高い時間分解能を持ったマルチアノード型光電子増倍管の開発

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高い時間分解能を持った
マルチアノード型光電子増倍管の開発
~cross-talkによる時間分解能悪化の改善
名古屋大学 高エネルギー研究室
宮林 善久
概要





光電子増倍管L16の開発目的
L16の特徴
Multi-channel-photon-hit時の時間分解能の悪化
Cross-talk対策と対策成果
Summary
1
マルチアノード型光電子増倍管の開発目的
TOP(Time-Of-Propagation) counterのR&D用光検出器として必要
TOP-counter:チェレンコフ光を用いた新しいタイプの粒子識別装置
L16-PMT
(R5900U-00-L16)HPKを開発
L16の優れた性能
1.
2.
3.
一次元の position sensitive(1mm幅×16mm×16ch)
時間分解能 (σ<100psec)
single photon が検出可能
L16は上記の性能を生かしてTOF-counterなどへも応用できる。
そのためPMT単体の開発としても意味がある。
今回、未解決だったcross-talkについての改善を行った
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L16の特徴
メタルパッケージ型PMT
 優れた位置検出
 優れた時間特性
L16のその他の性能
 Q.E. : ~25%(バイアルカリ λ~400nm)
 Gain : 6×10 6(PMT HV:900V)
 収集効率 : ~50%
Pulse Height
rise time ~0.6ns
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L16の高い時間分解能
single photon 照射時のsignal 分布
ADC(電荷情報)分布
Single photon peak region
Single photon peak region でcutした時の
TDC(時間情報)分布
Single photon peak のADC regionで、
時間分解能 ~60psec
第1、第2ダイノードへの印加電圧値を
既存品の二倍に改良した効果4
PMT評価のためのset-up
Cross-talkの影響を評価するためにMulti photon照射を行った
Multi photon 照射
PMTあたりに同時にhitする光子数n
n(
光子数
)>1
pmt
16ch
1ch
Pulser の性能
jitter ~±10psec
 λ ~ 420nm
 10kHzで発光

Filterの濃さを変えてPMTにあたる光量を調節
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Multi photon 照射時の波形
第8chのみ照射した時と全面照射した時の第8chの波形の違い
第8chのみ照射
全面照射
第8ch
第8ch
Slit on
Slit off
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Multi photon を全面照射した時には異常な波形が出力される ← cross-talkの影響
Cross-talk
第8chのみ照射した時の波形の様子
第8ch
第8ch以外のch
Slit on
あるチャンネルに光子が入射し出力が出ると
他の全channelに特性が反転した信号波形が誘起される
全面照射時には、この誘起信号(cross-talk)が
本来の信号と合わさって波形が著しく変化する
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Multi photon 照射時の時間分解能
光量を変化させたときの第8chの時間分解能のふるまい
(Single photon peak での時間分解能)
Slit off
Threshold –80mv
PMT H.V.1000v
第8ch
Slit on
第8ch以外のchannelに
hitする光子数大
第8ch
全面照射した時
第8ch以外のchannelにhitする光子数が上がる程、第8chに
寄与するcross-talkが増え、時間分解能が急激に悪化する
第8chのみ照射した時
時間分解能の悪化は見られない
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Cross-talkの原因
最終ダイノード・アノード付近の簡略回路図
(1)の経路にPMTの構造上無視できないインダクタンスLの効果があり
最終ダイノードの電位を回復するのに時間がかかる
リアクタンスの大きさはcross-talkの波形の周期から見積もると数nHである
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「Cross-talkは最終ダイノードの電位のゆれによりアノードに誘起される変位電流」
Cross-talk対策
最終ダイノード・アノード間にシールド電極を設置した
Ground 電位
メッシュ製
ねらい:「構成されるキャパシタンスを減らし最終ダイノードから
10
アノードに誘起されるcross-talkを減少させる。」
Cross-talk対策の成果(1)
第8chのみ照射した時の第8ch波形とcross-talk波形
Cross-talk対策後
Cross-talk対策前
第8ch
Crosstalkのch
S =
Nc-talk
対策前
180mv
30mv =6
信号channelのpulse height
1つのchannelからのcross-talk
から
対策後
140mv
5mv =28
が
に改善 11
Cross-talk対策の成果(2)
光量を変化させたときの時間分解能のふるまい
cross-talk対策前と対策後の比較
(Single photon peak での時間分解能)
Threshold –40mv
PMT H.V.900v
PMT全面に
Hitする光子数
Cross-talk対策型はPMT全面にhitする光子数が増加しても
12
時間分解能が悪化しない
Summary
L16-PMTにおいてcross-talk対策による時間分解能の向上に成功した
Cross-talk対策として最終ダイノード・アノード間にshild電極を設置
その結果、
■
S =6
Nc-talk
から
S =
28
Nc-talk
に改善
 multi photon 照射時でも時間分解能が悪化しない
Single photon peak regionで、~75psec
 この高い時間分解能を持つマルチチャンネルPMTは
TOF counterなど、多くの局面への利用が期待できる。
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Cross-talk対策の副作用
 Gainが従来品の60%~80%に低下
 ADC分布に小山が生じる
対策前のADC分布
対策後のADC分布
 Efficiencyが対策前の80%以下に低下
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対策前と対策後のEfficiencyの比 (single photon全面照射時)