名称
健康保険
厚生年金保険
雇用保険
○○営業所
ZZZZ
ZZZZZZZ
ZZZZ-ZZZZZZ-Z
請負契約に係る営業所の
名称を記入
事業所整理記号及び事業所番号
(健康保険組合にあっては組合名)
を記入
一括適用の承認に係る営業所の
場合は、本店の整理記号及び事業
所番号を記入
事業所整理記号及び事業所番号
継続事業の一括の認可に係る営
業所の場合は、本店の労働保険
番号を記入
事業所整理記号及び事業所番号
を記入
一括適用の承認に係る営業所の
場合は、本店の整理記号及び事業
所番号を記入
Q 4 - 6
施工体制台帳の中で、一人親方については国民健康保険の番号を記載するのか?
A
施工体制台帳及び再下請負通知書におけるチェックは、事業所単位での加入状況を確認するものであることから、
いわゆる一人親方が事業主として受注した場合には、「保険加入の有無」欄の「適用除外」を○で囲み、「事業所整理
記号等」欄のうち各保険の番号欄は空白のままとします。
なお、事業主が労務関係諸経費の削減を意図して、これまで雇用関係にあった労働者を、請負契約関係にある
個人事業主にすることがありますが、請負契約の形式をとっていても業務遂行上の指揮監督の有無、専属性の程度
などの実態が雇用労働者であれば、労働者として保険関係法令が適用され、それが明らかになったときは保険料の
追納もあり得ることになりますので留意が必要です。
Q 4 - 7
下請企業が「健康保険等の加入状況」欄が空欄の再下請負通知書を提出した場合の取扱いは?
A
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、元請企業は、「健康保険等の加入状況」欄が空欄の下請
企業に対し、保険加入状況を確認し、適切な保険に加入しているのであれば記載の訂正を求め、加入していないの
であれば「未加入」と記載を修正させた上で、当該事業所を適切な保険に加入させるよう指導することとされています。
Q 4 - 8
作業員名簿の作成は法律で義務付けられているのか? またその様式は?
A
元請事業者として関係下請人およびその労働者を把握する必要があります。
また、個人情報の例外として、労働基準法107条に基づいて作業員名簿を備え付けなければなりません。
建設業法施工規則の一部改定にあわせて、作業員名簿の作成例も変更となり、加入している健康保険・年金
保険・雇用保険の名称及び被保険者証番号等を記載することになりました。
作業員名簿の(例)
ふりがな
氏名
社会保険(上段:保険の名称、下段:保険番号の下4桁)
健康保険
年金保険
雇用保険
※「社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン」に添付された作業員名簿の作成例であり、必ずしもこ
の形に沿ったものでなくても、社会保険の名称、被保険者番号等の必要な情報を記載する欄がわかりやす
く設けられているものであれば問題はありません。
技能労働者が生活保護受給者の場合の作業員名簿の記載方法は?
Q 4 - 9
A
生活保護の受給者は、生活保護法により医療扶助が現物給付されることから、国民健康保険法第6 条第9 号の
規定により国民健康保険の適用除外です。
このため、健康保険組合、協会けんぽ、建設国保、国民健康保険に加入しておらず、生活保護の受給者である作
業員については、作業員名簿の保険名称を記載する欄に「適用除外」と記載する必要があります。
(参考)
○国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)
(適用除外)
第六条
前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、市町村が行う国民健康保険の
被保険者としない。
一~八
九
(略)
生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)による保護を受けている世帯(その保護を停止され
ている世帯を除く。)に属する者
十・十一 (略)
Q4-10
作業員の社会保険加入番号の把握は個人情報保護法に抵触する恐れがあるのではないか?
A
作業員名簿に記載する被保険者番号等は、個人情報の保護に関する法律(平成15 年法律第57 号)第2 条第1 項
に規定する個人情報に該当することから、同法及び「国土交通省所管分野における個人情報保護に関するガイドラ
イン」(平成24 年国土交通省告示第363 号)に留意し、適切に取り扱うことが必要です。
特に、作業員名簿の元請企業への提出に当たっては、利用目的(保険加入状況を元請企業に確認させること)を
示した上で、あらかじめ作業員の同意を得ることが必要です。
5、社会保険の加入に関して
Q 5 - 1
社会保険加入はなぜ義務化されたの?
