可視撮像 - Subaru Telescope

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Transcript 可視撮像 - Subaru Telescope

ネコでも分かる
可視撮像データ解析
国立天文台
小宮山 裕
撮像観測とは
• 天文学者の目指すこと
– 天体から放射される光を数値化・定量化し、背後に潜む
天体の物理を解明する
• 撮像観測
– ある特定の波長帯の光を選択し、天体の像を写し撮る
• 明るさ・色・形態
• (二次元的)空間分布
• 時間的変動(変光・空間移動量)
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ものを写し撮る道具
フィルムカメラ
• 映像を“記録できる”という点で画期的
• ただし低感度、Linearity(直線性)などの問題がある
• 基本的には、目で見たままの“写真”となっていることが
求められる
デジタルカメラ
• CCDなどの撮像素子による高感度化
• エレクトロニクスによる自動的な画像処理
• フィルムカメラ同様、基本的には目で見たままの
“写真”となっていることが求められる
天文観測用カメラ
• CCDなどの撮像素子による高感度化
• ノイズを減らし、天体からの微弱な光を
正確に測定する様々な工夫
• 背後にある物理を解明するため定量化
が必要
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データ解析とは
• 我々が手にするのは・・・画像ファイル
– 天体からの光は、観測する過程において、大気・望遠鏡・
CCDなど様々な要素から様々な影響(変形・変換・加算
などなど)を受け、デジタルデータ(画像ファイル)となる
– これらの影響(変形・変換・加算などなど)を補正して、天
体から来る真の光強度を画像ファイルから導き出すこと
が必要になる
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実際の画像
5
可視撮像データ解析
• 以下ではすばる主焦点カメラ(Suprime-Cam)の
データ解析を通して、撮像観測データの解析につい
て解説する。
– (CCDを使った)可視撮像データについては、SuprimeCamのデータ解析を学んでおけば大抵対応可能。
• Dark補正、Linearity補正、迷光補正などが入ることがある。
– 赤外撮像データについても基本的な考え方は同じ。あと
は赤外線検出器に起因して必要になる操作、
Backgroundが高いことによる特別な操作、などが加わる。
– 分光データについても一次解析はほぼ同じ。
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ネコでも分かる
Suprime-Camデータ解析
国立天文台
小宮山 裕
すばる主焦点カメラ(Suprime-Cam)
• 8m級望遠鏡の中で最大の視野(直径30分角=満月の大
きさ)を持つすばる望遠鏡主焦点に取り付けらた、2048
x4096 pixel CCDを10枚並べた8千万画素CCDカメラ
– すばる望遠鏡の観測時間の約30%で使用されている
– すばるが世界に誇る観測装置
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すばる主焦点カメラ(Suprime-Cam)
• Suprime-Cam
– 2048x4096 pixelのCCDが10枚
– CCDチップ間にギャップがある
• 通常の観測
– フィルターを装着し、特定の波長の
光を透過させ、CCDで受ける
• 単色(白黒)画像が得られる
– 数秒から数十分間シャッターを開
きっぱなしにして、CCDに光をため
る(積分、露出、露光)
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データ解析とは
• 天文学者の目指すこと
– 天体から放射される光を数値化する
– そのために、
• より多くの光を集めるために望遠鏡を使用する
• 望遠鏡で集めた光情報を記録するためにCCDを使用する
• 我々が手にするのは・・・画像ファイル
– 天体からの光は、観測する過程において、大気・望遠鏡・
CCDなど様々な要素から様々な影響(変形・変換・加算
などなど)を受け、デジタルデータ(画像ファイル)となる
– これらの影響(変形・変換・加算などなど)を補正して、天
体から来る真の光強度を画像ファイルから導き出すこと
が必要になる
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天体からの光が画像ファイルになるまで
電気
信号
光
星間物質
大気
望遠鏡光学系
フィルター
CCD
画像
ファイル
エレキ
吸収・散乱
吸収・散乱
Seeing
Sky
吸収・反射
Geom.Distortion
吸収・反射
QE
Bad pixel
Dark
バイアス
文献・色で補
正
標準星
Smothing
Sky sub.
Flat
Dist.Correction
Flat
Flat
Triming
Dark sub.
Bias sub.
