1,2回目 - FUJITA Lab.

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各種磁気センサの動作原理と応用
~講義内容~
ホール素子、MRセンサ、GMRセンサ、MIセンサ、FGセンサ等
①動作原理・理論 ②特性/特徴 ③用途 ④製造方法
■スケジュール
第1回 7月26日 磁気の基礎・各センサの概要・センサー各論I
第2回 8月11日 センサー各論II
第3回 8月25日 応用商品と用途,製造方法の基礎
奈良工業高等専門学校
電気工学科 藤田直幸
自己紹介
豊橋技術科学大学 電気電子工学課程修了
松下電器 電化本部(4年)
大阪府立高専 電子情報工学科(12年) 4月より現職
専門:磁気工学,表面処理,電気電子材料
テーマ:電気化学的手法(めっき)によるナノスケール磁性薄膜
の作製と応用
所属学会:電気学会(調査専門委員会委員),日本応用磁気学会
表面技術協会(評議員,関西支部常任幹事),
The Electrochemical Society,電気鍍金研究会(理事),
ソフト溶液プロセス研究会,ナノプレーティング研究会,
ソノケミストリー研究会
事前アンケート
サンエテック様 「磁気センサーの基礎」技術講習会 前提知識確認表
よく知っている
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保磁力
飽和磁化
磁性体のヒステリシス曲線
磁束密度
スピン
磁界
電流密度
移動度
ローレンツ力
軟磁性材料
硬磁性材料
ホール効果
磁気抵抗効果
巨大磁気抵抗効果
反磁界
列の丸の数の合計個数
知っている
ほとんど知らない
知らない
磁気の基礎
磁気の基礎I 磁性材料の諸量
B-H曲線
ー磁束密度Bと磁界Hの関係
強磁性体の場合は,比例しない
B=μ0H+I= μH
・μi:初透磁率
・μm:最大透磁率
・Bs:飽和磁束密度
・Br:残留磁束密度
・Hc:保磁力
・(BH)m:最大磁気エネルギー積
先端材料応用事典編集委員会,先端材料応用事典
(1990産業調査会)
I-H曲線
ー磁化Iと磁界Hの関係
・χ:磁化率
磁気の基礎II 物質の磁性の起源① 原子中の磁石
①電流が流れると磁界が発生する
②原子:
・原子核の周りを電子(-e)が円運動している
(軌道運動)
→ 等価的に図のような円電流が流れている
ように見える.
L
A
r
-e
i
m
・磁化mが図のような方向に表れる.
(ここで,mは原子が作る最小単位の磁石と考える)
③上記の軌道運動以外に,電子の自転(スピン)に基づく運動でも
磁化が発生する.
④このような原子中の小さな磁石のことをスピン
(軌道と自転をあわせて:軌道の運動よりスピンが
有効なことが多いため)と呼ぶ
磁気の基礎II 物質の磁性の起源② スピンの配列I
結晶を作ると原子は,規則正しく並ぶため,
スピンもある規則で整列する.(低温で)
①フェロ磁性(強磁性):
原子磁石(磁気モーメント)が結晶の中で
すべて同じ向きに並んでいる。
②アンチフェロ磁性(反強磁性):
結晶中の2種類の位置AとBにある原子磁石が、
平行だが逆向きに並んでいる場合。
全体として、打ち消し合って磁気(自発磁化)を持たない。
フェロ
アンチフェロ
磁気の基礎II 物質の磁性の起源③ スピンの配列II
③フェリ:
アンチフェロの一種であるが、A,B両格子の磁気モーメント
が等しくないため、差が外に現れる。
④パラ磁性(常磁性):
原子磁石が勝手な方を向いていて規則配列の無いもの。
(あらゆる強磁性体は、ある温度(キュリー温度)
以上では、パラになる。)
全温度で、パラのものを常磁性体という。
フェリ
パラ
磁気の基礎III 磁性体の分類
強磁性体を応用面から分類
保磁力の大きさによって
・軟磁性材料(ソフト):変圧器,コイル,信号処理
・硬磁性材料(ハード):磁石
磁気記録材料 ハードほどではないが十分な保磁力
強磁性体を応用面から分類
大分類 小分類
フェロ磁性
強磁性
フェリ磁性
反強磁性
弱磁性 常磁性
反磁性
例
Fe,Co,Ni
フェライト
Cr,Mn,FeO
Al
Cu
磁化率
大 1~104
小 10-3~10-7
(負)
磁気の基礎IV 反磁界
-
I
Hd
+
+
+
+
H
図のような磁石がある.
