第六課 <練習> 三

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第6課
いのち
第六課
いのち
1959年に大学を卒業してラジオ東京(
TBS)に入社し、ラジオやテレビのデ
ィレクターとして活躍。勤めのかたわら
小説を書き続け、1962年に「子供部屋」
で文學界新人賞を受賞。1968年に処女短
安部昭(あべ あきら、1934-
篇集『未成年』を刊行。1970年、短篇「
1989 ):日本の小説家。海軍大佐
司令の休暇」で注目を集める。1971年、
の息子として広島県広島市に生まれ、 TBSを辞して専業作家となり、翌年藤沢
父の転勤に伴い、1935年春から神奈
市の南西部に位置する辻堂東海岸へ仕事
川県藤沢市に育つ。東京大学文学部
場を設け、自宅から自転車で通う。1973
仏文科に進んだが大江健三郎はほぼ
年、『千年』で毎日出版文化賞受賞。
同期、大学時代は学生演劇に熱中す
1976年、『人生の一日』で芸術選奨新人
る。
賞受賞。
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いのち
いぬアカシヤ:ハリエンジュ(針槐)の別名。北米原産の落葉高
木。日本には1873年に渡来した。用途は街路樹、公園樹、砂防・
土止めに植栽、材は器具用等に用いられる。
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源実朝(みなもとの さねとも
1192-1219):鎌倉幕府を開い
た源頼朝の子として生まれ、12
歳で鎌倉幕府第3代征夷大将軍
に就く。歌人としても知られ、
92首が勅撰和歌集に入集し、小
倉百人一首にも選ばれている。
家集として『金槐和歌集』があ
る。
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いのち
ルナール(Jules Renard,
1864 - 1910):フランスの小説
家、詩人、劇作家。その小説『に
んじん』は有名。簡素で日常的な
言葉を使いつつも、鋭い観察力を
から様々な優れた作品が生み出さ
れた。
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<新しい言葉>
1.私としては返答に窮する。
窮する:
①金や品物が足りなくて苦しむ。
○支援サイドの足並みの乱れで融資が途切れれば、ギリシャは即座
に資金繰りに窮する恐れもある。
○日本政府が福島第一原発の事故で使用済み核燃料の処理に窮する
なかで、原発大国のフランス政府がトップセールスで再処理を売
り込んできた格好だ。
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<新しい言葉>
1.私としては返答に窮する。
窮する:
②行き詰まって苦しむ。困りきる。
○先生は内容については口出しをせず、回答に窮する生徒がいると、
どのような教材で調べればよいかなどだけ助言をしました。
○久しぶりに会った人に「ずい分お見限りね」と言われると返答に窮
するが、「まだ生きてたの?」と言われると「すんません、まだ生
きてました」と会話を転がしてゆける。
※窮鼠猫を噛む:追い詰められた鼠が猫に噛みつくように、弱者も逃げ
られない窮地に追い込まれれば強者に必死の反撃をして苦しめる。
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<新しい言葉>
2.畜生のあさましさ、などという言葉が人間にはあるが、そうとばか
りは言えない。
あさましい:
①(心・性質などが)いやしくて嘆かわしい。さもしい。
○人のものを盗むとはあさましい根性だ。
②(姿・外形などが)みじめで見るにたえない。見苦しい。
○落ちぶれてあさましい姿となる。
畜生のあさましさ:
畜類の愚かさ。転じて、人間の心の卑しさ・醜さ・低劣さをいう語。
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3.ちょうど、人間の母親がわが子を見守るときの、満ち足りたような、放心し
たような表情で、ぼんやり見ている。
放心:「恍惚」の同義語。
①他の事に気をうばわれてぼんやりしていること。また、何も考えずにいるこ
と。
○すべてを出し切ることができたためか、演奏後はしばらく放心状態で、何
も考えられなかった。
○被害者の遺族は判決が言い渡される約1時間の間、うつむいたり涙目で宙
を見つめたり、放心状態のようだった。
