海外帰任者活用システムと 組織的成果に関する一考察

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Transcript 海外帰任者活用システムと 組織的成果に関する一考察

脱・欲しい時だけ
~戦略的視野による海外帰任者活用を目指して~
21期B班 高尾祥之
石森俊行 王尽 小宮未帆 佐藤塁
鈴木稔輝 董梅花 森村典子 王浩
国際経営における人的資源の有効性
国際的競争優位を獲得するため、ヒトの重
要性が増してきている
・激変する国際環境にアジルに対応
・現地市場に適応することによる効果とグループ
全体の規模の経済性による効率を同時達成
・グローバル人的ネットワークの構築による学習
これらに対応する戦略を策定するには一国内に
偏った視点だけでは限界がある。
そこで国際ビジネスセンスを身に付けた海外帰任
者が重要となる。
問題の所在
海外帰任者はその赴任過程においてマネジメント能力な
どのグローバル経営に必要不可欠な能力を身に付けてく
る(日本経団連、2004:Black、1999)
にもかかわらず
海外帰任者の経験・能力を活用しようとする企業の組織
的取組の不在
→経験・能力が帰国後に活かせないことにより、帰任者の
不満が生じる(JIL2003、石田1990、Black1999)
→これらは帰任者の離職や転職につながる
・有望な人材の流出
・自社への脅威
日本企業では子会社でポストが空いたら派遣するとい
った人が欲しい時だけ派遣が続いている。
帰任者の職務態度について
多くの帰任者は、海外赴任で得た経験や能力が
活かせないことに不満を感じている(石田199
0,JIL2003)
→これは個人の組織に対するネガティブな態度(離
職・転職)につながる
⇒経験・能力が活用されるにはポジティブな態度
(積極性)が深く関連する。

以上より、経験・能力の活用の指標として
帰任者の職務態度を観測できる組織コミッ
トメント・職務満足度を採用
職務態度の構成概念
組織コミットメント
Ⅰ:継続的コミットメント
・ その会社にとどまりたいか
Ⅱ:価値的コミットメント
・ その会社の価値観に共鳴しているか
Ⅲ:情緒的コミットメント
・ 会社に自発的に貢献しようとしているか
職務満足
Ⅰ:個人要因
・ 仕事そのものの達成、承認、挑戦などに満足しているか
帰任者の経験・能力を活用するためには

組織が帰任者の経験・能力を的確に認知する必要
⇒帰任者に対する「公正な評価」

組織が帰任者の経験・能力を活かせる場を提供する
必要
⇒帰任者に対する「適切な配置」

組織が帰任者の経験・能力を活かしやすい環境を整
備する必要
⇒帰任者に対する「再適応」
これら三要素を海外帰任者活用システムとする
公正な評価
海外派遣者は赴任中、本国本社と情報疎
遠になるため、評価の正確性(Dipbye&de
Porba)、公平性が欠如
 公平性を確保することにより不満は軽減
⇒不満が軽減されれば職務態度向上→活
用につながる

以上より「公正な評価を」海外帰任者活用
システムの一要素として抽出
適切な配置

長期的視野(ローテーション等)に基づいた帰国
後の配置(垂直・水平双方)、個人と組織のコミュ
ニケーションによる相互理解を行う必要性(石田
1994、1999)
→これにより、納得感が増し、経験・能力が より活用し
やすくなる

山本(2002)は、コミットメントとキャリア発達の関
係性について言及
→長期的キャリア発達を認識するとコミットメント向上
以上より「適切な配置」を海外帰任者活用システ
ムの一要素として抽出
再適応

海外帰任者は帰任後、本国での職務や職
場環境になじめない場合が多い
(JIL2003、日本経団連2004、中井1999)
→これらに対処するための組織による再適応支
援が必要(石田1994,1999、永井1999、中井
1999、日本経団連2004)

再適応支援によって個人は組織に大事に
されていると感じ組織コミットメントは向上
(Gregersen1992)
以上より「再適応」を海外帰任者活用シス
テムの一要素として抽出
海外帰任者活用システムの構成概念
<公正な評価>
Ⅰ:コンピテンシー管理制度 (平野2000,2003)
Ⅱ:多面的な評価(平野2000,2003)
Ⅲ:目標管理制度(根本1989石田1994,1999、永井1999、竹内 2002、平野
2000,2003)
Ⅳ:派遣中のやり取り(石田1994,1999、日本経団連2004)
Ⅴ:フィードバック(石田1994,1999、平野2000,2003、竹内2002)
<適切な配置>
Ⅰ:戦略的視野(根本1989、2000石田1994,1999、永井1999、竹内2002、日本経
団連2004)
Ⅱ:個人と組織の相互理解(石田1994,1999、日本経団連2004)
<再適応>
Ⅰ:再適応プログラム(石田1994,1999、永井1991,1999、中村
2002、Black1991,2002,日本経団連2004)
Ⅱ:国際志向の組織文化(Stewart1986,Gregersen1992)
仮説

H1:組織による帰任者の「公正な評価」は
帰任者の職務態度に正の影響を与える

H2:組織による帰任者の「適切な配置」は
帰任者の職務態度に正の影響を与える

H3:組織による帰任者の「再適応」は帰任
者の職務態度に正の影響を与える
研究のフレームワーク
海外帰任者活用システム
公正な評価
職務態度
H1
組織コミットメント
適切な配置
H2
H3
再適応
職務満足度
仮説を検証するために