磁石の端には,N(図中+)とS(図中-)の磁極ができる.
磁石の外では,磁界は,図のHのような方向にできている.
しかし,磁石の中では,Hとは逆向きのHdの向きに磁界ができている.
このHdの向きは,磁気モーメントI (磁石の強さを表す物理量)の
向きと逆向きであるので,反磁界(自己減磁界)と呼ばれる.
反磁界の大きさは,Iに比例する(磁石が強くなると反磁界も強くなる)
すなわち,
μ0Hd=-NI の関係がある.ここで,Nを反磁界係数と呼ぶ.
(μ0は,単位あわせのために必要)
磁気の基礎IV 反磁界の例
①Feの球
Hd=5.7×105A/m
Hex=10 kOe(8×105A/m)
球の場合,実質的にFeを
磁化するのに役立つ磁界は,
2.3×105A/mにすぎない.
(約29%)
②薄い板:厚さ方向には大きな反磁界が働き,
磁化しにくい.板の面方向は磁化しやすい.
磁気の基礎V 磁気異方性① 結晶磁気異方性
Fe単結晶の例
結晶の中では,特定の方向は磁化されやすく,別の方向は磁化されにくい.
このように,方向によって磁気特性が変化することを磁気異方性と言う.
容易軸方向:磁化されやすい方向
困難軸方向:磁化されにくい方向
磁気の基礎V 磁気異方性② 誘導磁気異方性
何らかの操作によって,異方性の方向や大きさを制御する
例
(a)磁界中冷却効果
物質を一旦高温にして,冷却中に磁界を加えると,
その磁界方向に容易軸を持つ磁気異方性が
形成されることがある.
(b)圧延磁気異方性
ある種の多結晶を冷間圧延すると圧延によって,
結晶方位がそろい,異方性が誘導される.
磁気の基礎VI 磁区① 磁区とは
磁区とは:
飽和まで磁化していない強磁性体内には,
自発磁化の方向が異なる,いくつかの領域(磁区)が形成されている.
磁極が現れると:
静磁エネルギーが増加する
静磁エネルギー最小にすると:
交換エネルギーが増加する.
スピンが角度をなすと
エネルギーが生じる
磁気の基礎VI 磁区② 磁区の例
パーマロイ (110)
珪素鉄 (001)
Si-Fe (001)
磁気の基礎VI 磁区③ いろいろな磁区
磁気異方性の大きい
立方晶円板
磁気異方性の大きい
一軸晶円板
磁歪の大きい磁性体
磁気の基礎VI 磁区④ 磁壁
磁区と磁区の境界では,
スピンは一方の磁区の磁化方向から,他方の磁化方向へと
徐々に向きを変えている.
このスピンの遷移層を磁壁と呼ぶ.
磁気の基礎VI 磁区⑤ 磁壁の移動
磁界をかけると磁界方向の磁区の
面積が増える.
→磁壁が移動する.
磁気の基礎VII 磁化過程① 単結晶の場合
Si-Fe (001)
H//[100]
H//[110]
磁気の基礎VII 磁化過程② 単結晶の磁化曲線
1/√2=0.71
磁気の基礎VII 磁化過程③ 多結晶の磁化曲線の例
磁気センサの種類と概要
磁気センサの動作領域
測定対象によって選ばれるセンサが異なる.
