JASMINE計画シリーズ∼銀河系バルジの解明を目指して

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Transcript JASMINE計画シリーズ∼銀河系バルジの解明を目指して

2010.2.20 巨大BHと銀河の共進化ワークショップ
JASMINE計画シリーズ
~銀河系バルジの解明に向けて~
JASMINE:赤外線位置天文観測衛星
---Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration--国立天文台JASMINE検討室 郷田直輝
Nano-JASMINE
Small-JASMINE
JASMINE
1
目次
§1
§2
§3
§4
位置天文学とは?
位置天文観測の歴史と現在、そして今後
JASMINE(ジャスミン)計画シリーズ
小型JASMINEによる銀河系バルジの
解明
2
§1 位置天文学とは?
◎位置天文学(アストロメトリ)
天の川銀河内の星の天球上の位置、
距離(年周視差)、横断速度(固有運動)を
ど
測定するもの。
れ
だ
け
遠
く
に
あ
る
の
?
3
★天体までの距離が重要な理由
1.天体の地図=>分布、構造が分かる
星団や銀河系内の星などの分布、構造
2.みかけの量(相対量)を真の量(絶対量)に
変換可能
例1:星の明るさはみかけのもの。
本当は明るくても非常に遠くにあれば、暗く見える。逆に本当は暗
くても近ければみかけは明るい。
例2:星が天球上を動く速さもみかけのもの
実際は速度が速くても遠ければ、天球上をあまり速く動かない。
4
天体までの距離+横断速度+(視線速度)
6次元位相空間情報
天文学の基本情報!
地味だけど非常に重要なもの
例えば、
バルジ内の星々の6次元位相空間情報(+化学組成)
バルジの力学構造、構造形成史、さらにはバルジ内の星形
成史、巨大BHの形成・進化の情報が含まれる
従って、精度良い距離や固有運動測定は
天文学の重要分野
5
星までの距離の直接的測定法
★年周視差法
星までの距離を直接的に測る方法としてもっとも信頼のおける方法
○方法の原理=>三角測量
地球の公転を利用=>年周視差の測定
6
距離単位の定義
年周視差が1秒角
(1度角の3600分の1)
となる天体
その天体までの距離を
1パーセク(pc)と定義
(parallax second)
(図は理科年表のHPより)
1pc=約3.09×1013km=約2.06×105天文単位=
約3.26光年(1光年は、光の速さで1年で到達する距離)
7
固有運動=>天球上では直線運動
実際の星の天球上での動き(年周視差+固有運
動)
8
一般には、年周楕円+固有運動の組み合わせ
そこからのずれ
連星系
惑星系
重力レンズ効果
距離や運動速度以外にも興味深い物理量も分かる。
9
実際の星の年周視差の大きさ
非常に小さい!
もっとも近い恒星であるケンタウルス座プロキシマ・ケンタウ
リでも、その年周視差は0.77秒角(4.22光年)
ケンタウルス座
アルファ星は、リギル・ケンタウルス
(4.4光年)。プロキシマは、その
アルファ星の連星の一つ。
10
§2 位置天文観測の歴史と現在、そして今後
★星の位置測定精度の歴史
紀元前150年:Hipparchus
1000秒角
1838年:Bessel ~0.1秒角
年周視差の発見!
(地動説の直接的証拠)
1988年:FK5 (Fifth Fundamental Catalogue) ~0.03秒角
1997年:Hipparcosカタログ~0.001秒角(1ミリ秒角)
11
★可視光による観測の状況
○地上
19世紀まで:天文学(の観測)
主に位置天文学
大気による星像中心のゆらぎ、観測装置の重力変形が
ネック
スペースでの観測へ
ヒッパルコス衛星(1989~1993: ESA)
可視光(Vバンド)で9等級より明るい星に対して
年周視差の誤差~1ミリ秒角(1mas)
10% の距離の誤差 @100pc(330光年)
固有運動の誤差 ~1mas/yr
1kpc(3300光年)先の星の速度誤差 ~5km/s
“天文学の革命”
12
330光年以内は、天の川銀河全体に比べたらまだまだ
ごく近傍にすぎない
13
★そこで、21世紀
1997年:ヒッパルコスカタログ
~0.001秒角(1ミリ秒角)
*太陽系から100pc以内しか信頼がおけない精度
~0.00001秒角(10マイクロ秒角)の時代へ
10kpc(3万3千光年)先への挑戦
電波:VERA
可視光=>観測衛星計画
GAIA(ESA), SIM(NASA)
赤外線=>観測衛星計画 JASMINE(日本)
14
15
Space Astrometry Projects
Mission
Hipparcos
Gaia
Agency
Method Launch #of Stars
ESA
teles.