基本的には手順を逆にたどって補正していけば
元の情報(天体からの放射)を導くことができる
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天体からの光が画像ファイルになるまで
• 数式で表すと、
– 天体からの光は、
raw = ((object + sky)・tobs・flat +dark・tdark)/gain + bias
– 空間情報は、
raw(x,y) = opt(atm(object(x,y))
object
raw
注) 2008/7以前のデータ
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実際の画像(CCD1枚分)
object
raw
注) 2008/8以降のデータ
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データ解析に必要な情報
• 画像ファイル
– 天体が写っている画像
– 較正用(Calibration)画像
• 観測装置固有情報
– ハワイ観測所 Suprime-Camのページ
• http://www.naoj.org/Observing/Instruments/SCam/index.html
– Suprime-Camの論文
• Miyazaki et al. 2002, PASJ, 54, 833
• 文献検索
– ADS: http://ads.nao.ac.jp/
• Webデータベース
– NED: http://nedwww.ipac.caltech.edu/
– Vizier: http://vizier.nao.ac.jp/vizier/
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データ解析の基本: FITSファイル
• 天文用画像ファイルの基本フォーマット
– Flexible Image Transport System
• http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~kanamitu/fits/
– ヘッダー部
• 観測情報(日時、座標、積分時間、フィルター、など)
• 普通のテキストファイルのように、moreコマンドなどで見ることが
できる
– e.g., more SUPA00017034.fits
– データ部
• ヘッダー部で指定された形式(データのバイト数やピクセルの数
など)に従って記述されている
– Suprime-Camの生データの命名規則
• 名前(例): SUPA00017456.fits
Suprime-Cam データ番号
の生データ
(Frame ID)
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データ解析の基本: FITSファイル画像Viewer
•
ds9
• skycat
– 開発: SAO
– 開発: ESO
– http://hea-www.harvard.edu/RD/ds9/ – http://archive.eso.org/skycat/
その他:Makalii: http://www.nao.ac.jp/others/Makalii/index.html
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データ解析の基本: 画像解析ソフト
• 基本解析パッケージ
– IRAF: http://iraf.nao.ac.jp/
– MIDAS: http://www.eso.org/sci/data-processing/software/esomidas/
• 測光ソフト
– SExtractor: http://terapix.iap.fr/rubrique.php?id_rubrique=91
• SDFRED(ねこソフト)
– Suprime-Camの画像解析(一次解析)に特化
•
•
•
•
複数のショットを合わせて一枚の大きな画像にするまで(半)自動でできる
2008年8月以前のデータ用SDFREDは下記にて一般公開中
http://www.naoj.org/Observing/Instruments/SCam/sdfred/index.html.ja
2008年8月以降のデータの解析用ソフトについてはサポートアストロノマーの
仲田さんに問い合わせる
– 質問・困ったときには・・・
• [email protected] にメールで問い合わせる
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データ解析の流れ: SDFRED
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
画像ファイル名変換・画像確認
Bias引き・overscanの切り取り
Flat作り
感度補正
ゆがみ補正・微分大気差補正
PSFあわせ
Skyの差し引き
AG Probeの影をマスク
画像のマスク
Matching(組み合わせ規則作り)
Mosaicing(組み合わせ)
一枚の大きな画像の完成!
namechange.csh
overscansub.csh
mask_mkflat_HA.csh
ffield.csh
distcorr.csh
psfmatch_batch.csh
skysb.csh
mask_AGX.csh
blank.csh+
makemos.csh
imcio2a
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Suprime-CamデータのJargon
• chip: 1枚のCCD、またはCCD画像
• frame: 1枚のCCD画像
• shot: 1回の積分、または同時に撮られたCCD画像
10枚組み
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Bias Subtraction
• Biasとは
CCD
– CCDのピクセルにたまった電荷をAD変換
Bias
する際に付加される電圧がBias電圧
+
VCCD=QCCD/C  V = VCCD+Vbias
ADC
AD変換: DN=f(V(x,y))
=f(VCCD(x,y))+f(Vbias(x,y))
– BiasはCCD読み出しエレキによって付加されるもので、
天体からの光ではない  差し引くことが必要
– 電荷0の状態でCCDを読み出すことによってBias画像
f(Vbias(x,y)) を得ることができる。
– しかしSuprime-Camの場合はBias画像は使わず、代わ
りにoverscan領域でBias画像の代用とする
画像
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Bias Subtraction
•
overscanとは
– CCDは素子上を電荷が転送される
– 実ピクセル数以上読み出せば、仮想的に電荷
0の状態を読み出すことができる(overscan)
– Suprime-Camでは各columnごとにoverscan
からbiasレベルを推定する
•
overscanからbiasレベルを推定し、画像
全体から引き算してくれるタスクが、
overscansub.csh
• このタスクにより同時にoverscan領域が
切り取られる
– したがって出来上がった画像のサイズは小さく
なる
32pix
2048pix
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Bias Subtraction
•
Suprime-Camの新CCDチップ
(2008年8月~)
– CCD1チップにつき4つの読み出し口(チャン
ネル)がついた。Overscanも各チャンネル毎
に付加されている。
• 同一チップ内でもチャンネル毎にOverscanの
値は異なる。
• 512x4096ピクセルのCCDが4つ並んで1つの
画像となっていると思ってもよい
– Overscansubでoverscan領域が切り取られ
るが、チャンネル毎にゲインが異なるため、
チャンネルの境目で段差があるような画像と
なっている(3ページ後の画像を参照)。
Ch1
Ch2
512pix 48pix
Ch3
Ch4
Ch1とCh2のOverscan
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Flat Fielding
• 天体からくる光は100%CCDで受け取れるか?
