Transcript EC09W02

シラバス説明(重要事項のみ)
到達度目標
1.溶液中の酸化還元反応を理解し、反応式を自由に書くことができる(基礎能力)
2.熱力学の知見に基づき電位の概念を理解し熱力学データを用い電気化学反応を予測することができる(基礎能力)
3.電極反応が起こる際の溶液中のイオンの振る舞いを理解し、電気化学反応実験データの解析ができる(応用力)
4.電気化学が実社会でどのように応用されているか理解し、近未来の技術開発に対して電気化学がどのように寄与でき
るかを考えることができる(総合理解とデザイン能力)
授業計画
1週目
シラバスの説明、本講義の概要、
電気化学序論(1) 電気化学系の姿
電気化学序論(2) 物質のエネルギーと平衡
電極平衡論(1)
標準電極電位1
電極平衡論(2)
標準電極電位2
電極平衡論(3)
標準電位-pH図(プールべー図)
テスト1 1-5週の内容
電極速度論(1)
電位が決める電流1
電極速度論(2)
電位が決める電流2
電極速度論(3)
物質輸送が決める電流1
電極速度論(4)
物質輸送が決める電流2
電極速度論(5)
分極曲線とエバンス図
テスト2 7-11週の内容
電気化学の応用(1)電解液
電気化学の応用(2)固体電解質
電気化学の応用(3)電池
テスト3 13-15週目の内容
2週目
3週目
4週目
5週目
6週目
7週目
8週目
9週目
10週目
11週目
12週目
13週目
14週目
15週目
16週目
1
(1章 p.1-20)
(2章 p.21-36)
(3章 p.37-48)
(3章 p.49-56)
(プリント配布)
(4章 p.57-65)
(4章 p.66-72)
(5章 p.73-84)
(5章 p.73-76)
(プリント配布)
(8章 p.122-136)
(9章 p.137-147)
(10章 p.149-166)
材料物性工学科
材料電気化学
2009年度
シラバス説明(重要事項のみ)
成績評価方法
100点満点で評価する。テスト1とテスト2はそれぞれ35点満点とし、テスト3は30点満点とする。3回のテストの合
計が60点以上の場合、合格とする。
履修上の注意
1
2
3
4
5
テストを除いて9回以上の出席が必要(未満の場合は、非履修とみなす)。
理由のいかんに関わらず、いずれのテストも再試験、追試験は行わない。
授業中の質問は歓迎。オフィスアワーなどでの質問も適宜受け付ける
授業の変更や緊急時の連絡は授業中またはK棟1階の掲示板で通知をする。
不合格の場合再履修しても良い。その場合、過去の出席状況や成績など一切の履歴は参照しない。
学習・教育目標との対応
[材料工学コース]この授業の単位修得は学科の学習・教育目標の、 (D):材料工学の専門能力 、(E):デザイン能力 、に対
応している。またJABEE基準1(1)の(d)(2):材料のプロセスに関する基本の理解、(e):種々の科学、技術および情報を利
用して社会の要求を解決するためのデザイン能力、に対応している。
[応用物理コース]この授業の単位修得は学科の学習・教育目標の、 (F):応用物理専門能力に対応している。またJABEE基準
1(1)の(d)(1b)に対応している。
関連科目
[コース共通]この科目の履修にあたっては1学年開講の熱力学と物理化学Aの内容を理解していることが前提となる。
[材料工学コース]2学年次開講の物理化学Bの内容を理解していることが前提となる。
[応用物理コース]2学年次に材料工学コースで開講の物理化学Bの内容を理解していることが前提となるため、修得を目指す
学生は同科目の内容を自習して理解する必要がある。これはなかなか困難なことと思われるので注意。
その他
[他学科履修について]応用化学科の学生諸君は類似内容講義が応用化学科で開講されていますのでご遠慮願います。
オフィスアワー
水曜の13-15時
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材料電気化学
2009年度
情報提供の方法 http://www.mmm.muroran-it.ac.jp/~isaos
まだ何もありませんが、ここ
から休講など講義に関する
連絡およびファイルを提供し
ます。
「案内役」を使う場合もある
ので両方チェック
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材料電気化学
2009年度
第1章
電気化学系の姿 / 1.2
事実を見よう:水の電解(p.3)
気泡がみえる限度
この実験から分かる大切なこと(時間無限大で測定)
・同じ電流を得るために必要な電圧は溶液で異なる
・それは、溶液によって電気伝導度が異なるため
・電気伝導度の高い希硫酸でも1.23V以下では何もおこ
らない。
なぜこの説明では「時間無限大」とことわったのか?
この「1.23V以下では何もおこらない」のはなぜか?
4
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第1章
電気化学系の姿 / 1.3
電極界面のワンダーランド(p.5)
なぜ前の説明では「時間無限大」とことわったのか?
スイッチオンで
・沖合(バルク)でイオンはランダムに存在
・ただし電極表面近くでは
Pt表面の負電荷を中和するためH+が濃化
濃化したH+の外側でHSO4-が濃化
しようと動く=電荷が運ばれる=電流が流れる
これはちょうど
・コンデンサと抵抗からなる電気回路のスイッチを
ONにしたときに、コンデンサに電荷がたまる際の電
流のふるまいと同じ
実際には
・電極界面の電気容量Cは200μF
・希硫酸の電気抵抗Rは50Ω
・これよりτ=0.01s
であり、無限といっても一瞬で電
流はほぼゼロになってしまう
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第1章
電気化学系の姿 / 1.3
電極界面のワンダーランド(p.5)
両極のあいだに1 Vをかけ、0.01 s経過した後の電極界面の様子
荷電粒子の分布に極端な偏り、電極近くに+(-)粒子が濃化し、そのとなりに-(+)粒子が濃化=電気二重層
荷電粒子濃度
