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ロジスティクス・ネットワーク
最適化
東京海洋大学
久保 幹雄
1
意思決定レベルによる分類
原材料
長
期
調達物流
ストラテジック
生産
工場内物流 輸送
配送拠点 配送
需要
地点
ロジスティクス・ネットワーク最適化
資源配分最適化
中
期
短
期
タクティカル
オペレーショナル
安全在庫配置
在庫方策最適化
生産計画最適化
ロットサイズ最適化
スケジューリング最適化
配送計画最適化
配送計画
2
ロジスティクス・ネットワーク設計
サプライ・チェイン全体を通したストラテジック(戦
略的)な意思決定
例
どこから原材料(もしくは部品)を調達するか,ど
の工場のどの生産ラインで生産するか
どの地点からどの地点にどのような輸送手段
(モード)で輸送を行うか
どこに工場もしくは倉庫を新設するか(もしくは移
転するか,閉鎖するか)
3
ロジスティクス・ネットワークの概念
図
生産拠点
調達費用
中継拠点
配送センター
顧客群
輸送費用
配送費用
原材料
or
部品工場
生産費用
在庫・中継費用
拠点維持費用
3段階モデル
あなたの会社では,1つの主力品目を2つの工
場で製造し,それを3つの倉庫を経由し,さらに4
つの顧客エリアに向けて出荷している.その品目
の年間の需要量は比較的安定しており,今後の
需要も同じような傾向だと予想されている.しか
し,現在のサプライ・チェインは,旧品目の流通
のために 10年以上前に作られたものであり,現
在の主力品目の需要量からみて,それが妥当だ
とは到底思われない.さて,どのようにサプライ・
チェインを改善したら良いだろうか?
5
工場-倉庫-小売店モデル
需要
20
供給
100
30
100
20
10
6
ロジスティクス・ネットワーク設計
の構成要素
グラフ


点:実際の供給地点,工場や倉庫などの施設,空港
港などの中継地点,工程や在庫保管地点などの総称
枝:点のペア.調達,生産,輸送などのサプライ・チェ
イン活動を表す.
品目:ロジスティクス・ネットワーク内を流れる「モ
ノ」.(製品になる前の部品,原材料,中間製品を
含む)
資源:工場内における機械や作業員,トラックや
船などの輸送機器,原材料や予算などを総称し
て資源
7
ネットワーク(有向グラフ)表現
使う枝のみ引く!
顧客エリア1
倉庫1
工場1
顧客エリア2
顧客エリア1
倉庫1
工場1
顧客エリア2
倉庫2
工場2
顧客エリア3
倉庫3
顧客エリア4
点
点
倉庫2
枝
工場2
品目
顧客エリア3
倉庫3
顧客エリア4
8
輸送費用データ
枝
工場1 倉庫1
工場1 倉庫2
変動費用(万円/単位)
10
30
工場2 倉庫2
20
工場2 倉庫3
10
倉庫1 顧客エリア1
8
倉庫1
倉庫2
倉庫2
倉庫2
顧客エリア2
顧客エリア2
顧客エリア3
顧客エリア4
15
9
16
30
倉庫3 顧客エリア4
10
9
最適解(2030万円)
顧客エリア1
倉庫1
工場1
点
50
点
30 顧客エリア2
倉庫2
枝
工場2
流量
20
20
20
10
顧客エリア3
倉庫3
品目
顧客エリア4
10
10
3段階モデル(固定費を考慮した場合)
前述の3段階モデルの例題において,既
存の工場や倉庫の閉鎖も検討することに
なった.工場や倉庫を開設するためには,
一定の固定費用が必要であると仮定した
とき,ネットワーク全体をどのように再設計
したら良いだろうか?