– 否。各所でどんどん減光されていく I = I0・K・f(x,y)
– 視野内で一様なもの (K)
• 星間吸収と大気による吸収は視野内で(ほぼ)一様
– 視野内で非一様なもの ( f(x,y) )
• 望遠鏡光学系によって視野端に減光を受ける部分がある
• フィルターの透過率も場所ごとに若干異なる
• CCDもピクセルごとに異なるQEを持つ
– これら視野内で非一様な感度のムラをすべてひっくるめて補正する
のが flat fielding (個々のCCDごとに補正)
• どうやって補正するか?
– 空間的に一様な光源が望遠鏡の前にあればいい
• dome flat
• object flat
• twilight flat
screenに光を当てて一様(っぽい)光源を作る
画像の天体以外の部分を一様光源とみなす
日没直後・日出直前の空を一様光源とみなす
△
○
△
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Flat Fielding
•
object flat
I(x)
– 天球上で天体以外の部分(sky)から来る光は空間
的に一様であるとみなすobject画像に写ってい
るskyはf(x,y)を表す
– 十分な数の大きな良質なobject画像が必要
• 一声15ショット以上必要
• 良質=skyのカウントが十分。広がった天体が写って
いない。天体が混んでいない
• 同じランのもので作るのが望ましいが、前後数ヶ月く
らいのものを混ぜて作ることもある
•
object画像(またはdomeflat, twilightflat画
像)からflat画像 ( f(x,y) ) を作るタスクが
mask_mkflat_HA.csh、できたflat画像で各
object画像を割るタスクがffield.csh
x
f(x)
x
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Flat Fielding
Flat Fielding 済み画像はチェンネル間の段差が消え、Skyの部分は画像全体で平らになる。
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Geometry Correction
• 望遠鏡光学系により
– 光軸から軸対象にスケールが変わる(像面歪曲、
distortion) : すばる主焦点固有のparameterあり
– 大気分散補正系(ADC)で補正しきれないスケール
の視野内の差が生ずる(微分大気差)
• これらを補正するためには、画像変形(画像の
ピクセルグリッドの切り直し)が必要。このタス
クが distcorr.csh
– 二つの補正を一回にまとめることによって空間情報
の劣化を防ぐ
– 出来上がった画像は周辺部に blank pixel (無効ピ
クセル)ができていて、光情報を含んでいるピクセル
の形はもはや四角ではない(2ページ後の画像を参
照)。
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Sky Subtraction
•
object画像には天体からの光に加えて、大気の放射光、
黄道光などの光が加算される。これらの光をまとめて
sky(background) と呼ぶ
• ところが、skyは空間的時間的に変動している。このため、
各画像のskyは各画像から求めるほかない。
– ユーザー指定のグリッド内の各ピクセルのカウントの分布を調べ、
最頻値近くの値をとる
– グリッド間はbi-linearで補完する
– Skyを推定し、画像から引き去る
タスクがskysb.csh
頻度 sky
– SDFREDではskyに対して天体が少ない
ことを仮定しているので、広がった天体
などの場合には使えない
• 自動化は至難。SDFREDでは不可能
カウント値
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Sky Subtraction
Mesh
75pix
Mesh
500pix
Original
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多数画像の重ねあわせへ
• ここまで行ってきた操作は個々のCCD画像のみ操作。1枚だ
けの単一CCDの解析はこの程度をやっておけばOK
– Geometry Correction は他の望遠鏡・装置では必要ないことも多い
– 多くのソフトは独自にsky推定機能を持っているので、前述のsky
subtractionは必要ないこともある
• S/Nをあげるために多数の画像を重ね合わせる
– S/N = (天体からのphoton数)/(主にskyからのノイズ)
= nobject / sqrt(nsky) = N・n0,object / sqrt(N・n0,sky)
∝ sqrt(N)
– 画像の重ね合わせをするために特有な画像処理が必要になる。そ
の方法をこれから見ていく
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通常のSuprime-Camの観測方法
• Dithering
– CCDのギャップを埋める
– CCDの欠陥(bad column)などを補完する意味もある
• S/Nをあげるためには
– 相対的な位置
– 観測条件
の異なる画像を多数
重ね合わせていくことが
必要となってくる
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PSF Matching
• 点光源(星)の光は、大気・光学系などの影響に
よって広がった星像として観測される。この星像
の広がりを Point Spread Function (PSF) と呼ぶ
• 通常は大気ゆらぎによる影響が支配的なので、
PSFは近似的にgaussianで記述することが多い
• 異なるPSFを持つ画像同士を重ね合わせる前に
はPSFの形を揃えてから重ね合わせる
+
– 天体の形情報(と光強度)を損ねないため
