Transcript 1.看護・医事法入門
1.看護・医事法入門
法の概念、役割、歴史 衛生行政
担当 柳川 洋
法規とは
法規とはなに? 社会の秩序を維持し、発展させるためには人々 の行動を制限する必要がある(規範) 社会的な規範: 道徳、宗教、礼式、慣習・・・ 国家権力による規範: 法 • • 成文法:一定の手続で制定、文字で示されている → 法規 不文法:慣習法、判例法など (社会生活で守ることが強制されている)
国の法規
憲法: 国の組織、活動に関する基本(最高 の法規) 法律: 憲法に定める手続に従って、国会の 議決を経て制定(天皇の名で公布) 政令(施行令): めに、または法律の委任に基づいて内閣が 制定 法律の規定を実施するた 省令・府令(施行規則): 法律または政令を 実施するために行政機関の長が制定
地方公共団体の法規・その他
地方公共団体の法規 条例: 地方公共団体が、国の法令に違反しな い範囲で行政事務を処理するために議会の議 決を経て定める 規則: 地方公共団体の長が、その権限に属 する事項について定める命令 その他 通達: 法令(法律、命令)の円滑な実施を図る ために管下の行政機関に発する文書、通知 告示: 行政機関が法規に基づく行政処分を公 示したもの
衛生行政の範囲(1)
一般衛生行政(家庭、地域社会の生活) 保健・医療行政(人の健康を対象) 保健医療従事者関係: 業務、免許、 保健行政: 疾病予防活動、健康増進活動 (保健所、市町村保健センターが中心) 医療行政: 医療制度、医療機関の統轄、薬事関係 環境衛生行政: 人の健康をとりまく環境 行政の流れ 国(厚生労働省) ↓ 都道府県(衛生主管部局) ↓ 都道府県(保健所) ↓ 市町村(衛生主管課) 市町村(保健セレンターなど)
衛生行政の範囲(2)
産業保健体制 職場の環境: 労働条件、女子・年少者保護 職場の安全衛生: 安心して働ける快適な職場 労働衛生行政 : 事業所の健康管理 産業保健に関する監督指導 行政の流れ 国(厚生労働省労働基準局) ↓ 国(都道府県労働局) 各県 1 か所 ↓ 国(労働基準監督署) 全国 339 か所
衛生行政の範囲(3)
環境保全行政(外部の環境) 公害: 大気汚染、水質汚染、土壌汚染、騒音、 振動、地盤沈下 地球環境:温暖化、酸性雨、オゾン層破壊、砂漠化 行政の流れ 国(環境省) ~ 1970 年 厚生省所管 ↓ 1971 年~ 環境庁 ↓ 2001 年~ 環境省 都道府県(環境保全担当部局) 都道府県(保健所) 廃棄物行政 ↓ 市町村(環境保全担当部署) 環境保全行政全般 (一部の都道府県)
衛生行政の範囲(4)
学校保健行政(学校生活) 保健教育: 保健学習、保健指導 保健管理: 健康診断、健康相談、環境管理、感染症予防 学校安全: 安全教育、安全管理 学校体育: 保健体育、クラブ活動 学校給食: 食事の理解、豊かな学校生活、栄養改善、 食糧生産・流通・消費の理解 行政の流れ 国(文部科学省)~ 2000 年 文部省 ↓ 都道府県 公立学校(教育委員会学校保健主管課) ↓ 2001 年~ 文部科学省 私立学校(知事部局私立学校担当課) 市町村(学校保健担当部署)
衛生法規の沿革(戦前)
• • • • • • • • • • • • • 医制 76 条( 1874 、明7):わが国最初の衛生法規 – 衛生行政機構、医学教育、医師開業免許、薬剤師制度・薬事制度、 産婆免許 – – 産婆規則( 1899 、明 22 医師法・歯科医師法( ) 1906 伝染病予防法( 1897 、明 30 ) 、明 39 ) 海港検疫法( 1899 、明 32 ) 精神病院法、結核予防法、トラホーム予防法( 1919 、大 8 ) 看護婦規則( 1915 、大 4 ) 健康保険法( 1922 、大 11 ) 花柳病予防法( 1927 、昭 2 ) 寄生虫病予防法( 1931 、昭 6 ) 保健所法( 1937 、昭 12 ) 厚生省設置( 1938 、昭 13 ) 国民体力法、国民優生法( 1940 、昭 15 ) 保健婦規則( 1941 、昭 16 ) 国民医療法、妊婦手帳制度( 1942 、昭 17 )
衛生法規の沿革(戦後)
• • • • • • • 新憲法制定( 1946 ):わが国最初の衛生法規 憲法第 25 条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の 生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面につ いて、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進 に努めなければならない」 生活保護法( 1946 ) 医療・公衆衛生に関する法律の整備( 法、 保健婦助産婦看護婦法 1947-48 ) 保健所法、児童福祉法、食品衛生法、労働基準法、予防接 種法、優生保護法、性病予防法、医療法、医師法、歯科医師 (現在は、「婦」 → 「師」) 世界保健機関への加盟( 1951 ) 国民皆保険制度の発足( 1961 ) 公害対策基本法( 1967 ) 環境庁の新設( 1971 )
衛生法規の沿革(戦後)
医療、福祉関係職種の法制化 歯科衛生士( 1948 )、診療エックス線技師( 1951 ) 歯科技工士( 1955 )、 理学療法士・作業療法士( 1965 ) 衛生検査技師( 1958 )、視能訓練士( 1971 ) 診療放射線技師( 1968 )、臨床検査技師( 1970 ) 臨床工学技師・義肢装具士( 1987 ) 社会福祉士 (1987) 、介護福祉士 (1987) 救急救命士( 1991 )言語聴覚士( 1997 ) 精神保健福祉士 (1995)
医療環境の変化と衛生法規
老人保健医療と福祉の推進 人口の高齢化による高齢者対策の社会問題化 保健部門と福祉部門の連携の必要性 (都道府県の保健部門と福祉部門の統合、 保健所と福祉事務所の統合) ↓ 老人保健法( 1982 年制定、 86 年大改正) 生活習慣病対策を柱とする保健事業 介護保険法( 1997 年制定) 地域における老人サービスの提携・調整 (地域リハビリテーション、ショートステイ、 デイ・サービスなど)
医療環境の変化と衛生法規
精神保健と福祉の推進 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 (精神保健福祉法) 精神衛生法( 1950 ) → 精神保健法( 1987 ) 人権擁護の立場 → 現在の法律( 1995 ) 精神障害者の自立と社会復帰
医療環境の変化と衛生法規
人口の急速な少子高齢化 疾病構造の変化(慢性疾患の増加) 医療技術の進歩(電子工学、遺伝子工学) 保健医療に対する国民の意識の向上 (健康増進、予防、治療、リハビリテーション) 保健医療福祉サービスの連携と統合 (医療施設、中間施設、在宅医療) 医療法の改正( 1992 年、 97 年) 医師法、保健婦助産婦看護婦法( の見直し 2001 ) 医師、看護師、その他の資格制度で欠格事項