11
工場,倉庫の開設・閉鎖の決定
点
資源
点
枝
品目
生産ライン
資源
倉庫
資源
12
固定費用データ
枝
工場1(入) ->工場1(出)
工場2 (入)->工場2 (出)
固定費用(万円/単位)
1000
1000
倉庫1 (入)->倉庫1(出)
200
倉庫2 (入)->倉庫2(出)
倉庫3 (入)->倉庫3(出)
300
400
資源データ
資源
生産ライン資源
倉庫資源
上限
240
80
品目
冷蔵庫
冷蔵庫
資源使用量
3
1
13
最適解(4930万円)
14
なぜ最適解が必要か?
厳密解法
最適解を出す保証があるアルゴリズム
ただし,難しい問題(NP-困難問題)の場合には
時間がかかる(もしくは計算が終了しない)ことも
ある.
Bad News: サプライ・チェインのほとんどの問題
はNP-困難
ヒューリスティクス(近似解法)
最適解の保証がないアルゴリズム
ロジスティクス・ネットワーク設計の費用は膨大
(0.1%の削減でも大きい)+比較的解きやすい
15
->厳密解法を用いる
ヒューリスティクスがうまくいなかい例
顧客1
倉庫1
工場1
50,000
3
0
需要量
4
5
顧客2
5
4
需要量
100,000
2
1
工場2
2
倉庫2
≦60,000
4
顧客3
需要量
50,000
16
最も近い倉庫から補充する方法
顧客1
倉庫1
工場1
50,000
3
0
需要量
4
5
顧客2
5
4
需要量
100,000
2
1
工場2
2
倉庫2
≦60,000
4
顧客3
需要量
50,000
17
最も近い倉庫から補充する方法
倉庫1
工場1
顧客1
足りない分は
工場1から運ぶ
50,000
2×50,000
顧客2
5×140,000
100,000
工場2
2×60,000
≦60,000
工場・倉庫間
700,000
120,000
小計 820,000
1×100,000
倉庫2
4×50,000
倉庫・顧客間
100,000
100,000
200,000
小計 400,000
顧客3
50,000
合計 122億円
18
最も安い経路(工場-倉庫-顧客)を選択する方法
顧客1
倉庫1
工場1
50,000
3
0
需要量
4
5
顧客2
5
4
需要量
100,000
2
1
工場2
2
倉庫2
≦60,000
4
顧客3
需要量
50,000
19
最も安い経路(工場-倉庫-顧客)を選択する方法
顧客1
倉庫1
3×50,000
工場1
50,000
0×100,000
5×40,000
5×50,000
顧客2
100,000
工場2
2×60,000
倉庫2
1×100,000
50,000
≦60,000
工場・倉庫間
200,000
120,000
小計 320,000
顧客3
倉庫・顧客間
150,000
250,000
100,000
小計 500,000
合計 82億円
20
倉庫2から顧客3への輸送費用が半額のとき
顧客1
倉庫1
3×50,000
50,000
工場1
0×50,000
5×90,000
4万->2万
顧客2
100,000
工場2
2×60,000
≦60,000
工場・倉庫間
450,000
120,000
小計 570,000
1×100,000
顧客3
倉庫2
2×50,000
倉庫・顧客間
150,000
100,000
100,000
小計 350,000
50,000
増えている!
合計 92億円
21
さらに倉庫2から顧客1への輸送費用を5000円にしたとき
顧客1
倉庫1
2万->0.5万
50,000
工場1
0.5×50,000
顧客2
5×140,000
100,000
工場2
2×60,000
≦60,000
工場・倉庫間
700,000
120,000
小計 820,000
1×100,000
顧客3
倉庫2
2×50,000
倉庫・顧客間
25,000
100,000
100,000
小計 225,000
50,000
さらに増えている!
合計 104.5億円
22
Excelソルバーによる求解
変化させるセル
輸送費
w1
w2
輸送量
w1
w2
供給|需要量
費用計算用
4
2
3
2
4
1
0
60000
60000
60000
c1
50000
0
50000
50000
c2
90000
10000
100000
100000
0
120000
150000
0
360000
10000
0
5
p1
140000
0
140000
200000
0
0
c3
c2
c1
p2
p1
p2
5
2
c3
0
50000
50000
50000
入量-出量
0
0
0 510000
100000 230000
目的関数 740000
23
Excelソルバーの設定(1)
目的関数のセルを指定
倉庫の入量=出量
工場の供給量上限
需要は必ず満たす
24
Excelソルバーの設定(2)
線形モデル,
非負数を仮定を
チェックする!
