記者会見資料 - 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター

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記者会資料
-高効率極端紫外(EUV)光源開発•
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日 時:平成15年11月26日(水) 13:30〜14:30
場 所:大阪大学レーザー核融合研究センター
発 表 者:井澤靖和(文部科学省プロジェクトリーダー)
発表内容:
ー EUVリソグラフィの重要性とEUV光源開発の世界的動向
ー 本センターで達成された高効率EUV光源の研究成果とその意義
ー EUV光源開発の今後の展開と実用化技術移転の見通し
その他:研究設備の見学
1
成果説明
1次世代半導体製造リソグラフィ用に開発を進めてきたレーザープラズマ極端紫外(EUV)光源において世界最高の変換効率3.0%を
達成し(補足1、2)、実用機開発へ向けた課題の一つがクリアーされました。また、文部科学省リーディングプロジェクトの下
で整備を進めてきたEUV光源開発共同実験設備が整備され(補3)、光源開発研究がさらに加速されます。この成果は11月28日水戸
で開催されるプラズマ・核融合学会年会にて発表されます。
2.現在開発が進められている
F2レーザー(波長157nm(ナノメートル))でも線幅60nmが限界(補足4上)とされています。この
ため、プラズマ放射極端紫外(EUV)光源を用いたリソグラフィ技術(補足4下)は、半導体集積回路の超微細化におけるキーテク
ノロジーの一つとして今大きな注目を浴び、線幅50nm以下の次世代半導体プロセスへ向けた波長13-14nmのEUVを光源とした光リソ
グラフィ技術の開発に熾烈な国際競争が繰り広げられています(補足5上)。日本では経済産業省のもと平成14年6月EUVリソグラ
フィシステム開発のための技術研究組合EUVA(Extreme Ultraviolet Lithography System Development Association)が組織され
、EUV光源開発が最重要課題の一つとして取り上げられました(補足5下)。
3.光源に対する要求仕様値は半導体製造企業とリソグラフィ装置製造企業の協議により決定され、現在のところ、中心波長
13.5nm、帯域幅2%に、繰り返しレート7〜10kHz以上のパルスで、光源取り出し部でのEUVパワーが115W以上必要(補足6上)とさ
れおり、投入されたレーザーパワーからEUV
光パワーへの変換効率の向上が重要な開発課題(補足6下)となっています。今回、
錫(スズ)をターゲットとし、一様性の高いレーザーで球対称に照射することにより、変換効率3.0%を達成しました。これまでの
目標値、2%以上、を大きく上回ったことになります。
4.大阪大学レーザー核融合研究センターでは、平成15年度より開始された文部科学省リーディングプロジェクト(補足7)の下
で、国内の大学や研究所と共同しながら、新たに極端紫外(EUV)リソグラフィ用レーザープラズマ光源開発研究を推進しています。
5.レーザープラズマEUV光源開発研究には高出力レーザー技術、ターゲット技術、プラズマ計測技術、理論・シミュレーションの
4つの研究項目が重要であり、またこれらの要素が互いに深く連携し成果をフィードバックしていく必要があります。このような
研究課題やアプローチはレーザー核融合研究と多くの共通点があり、これまで培われてきた核融合の物理的基盤や、レーザー技術
、ターゲット製作、プラズマ計測などの技術的研究資源がレーザープラズマの産業応用にも生かされようとしています。
2
錫をターゲットとし、プラズマ発生の最適条件を整えることにより、3%の変換効率を得ること
に成功した(世界最高値)
波長13.5nm 帯域幅2%に含まれるEUV光のエネルギー
変換効率=
投入されたレーザーエネルギー
4
変換効率(%)
実測値
理論予測
3
照射するレーザー強度の増大に
伴い、発生したプラズマの温度が増
大し、変換効率も増大しますが、過
度な強度にすると、温度が上がりす
ぎて最適条件からはずれるため、か
えって変換効率は低下してしまいま
す。
2
1
0
10
光源に用いる物質からは固有のス
ペクトルをもったEUV光が放射され
ます。リソグラフィ光源として要求さ
れる波長13.5nmの光を発生するに
は、錫やキセノンが適しています。
100
1000
レーザー照射強度 (ギガワット/平方センチメートル)
実験で確認された結果は理論的
予想ともよく一致しています。
3
一様性の高いレーザーを球状ターゲットに照射することにより、熱損
失の少ないプラズマが発生でき、EUV光への高い変換効率が達成された。
最大変換効率を与えるレーザー照射強度
における発光スペクトル
レーザー光
錫コート
ターゲット
発光強度 (任意単位)
中心波長13.5nm
帯域幅2%領域
8
6
4
2
0
0.5 mm
8
10
12
14
16
18
20
EUV波長 (nm)
錫プラズマの13.5nm 単色画像
4
得られた錫プラズマからのスペクトル。さら低密度酸化錫にしてターゲットの初期密度を下
げると、不要なスペクトル成分を除去でき、ターゲット供給量も減らすことができます(特許