~義務化の背景~
A
若年層の労働力低下が主な原因です。
社会保険未加入の事業所だと若年層が就職を懸念する傾向にあるのです。
社会保険加入する企業への就職希望者が集中するという現象が起きています。
若年層の労働力が確保できない場合、技術継承が困難になってしまい、建設業全体が貧弱になると懸念されてい
ます。
業界の技術力低下を防止するために、国を挙げて社会保険加入を義務付けるようになりました。
Q 5 - 2
労働保険(雇用保険・労災保険)の適用は?
A
労働者(パートタイマー、アルバイトを含む)を1人でも雇用していれば、業種・規模の如何に問わず労働保険の適用
事業所となり、事業主は加入手続きを行い、労働保険料を納付しなければならない。
・事業主の代表者、役員は加入不可*1
・65才以上、短時間労働者等は適用除外*2
*1 ただし、使用人兼務役員については、使用人部分は加入可
*2 下記が適用除外者に該当する。
・65才に達した日以降新たに雇用される者
・1週間の所定労働時間が20時間未満である者
・31日以上継続して雇用される見込みがない者
・季節雇用者で4カ月以内雇用または1週間30時間未満の者
・大学や専修学校の学生、生徒等であって、厚生労働省令に定める者
【関連法令等】
(1)雇用保険法第7条(被保険者に関する届出義務)
(2)雇用保険法第68条第1項(保険料の徴収)
Q5-3
社会保険(医療保険・厚生年金)の適用は?
A
法人事業所もしくは常時使用されている者が5人以上の個人事業所(適用事業所)で働いている人は、常勤である
法人代表者・役員ならびに常用労働者に強制適用され、協会けんぽ・健康保険組合等の被保険者となる。
適用事業所であっても、下記の者は適用除外となり、常時使用される者が5人未満の個人事業所で働く者(非適用
作業所) *2と合わせ、国民健康保険、国民保険組合に個人で加入する者となる。
・個人事業主と、その家族従業員*1
・季節労働者等*4
・常時労働者以外の短時間労働者*3
*生活保護を受給している者は、国民健康保険の適用除外となる。
*1 個人事業所にあっては、家族従業員を含まない。
*2 事業所従業員の1/2以上の加入同意があれば、任意加入
することができる。
*3 短時間労働者にあっては、1日あるいは1週間の労働時間
及び、1ヶ月の勤務日数が、一般社員の概ね4分の3以上で
ある者は、常勤労働者となる。
*4 適用除外者
・日々雇い入れられる者で、一ヶ月を越えない者
・2ヶ月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えない者
・事業所又は事務所の所在地が一定しない者に使用される者
・季節的業務に4ヶ月を越えない期間使用される予定者
・臨時的事業の事務所に6ヶ月を越えない期間使用される予定
の者
【関連法令等】
(1)健康保険法第48条(被保険者の資格の
取得・喪失等に関する届出義務)
(2)健康保険法第161条第2項(保険料納付
義務)
(3)健康保険法第169条第2項第7項(日雇
い特別被保険者の保険料納付義務)
(4)厚生年金保険法第27条(被保険者の届
出義務)
(5)厚生年金保険法第82条第2項(保険料納
付義務)
Q 5 - 4
社会保険等加入の適用事業所の要件は?
A
・法人の場合 → 従業員が常時1人でもいれば、強制適用事業所に該当します。
・個人の場合 → 従業員を常時5人以上の使用している場合には、強制適用事業所に該当します。
※上述の『従業員』には、法人の代表者も含まれます。
つまり全ての法人事業所に加入が義務付けられていることになります。
※個人事業所の場合、常時5人(個人事業主は含まない)以上の従業員を使用している場合に強制適用事業所
に該当することとなりますが、その際、個人事業主自身は社会保険には加入できません
Q 5 - 5
雇用保険の加入要件は?
A
被保険者となる者(高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は除く)
・31日以上の雇用見込みがあり、かつ、1週間あたりの所定労働時間が20時間以上である労働者
途中加入による設置年月日
労災保険同様、労働者を雇用し強制適用事業所に該当した日が成立年月日となりますが、零細企業を中心に
依然として未加入事業所が多数存在するなどの背景もあることから、事業主が自主的に加入手続きを行い、
かつ、全ての労働者からの同意を得ている場合であれば、手続きを行った保険年度の初日(4月1日)に遡及し
ての加入が認められるケースもあります。
給与からの控除開始日
雇用保険料は、被保険者に給与を支払う都度、控除します。従って初回に支払う給与分から控除を開始する
ことになります。
給与からの控除額
控除する額は、総支給額 × 0.007(平成23年度料率)で得た値となります。
Q 5 - 6
雇用形態ごとの加入要件は?