25
感度レポートの解釈
双対変数の最適値のこと
制約条件
セル
$B$8
$C$8
$D$8
$E$8
$F$8
$H$6
$H$7
名前
p1
p2
c1
c2
c3
w1 入量-出量
w2 入量-出量
計算
潜在 制約条件 許容範囲内 許容範囲内
値
価格
右辺
増加
減少
140000
0
200000
1E+30
60000
60000
-1
60000
90000
10000
50000
3
50000
60000
50000
100000
4
100000
60000
90000
50000
5
50000
10000
50000
0
0
0
60000
140000
0
3
0
10000
90000
工場2の生産量上限60000を1単位増やすと総費用が1減る
制約を90000まで増やすか,10000まで減らすと解が変わる
26
例題の最適解
倉庫1
工場1
顧客1
3×50,000
0×140,000
50,000
4×40,000
顧客2
5×50,000
100,000
工場2
2×60,000
倉庫2
1×60,000
50,000
≦60,000
工場・倉庫間
120,000
小計 120,000
顧客3
倉庫・顧客間
150,000
160,000
250,000
60,000
小計 620,000
27
合計 74億円
多期間モデル
前述のモデルにおいて,品目の需要が夏場を
ピークとした季節変動をしていることが判明した.
そのため,繁忙期の需要に対して残業で対処す
るのか,ピーク時前に作り置きをしておくのかが
新たな問題になっている.コンサルティング業者
からは,いっそ新しい設備と夏場だけレンタルし,
ピーク時の需要をまかなえばという提案を受けて
いるが,社内からは,ピーク時以外では設備の
稼働率が悪いので採算がとれないのではとの声
もあがっている.さて,どのような意思決定を行え
ば良いだろうか?
28
残業か作り置き在庫か新規設備か?
新規設備の上限
需要量
生産量上限(資源制約)
期
作り置き
在庫
残業
生産量
生産量一定
29
3種類の資源として表現
通常生産資源
費用
固定費用=0円,変動費用=100円
資源利用可能量=80万単位
残業生産資源
固定費用=0円,変動費用=120円
資源利用可能量=60万単位
新規設備資源
固定費用=1500万円,変動費用=80円
資源利用可能量=160万単位
生産量
30
最適解
第3四半期:残業
第2四半期:残業
31
組立・分解の考慮
部品展開表 BOM(Bill Of Materials),レシピ(装置産業)
組立
分解
32
部品展開表を考慮した
ロジスティクス・ネットワーク設計
33
最適解
34
在庫の取り扱い
輸送中在庫:輸送時間,輸送量に依存:変
動費用に含める.
サイクル在庫:サイクル時間を与えること
による近似
作り置き在庫:多期間モデルで考慮
安全在庫:需要のばらつきを表す変動比
率を与えることによって近似
35
輸送中在庫費用
輸送中在庫費用
輸送費用
30日
1日
変動費用に,1日・1品目あたりの在庫費用×輸送日数を加える.
36
サイクル在庫
発注量
需要
在庫
固定
サイクル時間
時間
37
サイクル在庫費用と
輸送頻度のトレードオフ
サイクル在庫 大
サイクル在庫 小
3日一度
毎日
サイクル在庫費用=エシェロン在庫費用×サイクル時間/2
38
作り置き在庫と残業のトレードオフ
需要量
生産量上限(資源制約)
期
残業
生産量
生産量一定
在庫
39
安全在庫量の計算
品切れ費用
安全在庫費用
安全在庫量 安全在庫係数 標準偏差 リード時間
需要の分散
変動比率
を導入(品目ごとに同一と仮定)
需要の平均
標準偏差 需要の分散 なので
安全在庫量 安全在庫係数 変動比率リード時間  需要の平均
40
プロジェクト実施の手順(1)
プロジェクトの範囲の策定
 自社内のみか,サプライ・チェイン全体か?