約1023 cm-3
=電気抵抗は
非常に小さい
荷電粒子濃度
約1023 cm-3
=電気抵抗は
非常に小さい
荷電粒子濃度 約1020 cm-3
=電気抵抗は非常に小さい
=荷電粒子は熱的にランダム
運動
Pt表面の荷電粒
子が吸着できる
場所の1/20位を
占有=表面は
がらあき
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第1章
電気化学系の姿 / 1.3
電極界面のワンダーランド(p.9)
イオン濃度が減少すると何がおこる
=0.1M希硫酸水溶液と純水における
電解挙動の違いの説明
電気二重層は電解質濃度の平方根に反比例して厚くなる
荷電粒子濃度は電解質濃度が減少すると減少
する=電気抵抗が大きくなり、溶液内に電位差
が生じる V=IR
同じ電流(=反応速度)を得るには、荷電粒子の移動の
ため+荷電粒子の放電のために余分な電圧が必要に
なる
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第1章
電気化学系の姿 / 1.3
電極界面のワンダーランド(p.12)
電極界面に電圧を与え電解が起こるまでの様子をまと
めると・・・
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第2章 物質のエネルギーと平衡 / 2.1〜2.2(p.21)
2.1(イントロ)
水素の燃焼反応、2H 2  O2  2H 2O を例に3つの視点を理解する
A 反応はなぜその向きに進むのか? (平衡論)2〜3章で扱う
B 反応はどんな速さで進むのか? (速度論)4〜6章で扱う
C 反応はどのように進むのか? (反応論)この講義の範囲外
2.2 エネルギーとその表現
素電荷
:
()1.602 1019 C
アボガドロ数
:
6.02 1023 mol 1
電子1 molの電荷:
()96485 C mol 1
1 molの電子が-1 Vから0 Vの状態に移動するとき
放出するエネルギー: ()96485 C
mol 1 1V
 ()96485 J mol 1
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第2章
物質のエネルギーと平衡 / 2.3
化学変化とエネルギー(p.23)
2.3.1 エンタルピー変化
「結合の組み換えが生む
エネルギー変化」
または
「物質その物がもつ
エネルギーの変化」
反応原系
生成系
2.3.2 エントロピー変化
「粒子の集合状態に起因するエネルギー
関連状態の変化」(エネルギーではない)
2.3.3
標準ギブズエネルギー変化
Go  H oTSo
これが反応が自発的に進むか( G  0 )
どうかを判定する最も大切なパラメター
ただし、反応原系が100%が無くなり、
100%が生成系に変化するとき
o
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第2章
物質のエネルギーと平衡 / 2.4
標準生成ギブズエネルギー  f G(p.26)
o
2.4.1 化合物 / 2.4.2 水溶液中のイオン
「標準状態で最も安定な単体(H2, C,・・)から
o
化合物1 molを作るのに必要な仕事が  f G 」
 f Gro
また、
「標準状態でもっとも安定な単体(H2, C,・・・)
o
0 」
について、 f GSS
さらに
「水素イオンH+について、 f GH  0 」
o
 r Go
以上定義と約束から反応ギブズエネルギー変化は
  f Gop   f Gro
o
rGo    f Gi,op    f Gi,r
(i:反応物,p:生成物)
i
i
これは電荷をもたない物質でもイオンでも成立
 f Gop
2.4.3 反応の向きの判定
「いま仮定した反応の  f Go を計算し」
rGo  0 ならば反応は自発的に進行し、
r G
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o
が大きいほど生成物が安定である
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第3章
2.5.1 活量 /
物質のエネルギーと平衡 / 2.5
2.5.2
化学ポテンシャルと平衡(p.29)
化学ポテンシャル
前のセクションでみたように
「標準状態で最も安定な単体(H2, C,・・)から
o
化合物1 molを作るのに必要な仕事が  f G 」
反応物
(reactant)
なので、
「生成した物質が純粋な化合物1 molでないとき
(混合物のとき)何らか補正が必要である」
そこで、
化学ポテンシャル, 、および
活量,a を用いる
i  io  RT lnai(o:標準化学ポテンシャル)
X
生成物
(product)
最終的に混合物の生成
標準化学ポテンシャルを用い、
o
o
Go   f Gi,op   f Gi,r
 i,o p  i,r
i
i
i
i
活量とは:「その物質を供給する能力で0-1の間の数で
あり次元をもたない」
・希薄な溶質を溶解した溶媒(水など)、純粋な固
体、金属中の電子の活量はいずれも1
・理想気体は圧力、希薄溶液は濃度から単位を除い
たものが活量に等しい。固体ではモル分率
12
の供
給能力
は半分
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第3章
物質のエネルギーと平衡 / 2.5
化学ポテンシャルと平衡(p.29)つづき
2.5.3 つりあいの条件
前のセクションでみたように
「無限時間の反応の結果混合物が生成(平衡)」
平衡点
では、
「どこまで反応が進んで平衡になるのか?」
原系
その条件は、
原系ギブズエネルギー=生成系のギブズエネルギー
生成系
X
ここで
原系のギブズエネルギー=原系の化学ポテンシャル和
であり、いま反応 pP  qQ Ä xX  yY を考えると
p  P  q  Q  x  X  y  Y (x  X  y  Y ) (p  P  q  Q )  0
がつりあいの条件になる。化学ポテンシャルを用い
x  
o
X