○試合後は泣きじゃくった。負けた日に寮を出なくてはならない。放心状態
のまま荷物をまとめて実家に戻り、数日間、ぼんやりと過ごした。
②心にかけないこと。安心。
○何とぞ御放心下さい。
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4.親猫は、子供が皿の物を食べている間は、離れてじっと待ち、子供
が食べ終わると、その残り物にありつく。
ありつく:
長い間求めていたものをやっとのことで手に入れる。
○こうした無料ランチの名物はなんといっても「すしセレクション」
だ。外国人も日本食のファンが急増しているので、ちょっと遅くテ
ーブルにありつくと(食事時は大変に混雑するので)、品切れとい
う憂き目に遭遇する。
○この手の店は、初めて入るときは戸惑うことがある。何しろ人件費
などを節約しているため、食事にありつくまでにその店固有の“シ
ステム”がある。
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<新しい言葉>
5.子猫をたしなめる際には、親はどんなに柔かく子供をかみ、つめを引
っ込めた前足でどんなに手加減して子供をたたくか、決して折檻なん
かしたりはしない。
たしなめる:
非礼・不作法などを軽く叱る。よく ない点に対して注意を与える。
○乱暴な言葉づかいをたしなめる。
○函館家の食卓の風景が変わりつつある。パパは「少しずつおかずの数
が減っていないか?」とクビをひねる。ママは「お給料(地方税)が
減っているんですから、食費(人件費)を切りつめるのが当然です」
とたしなめる。
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5.子猫をたしなめる際には、親はどんなに柔かく子供をかみ、つめを引っ込めた前
足でどんなに手加減して子供をたたくか、決して折檻なんかしたりはしない。
手加減:
①手に持った感じや手に握ったぐあいで分量や程度をはかること。
○春を迎えると、斎藤進さん(83)、ヒロ子さん(79)夫妻は花摘みに忙しい。2
人で摘み、水で洗い、塩を振ってもむ。手加減と日数で違いが出て家伝の味とな
ります
②相手や状態に応じて、扱いの厳しさの度合いをゆるめること。てごころ。手勝手。
○機械設備問題であれ、管理問題、メーカーの問題であれ、徹底的に追及し、背後
に腐敗問題があれば、法に基づいて対処し、手加減はしない。
○問題を起こした組織が社会の信頼を取り戻すには、手加減せずに徹底的に調査し
たことを広く知ってもらう必要がある。
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<新しい言葉>
5.子猫をたしなめる際には、親はどんなに柔かく子供をかみ、つめを引っ込めた前
足でどんなに手加減して子供をたたくか、決して折檻なんかしたりはしない。
折檻:
〔漢の朱雲が皇帝を強くいさめて怒りをうけ殿上から引きずり降ろされたと
き、檻(てすり)につかまったためそれが折れたという「漢書(朱雲伝)」の故事
による〕厳しく戒めること。元々正当な理由で厳しく忠告することを意味してい
たが、現代では体罰や虐待の意味が強くなっている。
○風呂にも入らせなかったとされ、せっかんを恐れた彼女は自らベランダに出る
こともあったという。
○著者は息子への激しいせっかんをブログにアップした。ブログは炎上、「児童
虐待騒動」へと発展する中で、封印してきた自らの「過去」に「わたしは、見つ
かってしまった」と認識する。
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6.そして、遊び飽きると、その場にほったらかしにして、もう顧みもし
ない。
ほったらかす:
ほうっておく。ほったらかしにする。
○選挙となれば、店をほったらかしにして、仲間と企業回りを続けた
。
○病院は昔ほど、患者をほったらかしにしなくなった。風呂に入れな
くても、看護師さんがあかがきれいに落ちるよう、丁寧にふいてくれ
る。
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<新しい言葉>
7.運よく命拾いをして、からがらはい出したとかげもいるにはちがいな
いが、多くは逃げるに逃げられず、家具の後ろや敷き物の下で干物み
たいにからからになっている。
命拾い:
【いのちびろい】危ういところで命を落とさずにすむこと。比喩的に
危機を脱すること。
○実は、僕は今までに3回癌になったんですが、いずれも初期で、命拾