→ 高周波,微弱磁界の検出へ
磁気センサの特徴比較
磁気センサの特徴比較
種類
原理
出力変化
材料
SQUID
磁気量子効果
(「21世紀版薄膜作製応用ハンドブック」P1063)
Hall効果
フラックスゲート
MI効果
磁化回転による 高透磁率磁性コアの 電子移動が受ける
ローレンツ力
飽和特性
透磁率変化
交流起電力波形
インピーダンス
電圧
金属系超伝導体 アモルファス磁 軟磁性体+コイル
Fe-Ni-In,Fe-Hf-O,
酸化物超伝導体 性体
FeCoSiB,CoSiB, Co-Ta-Hf
CoNbZr
スパッタ
蒸着,スパッタ
製法
高
超高
感度
-4
-4
-7
動作域(A/m) 10 ~10
10 ~104
高速応答
量子化出力
特徴
小型
極低温動作
パターン化
医療用
電着,スパッタ
高
-4
10 ~102
マイクロコイルで
小型化
起電力,抵抗
半導体
InSb,InAs,
GaAs,Si
蒸着,MBE,エピ
中
0
10 ~106
一般用途
MR/GMR/TMR効果
磁気抵抗効果
スピンと伝道電子の相
互作用
抵抗
強磁性体
NiCo,NiFe,
FeMn/NiFe/Cu/NiFe
スパッタ,蒸着
中~低
100~104
小型
HD
センサデバイスの薄膜化の流れ
エレクトロニクス関連製品の小型化・軽量化・高性能化
→ センサデバイスの小型化
← 薄膜化技術
・成膜技術
・マイクロパターンニング
・ICとの結合による信号処理技術
・パッケージ技術(小型,高信頼)
薄膜化のもう一つの利点 → ナノ構造磁性体
高機能化,新機能の発現
磁気センサの各論I
磁気抵抗(MR)センサ
電流磁気効果
物質に電流Iを流しておき,時速磁束Bを加えると
電流と磁気の相互作用(ローレンツ力)によって,電圧が誘起される.
■BとIと同一平面で観測される電圧
・電流に水平な成分 Er:縦電流磁気起電力効果(角野)
→ 磁気抵抗効果
・電流に垂直な成分 Ep:横電流磁気起電力効果(角野)
→ プレーナーホール効果
■BとIに垂直に観測される電圧
・Eh:ホール電圧
→ ホール効果
Ep
B
Eh
Er
I
磁性体中の電流磁気効果
電子は,スピンをもっているので,磁性体中では,磁化の効果が加わる
非磁性体にも現れる
正常磁気抵抗効果
(正常)ホール効果◎
磁性体にのみ現れる
異常磁気抵抗効果
強制磁気抵抗効果
異方性磁気抵抗効果◎
異常ホール効果
(プレーナーホール効果は,磁気抵抗効果と垂直な方向で
観測した同じ現象である)
「磁気工学ハンドブック」1.5章(角野)を参考に整理した
磁気抵抗効果(別の分類方法)
磁気抵抗効果の分類
正常磁気抵抗効果
異常磁気抵抗効果
・異方性磁気抵抗効果(AMR)
・巨大磁気抵抗効果(GMR)
・トンネル型磁気抵抗効果(TMR)
・超巨大(コロッサル)磁気抵抗効果(CMR)
磁気抵抗センサ① 現象=異方性磁気抵抗効果
M
θ
H
I
磁化容易軸:
磁界をかけないときMはこの方向を向いている
Hを大きくしていくとMの向きが変化する
MとIのなす角をθとすると,以下の関係がある.
  0  m cos2  (1)
ρ:抵抗率
ρ0:外部磁界の無いときの抵抗率
Δρm:最大抵抗率の変化
そのため,Hの大きさによって,抵抗率が変化することとなる.
磁気抵抗センサ② 原理
①磁界を強くする
↓
②スピンの向きが変化
↓
③電子の散乱(衝突の)
度合いが変化
↓
④抵抗値が変化
電流に水平にHをかけた
電流に垂直にHをかけた
※散乱は(b)の方が小さい.
伝導電子のスピンを考慮した2電流モデル
(a)H=0
(b)H≠0
H
磁気抵抗センサ③ 使われる材料
82Ni-Fe合金薄膜
→抵抗は小さな磁界
で飽和する.