A
雇用形態
加入要件
一般従業員
(期間の定めのない雇用契約下で働く
フルタイム労働者)
被保険者となります
パートタイマー等
(期間の定めのない雇用契約下で働く
短時間労働者)
次の2点ともに該当する場合には、被保険者となります
①労働日数・・・1ヵ月の所定労働日数が一般従業員の
おおむね4分の3以上である場合
②労働時間・・・1日または1週の所定労働時間が一般
従業員のおおむね4分の3以上である場合
有期契約労働者
・契約期間が2ヵ月以内の者(日雇者を除く)
被保険者とならない。
但し、所定の期間を超え、引き続き使用されたときは、被保
険者となる。
有期契約労働者
・契約期間が2ヵ月を超える者
契約期間の当初から被保険者となる。
※社会保険等は、従業員の意思に基づいて加入するものではありません。
Q 5 - 7
加入・未加入による従業員の手取り額及び事業主の負担額は?
A
例① 25歳の一般従業員 扶養親族なし
月給(固定給)
250,000円
月給(固定給)25万円 労災・雇用保険は加入済み
※通勤手当は不支給として計算
健康保険
12,337円
※協会けんぽ(神奈川県)の料率にて計算
厚生年金
21,336円
※平成23年9月~平成24年8月までの料率にて計算
雇用保険
1,750円
所得税
5,160円
手取り残金
209,417円
※左額は住民税控除前の金額
・社会保険未加入時の手取り残金(住民税控除前の金額)は約24万円
・一般従業員の月給が25万円の場合、事業主が新たに負担する健康保険料及び厚生年金保険料は
毎月約34,000円
例② 35歳の一般従業員 扶養親族1名
月給(固定給)
350,000円
月給(固定給)35万円 労災・雇用保険は加入済み
※通勤手当は不支給として計算
健康保険
17,082円
※協会けんぽ(神奈川県)の料率にて計算
厚生年金
29,542円
※平成23年9月~平成24年8月までの料率にて計算
雇用保険
2,450円
所得税
6,600円
手取り残金
294,326円
※左額は住民税控除前の金額
・社会保険未加入時の手取り残金(住民税控除前の金額)は約34万円
・一般従業員の月給が35万円の場合、事業主が新たに負担する健康保険料及び厚生年金保険料は
毎月約47,000円
Q 5 - 8
雇用保険は失業給付を受けるだけと思わていますが、他にもメリットがあるのか?
A
まず妊娠、出産や高齢などで労働能力が低下してしまった時に給付を受けられます。(具体的には高年齢雇用継続
給付や育児介護休業給付など)
会社としての最大のメリットは助成金の受給です。
雇用保険料が本人負担額より会社負担額が多いのは、その差額が助成金などに充てられているためです。
したがって助成金を受給するときは必ず、毎年の労働保険料を正しく納付しているかを確認するための資料の提出
を求められます。
Q 5 - 9
健康保険(協会けんぽ・組合保険等)に加入するとどのようなメリットがありますか?
A
健康保険(協会けんぽ・組合保険等)は市町村が行っている国民健康保険よりも多くの給付があり、特に大きな
違いは傷病手当金の支給でしょう。 会社を4日以上連続で休むような病気になってしまった場合に、1日当たり標準
報酬日額(1ヶ月当たりの賃金を社会保険の月額に当てはめて30で割って1日当たりの金額に直したもの)の3分の
2の額が支給されます。
これは従業員だけでなく代表者や役員の方も対象になりますので非常に手厚い給付になります。
その他にも出産手当金の支給があり、産前産後休業中に1日当たり標準報酬日額の3分の2の額が支給されます。
また健康保険の大きなメリットとしては、ご家族が被扶養者として加入できるので保険料が節約できます。つまり、
被保険者は本人1人のみとなり保険料も1人分のみです。ご家族のお子様と奥様は被扶養者となりますので保険料
はかかりません。(※被扶養者には所得要件があり、被扶養者の年間収入は130万円未満でなければなりません)
しかし国民健康保険の場合は、ご家族の1人1人が被保険者として加入することになりますので保険料は3人分
掛かってしまい、毎月高額な保険料を支払うことになってしまいます。 ※1
また会社として毎月保険料を支払わなければなりませんが、その保険料に関しても健康保険組合に加入するこ
とができれば削減することができます。
通常健康保険に加入する場合は協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入することになりますが、業種にごとに
健康保険組合(飲食業や製造業)があり、そういったところに加入することによって保険料を削減することが出来ま
す。 健康保険組合は組合ごとに保険料率が違うので、出来るだけ保険料率の低いところに加入するこが重要です。
※2
※1:
(1)社会保険(協会けんぽ、組合保険等)
扶養の概念あり(保険料は被保険者1人分で家族は無料)
(2)国民健康保険
扶養の概念なし(1人1人が被保険者(保険料支払いは世帯主が人数分を加味した保険料を一括支払
いしている)
(3)国民健康保険料
国民健康保険料 =①平等割(1世帯当たり○○円)+均等割(○○円×被保険者数)
+所得割(算定基礎所得金額(全員分)×○.○%)
※2:
<例>東京都の場合
保険料率70/1000の健康保険組合に加入した場合の1人当たりの保険料を毎月3,540円節約できます
月給30万円
保険料率
保険料
協会けんぽ
81.8/1000
24,540円
健康保険組合
70/1000
21,000円
差額
11.8/1000
3,540円
協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに変わる
Q5-10
厚生年金保険に加入すると、どのようなメリットがありますか?