ESA
teles.
1989
2012
Mag.limit
Accuracy
120000
12
1mas@V=10
1 billion
20
12-25as@V=15
20
4as @ V=20
14
1mas@I=12
10
3mas@z=7.5
(all sky survey)
SIM-Lite
NASA
interf.
~2018
10000
(?)
J-MAPS
USNO
teles.
~2012 ten millions
(all sky survey)
Nano-
NAOJ
teles
2011
(all sky survey)
JASMINE
Small-
1 million
NAOJ
teles.
~2015
several
tens
12
10as@Kw=11
of thousands (Kw-band)
JASMINE
(bulge)
JASMINE
NAOJ
teles.
the first ten millions
half of
(bulge)
14
10as@Kw=11
(Kw-band)
the
2020's
Remark: Infrared astrometry missions (Small-JASMINE and JASMINE) have advantage in
observing stars in the Galactic bulge, hidden by interstellar dust in optical bands.
16
電波:VERA(地上電波干渉計):メーザー源を対象
VERAが年周視差測定の最高記録
S269(シャープレス269:星形成領域)
距離は、 1万7250 ± 750光年
可視光=>観測衛星計画
*GAIA(ESA) 2012年春打ち上げ予定
全天サーベイ、
12~25マイクロ秒角@V=15mag
*SIM(NASA) 打ち上げ未定
1万個のターゲット、4マイクロ秒角@V=20mag
赤外線=>観測衛星計画
JASMINE計画シリーズ(日本):
銀河系中心、バルジの観測に最適。
17
§3 JASMINE計画シリーズ
ホップ Nano-JASMINE:2011年8月打ち上げ予定
*日本初(世界で2番目)のスペースアストロメトリ の経験。
衛星開発、運用等のすべてのプロセスを経験。科学的成果も期待できる。
z-bandでの全天サーベイ、年周視差の精度:~3mas@z=7.5mag
GAIAチームとのデータ解析に関する相互協力(Nano-GAIAの役割も)
主鏡:5cm、衛星重量: 約35kg、衛星サイズ:50cm立方
衛星システムは、主として東大中須賀研担当、
衛星開発+打ち上げ:1億円程度、 海外のロケットで打ち上げ
ステップ 小型JASMINE:2015年頃打ち上げ目標
*小型科学衛星を用いる。科学的、技術的なステップとして(中型)JASMINEにつな
ぐもの。バルジの一部領域のサーベイ。年周視差の精度:10μ秒角@Kw<11mag
数万個レベルのバルジの星の位置天文情報を世界で初めて得る。
主鏡口径:約30cm、衛星重量:約400kg、
ミッション部:10億円程度、標準バス部:25億円程度、 新固体小型ロケットを使用予定
ジャンプ (中型)JASMINE:2020年代前半打ち上げ目標
海外との協力も
*バルジのほぼ全領域をサーベイ。年周視差の精度:10μ秒角@Kw<11mag
100万個レベルのバル ジ の星の位置天文情報
主鏡口径:約80cm、衛星重量:約1500kg
衛星費用 120億円程度、H-IIAの相乗り
18
★Nano-JASMINE計画
について
超小型衛星を用いた日本初のスペースアストロメトリ!
世界でも2番目!