いをしました。
○乾ききった不毛の大地でも、生命力の強い野草は花をつけて育つ。こ
れを見つけた羊は食べて命拾いをするという「救いの野草」である。
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7.運よく命拾いをして、からがらはい出したとかげもいるにはちがいな
いが、多くは逃げるに逃げられず、家具の後ろや敷き物の下で干物み
たいにからからになっている。
からがら:
かろうじて。やっとの思いで。「命からがら」とは「何とか命だけ
は失わずにぎりぎりのところで」といった意味の言い回し。
○阪神大震災でもスマトラ沖地震でも、人々の顔には命からがら生き延
びた深い悲しみ、10歳も歳取ったかと思える苦痛が滲(にじ)み出
ていた。
○海岸に近く、福島第一原発から30キロ圏内にある実家は津波の被害
を受け、祖父母が命からがら逃げ延びた。
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<新しい言葉>
8.猫は、相手の思わぬ逆襲にたじろぐというよりは、むしろ閉口の体で
、しきりにその足を振ってとかげを落そうとするのだが、とかげは断
じて放さない。
蜥蜴:食性は動物食で、昆虫類、クモ、甲殻類、ミミズ等を食べるが、果
実を食べることもある。天敵はネコ、イタチ、アナグマ、ヘビなどの
肉食動物である。
第六課
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8.猫は、相手の思わぬ逆襲にたじろぐというよりは、むしろ閉口の体で
、しきりにその足を振ってとかげを落そうとするのだが、とかげは断
じて放さない。
たじろぐ:
相手の 勢いに圧倒されて、ひるむ。しりごみする。
○筆者のような転勤を繰り返してきた「根無し草」には、「住めば都
」の格言に共鳴するところもあって、東北の人々の故郷への愛着心の
すごさに、たじろぐ気持ちもある。
○不安定な雇用に直面する若い世代は、人生前半で働く場から排除さ
れ、仕事と結婚の扉の前でたじろぐ。
第六課
<新しい言葉>
8.猫は、相手の思わぬ逆襲にたじろぐというよりは、むしろ閉口の体で
、しきりにその足を振ってとかげを落そうとするのだが、とかげは断
じて放さない。
閉口:
手に負えなくて困ること。悩まされること。また、 そのさま。
○海外に行くと、コメのまずさに閉口する。帰国して食べるコメのう
まさは、日本人で良かったと実感させてくれる。
○赤道間近の太陽の恵を浴びて育ったタコノキの葉で手を切り、体を
容赦なくかむ得体の知れない緑色のアリの大群には閉口したが、それ
でも新しい大地で植物を手の中に感じる喜びが、痛みに勝った。
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9.窮鼠猫をかむどころか、とかげですら土壇場になれば、猫のような大
きな相手に必死で刃向かうものだと知って、内心拍手を送らずにはい
られなかった。
刃向かう:
刃物を持ったり、歯をむき出したりして、向かってゆく意から強
いもの、力のあるものに反抗して向かってゆく。逆らう。
○権力に真っ向から刃向う。
○父親がアルコール依存症、祖父や兄という存在がいない家庭育ちの
僕は、年長者を敬う感覚が育たなかったらしく、若いころは目上に刃
向かう傾向が強かった。
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10.猫は、小鳥を丸ごときれいに平らげてしまうから、くちばしも脚の
一本も残ってはいない。
平らげる:
残さないで全部食べてしまう。
○日本の学校給食で言うと、グラタンを平らげてサラダに移り、サラ
ダも食べ終わってから残ったパンにジャムやバターをつけて食べると
いった具合です。
○カウンターに座り、焼き餃子をほおばる。あまりにおいしくて、女
性の私でも3皿は平らげることができます。
○この日はバイキング形式の焼き肉で、4人分を軽く平らげたうえ、
すしにも手を伸ばし、試合前に控えたカロリーを摂取した。
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11.猫が草の中にうずくまって、生きたままのすずめを骨ごとばりばりとかみ砕
いている音を聞くと、そぞろに戦慄を禁じ得ないが、いっそさばさばした気
もしないでもない。
そぞろ:【漫ろ】
①そわそわして落ち着かないさま。何かに気を取られて目前のことに集中できな
いさま。
○夏休みが近いから、学生は気もそぞろで勉強に身が入らない。
