Transcript 自分史の書き方つくり方
自分史の書き方つくり方 日本自分史学会 理事・スーパーバイザー 加藤 迪男 (C) MICHIO KATO 2008 1 はじめに 自分史ということば 昭和50年(1975年)8月 10日に発行された色 川大吉著『ある昭和 史 自分史の試み』 (中央公論社)が、「自 分史」ということばが 使われた“起源”とさ れている。 7月11日は「自分史の日」 『ある昭和史 自分史の試み』の「あとが き」の日付けが、1975年7月11日だったとこ ろから、7月11日を「自分史の日」として自 分史研究家によって提唱されている。 色川氏は、平成12年に出版された『自分 史のすべて』(草の根出版会)のなかで、 「21世紀は自分史の世紀になる」と予言し ている。 自分史講座受講生の年齢層 60 50 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80歳以上 40 30 20 10 0 男 女 全体 =自分史講座受講生アンケート結果から= 自分史を本にする 40 35 30 25 出版したい 一冊だけ 出版したくない 20 15 10 5 0 男 女 全体 =自分史講座受講生アンケート結果から= 自分史の読者 35 30 25 子や孫 20 親戚・知 人 多くの人 15 10 5 0 男 女 全体 =自分史講座受講生アンケート結果から= 自分史の原稿 70 添削を 希 望 60 50 指導を 希 望 40 30 パソコン で 書く 20 10 0 男 女 全体 他人に 読んで 貰 う =自分史講座受講生アンケート結果から= 自分史とは • • • • • 自分史は自分の歴史 フィクションはダメ 事実は正確に 書くことは自由だが…… 書きたくないことは書かない 自分史と私小説 • • • • • • 自分史は一人称で書くことが多い 私小説も一人称で書く スタイルは自分史も私小説も同じ フィクションが分かれ道 自分史を私小説と呼んでいい 私小説は自分史と呼べない 自分史のスタイル 自分史にきまったパターンも、スタイルもない • 紙を使った本の形式 • 紙を使わない媒体 体験記・エッセイ・手紙文・日記文・写真集・作品 集・旅行記・子育てや夫婦の記録など ビデオ・カセットテープ・CD・インターネット(ブロ グ、ホームページ)など 自分史の三つのパターン ①半生記、自叙伝 ②体験記(戦争、闘病、 旅行、趣味など) ③身辺雑記(「折々に」 「つれづれに」など) 2 なぜ自分史を書くか 自分のために書く • • • • • • 自分のことを書いて残す 書いていくと、新しい発見、出会いがある 人生観が変わることもある 書いたことが、人のためにもなる 人生最大の偉業に挑戦することである あなたの人生は、あなたにしか書けない 生きがいのために書く • • • • • • 不確かなことは、調べなければならない 書けば、自分の記録になる 失敗したことも、次へのステップとなる 読まれることを意識して書く これからの人生への目標も書ける その努力が、生きがいになる 子や孫のために書く • 書く目的を、子や孫にすると取り組みやす い • 子や孫に語りかけるように書くのがコツ • 話す機会がなかった人には、好都合 • 話しづらくても、書けば伝えられる • 失敗談も、語るつもりなら書きやすい 次代のために書く • • • • 人は誰でも波乱万丈の人生を送っている あなたの経験は、先人の知恵、処世訓 過去を振り返り、未来を語る その体験を、次の世代に伝える使命があ る • 使命を果たすのが、自分史である 3 自分史の効用 自分が再発見できる • 人生はドラマ、主人公はあなた • 自分史は、あなたが主役のドキュメンタ リー • ドラマをまとめることが、ドキュメンタリーを 書くことである • 過去を見つめなおすことができる • これからの人生を模索できる • 将来に希望が出て、自信が出てくる 自分がわかる • 自分のことは、知っているようで知らない • 忘れていることも多い • 書くために調べることで 忘れていたことがわかる 知らなかったことがわかってくる 思わぬ収穫が得られる 心の遺産 • • • • • 自分の存在を残すことができる 生きた証しを残すことができる 書くことで、心の充足感が満たされる “自分史は紙の墓標”である 次代へ伝える心の遺産となる 生涯学習である • 自分史は、短期間でまとめられない • 書いていると、書きたいことが次々に浮か んでくる • 一冊書き上げても、「もう一冊」と欲が出る • 二冊目の自分史に挑戦したくなる • 自分史を書く過程が、生涯学習にうってつ け 4 自分史ノート・家系図 自分史ノート • • • • • • • 市販のノートを使ってつくる 1年を1ページまたは2ページ充てる 年号(西暦と元号)、年齢を記入する 余白に自分の歴史を記入する 自分の歴史は、月日を忘れずに 世の中の歴史も書き入れるといい 家族の備忘録としても役立つ 書き込み式 自分史ノート 家系図 • 自分を中心に据える • 夫婦関係は、=で結ぶ • 一般的な家系図は、=の右に男性、左に 女性が書かれている • 氏名の横に、生年月日、没年月日を記入 