衛星開発は、東大中須賀研、東京海洋大との共同研究開発
*主鏡口径5cmの望遠鏡、約50cm立方、重さ35kg 程度の衛星
○小型JASMINE, JASMINEへの技術的蓄積
(例:星像切り出しのオンボード処理など)。
○衛星開発の一連の作業を経験!! 未経験者、若手の育成。
(熱安定性、指向安定性獲得の苦労は十分味わえる)
○GAIAに先駆けてGAIAでの新技術の実証
(CCDのTDIを用いた撮像など)。
○ 独自の科学的成果
*ヒッパルコスと同程度の精度
z-band(中心波長0.9ミクロン) 年周視差の誤差 ~3mas@z=7.5
固有運動の精度向上(ヒッパルコスカタログと組み合わせ) ~0.1mas/year
*ヒッパルコスでは見られなかったバルジ星(数千個)を含む、z-bandの新しい絶
対座標系カタログが出来る。
○Nano-GAIAとしての役割も浮上(GAIAのデータ解析方法のチェック) 19
○今後、需要が増えると見込まれる高性能超小型衛星に対しての先駆け。
Hipparcos satellite
Nano-JASMINE satellite
重量1.4トン
重量35kg
20
★打ち上げに関して
○ユジノエ社(ウクライナ)のCyclone4ロケット
○オペレーションは、ACS社(ウクライナとブラジルの合弁会社)
○射場は、ブラジルのアルカンタラ。南緯4度付近。
打ち上げ日程:2011年8月
打ち上げ契約を締結!!
*打ち上げ実費は、18万ドル
Alcantara Launch Center
Rio de Janeiro
Cyclone-4 rocket
© SDO Yuzhnoye
21
Nano-JASMINE衛星
スペック
衛星サイズ:
50[cm立方]
質量:
35[kg]
姿勢制御方式:
3軸安定
通信速度:
100[kbps]
ミッションライフ:
投入軌道:
2[年]
太陽同期軌道
(高度~700Km)
★衛星自体の開発、試験は、ミッション部、バス部と
も順調に進んでいる。地上通信局の準備も着実に
進んでいる。
衛星のEM
望遠鏡のEM
EMの熱環境試験
@ATC
軌道上の日陰・日照に起因する周期的な
熱入力に対する望遠鏡の熱変動特性を
測定するための実験セットアップ。望遠鏡
のフレーム1箇所と望遠鏡内部のビーム
混合鏡四か所に温度計を貼り付け、熱入
力に対する応答を計測する。
望遠鏡熱変動特性の測定結果。周期100
分、振幅10 Wの熱入力に対する、望遠鏡
フレームの温度変動と各温度測定値から
推定した混合角の変動をプロットしている。
望遠鏡フレーム部分に0.2Kの安定度を要
求すれば、混合角に対して1masの安定度
が達成されうると考えられる(混合角の安
定度はRMS値で要求されるため、温度変
動の振幅に対する要求は、0.5 K程度とな
る)。この温度要求値は軌道上で達成され
る見込みである。
擬似星像を用いた撮像試験
結果。TDIボードにCCDを取
り付けて撮像することで、正
しく制御信号が出ていること
を確認した。
中央計算機基盤の外観。衛
星の管理を司る中央主計算
機とミッション用計算機、電
源管理装置が混載されてい
る。
振動試験時の
様子。EM機を
用いたQTレベ
ルの加振を行
い、構体・コン
ポーネントが
Cyclone-4の環
境に耐えうるこ
とを検証した。
衛星アライメント計測試験。衛星搭載機器
の取付方向の計測と環境試験後の変動状
況の確認を行った。天文台ATC大型クリー
ンルーム設備にて実施した。
残留磁場計測試験。ヘルムホルツコイルを
用いて衛星の残留磁場を計測し、残留地場
が要求値を満たしていることを確認した。
★運用、データ解析、データ配信の準備
○衛星管制担当の東大局の整備。データ受信用の水沢VLBI観測所
10m望遠鏡との調整。周波数帯獲得の国際調整
○GAIAのデータ解析チームとのソフトウェア開発協力