②これという理由もなく、自然にそうなるさま。しらずしらず。
○『北斎漫画』は江戸のベスト・アンド・ロングセラーであった。題名にある
とおり、筆の赴くまま、そぞろに描いた四千余の図画は、百科全書的広がり
をもつ。
○近くの商店街では浴衣祭りも同時に開かれていて、浴衣姿の人たちもそぞろ
歩きを楽しんでいる。
第六課
<新しい言葉>
11.猫が草の中にうずくまって、生きたままのすずめを骨ごとばりばり
とかみ砕いている音を聞くと、そぞろに戦慄を禁じ得ないが、いっそ
さばさばした気もしないでもない。
さばさば:[副](スル)
態度や性格が、物事にこだわらずさっぱりしているさま。
○香里奈が演じる27歳の女性は、おおらかで、あまり物事にこだわら
ないさばさばした性格。男扱いされるのも全く気にしない役だ。
○私は見た目から「女性らしい」とか「ふわっとした感じ」と言われ
ますが、実は体育会系で結構さばさばしているタイプです。
○試合後、「勝負の世界だから負けは負け」と、谷垣はさばさばと話
した。
第六課
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12.私はもう一度外へ出ていき、庭じゅう猫を追い回して、ついに彼の
口からインコをもぎ取ることに成功した。
セキセイインコ:オーストラリア原産の小型のインコで、ペットとして
人気が高い。野性の体色が黄色と緑色のため、セキセイ(背黄青)と
いう名がついた。
第六課
<新しい言葉>
12.私はもう一度外へ出ていき、庭じゅう猫を追い回して、ついに彼の
口からインコをもぎ取ることに成功した。
もぎ取る:
奪い取る、無理に引っ張って取る、などという意味の言い回し。
「捥ぎ取る」と書く。
○子供達は赤く実ったイチゴに手を伸ばしてもぎ取っている。
○苦しい展開から1点をもぎ取る選手たちの姿はかっこいい。
○栗は木から実を直接もぎ取るよりも、落ちているのを拾った方が、
食べ頃でおいしいという。
第六課
<新しい言葉>
13.最初の銃声で、りすは、びっくりして滑り落ち、枝にとりつき、し
がみつく。
栗鼠:ネズミ目リス科の小型の動物で、尾が身体と同じ位長く、 大きく
フサフサしている。
第六課
<新しい言葉>
13.最初の銃声で、りすは、びっくりして滑り落ち、枝にとりつき、しが
みつく。
しがみつく:
力をこめて、強く取りすがる。
○テレビ映像によると、茶色に濁った水が市内中心部を勢いよく流れ、
電信柱や屋根にしがみつく人の姿がみられた。
○グローバル化が進む21世紀、自分でリスクをコントロールしながら人
生を設計する自由があれば、住宅ローンを払うために、あるいは年金を
もらうために会社にしがみつく必要はありません。
○いくら大手の企業でも、これからは国際競争で脱落することもあり得
るから、しがみつくつもりの会社から放り出されることも覚悟しておか
ねばならない。
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<新しい言葉>
14.そうして、悔恨が心の中をのたうつ、ともルナールは記している。
のたうつ:
苦しみもがく。 苦痛でころげまわる。
○昨年、牡蠣であたって夜中に救急病院に行きました。もうのたうつ
くらいに胃が痛くて死ぬかと思いましたが、1週間後には生牡蠣を食
べました。
○朝、いつものように目覚ましに叩き起こされた瞬間、頭痛にのたう
つ。とりあえず会社をサボることを決定するが、頭痛のせいで眠るこ
とができない。
第六課
<新しい言葉>
15.飼ってやるだけの情けは持ち合わせながら、一方では、心ならずも冷
血漢たるの不名誉に甘んじている。
持ち合わせる:
偶然持っている。身につけている。
○日本人に受け入れやすいかわいさと、中国人女性特有の力強さを持ち
合わせる中華系のモデルは、徐々にニーズが高まるとともに、中国から
の売り込みも増えているという。
○限られた資源の中から厳選した天然木ならではの風合いと豊かさを持
ち合わせる貼り物にはない本物の味わいを楽しめるフローリングです。
第六課
<新しい言葉>
15.飼ってやるだけの情けは持ち合わせながら、一方では、心ならずも冷
血漢たるの不名誉に甘んじている。
心ならずも:
自分の本意ではないが、やむをえず。
○懇願されて、心ならずもつぶれかけている会社の社長を引き受けた。
○心ならずも人を傷つけてしまうような発言を、してしまうことも、必
ずあると言っていいだろう。
第六課
<新しい言葉>
16.もの言わぬ彼らの不幸は、なんと我々人間の不幸に似ていることか、
空恐ろしいまでに!