 最終製品の流通のみか,製造も含めるか,調達まで
含めるか?
 施設は所有するか,リースするか?
 国内のみか,国際サプライ・チェインも含めるか?
単位の策定
 基本となる時間単位は?
 多期間か短期間か?
 フローの単位は?
 費用の単位は?
プロジェクト実施の手順(2)
データ収集
 品目データ
原料,中間製品,最終製品
どの程度品目を集約して扱うか?
 地点データ
原料(部品)供給地点,工場,倉庫,顧客(地域)
どの程度地点を集約するか?
 需要データ
顧客,品目毎の需要量
 調達データ
供給地点,品目毎の調達費用,容量,容量超過費用
プロジェクト実施の手順(3)
データ収集(続き)
 輸送費用データ
料率表,距離データ,過去の支払い実績などから推定
 製造データ
部品展開表,資源(工場,生産ライン)の固定費用,(品
目ごとの)変動費用,容量,容量超過(残業)費用を活動
基準原価計算(ABC: Activity Based Costing)や過去の
会計データなどを利用して推定
 倉庫データ
固定費用,変動(ハンドリング)費用,容量
プロジェクト実施の手順(4)
仮実験 (ベースラインモデル)
 構築したモデルおよび収集したデータの妥当
性を確認するための予備的な実験(意思決定
者の直感や会計データとの整合性)
小規模最適化
 一部の品目,地域のみを対象とする.
全体最適化
 すべての変数を意思決定の対象にして最適
化を行う.
プロジェクト実施の手順(5)
もしこうなったら分析(What if analysis)

経営環境の仮想的な変化をWhat if... (もしこうなった
ら)型の問いをできるだけ多くすることによってモデル
を様々な観点から適用する.
 もし(最適化によって閉鎖させられる)倉庫を開設することに
しておいたらどうなるだろう?
 もしある顧客へのサービスを(最適化によって得られたもの
と)異なる倉庫から行ったらどうなるだろう?
 もしある地点間の輸送費用が交渉によって下げられたらどう
なるだろう?
 もしある倉庫のリース費用が交渉によって下げられたらどう
なるだろう?
プロジェクト実施の手順(6)
感度分析


データを変化させたときの目的関数(総費用)
の変化をみるために系統的な実験を行う.
過去のデータを用いた(時系列)感度分析
トレードオフ分析

サプライ・チェイン全体の評価に必要な費用以
外の要因(主なものではサービスレベル)との
トレード・オフを調べる.
プロジェクト実施の手順(7)
優先順位分析


最適解と現状とのずれを,どのような順番で
実施していくかを分析する.
例:倉庫(A)の移転,倉庫 (B)の閉鎖,工場の閉鎖が最適
(14億2千万円削減可能)と出たとき
1.倉庫への顧客の割り振りの変更 (10億円削減)
2.倉庫(A) の移転 (3億円削減)
3.工場の閉鎖 (1億円削減)
4.倉庫(B) の閉鎖(2千万円なので実施しない)
ロジスティクス・ネットワーク最適化
(意思決定支援)システム WebDesign
点データ
資源データ
品目データ
枝データ
期データ
点・品目データ
枝・資源データ
品目・資源データ
品目対データ
枝・品目・資源データ
枝・品目・資源・期データ
パラメータデータ
最適ネットワーク
最適在庫配置
在庫方策
戦略/戦術的
意思決定
ユーザーとの対話
(what if 分析, シナリオ分析)
48
まとめ
施設の立地問題
ロジスティクス・ネットワーク設計問題
ヒューリスティクスの危険性
多期間モデル
複雑な費用の表現法
プロジェクトの手順
意思決定支援システム
49