A
20歳以上の人は全員国民年金に加入しますが、法人や5人以上の個人事業所(1部業種除く)で働く人は厚生年金に
加入することになります。
厚生年金は2階建て年金ともよばれ、1階部分が国民年金で2階部分が
厚生年金になりますので、厚生年金に加入することにより将来国民年金
厚生年金
国民年金(基礎年金)
2階
1階
と厚生年金の両方の年金の給付を受けることができます。
また万一事故などで障害を負ってしまったりした場合でも、生涯にわたり障害厚生年金を受給することが出来ます。
また死亡してしまった場合遺族に対して遺族厚生年金が支給されます。
もし仮に国民年金しか加入していない場合は、障害基礎年金又は、遺族基礎年金と極めて少ない給付しか受ける
ことが出来ません。
さらに、厚生年金被保険者の配偶者は3号被保険者となり、自動的に国民年金保険に加入しますが保険料は無料
です
保険料に関しては厚生年金は国民年金よりは高くなりますが将来の手厚い給付を考えれば、絶対に加入すべき
です。
下の図で分かりやすく説明させて頂きます。
国民年金のみ加入している場合
本人⇒被保険者
奥様⇒被保険者
加入している年金
国民年金
国民年金
毎月支払う保険料
国民年金
国民年金
65歳から受けられる年金給付
国民年金
国民年金
本人⇒被保険者
奥様⇒被扶養者
国民年金第3号被保険者
加入している年金
厚生年金
国民年金
毎月支払う保険料
厚生年金
なし(第3号被保険者)
65歳から受けられる年金給付
厚生年金国民年金
国民年金
厚生年金に加入している場合
Q5-11
社会保険等に加入をしないとどのような影響がでるのですか?
A
社会保険が適用されるべきにも関わらず未加入でいた場合、下記のようなリスクを負うことになります。
・刑事罰の対象になります
・行政罰(営業停止処分)の対象となります
・経営事項審査で低い評価となり、事実上公共工事の落札が不利になる可能性があります
・建設業許可の更新で新規、更新、経営事項審査で指導されます
・立ち入り調査が入って、社会保険加入の指導があった場合、最大で2年間遡って保険 料を徴収される可能性が
あります
・下請け業者の場合、元請から発注されない可能性があります
Q5-12
社会保険等に加入していない場合の罰則規定はありますか?
A
社会保険加入が適用される事業所が保険に加入していない場合は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険とも、
法律や懲役で罰金を伴う罰則規定が設けられていますので注意が必要です。
主な罰則内容
○健康保険 厚生年金保険
被保険者の資格取得届、資格喪失届を提出しなければならない企業が、その届出を怠った場合や虚偽の届出
をした場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。
さかのぼり保険料の負担があるので、実質の社会保険料の負担が高くなります
○雇用保険
被保険者の資格取得、喪失の届出を行わなかった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せら
れます。
Q5-13
社会保険等の適用除外になる人はどんな人?