空恐ろしい:
これから先のことを考えると、なんとなく不安で恐ろしい。
○その計画を考えただけで空恐ろしい気がする。
○近年の科学の発達ぶりには空恐ろしくさえなる。
○原発と同量の自然エネルギーを得ようとすれば、どれほど自然を削り
、太陽光パネルや巨大風車をつくらなければならないか。考えるだけで
空恐ろしい。
第六課
<言葉の学習>
1.そうして、自分は、子供がとかげで遊ぶのを眺めるともなく眺めてい
る。
~ともなく:
〔格助詞「と」・係助詞「も」に形容詞「ない」の連用形「なく」の
付いたもの〕動作・状態のはっきりしないさまを表す。
「眺めるともなく眺めている」とは特に意識して眺めるというわけで
はない様子で眺めていること。なんとなく見遣る、といった意味の言い
回し。
第六課
<言葉の学習>
1.そうして、自分は、子供がとかげで遊ぶのを眺めるともなく眺めてい
る。
~ともなく:
○雪が積もった朝は、誰が声をかけるともなく、午前6時半ごろから住民
が雪かきを始める。
○当時は家の近くにまだ「空き地」があって、近所の子どもたちが集まる
ともなく集まり、日が暮れるまで遊んでいたのだ。
○中学の時、落語家志望だった彼は、「当時、小料理屋のおかみさんやカ
ラオケスナックのおねえさんも、観察するともなく見ていました」と語
った。
第六課
<言葉の学習>
2.一方では、心ならずも冷血漢たるの不名誉に甘んじている。
~たる〔古語の断定の助動詞「たり」の連体形から〕
「冷血漢たるの不名誉」という表現は少し不自然。冷血漢「である(=
たる)」「という(=の)」不名誉、という意味でしょう。
①資格を表す場合に用い、「…である」の意を表す。
○直接的であれ間接的であれ、文学者は戦争に直面した時、最も根源的に
文学者たるゆえんを問われる。
○ニコチンの中毒者たる私は小説を書きあげたいために日記に創作メモを
書きとめた。
第六課
<言葉の学習>
2.一方では、心ならずも冷血漢たるの不名誉に甘んじている。
~たる〔古語の断定の助動詞「たり」の連体形から〕
②取り上げた事柄を、強調して、説明する意を表す。
○その表情たるまさしく鬼そのものであった。
○自衛隊法では「隊員たるにふさわしくない行為のあった場合」に、免職
、降任、停職、減給、戒告の5段階の懲戒処分ができると定めている。
第六課
<類語の学習>
1.放す・離す・放つ
「奇妙な鳴き声で子供を呼び、子供が行くと、目の前にぱっと獲物を放して
やる。」
「猫は、相手の思わぬ逆襲にたじろぐというよりは、むしろ閉口の体で、…
とかげは断じて放さない。」
放す:
(ほっておけば離れていく可能性のあるものの)拘束を解除して、離れ
行くに任せる。「放つ」に同じ。「放し飼い」。
特に次の場合に使う:
㋐単なる接触でなく、手などでがっちりつかんでいたものを離す場合。
㋑離した一方が、自由に動けるようにすることを暗示する場合。
(無生物でもよい。「風船を放す」「味噌汁にねぎを放す」)
第六課
<類語の学習>
1.放す・離す・放つ
「奇妙な鳴き声で子供を呼び、子供が行くと、目の前にぱっと獲物を放して
やる。」
「猫は、相手の思わぬ逆襲にたじろぐというよりは、むしろ閉口の体で、…
とかげは断じて放さない。」
離す:
(ほっておけば離れないものに)力を加えて離れさせる。離れた状態
に置く。離れるもの自体に離れようという意志はない。「引き離す」「
壁から離して設置する」
特に次の場合に使う:
㋐接触していたものを動かして間隔を空ける場合。
