約 4 cm: 2500 Hz 約 2.6 cm: 3500 Hz
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Transcript 約 4 cm: 2500 Hz 約 2.6 cm: 3500 Hz
有限要素法による摩擦子音の音響
シミュレーション
戸田マルティヌ
北村達也
本多清志
前田眞治
ATR/ Université Paris III - CNRS
ATR
ATR
ENST/CNRS
[email protected]
はじめに
• 摩擦音/s/と//の判別には, 摩擦雑音のスペクトルが使
われているとされる(Harris,1958).
dB
dB
/s/
//
Hz
Hz
高エネルギー帯域
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/s/
//
無声歯茎摩擦音
(alveolar fricative)
• 舌の中央が窪んでいる
(Ladefoged & Maddieson, 1996).
無声歯茎後部摩擦音
(post-alveolar fricative)
• 舌下腔のあることが特徴的
である(Perkell et al., 1979).
• 口唇の突き出しがある.(Toda
et al., ICPhS 2003)
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• では,/s/や//の音響的特徴は声道形状のどのような特
徴に起因しているのか?
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目的
• 1話者の/s/と//において,高エネルギー帯域
を形成する共鳴のパターンを明らかにする.
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方法
方法(概要)
• MR画像に基づき、3次元の現実的な声道モデル
を作成.
• 有限要素法を用いて音響シミュレーションを行い,
モデルの音響特性を求める.
• モデル内の音圧分布を観察することによって共
鳴のパターンを推察する.
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MR画像から声道形状を抽出
• 話者は女性1名
• 摩擦子音/s/と//の持続発声(撮像時間30秒,一
息で発声)
• 歯列を補填
• トレース作業を経て声道形状を抽出(Mimics
(Materialize社) )
詳細は戸田ら,信学技報 SP2003-56 を参照
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声道モデル
/s/
//
口蓋帆
歯列間隙
喉頭蓋
梨状窩
口唇
• Hypermesh(Altair社)によって有限要素
メッシュを作成(四面体,要素数約19万)
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声門
舌下腔
* 計算に用いたモデルの放
射空間は, 高さ100mm,幅
100mm,口唇から前面ま
でが50mm以上.
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シミュレーション
• Sysnoise (LMS社)を使って50 Hz から 8000
Hz までの区間において, 50 Hz 刻みで音圧に
関する波動方程式を解いた.
• 音源(音圧源)は2重極(dipole)音源, 狭め前
方の上下顎前歯の間に位置させた.
• 境界条件:
– 声門と放射空間の面には空気の固有音響インピー
ダンスcを付与( = 1.733 kg/m3; c = 346.37 m/s).
– その他の面は剛壁.
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結果
音声との比較
音声
シミュレーション
口唇から2cmの点での音圧
/s/
//
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声道モデル内の音圧分布:/s/
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狭め
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声道モデル内の音圧分布://
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まとめと考察
まとめと考察
• MR画像から摩擦音/s/と//の声道モデルを作成
した.
• 2重極の点音源を上下顎前歯の間の位置に置き,
有限要素法によってモデルの音響特性を調べた.
– /s/と//の特徴となる高エネルギー帯域が再現され
た.
– しかし,//の音声における6kHzのディップがシミュ
レーションで再現されなかった.
• 音源の数と位置の問題
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まとめと考察
(続)
• 更に/s/と//の共鳴のパターンを明らかにするた
めに,モデル内の音圧分布 を調べた.
– /s/の特徴となる高エネルギー帯域は,狭めを含む部
位の共鳴によってつくられていることが示唆された.
– //の場合は舌下腔を含む部位の複数の共鳴による
ことが示された.
– // に関しては, Stevens (1998) のモデルとは異なる
共鳴パターンである.
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//の音響生成機構
(Stevens, Acoustic Phonetics, 1998)
‘’
(//)
約 4 cm:
2500 Hz
約 2.6
cm:
3500 Hz
– 話者ごとに異なるパターンが存在する可能性は十分考えられる.
– 一般的な解釈を行うためには,今後,複数の話者において調査を
行うことが必要である.
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本研究は通信・放送機構の研究委託
「人間情報コミュニケーションの研究開発」
により実施したものである.
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参考文献
K.S. Harris (1958), “Cues for the discrimination of American English fricatives in
spoken syllables”, Language and Speech, 1:1-7.
P. Ladefoged and I. Maddieson (1996), The sounds of the world’s languages,
Blackwell.
J. S. Perkell, S. Boyce and K. N. Stevens (1979), “Articulatory and acoustic
correlates of the [s-š] distinction”, in Speech communications papers presented
at the 97th meeting of the ASA, J. J. Wolf and D. K. Klatt (eds.), Acoust. Soc.
Am., New York, 109-113.
M. Toda, S. Maeda, A. J. Carlen and L. Meftahi (2003), “Lip protrusion/rounding
dissociation in French and English consonants: /w/ vs. // and /Z/ ”, proc. 15th
ICPhS 2003, Barcelona.
K. N. Stevens (1998), Acoustic phonetics, The MIT Press, Cambridge, MA, 404405.
戸田・北村・本多・前田 (2003) 『MRI観測に基づく歯擦音生成時の声道形状とその音響
モデル』, 信学技報SP2003-56.
C. H. Shadle (1985), The acoustics of fricative consonants, Ph. D. thesis, MIT,
Cambridge, MA.
竹本・北村・西本・本多 (2003) 『声道形状のMRI計測における歯列補填法』, 日本音響学
会公演論文集, no.2-3-9, pp. 293-294, March 2003.
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MRI撮像
Shimadzu-Marconi Eclipse 1.5
子音
- Fast3D、TE=3.3ms、TR=10ms、矢状方向、
1ピクセル0.50.5mm、スライス厚1.5mm、
撮像範囲25625660mm、仰臥位、
撮像時間約30秒
歯列
-
Spin Echo、TE=11ms、TR=3000ms、矢状方向、
1ピクセル0.50.5mm、スライス厚1.5mm、
撮像範囲25625676.5mm
-
竹本ら(2003)に従い、うつぶせの姿勢で
口に造影剤を含んで安静(撮像時間約3
分)
声道抽出
2値化・
ノイズ除去
歯列補填 Intage RV
声道抽出
歯列の抽出
Mimics
//の音響生成機構 (Stevens, 1998)
‘’
(//)
約 4 cm:
2600 Hz 3300 Hz
2500 Hz
約 2.6
cm:
3500 Hz
K. N. Stevens, 1998 p.404-405 より
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MRIによる//発声時の正中矢状断面
および音声のスペクトル
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音源 付1
– /s/と//に代表される歯擦音の主な音源は,狭めによっ
てジェット気流が作られ,これが歯などの障害物にあた
ることによって生じる乱流による(Shadle, 1985).
– このような音源は2重極(dipole)音源である(Stevens,
1998).
• 等価回路では電流に変動のない,電圧源として表現できる.
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音源 付2
– 2重極音源は乱流の発生する一帯に分散して存在す
ると考えられるが,シミュレーションでは簡略化のため
に特定の1箇所にあることを仮定した.位置は狭めの
正面,上下顎前歯の間とした.
– シミュレーションには点音源(音圧源)を用いた.
e-ikR
k 波数
P=A
R
R 音源からの距離
– 2重極音源は,位相が逆の点音源2点をほぼ同じ位置
(1mm間隔)に置くことで実現した.
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