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海洋学会の東日本大震災
と原発事故への対応:
日本の海洋科学専門家は大震災
にどう関わろうとするのか
海洋学会震災対応ワーキング・グループ
モデリング・サブグループ 池田 元美
問いかけ
• 福島周辺の海洋における放射性元素の分布は
どうなっているか
• 放射性核種の性質で海洋汚染に関わる重要な
ポイントは何か
• 大気放出汚染および原子炉周辺からの汚染水
はどのように海洋を汚染するか
問いかけ・続
• 沿岸・陸棚上の海洋流動(潮汐、風成循環、密
度流)はどうなっているか
• 少し沖合の黒潮親潮混合域の流速分布はどう
なっているか
• 植物・動物プランクトン、食物連鎖などに伴う生
物過程が及ぼす放射性元素の吸着・濃縮・堆積
への役割は何か
• 放射性元素が海洋生物に及ぼす影響は何か
• 原子炉の鎮静化に関する最悪のシナリオは何
か
東日本大震災と原発事故に関する
日本海洋学会の活動について
日本海洋学会
会長 花輪 公雄
• 放射性物質による汚染を継続的に調査
• 情報収集と発信、調査の組織化、提言を通じ
て社会に貢献
• ワーキンググループを設置
日本海洋学会 「震災対応ワーキンググル-プ」 機能図
想定される連携・協力先
目 的
関連分野・関連学会
大気科学,陸水学,土壌学,
生態学, 放射線医学,核物理
学,原子力工学・・・
・ 沿岸環境モニタリングを推進する
・ 周辺国への責任を果たすため、外洋
の汚染状況の調査を推進する
・ 国内外研究機関等との連携・協力を
進める
・ 海洋環境に関する情報開示を進める
・ 政策決定者に対して提言を行う
国内・国外研究機関
JAMSTEC,気象研,水産総
合研究センター,大学,自治体
研究機関,WHOI,NOAA・・・
関係府省庁・地方行政機関
内閣府,文科省,農水省,国
交省,経産省,環境省,厚労
省,総務省,外務省,都道府
県庁・・・
民間機関・市民・マスコミ
東京電力,一般市民,NPO,
国際NGO・・・
各サブワーキンググループの具体的所掌事項