㋑近い距離にあったものを動かして距離を大きくする場合。
第六課
<類語の学習>
1.放す・離す・放つ
発問1:
自分の体を押さえつけている相手に「はなせ!」という場合、「離せ
!」と「放せ!」のどっちを使うのが適切だろうか。共同通信や朝日の
用語辞典では「握った手を離す」、「もう君を離さない」などの用例か
ら「離せ」のような気がするが、一方大辞林などの辞書では、「放す」
の項目に「握ったりつかんだりしていたのをやめる」とあり、「母の手
を放す」や「ハンドルから手を放す」の用例があるので、では「放す」
のほうか?と思ってしまう。
第六課
<類語の学習>
1.放す・離す・放つ
説明1:
接触されている(無理矢理触ってくる)のが嫌なら「離せ」ですが、
喧嘩のとき相手の体を押さえつけたのをはなすのなら、拘束されている
(動きの自由を奪われている)のが嫌だから、「放す」が適切だ。「握
った手を離す」を「握った手を放す」と書いてもいいが、相手が迷子に
ならないように手をつないでいたような語感になる。「もう君を放さな
い」だと、まるで監禁しているようだ。ハンドルは、運転のため一生懸
命にぎっているもので、はなすと車・自転車が勝手に動いてしまうので
、「放す」を使いたくなるのだ。
第六課
<類語の学習>
1.放す・離す・放つ
設問2:
「放す」と「放つ」の違いは何でしょうか。「釣った魚を池に放した
」と「釣った魚を池に放った」は同じ意味ですか。
第六課
1.放す・離す・放つ
説明2:
『新明解国語辞典』を引いてみると、
「放す」=
(1)握ったりつかんでいたりするのをやめる。
(2)捕まえていた動物・捕虜などを自由の身にする。
(3)(料理で)汁などに入れて、散らばらせる。
「放つ」=
(1)「放す」の雅語的表現。
(2)手元から(遠くへ)出す。
(3)追放する。となっている。
<類語の学習>
第六課
<類語の学習>
1.放す・離す・放つ
説明2:
『新潮現代国語辞典』では、
「放す・離す」=
(1)くっついているものや身近にあるものを、隔たるようにする。
(2)距離をおく。間をあける。
(3)つなぎとめていたものを解いて自由にさせる。
(4)(目を離すの形で)視線を別のところへ移す。
第六課
<類語の学習>
1.放す・離す・放つ
説明2:
『新潮現代国語辞典』では、
「放つ」=
(1)縛られたものや固定されたものを解いて自由にする、また、行かせ
る。はなす。
(2)声やひかりなどを出す。
(3)(屋や弾丸などを)うち出す。発射する。
(4)(「目を放つ」の形で)1.視線を遠くの方に動かす。目を離す。2.視線を
他のものへ移す。
第六課
<類語の学習>
1.放す・離す・放つ
• 「放す」「放つ」いずれも「束縛しているものを自由にする」という意
味は共通であるが。「放つ」には「手元から遠くへ出す」「そのままに
ほうっておく」という意味合いが含まれている。
• 「釣った魚を池に放した」は「釣った魚を池に放して自由にしてやった
」という感じである。
• 「釣った魚を池に放った」は「釣った魚を池に捨ててしまう」という感
じである。
第六課
<類語の学習>
1.放す・離す・放つ
• 鳥の場合は、「放す」だと「ほら、行きなさい」とトリを歩かせて地べ
たに「はなす」感じだが、トリには羽があって空に飛びますから、空に
向かって「それ、行け!」という感じが「放つ」なのだ。
• 「放す」より「放つ」のほうが「勢いがある」ので、「勢いよく飛び出