GAIAの解析ソフトをNano-JASMINE版に改訂D論など
○Nano-JASMINEのデータ利用促進のための研究に関して、文科省
の宇宙利用促進調整委託費への申請が採択された。
Nano-JASMINEのためのデータ解析、運用、データ配信の準備に使用
できる。
国内、国外のコミュニティの拡張を目指す
*2月22日~23日、WSを開催予定@国立天文台(三鷹)。
(小型JASMINEでのサイエンスに関する議論も含む)
27
東京大学工学部7号館屋上に設置された
管制用アンテナの外観。
年周視差誤差の天球上マップ。GAIAの
データ解析チームとの共同解析
Hipparcos
Limiting
magnitude
Tycho2
Nano-JASMINE
V  12 (selected) V  15 (~complete) z  11 12 (complete)
V 8
(effective)
V  7.3 (complete)
120,000
2,500,000
70,000 (<7mag)
1,400,000(<10mag)
3,900,000(<11mag)
10,400,000(<12mag)
Position
accuracy,  pos
1mas (<10mag)
7mas
(<7mag)
25mas (<10.5mag)
60mas (<11.5mag )
3mas ( <7mag )
10mas (<10mag)
20mas (<11mag)
Proper motion,
0.8mas/yr
2.5mas/yr
1mas/yr(<7mag)
0.1mas/yr
(combined with HIP)
Number of stars

★今後のスケジュール
○2010年7月頃まで:FMの部品製作と部分的試験の完了
○2010年12月頃まで:組み立て、総合試験を経て、衛星の打ち上げ準備完了
○Nano-JASMINEのデータ解析の準備(GAIAチームとの国際連携)
○Nano-JASMINEのデータ利用の準備:配信やサイエンスチームの準備
*データ解析、データ配信は、採択された“宇宙利用促進調整委託費”によって
準備を進める
○2010年度中には、ロケットとのインターフェース調整、試験。
○2011年6月頃にFMを射場へ輸送
○打ち上げ前の試験
○2011年8月打ち上げ
○約2年間の運用予定
○データ解析後、カタログの公開は2014年頃を予定。
★小型JASMINE(vs.中型JASMINE)について
JASMINE---Japan Astrometry Satellite Mission
for INfrared Exploration---
★小型JASMINE ミッションの概要
Kw-bandでの位置天文測定
*中型版と同じ
(中心波長:2.0 m, バンド領域:1.5m~2.5m)
•
目標精度:
絶対年周視差: *中型版とほぼ同じ
~10  as for Kw<11mag
固有運動:
~8  as/yr for Kw<11mag 天球上の位置: ~7  as for Kw<12mag
(限界等級:Kw=14mag)
•
サーベイ領域:
1平方度程度の領域が、2, 3箇所
*中型版: 銀経:l=350°~10°
銀緯:b|<10 degree
31
◎星の測定数(年周視差の相対誤差が10%以内):
数万個 (バルジ内の星)
*中型版 約百万個
観測手法 : フレーム連結法
*中型版とほぼ同様
打ち上げ目標(目標):~2015年
Mission life: ~2years
軌道: 検討中(候補軌道:高度500km~1000km
太陽同期or非同期(inclinationが90°)
*中型版 太陽ー地球系のL2点近傍軌道
or 高々度略円軌道など)
ロケット: 新固体小型ロケット(JAXAで開発中)
*中型版 H-IIA (dual launch) or ???