するといい • 子どもは、出生順に右から左へ 家系図(書き方の例) 配 偶 者 第 三 子 私 第 二 子 第 一 子 配 偶 者 5 自分史の書き方 書く前に • 仕上げるのをタテ書きにするか、ヨコ書きにする かを決める • 下書きもそれにあわせる • 手書きでもパソコンでもいい • 最初から原稿用紙に書かない • 下書き原稿はウラ紙でじゅうぶん • 紙のサイズだけは統一する • 書いた原稿は、日数を置いて読み返す(推敲) 書きはじめる • • • • • • 書きやすいところから書く 書きたくないことは書かなくていい テーマごとに絞って書く テーマは多いほどいい 漢字がわからなければ、かなで書いておく 2、3行で行き詰ったら、そのままにして別 のテーマを書く 書きはじめる奥の手 • • • • • 目次をつくってから書く 年譜をつくって、それぞれの項目から書く 記憶に残っているところから書く 書く順序にこだわらない かな書きしておいた漢字は、読み返すとき に辞書で調べる 書くテーマとヒント ・ 出生・出身地・ふるさと ・幼稚園・保育園・小学校・中学校・高等学 校・専門学校・大学 ・就職・社会人・恋愛・結婚・出産・育児・子 ども・家族・家庭・ ・趣味・娯楽・スポーツ・事件・事故・災害・ 戦争・健康・闘病・旅行・社会活動・ボラ ンティア活動 ・伝えたいこと・信条・座右の銘など 回想法を活用する • • • • • アルバムにある古い写真 作文・図画・書道などの作品 なつメロなどの音楽 旅先で買ったみやげや絵はがき 歴史資料館、博物館、平和博物館などの 展示物 →昔を回想させてくれる 考現学の視点で • 外出先で目にとまった クラシックカー・火の見櫓・人力車・ 丸型ポスト・ポンプ式井戸など • 博物館などで出会った 焼夷弾・千人針・鉄かぶと 和文タイプライターなど 日記を活用する • これまでつけてきた日記を参考資料にする • いつどこで何をしたかが日記に書いてある →こうした記述が自分史を書くヒントになる • 嬉しかったことや悩んだこと • 日常の身辺雑記など • 毎日書かなくてもいい →日記を書くように書いた蓄積が自分史になる ブログを活用する • • • • ブログを書く気分で メールするような気軽さで ケータイを使う感覚で 感じたことや思いついたことを 書き留める習慣をつけるようにする • ブログにしておくと 自分史にまとめることが容易 原稿用紙の書き方 • • • • • • • • 手書きもパソコンも、要領は同じ 文字も符号も、一マスに一文字 句読点も、一マスに一つ 書き出しの最初は、一マスあける 新しい紙になったときは、一マスあけない 場面が変わるときは、改行する 話し言葉は、カギカッコ(「」)で囲む ……や――は、二マスを使う 清書する前に • • • • • • タイトルを見て、並べる順序を決める 並べ替えたものを、通読する 写真を挿入する場所を決める 写真には必ず説明を書く 目次、まえがき、あとがき、奥付をつくる 書名(表題)を決める 本の構成 ・表紙 ・本体(中身) 前付け 扉(題扉)・まえがき・ 目次 本 文 中扉(章見出しなど) 後付け 年譜・あとがき・奥付(発行年月日、 著者名など) 清書する • • • • • 常用漢字と現代仮名遣いを基準に 常用漢字以外の漢字には、ふりがなを いつも辞書で、こまめに確認する 手書きの清書には、原稿用紙を使う 写真のスペースを空けて、原稿用紙に清 書する • ページ番号をつける(目次にもページ) 6 自分史のつくり方 本のサイズ 単行本サイズ B 6 判 128㍉×182㍉ 四六判 127㍉×188㍉ 雑誌サイズ A 5 判 148㍉×210㍉ B 5 判 182㍉×257㍉ 自分史作成の流れ 本の構造 カバー 帯 見返し 天 地 小口 題字 本の構造 花ぎれ カバー 見返し 天 小口 用意するもの • • • • • ゼムクリップ ペンチ 千枚通し 目玉クリップ のり 本体(中身)を綴じる • 清書して仕上げた原稿用紙を、ページ順 にそろえる • ホチキスの針を通す位置を決める • ダルマクリップで動かないように固定する • 千枚通しで穴をあける(一度に全部あけら れないので、少しずつあける) • 全部あけたら、穴に針を通して、綴じる 表紙をつくる 1 • • • • • 表紙にする厚紙を用意する 表紙は、本体より厚みの分だけ大きくなる 表紙に題名を入れる 背表紙にも題名を入れる 表紙に写真やイラストを入れる • 別に見返し紙を2枚用意する 表紙をつくる 2 本体と表紙の合体 • 本体と表紙は、見返し紙で合体する • 本体と見返し紙は、ホチキスが隠れる程度 の幅に糊付けする • 表紙の表と裏の部分は、全面糊付けして 見返し紙を張る • 本体と表紙がしっかり固定するように、とく に背の部分を入念に仕上げる • あとは乾くのを待つだけ 制作スケジュール 見 積 初 校 契 約 再 校 校 了 レ イ ア ウ ト 原 稿 整 理 原 稿 渡 し 印 刷 製 本 納 本 本の装丁 上製本 並製本 完成 • 世界に一冊しかない自分史 “オンリーワン自分史” の完成おめでとうございます • ご自宅の書棚に、新しい蔵書として加えて ください