A
法人の代表者、役員は勤務実態に応じて社会保険の加入が判断されます。
従業員は、労働者に該当する場合・・・労働者に該当する場合は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険と3つの保
険全ての被保険者になります。 労働者の中でも、勤務日数や勤務時間数によって保険の種類や適用範囲が決定
されます。
最初から適用除外とされる人もいるので、迷われた場合は専門家に相談すること
社会保険適用外
雇用保険適用外
・非常勤の取締役
・法人の代表者
・監査役
・取締役
・執行役など
・監査役
・一人親方
・執行役員
・研修生
・監事(常勤)
・インターンシップの学生
・同居の親族社員
・出向社員
・大工・左官
・配管工などの一人親方
・インターンシップの学生
・出向社員
・昼間学生
Q5-14
従業員5人未満の企業は保険加入しなくて良いのか?
A
よく、従業員5人未満は社会保険に加入しなくて良いとお考えの方もいるかと思いますが、雇用保険は労働者を
一人でも雇用する場合は入らなければならないなど、5人未満でも必ず入らなければならない保険があります。
建設企業に加入を求めているのは、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の3つです。
(1)健康保険 厚生年金保険
事業者が法人組織である場合(株式会社、有限会社など)従業員数に関係なく適用事業所となります。
個人経営の場合は、常時使用する従業員数が5人未満の事業所は加入の義務は無く、従業員はそれぞれ住所
のある地元の国民健康保険または建設業に従事する人でつくる国民健康保険組合(建設国保)に加入すること
になります。
(2)雇用保険
法人、個人を問わず労働者を一人でも雇用して行う事業の場合、事業が開始された日から適用事務所になります。
従業員数に関わらず必ず雇用保険に加入しなければなりません。
よく、雇用保険も従業員5人未満は加入しなくて良いと誤解されている人もいますので十分に注意しましょう。
Q5-15
どうしても保険加入をしたくない場合は?
A
社会保険制度は法律によって強制加入とされていますので、加入を拒む事はできません。
また、社会保険制度は憲法に定められた国民の生存権を保障する社会保険制度の中でも中心的な役割を果たすも
のなので、加入を拒む事はその権利を自ら放棄することと等しいといえます。
社会保険料は事業主と被保険者が半分ずつ負担することが原則なので、民間の各種保険と比べると非常に安く設
定されているといえます。
Q5-16
一人親方の取り扱いは?
A
一人親方については、企業が直接雇用することを求められているものではないですが、国民健康保険、国民年金へ
加入するよう促す必要があります。
昨今の建設業における社会保険加入徹底をうけて、こういった一人親方と請負関係を結ぶ企業が出てくる恐れがあ
ります。このような企業の都合による一人親方化は、就労環境の改善のために進められている保険未加入対策に逆
行するものです。
企業の都合で形式的に請け負い関係にしたとしても、実態が雇用関係である場合は請負人とは認められません。
健康保険法や厚生年金保険法の適用にあたって雇用関係があるものとして取り扱われます。
無理に一人親方にせずに適正に雇用関係を結ぶべきといえます。
Q5-17
1人親方はなぜ問題なのか?
A
会社が社会保険料の負担を逃れるため、正社員から個人請負(1人親方)に変更することが問題になっており、賃
金の低下など労働条件の悪化に繋がっている。
請負契約の形式であっても、実態が雇用労働であれば、偽装請負として職業安定法第44条、労働基準法第6条
に抵触する。
1人親方は労働者をみなされず、労災保険の適用範囲に入らない。建設現場では、安全対策は本人に任され、自
己責任となる。
なお、日当で雇われているとすれば、みなし労働者と認定される可能性もあり、偽装請負となる。この場合は、元
請業者の保険が適用される。
【関連法令】
(1)職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)
(2)労働基準法第6条(中間搾取の排除)
Q5-18
建設業の許可を取得していない個人経営会社(一人親方・家族)は社会保険の加入は適用外と
して考えてよいのか?
A
建設業の許可を取得している、取得していないと考えないで、事業主として社会保険の加入義務を考えるべき
である。
・個人事業所であっても常時5人以上使用している場合は労働保険、社会保険は強制適用となる。
・常時5人未満使用の個人事業所にあっては、社会保険適用除外(全従業員の1/2以上の同意があれば任意
加入可能)であり、国民健康保険・国民保険組合、国民年金に個人で加入する者となる。また、雇用保険に
ついては1人でも雇用があれば加入適用となる。
・事業主(事業主、1人親方、家族)
(労働保険)
・雇用保険・・・加入できない。
・労災保険・・・元請加入の労災保険には適用できないので特別加入の手続きをすることが望ましい。
(社会保険)
・国民健康保険・国民保険組合、国民年金に個人で加入する者となる。