外洋・沿岸・港湾
等における観測体
制の構築
調査・観測航海の
企画立案と調整
数値
モデリング
分析・
サンプリング
観測・監視

海 水・堆 積物・ 海
洋生物等の試料
採取・分析方法の
検討
放射能分析の体
制把握と効率的
運用のための調
整




予測モデル提唱
シミュレーション結
果の比較検討と
解説
カギ とな る プロ セ
スの掌握
観測へのフィード
バック
広報・
アウトリーチ
生態系


津波・流出化学物
質などの影響に
関する情報収集
食物連鎖等を考
慮した評価・研究
手法の提案





新情報の検証
既存情報の集約
マスコミへの対応
インターネットを通
じた情報発信
講演会の企画と
開催
震災にともなう海洋汚染に関する
相談会 (4月14日)
発起人:池田元美、植松光夫、蒲生俊敬、
田中教幸、谷口旭、山形俊男
(含む日本学術会議SCOR分科会委員、
ICSUアジア太平洋域委員)
後援:日本海洋学会、日本学術会議
• 相談会の趣旨説明
• 各項目に関する情報提供および質疑
• 調査項目と方法への提言
• 研究プロジェクトの立ち上げと変更
大気への放射性物質放出
土壌に降下・堆積した
セシウム134と137
原発から大気へ放出
風に流され
雨で地表に降下
ヨウ素131は半減期
が短いのでなくなった
核実験時代から現在まで
1Bq/liter
• Western North Pacific
海洋への放射性物質放出
福島第一原発南放水口付近における海水中放射性元
素量の時間変化。縦軸は放射性元素量(Bq/ml)(東京
電力の公表データより)
海洋観測データ
10Bq/liter
福島沖におけるセシウム-137の表面分布。スケール
は Log[Bq/L]。黒点は観測点(東京電力および文部
科学省公表データより)
流れ場
4月上旬に投入されたアルゴフロートの軌跡。色はフ
ロート投入後の経過日数を表す。矢印は海流の速さと
向きを表す(JAMSTEC公開データ)
観測点
提案する沿岸観測(赤線)と広域観測点(案)
Governmental Monitoring Cruises for
Radioactive Materials from Fukushima I Nuclear
Power Plant
Schedule of Research Cruises for Study of
Great East Japan Earthquake Impacts
海産物への影響
いくつかの問題点
海底は浅い
陸棚循環(汚染物質
が表層から海底に、
そして逆も)
食物連鎖による濃縮
放射性元素の動き(水産研究センター資料)
データ採取
• プロトコル:放射能測定用海水
一試料につき2リットルボトル2本採取
直ちにビニール袋でシール
実験室へ持ち帰り、2リットル海水試料に硝酸4mlを
加え保存
• 分析ネットワーク
放射線医学総合研究所、気象研究所、JAMSTEC、各
大学(東京大学、富山大学、金沢大学、東海大学、
日本大学、北海道大学、弘前大学など)で分析チー
ムを構成
沿岸域モデル
• ROMS(Regional Ocean Modeling System)、FVCOM
(有限要素モデル)
• モデル領域:東西100km、南北300km、解像度
1km×1km
• 厚さ200m程度の海洋上層に20層。この上層より下
には静止海水を仮定。水深が上層より浅い海底地
形のある部分では、地形に準拠したシグマ座標
• 外洋境界条件:月平均気候値の海面高度と密度
• 再解析気象データ(風応力)で駆動。気象庁の全球
モデルGSMを境界条件とした領域モデル
(NuWFAS)で求めた風応力も試している
• 潮汐流は弱い
沿岸域モデル・続
• 放射性物質は原発から放出する量を決め、その
移流と拡散を計算
• 放射性物質は沈降しないと仮定、海水中の濃度
については充分な精度を持つ。
• 大気を経由する降下を加えることも可能
沿岸域モデル・続
シミュレーション結果
沿岸域モデル・続
• 評価
• 沿岸近くの放射性物質濃度の相対的変動は、
観測値と整合しており、モデルが適切であること
を示している。
• 海洋モデルを駆動する気象再解析データは、解
像度の高いものがより妥当な海洋循環を作る。
• 沖に向かう量は実際より少ない。その理由は、
黒潮・親潮混合域に取り込まれる流動場を表現
できていないため。
黒潮・親潮混合域モデル
• JCOPE:放射性物質の移動・拡散を含まないモデ
ルとして
• モデル領域は日本東海岸から日付変更線あた
りまで、解像度は3km×3kmも可能
• 海面高度計・水温のデータを用いて現実の循環
場を再現する
• 福島沖で4月上旬に粒子を入れて、時間変化し
ていく海洋循環場を予測しつつ、粒子追跡する
• 放射性物質の分布は、3週間で300km以上東に
移動している部分もある
• このモデルでは沿岸近傍の循環を再現すること
が難しく、今後の課題である
JCOPE2のシミュレーション結果(5月1日)色は濃
度を示す(文部省公表データ)
今後の方針
• 沿岸域(10~30km幅)の風成循環と河川水などに
よる密度流、海底地形の効果、および現場の速度・
密度構造による鉛直混合
• 沿岸モデルと中規模渦解像のできる近海域モデル
をネスティング
• データ同化を用いて海域結合モデルのシミュレー
ション
• 放射性元素:観測データと比較してモデル内の分
布を修正し、水平フラックスを求める。放出源の情
報と比較して、放出源とモデルの双方を検証
• 沿岸域のモデルを検証し、不確かさを特定する、モ
デル相互比較(Model Inter-comparison)
今後の方針・続
• 砕波帯に伴う沿岸流と離岸流が放射性元素
移動に及ぼす効果
• 放射性元素のふるまい:セシウム137を中心
に、植物プランクトンへの付着、食物連鎖によ
る濃縮、堆積物への吸着を見積もる
• 海洋循環場にも注意し、表層から浅い海底へ
のEkman流、鉛直対流などに伴う堆積物吸着
• 河川と土壌を通じた放射性元素の海洋流入
を見積もる
Ocean Science Meeting Session
• Title: Consequences of the March 11, 2011 earthquake,
tsunami and Fukushima nuclear power plant on the
ocean
• Feb. 2012 in Salt Lake City
• Ken Buesseler (Woods Hole Oceanographic
Institution)
• Motoyoshi Ikeda (Hokkaido University)
放射性元素に関する質問
• 半減期の長いセシウム137は海水中で沈降し、
どのくらい海底にたまるか?
• 生物への吸着や吸収はどのくらいか?
• 生物濃縮は重要か?
• 河川や土壌水を通じた海洋流入はあるか?
• 他の放射性核種で注意を払うべきものは?
放射性元素専門家の答え
• セシウム137は水によく溶けるが、粘土鉱物に
吸着もする。沿岸では海底に沈みやすい
• 植物プランクトンへの吸着は20倍くらい
• 魚介類の濃縮係数は1000くらい。高次の捕
食者ほど遅れて影響が現れる
• 河川水に溶けて海へ、土壌に付着し、底生動
物に吸収される
• 原子炉地下から土壌を通じて海洋流入する?
• 海底の堆積層が余震ですべりおちる?
海洋科学の専門家は
• 予防原則をとる(90%確かでなくても、危険性を
指摘する)
• それに止まらず、確かめるために研究しよう
(もっと研究費が必要)。ただし、研究者のエゴで
「研究実施」を主張してはだめ(信頼性を失う)
• リスク・アセスメントには確度を付ける責任
• 多くの人が納得できるデータと解釈を開示し、規
制が必要であるのか、決めてもらう
• 非専門家が理解できる言葉で語り、論理的思考
に基づいた選択を可能にする。