出願済み)。
1 mm
放射プラズマの単色画像
(@13.5 nm 2%BW)
ターゲット
スペクトル強度 (任意単位)
低密度 酸化錫 の電顕像
(固体酸化錫密度の23%)
5
4
固体錫
波長中心13.5nm
帯域幅2%の領域
3
低密度酸化錫
(23%密度)
2
1
0
6
100 mm
低密度酸化錫
(固体の59%密度)
レーザー
to EUV ピンホールカメラ
8 10 12 14 16 18 20 22
EUV光波長 (nm)
5
EUV光源開発研究/共同利用設備が整備され、全国共同利用により
EUV光源プラズマ研究がさらに加速されます。
EUVプラズマ発光像
EUV標準カロリメータ
ターゲットチェンバー
EUVデータベース用レーザー
ターゲットチェンバー制御盤
6
補足 4
微細化とともに光源は短波長化
家電情報通信機器の基盤技術は、
半導体集積回路の超微細化であり、
リソグラフィ露光システムで用い
られる光源は KrFレーザー(波長
248nm)から ArFレーザー (193nm)
へと、短波長化への歩みを早めて
いる。
線幅50nm以下ではEUV光源が必要
現在開発が進められている F2レー
ザー(157nm)でも、線幅60nmが限界
とされている。
EUVリソグラフィの導入は2009年
このような動きを背景に、線幅
50nm以下の先進半導体プロセスを
目指して、波長13〜14nmの極端紫
外線 (EUV)を光源としたリソグラ
フィ技術の開発に熾烈な国際競争
が繰り広げられている。
集積回路の最小加工寸法、露光波長 (nm)
半導体デバイス微細化のトレンド
3000
2000
コンタクト露光
1000
700
500
300
200
100
70
50
ULSIの微細化トレンド
X 0 .7 /3年
1:1 投影露光
低
NA
g線
縮小投影露光
i線
KrFレーザー
高N
ArFレーザー
A弱
い超
F2 レーザー
解像
高NA縮小投影光学系
強い
超解
での実用的解像限界
像
低NA縮小投影光学系EUV 13 nm
での実用的な解像限界
30
20
平面CMOS
の実証
10
1970
1980
1990
年代
2000
2010
ASET資料を元に作成
7
我が国におけるEUVリソグラフィ開発体制
・1998年 ASET設立 EUVリソグラフィ要素技術開発開始 (EUV光源は含まず)
・2002年 EUVA設立 EUV光源開発開始 (装置化技術)
・2003年 文部科学省リーディングプロジェクト (LP) EUV光源開発開始 (基盤技術)
‘98
‘99
‘00
‘01
ASET (14社) EUV研究室
EUVの要素技術開発
MIRAI
経済産業省
EUVA
(10社)
‘ 02
‘03
‘04
‘05
‘06
‘07
‘08
絶対波面計測技術
2社
マスク・レジスト技術
(自主開発)
リソグラフィ関連マスク・計測技術
露光装置技術
2社 + 大学
EUV光源技術
5社 + 2大学
連携
文科省LP: EUV光源開発
10大学 + 3研究所
文部科学省
ASET: 技術組合 超先端電子技術開発機構
EUVA: 技術組合 極端紫外線露光システム技術開発機構
8
7
EUV光源の開発課題
1. 高変換効率:>2%
レーザー照射条件の最適化(エネルギー、波長、パルス幅、パルス波形)
ターゲットの最適化(材料、形状、構造)
2. 高安定性(強度、空間):±0.3%
3. 高繰り返し、高安定ターゲット供給技術
4. 集光光学系の長寿命化:デブリ(飛散物)フリー(デブリの制御と抑制)
5. 高出力レーザー開発:>20kW, >10kHz
高変換効率実現のために
ターゲット材料の候補:キセノン (Xe+10)、錫 (Sn+9~12) 等
多価イオンに関する物性データは無い
EUV光源プラズマ物理の解明
・多価イオンに関する原子モデルの構築
・光源プラズマシミュレーションコードの開発
・多価イオンに関する物性データの取得
・EUVプラズマに関する実験データベースの構築
実験とシミュレーションによる高効率化の指針
9
補足 7
文部科学省 リーディングプロジェクト
極端紫外(EUV)光源開発等による先進半導体製造技術の実用化
目的:レーザープラズマEUV光源基盤技術の開発(平成15〜19年)
システム化技術、装置化技術を分担する経産省プロジェクトと連携
参加機関と分担課題
・大阪大学グループ
1.EUV光源プラズマのモデルとシミュレーションコード開発(阪大、都立大、北里大、
山梨大、核融合科学研、京大、原研関西研、奈良女子大、レーザー総研、岡山大)
EUV光源プラズマの物理の解明と実用化への指針
2.EUV発生に関する実験データベースの構築(阪大、レーザー総研)
レーザーおよびターゲット条件の最適化と高効率化の指針
3.新ターゲット開発(阪大)
キセノンおよび錫の低密度フォームターゲット
4.高性能レーザー開発(阪大)
高出力・高繰返しレーザー基盤技術開発と実用化レーザー設計指針
5.共同利用実験設備の整備と計測の標準化(阪大)
・姫路工業大学
1.キセノン固体ターゲットの開発と高速・連続供給技術
2.デブリの計測とその対策
・九州大学
1.錫のクラスターターゲット開発
2.炭酸ガスレーザーによるEUVプラズマ研究
・宮崎大学
1.EUV光の絶対計測技術
2.ドロップレットターゲットとデブリ計測
10