す鳥」や「虎」などには、「放つ」がよく使われる。「鳥を空に放った
」「鶏を庭に放した」「虎を千里の野に放つ」。
第六課
<類語の学習>
2.諌める・戒める・窘めるにおける誤用
諫める(いさめる):
目上の人の過ちを正すために、その人を戒めること。
誤用→
×目上の人が目下の人を戒めること。または、厳しく叱ること。
*元来、諫言(かんげん、諫めること)とは、忠義に逆らうことから自分
の地位や生命を引き換えにするほどの強い意志が必要であった。時代背
景が変わって目上・目下や忠義の意識が薄れてきたことから誤用される
ようになった。「戒める」(いましめる)もしくは「窘める」(たしな
める)とするのが相応しい。ただし、「窘める」も以下のような誤用が
ある。
第六課
<類語の学習>
2.諌める・戒める・窘めるにおける誤用
窘める(たしなめる):
主に目下の人に対して、軽く注意を促すこと。
誤用→×厳しく叱ったり、注意したりすること。*窘めるとは、軽く袖を
引く程度の注意の仕方である。
○リーダーが重大な過ちを犯しながら、改めなければ、フォロワーは心痛
む選択であっても自身の辞職をもっていさめる。
○「おいしいものを作るにはやっぱり時間をかけないといけない」と坂野
社長は言い、効率優先に流れるのを戒める。
○二宮和也(28)が自分の発言中にうっかり口を挟む相葉雅紀(28)
に対し「相葉さん、僕が話しているんですけど」とたしなめると、会場
から笑いが起きる。
第六課
<練習>
一、次の文の下線部を辞書で引いて日本語で説明した上、全文を中国語に
訳しなさい。
1.七夕伝説とは、天の川を境にして会えなくなった織女(しょくじょ)と牽牛(
けんぎゅう)が、七夕の夜にだけ、かささぎの翼を連ねて架けられた橋を渡り
、再会できるという悲恋物語である。
2.ゴボウといえば、根菜の代表格。それだけに、長くのびた茎に咲く花は、ゴボ
ウのイメージから、ほど遠く、見かけによらず華麗だ。
3.野球選手が体をいっぱいに伸ばし、地面すれすれで捕球した。観客席からは「
オー!」という驚きの声とともに、賞賛の拍手が巻き起こった。
4.大学生の栄太は、同級生の佳久に思いを寄せている。佳久のバイト先に出没し
、佳久の授業の空き時間を狙って図書館で待ち伏せる。
5.おとぎ話の世界の常連ともいえるウサギも、著者の手にかかると躍動感にあふ
れたキャラクターとしてよみがえる。
第六課
<練習>
二、次の下線部の意味が、例文と最も近い意味で使われている文を①、②
、③、④から一つ選びなさい。
1.猫が草の中にうずくまって、生きたままのすずめを骨ごとばりばりとか
み砕いている。
①著者は、依頼人の七割以上が在日外国人という現役ばりばりの弁護士
である。
②机の上に山積みになっているお菓子をばりばりと音をたてて食べてい
る。
③この数学者はばりばりと道を切り開く独創的な数学者と評される。
④スパッタリング加工により、繊維にステンレスを付着させても、繊維
本来の透湿性、通気性はほとんど変わらず、ごわごわばりばりすること
もない。
第六課
<練習>
二、次の下線部の意味が、例文と最も近い意味で使われている文を①、②
、③、④から一つ選びなさい。
2.敷きっぱなしの私の布団に、桃色の糞さえこぼした。
①優勝が決まった瞬間、彼女は、こみあげる感情をグッと抑え、涙をこ
ぼすことはなかった。
②妻は愚痴ひとつこぼさず母の面倒を見てくれました。