 RT lnaX  y  Yo  RT lnaY
 p  
o
P


 RT lnaP  q  Qo  RT lnaQ

 aXx aYy 
(x  y )  (p  q )  RT ln  p q   rGo  RT ln K  0  rGo  RT ln K
 aP aQ 

o
X
o
Y
o
P
o
Q

すなわち、標準反応ギブズエネルギーを用いて、平衡
における組成(活量の比)を求めることが出来る。
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第3章
物質のエネルギーと平衡 / 2.5
化学ポテンシャルと平衡(p.29)つづき2
2.5.4 ΔG0値と平衡のかたより
前のセクションのまとめ
「すなわち、標準反応ギブズエネルギーを平衡における組成を求めることが出来る。」
を、例を用いて確かめる
o
1 単純反応 A Ä B でBが99.99%生成して反応が終了するときの rG298
rGo  RT lnK  0.008314(kJ mol 1 K 1 )  298.15(K)  ln 0.9999 0.0001 23(kJ mol 1 )
99%生成して反応が終了するなら?
rGo  RT lnK  0.008314(kJ mol 1 K 1 )  298.15(K)  ln 0.99 0.01 11(kJ mol 1 )
2


塩の溶解 AB(s) Ä A (aq)  B (aq) の溶解度積Ksp と飽和溶解度 S

あまり溶解しない塩であれば、A, Bの活量の代わりに濃度(たとえば [A ] )を用いてよい。
また、定義より純粋な固体の活量は1である。よって


rGo  RT lnKsp  0.008314  298.15  ln [A ][B ]  2.48lnS2 (kJ mol 1 )
となる
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