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和漢古典籍研究分科会研究発表
和漢古典籍の書誌作成
無刊記本の刊年推定とNC入力への試み
2011.12.15
発表内容
分科会の目的
活動内容
無刊記本の刊年推定
調書を作成するにあたって
NC入力への試み
研究分科会の目的
日本や中国・朝鮮半島などで刊行された
古典籍資料について、大学図書館職員
として必要な書誌学の基礎知識・
書誌作成の方法を習得することを
目指す。
分科会の活動内容
基礎知識の習得
基礎知識を養うために、廣庭基介、長友千代治著
『日本書誌学を学ぶ人のために』 (世界思想社)を選
を選び、章節毎に担当を決め、その要約と発表を
を行った
調書作成
会員所属図書館の和漢古典籍を使って調書を作成
見学
会場校の図書館や貴重書庫、付属施設を見学
分科会見学会(1)
2010年8月26日
東京都立中央図書館特別文庫室見学
コレクションの概要・電子化
絵図などの資料閲覧
都立中央図書館資料保全室真野節雄氏
裏打作業の見学と補修について説明
駒澤大学図書館にて
線装本の作成・虫損直しの実習
分科会見学会(2)
2010年12月2日
立正大学図書館特別展見学
川口慧海コレクション
貞松山蓮永寺寄贈図書等
慶應義塾大学斯道文庫書誌学展見学
資料の成り立ちについて系統的展示
分科会見学会(3)
2011年5月20日
天理ギャラリー見学
天理図書館開館80周年記念特別展
「新収稀覯本を中心にして」
芭蕉・蕪村自筆書簡、古活字版など
印刷博物館見学
特別展「空海からのおくりもの」展
無刊記本の刊年推定
江戸期刊本?
出版年不明?
清刊本?
無刊記本の刊年推定
奥付
見返し
無刊記本・・・・・・
見返しや奥付などに出版地・出版者・出版年の
記述がない。
⇒様々な手がかりから、刊行年代の推測が可能!
手がかり①『序跋』
和本・唐本共通
その書物が書かれた
または刊行された年
月日の情報がある。
『論語古訓正文』
太宰春臺校
手がかり①『序跋』
序・跋の著者や注釈・校訂した人の
名前⇒人名辞典などで生没年を調査。
確実ではないが、複本を比較する
とさらに刊行年代を絞ることが可能。
手がかり②『版元』
和本に有効
和刻本漢籍や国書の場合、版元
の記述があれば、青裳堂書店の
『近世書林板元総覧』から、
その版元が活動し始めた年代が
わかる。
手がかり③『避諱(ひき)』
唐本に有効
避諱とは・・・
中国において、尊ぶべき人物や
その時代の皇帝の諱(いみな)、
つまり本名の表記を避けること。
手がかり③『避諱(ひき)』
避諱の方法
その皇帝の諱に使われている漢字を
同音・同意の字に置き換える。
字の一部を削る。
空白にする。
例
清代は厳密に行われた為、
清代の書物を扱う場合は
とても有効。
手がかり④『叢書の一部』
研究機関の目録
京都大学人文科学研究所
東京大学東洋文化研究所
叢書の子書誌までわかる。
叢書の一部であった場合
『中國叢書綜録』『中国叢書廣録』
全体の構成や刊年がわかる。
手がかり⑤
その他
料紙
著作者、注釈者、校訂者などの生没年
蔵書印
表紙の色、見返しの色、大きさ
購入時期や校訂時期などの書入れ
字様
同版と思われるものを校合
刻工名
刊年推定の実例『尚書説』
『尚書』の解説書
南宋の黄度
(1138~1213)の著作
刊記や奥付が無い。
刊行年代の記述も無い。
刊年推定の実例『尚書説』
叢書の一部と疑う
東文研目録確認
「通志堂経解」の
一部と判明
刊年推定の実例『尚書説』
『中國叢書綜録』で調べると・・・
康煕帝時代の1680年刊行
同治帝時代の1873年刊行
二つの版がある。
刊年推定の実例『尚書説』
通志堂
『尚書句解』表紙と巻頭
この資料と比較する。
刊年推定の実例『尚書説』
『尚書句解』巻尾
康煕帝時代の版
『尚書説』巻尾
同治帝時代の版
刊年推定の実例(脇道)
版心の下部の「通志堂」
• 筆名
• 書斎号
• 書店の屋号
『室名別号索引』
『中国歴代人名大辞典』
王
相
臣
「納蘭性徳(成徳)(1655-1685)」
「通志堂経解」の編纂者
であることが判明。
刊年推定の実例(脇道)
「雲煙家蔵書記」
という蔵書印
⇒『新編蔵書印譜』
で調べる
⇒ 江戸時代の鑑定家
安西雲煙(1807~1852)
のものと判明。
『新編蔵書印譜』
刊年推定の実例『尚書説』
「玄」という字の最後の一画がない
⇒康煕帝の諱「玄燁」を避けたもの
刊年推定の実例『尚書説』
「胤」という字の最後の右側がない
⇒雍正帝の諱「胤禛」を避けたもの
刊年推定の実例『尚書説』
「弘」という字の最後の一画がない
「曆」という字の「日→止」に
⇒乾隆帝の諱「弘曆」を避けたもの
刊年推定の実例『尚書説』
「寧」という字の心の部分がない
⇒道光帝の諱「旻寧」を避けたもの
刊年推定の実例『尚書説』
「紵」という字の旁の縦棒の部分がない
⇒咸豊帝の諱「奕詝」を避けたもの
刊年推定の実例『尚書説』
以上より
『尚書説』は
咸豊帝の時代かそれより後に
刊行されたと推定
刊年推定の実例『尚書句解』
「玄」「胤」は欠画されている。
刊年推定の実例『尚書句解』
「弘」「曆」「寧」など乾隆帝以降の
諱が欠画されていない
康煕帝時代の版とされるが、
雍正帝の頃に刊行されたものと推定
まとめ
刊年の表示が無い書物
よく観察する
適切な参考図書を用いる
ある程度刊年を推定可能!