③電話口から聞こえる、わが子の可愛らしい声に、母親は思わず笑みを
こぼした。
④急いでいる時に限って子どもがミルクやお茶をこぼすなんて日常茶飯
事だ。
第六課
<練習>
三、次の文中の———部分に入れるのに最も適切なものを選びなさい。
①放す
②離す
③放つ
1.嘆き、憎しみなど強い負の感情を爆発させるハムレットは激しく生々し
く、だが目が離せない魅力を放つ。
2.同会は2002年度からホタルを人工飼育し、毎年5月、約3千匹を県
営水辺公園予定地に設けたホタル小屋に放つなどしている。
3.ある牧場では100頭の羊を放すと15日間で草を食べつくし、120
頭の羊を放すと10日間で草を食べつくします。
4.おはやしに合わせて逆立ちや片手を離す技が決まるたび、観衆はホッと
した表情で拍手を送った。
第六課
<練習>
三、次の文中の———部分に入れるのに最も適切なものを選びなさい。
①放す
②離す
③放つ
5.中嶋投手は球を放すタイミングや指のかけ方を、監督に教わった。
6.絶妙な上昇気流が吹いた時、凧を放すと、そのまますいっと空に昇っ
た。
7.父に「お母ちゃんの手を離すな」と言われて家を出て、母らと一緒に
錦糸町の祖母の家に向かった。
8.木肌が象牙のような光沢を放つ。その美しさは、川端康成も小説「古
都」でたたえたほどだ。
9.たいして期待をせずに本書を読み始めた。ところが、上下巻の長い小
説から目を離すことが出来なくなるほどひきつけられた。
第六課
<練習>
四、次の中国語を日本語に訳しなさい。
1.听说他在选择大学时本想报考美术学院,但遭到身为医生的父亲的强烈
反对,只好很不情愿地进了医科大学。
(大学選択の折、彼が美術学院を志望したところ、医者である父親に強く
反対され、心ならずも医科大学に進んだということでした。)
第六課
<練習>
四、次の中国語を日本語に訳しなさい。
2.茶叶根据种类与品质的不同其泡法也各异,冲泡者的技巧决定着好喝与
否。好茶叶泡得不好也会很难喝;而即使是不好的茶叶若泡得好也会很
好喝。
(お茶は種類や品質によって入れ方も異なり、お茶をいれる人の技量こそ
が、おいしさの決め手となる。おいしいお茶も、駄目な手にかかると
まずくなる。まずいお茶でも、上手な手にかかるとおいしくなる。)
第六課
<練習>
四、次の中国語を日本語に訳しなさい。
3.我的车子很脏,上面的污迹一般外行人无法洗掉,为了把车洗亮,今天
去了朋友开的一家洗车行。
(今日、素人では手に負えない程落ちない汚れのひどい車をピカピカにし
てもらう為、知人の洗車業者に依頼しました。)
第六課
<練習>
四、次の中国語を日本語に訳しなさい。
4.据说春节前夕从中国沿海工业城市返回内陆农村的外出务工者们,春节
过后,他们中的不少人都留在故乡而未返回到打工处,或许是因为城市
打工生活已经令他们疲惫不堪了吧。
(春節前に中国沿岸の工業都市から内陸の農村部へ帰郷した出稼ぎ労働者
は、大都市での出稼ぎ生活に疲れ果ててしまったのか、春節明けてか
ら多くが出稼ぎ地へ戻らず故郷に留まっているという。)
第六課
<練習>
四、次の中国語を日本語に訳しなさい。
5.昨天出了交通事故,所有的电车都停开,许多乘客都是想回也回不去,
我也是其中之一,因为要等到电车起动后才能回,回到家时已经过了10
点。
(昨日、交通事故ですべての電車がストップしてしまい帰るに帰られずと
いう方々がたくさんいた。 私もその一人で電車が動きだしてから帰っ
たので帰宅したのは10時過ぎた。)
THANKS