– s1のgaussianをs2のgaussianにするためには、
sqrt(s22 -s12 )のgaussianを畳み込んでやればよい
• 各画像のPSFの大きさを測定し、最大の大きさの
PSFに形を揃える(画像をなまらせる)タスクが
psfmatch_batch.csh
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Mask
• 最終画像に使えない部分にはマスクを
かけ、以後使わないようにする
AutoGuider
用CCD
AutoGuider
– Auto guider の影
• Auto guider は焦点面の直前にあるため、
たまによいガイド星がない場合にAuto
guider が視野中心側に出てきて、
Suprime-Camの画像上に影を作る。
• この影は光学系によるケラレと同種なので
補正できるが、SDFREDでは影の部分にマ
スクをかけて以後使わないようにしている。
• これを自動で行うタスクが mask_AGX.csh
– bad pixel、bad column、人工衛星のtrail、
cosmic ray、etc
• これらは blank.csh などを使ってマスクを
かけていく
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Matching
• 多数の画像を重ね合わせるには・・・
– 画像に写っている天体(主に星)を使って、frame間の相対的位置、
回転を決める
– 同時に天体の明るさから、frame間の相対的な明るさの比を決める
• このようにして、多数の画像間の相対的位置・回転・明るさ
の比の組み合わせを決めるタスクが makemos.csh
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Mosaicing
• Mosaicing
– Matchingで決まった多数の画像間の相対的位置・回転・
明るさの比の組み合わせに基づき、画像を並べて足し合
わせる。このプログラムが imcio2a
– 重ね合わせの際には
オプションがある
• Median: CRや移動天体など
はきれいに消えるが、fluxを
取りこぼす可能性がある
• Mean: fluxは保存するが、
CRや移動天体などが残る
• 一枚の大きな画像の完成
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その後の処理
• 標準星解析
– 1カウントが何等級に相当するか?
– 明るさの分かっている星(測光標準星)を観測することに
よって、等級原点を決定する
• Color補正: Suprime-Camのフィルターと標準星の測光に使わ
れたフィルターとの間の微妙な違いを補正する
• Airmass補正: 大気による吸収量は大気の厚みに比例するとし
て、補正をかける。
• 吸収補正
– 星間物質による吸収を(必要に応じて)補正する
– Schlegel et al. 1998, ApJ, 500, 525
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Photometry
• Photometry とは
– 天体の位置や明るさ、大きさなどを測定すること
– お手軽 photometry ソフト : SExtractor
• 銀河研究者の多くが使用
• 天体の検出から測光まで
ほぼ自動でやってくれる
E. Bertin
– DAOphot
• PSF fitting photometry
• 星が混んでいる領域専用
– 実はねこソフトにも
”measure” という測光
ソフトが同梱されている
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Astrometry
• Astrometryとは
– 画像上の座標 (x, y) と天球上の座標(赤経赤緯)の間を
較正し、画像上に天球座標を張ること
• 球面である天球を平面に投影したものが画像であるため、単純
な一次変換ではない。通常3次式以上で展開。
– 位置標準星カタログ
• USNO-A2.0 catalog
• 2MASS point source catalog
– World Coordinate System (WCS)
• 画像のx,yをRA, Decに(一次)変換する係数がFITS画像に埋め
込まれている
• Suprime-Camの単一画像にもついている。ds9などで出てくる。
ただし精度はよくないので注意が必要。
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3色合成
• 異なるフィルターで撮られた同じ領域の画像をRGB
各色に割り振ることによって、3色カラー画像を作る
– 右図(Sextans A)の場合
• B
• G
• R
Vバンド画像
Rバンド画像
Iバンド画像
– ソフトウェア
• IRAF: rgbsun
 raster変換
• convert
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画像解析からScienceへ
• フィルター1バンド
–
–
–
–
光度関数(星・銀河)
変光天体(超新星、変光星、AGN、MACHO、系外惑星)
移動天体(衛星、小惑星、KBO)
形状測定(重力レンズ、構造解析)
• 複数のフィルターを用いる
– 色を使った天体のclassification
• High-z galaxies (LBG)、星や銀河の色等級図
– 特定の波長で光っている(吸収がある)天体の検出
• Lya emitter, 輝線領域、低金属量星
– 距離の推定(photometric redshift)
– 星種族の推定(SED fitting)
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頑張れネコ!
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