まとめ
江戸期刊本?
⇒江戸前期刊本
清刊本?
⇒清初刊本
調書を作成するにあたって
分科会で使用している調書
古典籍の部位
①表紙
表紙
・色、文様
・原表紙、改装表紙の区別
題箋(外題)
・印刷か書写か
背
小口
古典籍の部位
②見返し・序・版心等
見返し(封面)
・出版者、出版人、出版年
月日、書名など
・紙の色
・封面(独立した一葉)か
見返しか
序
・自序か他序か
版心
・書名、丁数
古典籍の部位
③巻首
巻首
※本文巻頭書名を正式書
名とする
(巻頭書名がないときは
目録題、尾題、見返し、
題箋などをみて決める)
古典籍の部位
④巻尾・跋等
巻尾題
跋
跋の責任表示
古典籍の部位⑤版式
調書を取る ①表紙
②見返し
①表紙
1 15.7 11.2
日本諸家人物誌 全
なし
淇園先生閲
日本諸家人物誌
寛政庚申新刻利渉堂梓
②見返し
鎖状の囲み文様あり
調書を取る ③序・目・凡例等
題識(先頭)
題識(最後)
寛政巳未季冬八日
皆川愿 識
日本諸家人物誌 上
目録(先頭)
二巻
目録(最後)
調書を取る
式
④巻首
⑤版
ショカジンブツシ
諸家人物誌 上
浪華 南山道人 纂述
一諸
家
人
物
誌
上
四周単
白
12.0
無
11
無
8.5
20
2
諸家人物誌
○
調書を取る
⑧刊記・奥付等
寛政十二年庚申正月改刻
書林 江戸 石町二丁目
西村源六
大坂心斎橋博労町
柏原屋嘉兵衛
調書を取る ⑨その他所見 ⑩出典
等
南山道人(池永豹)
[国書総目録より]
<古典総より>
<国総目より>
4
523
1
488
調書を取る
WK
281
<調書の完成>
諸家人物誌
南山道人(池永豹)纂述
寛政十二年刊(1800)
1冊 15.7×11.2糎
上 74丁
下 25丁
①~⑩および、丁
数その他の記入後
、大きな四角の中
に書誌事項を記入
して調書を完成さ
せる。
NC入力への試み
~対象資料『諸家人物誌』を例に~
諸家人物誌を例に・・・
<
A
表
B
紙
>
C
A~Cともに題箋は同じ
<
A
見
返
B
し
>
C
Aのみ刊記、タイトルの並び、
囲み模様が異なる
<
A
題
B
識
>
C
題識の刊記部分が削ら
れていることがわかる
Cのみ題識の年号がない
<
A
巻
B
首
>
C
A~Cともに同じ
(
A
版
B
式
)
C
A~Cともに版式も同じ
B:『近世書林板元総覧』より
< 刊 記 >
文化・文政頃であることがわかる
A
B
C
C:「東京府」とあるので
明治期に刊行されたと
判断できる
A:『享保以後江戸出版書目』より
寛政十二年刊であることがわかる
以上のことから
資料Aの刊記は
寛政12年(1800)大坂利渉堂柏原屋
嘉兵衛等刊本
資料Bの刊記は
[寛政12年刊]文化文政年間大坂河内屋
茂兵衛等後印本
資料Cの刊記は
[寛政12年刊]明治期東京大川錠吉
後印本
調書A
調書B
調書C
分科会作成NCフォーマット
NCフォーマット各項目
NCフォーマット各項目
NCフォーマット各項目
NCフォーマット各項目
NCフォーマット各項目
NCフォーマット各項目
NCフォーマット各項目
NCフォーマット各項目
NCフォーマットに落とした
A~Cの書誌
まとめ
書物の頁順に調書を作成
NCフォーマット
NCデータ入力
次期会員募集
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きたい知識を基本から習得(初心者大
歓迎!!)
貴重な資料に触れつつ日本の文化を
学び、書誌作成方法を習得すること
ができます。
皆様のご参加をお待ちしております