32
★小型JASMINEミッション部の衛星仕様(現在値)
(参考:中型版の仕様)
ミッション部
• 光学系: Modified Korsch System (3mirrors) *中型版と同じ
• 望遠鏡素材: 合成シリカ *中型版 高強度反応焼結型 SiC (NT-SiC)
• 主鏡口径: ~30cm *中型版:80cm
焦点距離:
4.86m *中型版:14.4m
• 視野:0.87°×0.87 *中型版: (0.98°)2
• 検出器: HgCdTe *中型版と同じ
• 検出器サイズ: 4.1cm×4.1cm(2k×2k)
• ピクセルサイズ: 18 micron
• ピクセルの角度スケール: 764 mas *中型版 286mas
• 検出器個数: 4(2×2) *中型版 36(6×6)
• 星の色情報のための測光用検出器(J,Hバンドを予定、個数は未定)
33
★ 小型JASMINEの観測手法:フレーム連結法
観測領域 :
1.7゜ 1.7 ゜

(which consists of 2
or 3 sub-areas)
toward the Galactic
bulge
視野: 0.9 度 × 0.9 度
Stage 1: 3秒間撮像。同じ視野に対して、 16回繰り返す。その16枚のフレームのセットを
小フレームとよぶ。
Stage 2: 望遠鏡の向きをすこし移動。前の視野と半分程度重なる視野に対して、Stage1と同様
にして、 小フレームを作成。この作業を、約20分間行うことで、全観測領域を16枚の小フレー
ムで覆うことができる。 こうしてできた全領域のフレームを大フレームとよぶ
Stage 3: 作業2までのプロセスをミッション期間中、繰り返す。最
終的には、約26000枚の大フレームが作成される。この大フレー
ム上の星の軌跡から、年周視差、固有運動を求める。
この際、大フレーム毎のサイズ変動、distortionの変動は、較正天
体(VERAなどで測定された天体)を用いて同時に解く。
小型JASMINE観測手法に対する誤差配分評価
35
*光子数の蓄積によるphoton
noiseの減少

 ~/ D N

36
37
38
★衛星の技術的実現に向けて
(1)総合システム検討:
小型JASMINE概念検討・概念設計作業中
プリフェーズA
概念
検討
←
本作業
フェーズA
概念
設計
計画
決定
フェーズB
基本
設計
フェーズC フェーズD
詳細
設計
製作
試験
→ ▲プロジェクト提案審査(MDR+SRR相当)
フェーズE
射場 初期
整備 運用
フェーズE/F
定常
運用
後期
利用
▲打上げ(2015年・目標)
ミッション側:国立天文台、京大
システム側:JAXA/SE推進室
JAXA/宇宙研
JAXA/研究開発本部
39
小型JASMINE検討体制
小型JASMINE設計検討
– 総合システム設計作業
• 衛星システム
ステップステア方式
半視野分
小フレーム
・・・
一定レート回転
TTMデスパン
システム全体の物理設計に対して
企業に委託中
ミッション部光学系(3枚鏡コルシュ系)
大フレーム視野角
{
– 衛星バス適合性
– 指向制御・安定度
– 熱構造
TTMデスパン方式
・
・
・
・
姿勢マヌーバ+静定: 0.45deg@30sec
1枚あたりの撮影時間:3sec
指向安定度:280mas@3sec
指向制御精度:0.1deg
小型JASMINE衛星システム
・ 指向安定度:280mas@3sec
・ 指向制御精度:0.1deg
・ 衛星回転レート: 約10as/sec
・ 回転軸・方向の変更: 0.45deg@60秒
・ TTMの可動範囲: 30arcsec以上
ミッション部
バス部
熱制御系
構造系
通信系
小型科学衛星標準バス
2009年9月10日
・ミッション搭載質量:200kg以下
・ミッション供給電力:300W以下
・ミッション部許容包絡域
第53回 宇宙科学技術連合講演会
・設計寿命:1年間
データ処理系
電源系
姿勢制御系
41
2次推進系
(2)重要な技術課題の実証実験
(インハウスにて実施中)
*期待する誤差配分の実現を目指して
○重要課題1:星像中心決定および系統誤差の
ランダム化
○重要課題2:大フレームを作成する際の小フレー
ム毎のサイズ、distortionの安定化
観測装置の熱安定性(~10nm/20分)
○重要課題3:望遠鏡の指向安定性
(~280mas/3sec)
42
★重要課題1:星像中心の決定精度:
解析による10万分の1秒角の精度までの追い込み:
*系統誤差
誤差要因のモデル化、実現値のモデル値からの
残差のランダム性(ランダム化の実現性)
数値シミュレーション解析や実験での実証
進行中
43