我々は海外現地法人を持つ企業に、訪問
調査、郵送アンケート調査を行った(有効
回答数299人)。

アンケート結果に基づき、SPSS 12.0J for
Windows により解析を試みた。
公正な評価のパス図
e1
赴任中の経験の評価の影響度
e2
赴任中に得た能力の評価の影響度
e3
赴任中の努力の評価の影響度
e4
本国の同僚からの評価の影響度
e5
目標達成の評価への影響度
e6
赴任中の同僚からの評価の影響度
e7
職位昇進基準の公開
e8
e9
e10
.94
.90
.87
.63
.61
e38
コンピテンシー
評価
.47
職務満足感
.40
.54
.48
.79
.74
.61
人事考課への異議申し立てのし易さ
.51
e39
フィードバック
.70
価値的
コミットメント
.21
人事考課要因の把握度
e12
目標設定機会の頻度
e13
赴任中の業務連絡頻度(本国上司)
e14
目標理解度
e15
赴任中の私的連絡頻度(本国上司)
e16
赴任前部署の業務状況把握度
e17
プロセス評価の軽視
e18
評価者の多面性の欠如
.64
.63
.60
.59
.50
e40
.22
派遣を通した
コミュニケーション
継続的
コミットメント
-.19
.47
e41
.21
.78
.39
多面的な評価
.37
.81
.80
.75
.61
.03
本国本社の派遣者状況把握
能力を活かす機会
e19
仕事に挑戦できる機会
e20
仕事の達成感・充実感
e21
キャリアステップ
e22
.70 海外勤務経験の活用機会
.13
人事考課過程の説明度
e11
.86
.85
.80
.76
.73
情緒的
コミットメント
.79
.78
.76
.48
.66
.63
.57
.47
e23
配属先
e24
金銭的な処遇
e25
組織規範の受け入れ
e26
組織風土への適合
e27
経営理念への共鳴
e28
組織目標への共鳴
e29
継続願望
e30
依存
e31
処遇への不安
e32
ステップアップの機会
e33
会社への貢献意欲
e34
人並み以上の努力
e35
運命共同体
e36
自己犠牲
e37
図2 公正な評価のパス図
適切な配置のパス図
e26
職務満足感
.55
e1
人材育成としての海外派遣
戦略的視野
e2
海外勤務の昇進への影響度
.47
e27
.55
価値的
コミットメント
e3
帰国後の配属先希望の影響度
e4
帰国後の配属先協議の頻度
e5
帰任後の配属先の予想
.80
.34
e28
.62
相互理解
e6
派遣業務の一貫した支援
継続的
コミットメント
.59
能力を活かす機会
e7
仕事に挑戦できる機会
e8
.81
仕事の達成感・充実感
e9
.77
キャリアステップ
e10
.73 海外勤務経験の活用機会
.73
配属先
.49
.48
.51
.86
.86
.59
e29
.34
情緒的
コミットメント
e11
e12
金銭的な処遇
e13
.82
組織規範の受け入れ
e14
.81
組織風土への適合
e15
.75
経営理念への共鳴
e16
.61
組織目標への共鳴
e17
.78
継続願望
e18
.78
依存
e19
処遇への不安
e20
ステップアップの機会
e21
会社への貢献意欲
e22
.63
人並み以上の努力
e23
.57
運命共同体
e24
.47
自己犠牲
e25
.77
.48
.64
図3 適切な配置のパス図
再適応のパス図
e28
.05
e1
帰任プログラムの実施
e2
帰任プログラムの有効性
e3
帰任プログラムの期間
.92
.86
職務満足感
.50
再適応
プログラム
e29
.75
.13
海外で得たノウハウの伝授
.59
.76
海外勤務経験者の要職への登用度
.72
e6
革新姿勢
.58
e7
相対的外国人比率
e8
相対的海外勤務経験者比率
国際志向の
組織文化
.82
.81
.76
.62
e30
e5
継続的
コミットメント
.78
.78
.77
.48
.30
e31
.29
.43
能力を活かす機会
e9
仕事に挑戦できる機会
e10
仕事の達成感・充実感
e11
キャリアステップ
e12
.73 海外勤務経験の活用機会
.67
価値的
コミットメント
e4
.87
.87
.82
.78
.75
情緒的
コミットメント
.69
.68
.55
.45
e13
配属先
e14
金銭的な処遇
e15
組織規範の受け入れ
e16
組織風土への適合
e17
経営理念への共鳴
e18
組織目標への共鳴
e19
継続願望
e20
依存
e21
処遇への不安
e22
ステップアップの機会
e23
会社への貢献意欲
e24
人並み以上の努力
e25
運命共同体
e26
自己犠牲
e27
図4 再適応のパス図
考察
・以上より我々の提示した海外帰任者活用シス
ステムが帰任者の職務態度に正の影響を与
えることが実証された
・ 中でも特に帰任者の職務態度に正の影響を
与えるのは以下の五つである。
①赴任中に得た経験や能力を考慮に入れた評価
②人事考課過程の公開と説明
③帰国後の配属先希望の考慮
④人材育成の一貫としての派遣
⑤帰任者を積極的に活用する姿勢
企業は上記五点に留意し帰任者活用シ
ステムを構築すべき
インプリケーション

今こそ、グローバル競争優位に立つため派遣
者の帰任後を見据えて派遣業務を立て直す
べき
すなわち
脱・欲しい時だけ派遣
海外帰任者の有効性に気づき、戦略的
視野に立った帰任者活用システムの構
築が求められる