Δρ=0.6μΩ・cm
磁気抵抗センサ④ 特徴・用途
・感度 1%/Oe → 比較的良い感度
・広帯域,安定性に優れる
・構造がシンプルで安価
・再生ヘッドとしてHDDの高密度化に役立った.
(←誘導型薄膜ヘッド)
・磁気記録のトラック幅の減少:MRセンサの膜厚を薄くする必要
→電子散乱が起こり,性能に限界 →GMRヘッドに置き換え
・その他の磁気応用センサの分野もGMRヘッドが使われつつある.
磁気センサの各論II
巨大磁気抵抗(GMR)センサ
GMRセンサ① 開発の歴史
・1988年 Fe/Cr金属多層膜におけるGMR効果(巨大磁気抵抗効果)
の発見:45%抵抗変化 20kOe,4.2K
〔磁性薄膜間に磁気的な結合がある〕
・1989年 Fe-Ni/Cu/Co多層膜 8%の抵抗変化 1kOe以下,室温
〔磁性薄膜間に磁気的な結合がない〕
・1991年 スピンバルブ膜の開発
・グラニュラ合金でのGMRの発見
GMRセンサ② GMR薄膜の構造(カップリングがある場
合)
例) (Fe3.0nm/Cr0.9nm)×60層
磁性層
H=0
非磁性層
(薄い)
H>0
非磁性層の厚さを適切に選ぶ
↓
磁性層同士が漏れ磁界により磁気的にカップリングする.
↓
反平行にスピンが並ぶ
GMRセンサ③ GMR薄膜の構造(カップリングが無い場合)
例) (Cu5.0nm/Co3.0nm/Cu5.0nm/Ni-Fe3.0nm)×15層
Ni-Fe(軟磁性)
Cu
Co
Cu
反平行
Hが小さいと
Ni-Feだけが磁界方向に向く
平行
Hが大きいと
Coのスピンも磁界方向に向く
GMRセンサ④ GMR効果の原理
■2電流モデル:
①スピンの向きが違う2種類の伝導
電子が,電気抵抗に関係している.
②伝導電子のスピンと磁性層のスピン
の向きが同じなら散乱しにくい.
逆向きなら散乱しやすい.
③散乱しやすい場合の抵抗R,
散乱しにくい場合の抵抗rとすると
r<<Rとなる.
↑の電子
r
R
R
r
↓の電子
④等価回路から,H=0の場合は,
合成抵抗は(r+R)/2≒R/2
H=Hsatの場合は,2rR/(r+R) ≒2r
⑤磁界をかけた時(平行状態)
の方が,抵抗が小さい.
H=0
H=Hsat
r
r
R
R
GMRセンサ⑤ GMRの特性
■結合型GMR膜
Co/Cu多層膜では,室温で65%の抵抗変化
■非結合型GMR膜
・小さな磁界で抵抗が変化
・大きな印加磁界が必要(10~20kOe)
・非磁性層の厚さを厳密に制御しないと
反平衡状態にならない.
・抵抗の変化値は小さい
・ヒステリシス特性が現われる
GMRセンサ⑥ スピンバルブ膜
交換バイアス:反磁性層の影響で,等価的に磁界ができる
Fe-Mn
(反強磁性層)
Fe-Ni(ピン層)
Cu(非磁性層)
Fe-Ni(フリー層)
H
小さな磁界で大きなMR効果
HDD用ヘッドとして実用
Fe-Mn7nm/Ni-Fe4nm/Cu2.2nm/Ni-Fe6.2nm
GMRセンサ⑦ グラニュラ膜
H
平行
単一磁区強磁性微粒子が非磁性金属微粒子中に分散
(Co-Cu,Co-Ag,NiFe-Ag) 磁性微粒子濃度:15~30%(体積比)
・磁界を加える前 平均的には反平行状態
・磁界を加えることで,平行状態になる
簡単に作れる
磁気抵抗の変化のために大きな磁界が必要