★セントロイド実験
(国立天文台ILOMチームとの共同研究)
• 10 μas精度を達成するため、PSFサイズの10-5程度の
位置決めが必要
• 水沢の実験装置にて実証実験中
セントロイド実験装置概観
データ数と位置決定の誤差分散の
関係。想定通り分散が落ちている。
★重要課題2:望遠鏡の熱安定性に関する解析、実証実験
光学系熱変動特性解析
(国立天文台、JAXA/宇宙研、研究
開発本部との共同研究)
10μas精度で星の位置測定が可能な熱
的安定な望遠鏡構造、鏡の支持構造、
熱環境を調べるため、光学系の熱変動
特性を検討中。
手順
オプティカルベンチ方式のモデル作成
↓
光学系まわり直方体6面の熱境界条件の計算
↓
以上、温度分布に基づいた光学系熱歪み計算
↓
光学系歪み(支柱、鏡、検出器)に対する画像歪みの検討
↓
境界温度要求、構造に対する要求へフィードバック
冷却/熱入力システム
素材物性値測定、光学系の熱変動特
性を調べるための冷却熱入力システム
•
•
•
熱パスのスイッチングが可能
最大8ch温度同時測定
アルミ板を用いたテストで80Kまで冷却可能であ
ることを確認
熱膨張測定のためのレーザー干渉計型
高精度変位センサー
• 測定精度は1時間のRMS値で20pmを達成!!
• 15分間の熱入力に対する望遠鏡素材の2次までの
変形モードを100pmの精度で実測
変位測定精度
★重要課題3:望遠鏡の指向安定性
○高周波成分:擾乱計測、擾乱伝達特性の実験
○低周波成分:Tip Tiltミラーを用いた高精度指向安定制御システム
以上の詳細検討がスタート
(国立天文台、JAXA/宇宙研、研究開発本部との共同研究)
指向精度要求
1.E+03
角度 [arcsec] 0-P
1.E+02
1.E+01
RW擾乱
1.E+00
検出誤差
冷凍機擾乱
1.E-01
ダイ ナミクス誤差(環境外乱)
1.E-02
1.E-03
1.E-05
制御誤差(静定)
IRU擾乱
1.E-03
1.E-01
1.E+01
1.E+03
周波数 [Hz]
小型JASMINEの主要な指向誤差要因の整理。各周波数域において、擾乱源と
指向誤差に対する影響をまとめた。
48
§4小型JASMINEによる銀河系バルジの解明
(小型)JASMINEの大きな目標:銀河の形成・進化、
巨大ブラックホールと銀河との共進化
バルジの構造、形成史、
巨大ブラックホールとの関係がキー
詳細克つ精密に観測できる唯一の銀河である
銀河系(天の川銀河)のバルジを探る!
49
例 1:
銀河系バルジのパラドックスを解く!
バルジの分類(2種類)
楕円銀河に相似
classical
origin:merging of
galaxies
old population
ディスクに相似
pseudo
boxy/peanut-shaped
Howard, et al.(2009)
Origin:barbuckling instability
長期間に渡る星形成
Clarkson et al.(2008)
Radial metalicity
Gradient along
the bulge minor axis
銀河系バルジ
2つの側面!?
secular evolution owing to
bar structures of bulges
星形成史CMD (+化学組成)
バルジの星とディスクの星の分離
が重要かつ困難
Sagittarius window
星の正確な距離
+3 次元速度
分離に必要
星の距離  絶対等級
(Clarkson et al.(2008))
距離+3次元速度情報が重要。
小型JASMINE 視線速度と化学組成に相補的なデータを提供
51
さらなる研究の進展に寄与
Kinematicsで探るバルジの起源
di Matteo + 2005
Athanassoula 2005
Merging
vs.
Bar-buckling instability
Sauron survey (Falcon-Barroso + 2004)
classical bulge
boxy bulge
回転速度に銀緯方向
のgradientが見られる
cylindrical rotation
回転速度が銀緯方向
に一定
NGC 5866
NGC 7332
Howard, et al.(2009)
Cylindrical rotation of the Galactic bulge
距離+固有運動 +視線速度銀河系バルジの構造形成を解明
小型JASMINE さらなる研究の進展に寄与
52
例2:
銀河系中心の巨大BHの形成、進化モデルの制限
merging of small and/or medium BHs?
gas accretion?
