食品問題と報道

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Transcript 食品問題と報道

食品問題と報道
中田 宏貴
(指導教員:関谷直也)
問題意識
近年、食の偽装が相次いでいる。BSEを発
端とした雪印食品と日本ハムの牛肉偽装。
さらに2007年に立て続けにおきた消費期
限改ざんは、「偽装ドミノ」とまで呼ばれた。
問題は、偽装が発覚した後の対応である。
頭を下げるだけでなく、きちんとした社会的
責任をとることで、再起への道を切り開くこと
ができるのではないだろうか。そのことを、
企業側の視点に立って考えてみた。
論文の構成
まず近年に起きた食品に関する事件の流
れをまとめ、メディアに対する対応や社会的
影響を探った。
第1章・第2章では、近年に起きた食品事
件・事故の流れや報道のされ方をまとめた。
第3章では、2007年に起きた消費期限改ざ
んと偽装事件の流れをまとめ、その後の展
開について論じた。
近年の食品事件・事故
以下に食品に関する主な事件や事故をまとめた。
・1999年2月、所沢産茶葉に含まれていたダイオキシンに関す
るテレビ朝日報道により、埼玉県産野菜等の販売に影響。
・2000年6月、雪印乳業による低脂肪酸等の黄色ブドウ球菌毒
素による集団食中毒が近畿地方で発生。1万5千弱の患者
数。
・2001年9月、国内で初めてBSEの牛が発見され、食肉消費に
大きな影響。
・2004年1月、国内で鳥インフルエンザが発生。鶏肉消費が大
きく減少。
企業の社会的対応(1)
2007年の偽装や改ざんを起こした企業はどのよ
うな対応をしていたのか。
不二家
消費期限切れの牛乳を使用したなどの問題が発
覚した不二家の場合、消費者軽視の事実は日を追
うごとに明らかになっていったが、藤井社長は素早
く辞任を表明した。
白い恋人
また、消費期限の改ざんをした白い恋人は事件発
覚からの数日後からは、改ざんなどの事実は明ら
かにならなかった。不二家と同様に社長が辞任し、
外部からの登用を決めた。
企業の社会的対応(2)
ミートホープ
一方で豚肉を使ったひき肉を「牛ミンチ」として出荷していた
ミートホープは、「混ぜればわからぬ」といったなど田中社長
の発言が連日のように新聞やテレビで報道された。記者会見
で当初、田中社長は自らの関与を否定していたが、元社員ら
が社長が直接指示し関与しているとの報道がされると、取締
役である社長の長男に促され、田中社長は自らの関与を認
めた。
赤福
また、売れ残った製品を再包装して販売していた赤福は、
当初「売れ残りは焼却した」と説明したが、後に売れ残った商
品を回収し再利用していたことが発覚し、ウソを重ねた。また、
浜田社長が辞任をしなかったため、同社の体質に変化は求
めることはできなかった。
商品イメージと心理
白い恋人を例にとって考えてみよう。白い恋人がしたのは、
賞味期限を本来より1ヶ月先に付け替えるという行為だ。石
屋製菓の社内規定では「4ヶ月」としており、繁盛期や在庫が
膨らんだ場合は最大「6ヶ月」としていたことも明らかになった。
確かにこれだけを見ると偽装には変わりはないのだが、他の
事件よりも害は小さい。
しかし赤福は、売れ残った「赤福餅」を冷凍し、解凍した日
を消費期限とするという手のこんだ偽装だった。ましてや生も
のである。
このようにして、扱っている商品の部類によっても、その後の状
況は変わっていったということができるだろう。
復活した企業とそうでない企業
これまで述べたように、社会的対応や製品に対す
るイメージによってその後の展開が別れた。復活し
たのは不二家と白い恋人である。きちんとした社会
的責任を取り、数ヶ月以内に販売を再開した。
一方で復活できなかったのはミートホープと赤福
(1月24日現在)である。ミートホープは従業員を解
雇し、廃業となった。赤福は、今後販売を再開する
可能性があるが、社内の経営体制に変化はなく、
社長の責任は曖昧さから、今後の展開は不透明だ。
各企業の謝罪会見(一部省略)
企業名
事件内容
会見での説明
社長の責任
その後の状況
不二家
消費期限切れの牛乳の使用
など
当初から認め、謝罪
数日後に辞任
を発表
山崎製パンが業務
支援し、3月に販売
再開
ミートホープ
豚肉を使ったひき肉を牛ミン
チとして出荷
社長の関与は否定していた
が、その後に自らの関与を
認める
10月に逮捕
従業員は解雇され、
廃業
石屋製菓
白い恋人の賞味期限改ざん
事実を認め、謝罪
3日後に辞任を
表明
従業員の雇用は継
続し、11月に販売
再開
赤福
赤福餅の消費期限改ざん、
売れ残りを再利用
偽装の意図はなかったと説
明
自らは留任し、
役員を一新
製造・販売停止中
比内鶏
比内地鶏でないニワトリを使
用
失踪後、自らの指示を認め
る。
辞意を表明
全従業員を解雇し、
廃業
吉兆
生菓子の消費期限改ざんと、
牛肉偽装
会社ぐるみを否定し、販売
者に責任転嫁
社長が変わる
も内部者
民事再生法を適用
し、1月22日に営
業再開
結論
このようにして事件発覚からの対応と消費者の製品に対するイメー
ジをまとめていくと、その違いがみえてくる。2007年に起きた食品
問題は、社会の流れもあって大きく報道された。特にわれわれ消費
者の目がいくのは謝罪報道だ。そこからその後の存在意義を見出
すことができる。
つまり、きちんとした社会的対応をとり、事実を認め、社内に空気
を変えることができれば、その会社は復活することができるだろう。
その一方で、事実を小出しにすることでメディアに大きく取り上げら
れ、経営体制も変わらないままであれば、より印象が悪くなり、その
会社は社会的には認められないだろう。雪印やミートホープ、赤福
はその典型だ。それは食品業界だけではなく、すべての企業にいえ
ることだと考える。