人間と情報(環境ホルモン)

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環境ホルモンと私たちの暮らし
山梨大学大学院
医学工学総合研究部
鈴木
嘉彦
生命の維持に不可欠な恒常性と
それを支えるホルモン
個体の情報を伝える遺伝子
外部からの情報を処理する神経系
内部における臓器・細胞間の整合をはかるホルモン
脳における情報処理機能
自然言語の処理と活用
画像情報の処理と活用
ニューラルネットワークの特性
環境ホルモンの問題とは

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人や野生生物の内分泌作用を攪乱し、生
殖機能阻害、悪性腫瘍等を引き起こす可
能性のある内分泌攪乱化学物質( いわゆ
る環境ホルモン) による環境汚染問題
科学的には未解明な点が多く残されてい
るものの、それが生物生存の基本的条件
に関わるものであり、世代を越えた深刻な
影響をもたらすおそれがある
「奪われし未来」について1

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著者は、テオ・コルボーン、ダイアン・ドマノスキー、
ジョン・ピータソン・マイヤーズの3人。コルボーン
は動物学者で環境科学や野生生物にバックグラ
ンドを持つ他の2人が調査と叙述を担当している。
問題となっている化学物質と関連していると思わ
れる奇妙な現象の記述から物語は始まる。
★1952年にフロリダの海岸で鷲の生息数が激減
し、研究者は彼らが「つがい」になることに興味を
失っていることを発見。約80%が不妊であった。
「奪われし未来」について2

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★1980年代、フロリダのアポプカ湖でワニが卵を
生まなくなった。18%しか産卵せず、それも孵化
後数十日以内にみんな死んだ。上流の農薬工場
の排水が原因であることは推定できたが、これ
ほど激しい影響をおこす作用については不明で
あった。
★1990年代、地中海でイルカの死体が、スペイ
ンから始まって、カタロニア、マヨルカ、フランス、
イタリア、モロッコでそして翌年にはギリシャで、
という風に次々と発見された。彼らは肺機能をや
られていた。PCBが検出されたが正常なイルカ
の2倍程度であった。
「奪われし未来」について3

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★1992年、デンマークのコペンハーゲンの
研究者が、1940年代から80年代の間に睾
丸癌が3倍になったことと精子の数減少や
奇形増加との関係を疑って調査した。
★世界から研究論文61報を集めて行った
調査で「1938年から1990年の間にヒトの
精子の数が約半分になっている」という結
果がえられた。
体内の情報をかく乱する物質
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人間の身体は、いろいろな機能を備えた装
置や臓器が総合的な調和によって恒常的
な働きを保っている。
恒常性を保つために、多くの情報が送受さ
れている。
情報伝達の仕組みは、神経系、内分泌系、
免疫系に大別される。
毒性評価と暴露評価
一般毒性
 ①急性毒性
 ②慢性毒性
遺伝毒性
発がん性
生殖発生毒性
 ①催奇形性
 ②生殖に及ぼす影響
暴露評価
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1)生成量と環境への放出
2)環境汚染/大気
3)環境汚染/水系
4)食品汚染
5)人体暴露と人体汚染
ダイオキシンの暴露評価

ダイオキシン類のリスク評価を行うため、
我が国における推定を行った。
(l)我が国における一般的な生活環境を想
定して、平均的な暴露状況は、0.3~
3.5pg/kg/dayと推定された。ただし、個人
の暴露呈は、地域や食生活の違いにより
相当の幅を持っている。
偏りのある環境の推定
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1) 魚からの摂取が大きい場合を想定してその
暴露状況の推定を行ったところ、その結果は、
3.6(1.9~5.3)pg/g/dayであった。
2) 我が国におけるダイオキシン類の主要な発
生源の一つと考えられるごみ焼却施設の周辺環
境において暴露状況の推定を行ったところ、その
結果は、1.8~5.1pg/kg体重/日であった。
総合的な暴露の状況
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1)及び2)の結果から、我が国における現在の
ダイオキシン類による汚染状兄においては、平
均的な暴露レベルより高い暴露を受ける条件に
おいては5pg/kg体重/日程度の暴露があり得る
ことが推察された。
なお、(1)及び(2)の暴露評価全体について、暴
露評価に必要な一般環境、食物等に含まれるダ
イオキシン類のデータが必ずしも十分な状況で
はない中での推定であり、今後のデータの蓄積
が必要である。
わが国におけるTDI再評価
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現時点でもFaqiら(1998)の低用量で観察された
精子指標(1日精子産生、精巣上体精子数)に対
する影響については異なる実験間での整合性は
解決されておらず、Ohsakoら(2001)の報告に認
められる毒性学的意義も弱いと考えられる。よっ
て、いくつかの影響を基に1999年に算定した最
低の毒性発現体内負荷量:86 ng/kgは、今回の
再評価においても妥当であると考えられる。
したがって、現時点でも1999年に我が国で設定
されたTDI:4 pgTEQ/kg/dayを変更する十分
な科学的知見は得られていない。
あなたはどうしますか
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自然界には存在しなかった多様な化学物
質が便利な生活を支えています。
化学物質も、直接・間接に我々の体内に
取り込まれます。
化学物質によっては、内分泌系をかく乱す
るものもあります。
現代社会の生活スタイルをどのように替え
ていけば良いよいのでしょう。
地球は限られた星
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環境ホルモンだけでなく、地球は周りが真
空で、ものが出入りしない星です。
必要なものを外から手に入れることはでき
ない星です。
ガソリンや化学物質の原料である化石燃
料は、使えばなくなります。
大量に消費される現代社会の生活スタイ
ルを続けてよいのでしょうか?