形成、進化の情報が、バルジの半径方向の
3次元速度分布に刻み込まれている可能性が
ある。 (梅村: private communication)
Small-JASMINEによるデータが有用
★国際共同サイエンスチーム
M.Rich(UCLA, U.S.A)BRAVAプロジェクトとの協力
J.Gimore(Cambridge Univ., U.K.)
K.Freeman(Australian National University, Australia)ARGOS Bulge Programとの協力
J.Bland-Hawthorn(University of Sydney, Australia)
K.A.G.Olsen(National Optical Astronomy Observatory, Chile)
さらに、国内のサイエンスチームの拡張も目指したい。
*2月22日(月)~23日(火)、WSを開催予定@三鷹。
54
★その他、小型JASMINEで拓くサイエンス
○ディスク星等によるマイクロレンズ効果
○バルジ内の恒星物理、変光星、超新星、連星
○ 位置天文的重力レンズ効果による系外惑星
研究
○ 基礎物理(一般相対論の検証)
○高時間分解能と長時間連続サーベイを生かし、
重力レンズ効果による光度曲線変化を用いた
系外惑星研究!?
○ 未知の現象の発見(サプライズ)
55
★世界での小型JASMINEの“役割分担”
GAIA==>銀河系ディスク全域、
銀河系ハローの
位置天文情報(距離、接線速度)
地上での分光観測
==>バルジ星を含む銀河系内の
星の視線速度、化学組成観測
2012春打ち上げ予定
2017年頃解析データが出始める
世界で複数の計画があり、
今後数年間~10年で多くの良質な
観測データが出始める。
赤外線位置天文観測衛星である小型JASMINEが、
バルジ星の位置天文情報を提供。上記と相補的。
国際的なプロジェクト連携の成果を出すためにも、
2017, 2018年頃に観測データが出ることが重要!
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小型JASMINEは2015年頃の打ち上げを目指したい。
★国際協力
小型JASMINE
○銀河系バルジに関する国際的なプロジェクト連携
UCLAを中心としたBRAVAプロジェクト
オーストラリアを中心としたARGOSプロジェクト
○GAIAチームとの一部協力を検討中
*IAU Commission 8(Astrometry)のPresident:
小型JASMINEも強くサポートする
(中型)JASMINE---ポストGAIAとして、国際協力を
検討中。
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参考:小型から中型へのジャンプ
小型から中型へ:科学的成果について(例)
小型(ステップ)
バルジの力学構造: 一部分のkinematicsのみ
(しかし、バルジ成分とディスク成分の
分離可能)
バルジの構造形成: 2大シナリオの是非を判別
(モデルなどを介在)
バルジの星形成史:
重力レンズ:
恒星物理学:
2、3カ所領域での星形成史
(しかし、画期的)
数十個程度の重力レンズの
物理的特徴の解明
バルジ星に関する星の
物理的特徴
中型(ジャンプ)
バルジ全体の重力物質が
構成する位相分布関数と
重力場の構築
多様なシナリオと比較可能
巨大BHとの共進化の解明
星形成史のバルジ内での
領域依存性
数千個程度の重力レンズの
物理的特徴の解明
バルジ領域すべてでのバルジ
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星に関する星の物理的特徴
小型から中型へ:技術的課題について(例)
小型(ステップ)
年周視差精度:
観測手法:
望遠鏡の熱安定性
10万分の1秒角
(とにかく出せることを示す)
10万分の1秒角
フレーム連結法
(小領域)
フレーム連結法
(大領域)
13nm/0.25h
100pm/10h
望遠鏡周辺における 0.4K/0.25h
温度安定性
指向安定度:
中型(ジャンプ)
280mas/3s
4mK/10h
100mas/2.2s
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しんぶん赤旗 2009年11月29日(日)
ご支援、ご協力をよろしく御願いします。
Jasmine
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