2 管理監督者用

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Transcript 2 管理監督者用

(管理監督者用)
心の健康づくりについて
-講義編-
人事院職員福祉局
心の健康に関して管理監督者に
理解が求められること
心の健康に関する正しい知識を持つとともに、職場の心の健康づくりの必要性を認識
1
2
3
4
5
6
心の健康づくりの必要性 ・心が不健康な状態とはどういうものか
・部下が不調を自覚することが重要
ストレスについて
心の病気への偏見をなくす。
職場の心の健康づくりの推進 うつ病等は誰でもなりうる
心の健康の保持増進 部下を不調にしないために重要なことは
・部下が不調だと思ったときどうするか
早期発見・早期対応 ・部下が不調なとき、健康管理者へ相談
心が不健康となり、長期間休んでいた職員の
職場復帰に当たっての対応
・心が不調となった職員が職場に
7 自殺防止に関する対応
復帰するときの職員や健康管理
者、健康管理医等への対応
8 プライバシーの保護
・職場に復帰した職員の再発防止
9 職場でみられる主な心の不調
1 心の健康づくりの必要性
公務における長期病休者等の年次推移
損
骨
・中
筋
傷
格
毒
の
娠
化
合
他
神
経
系
そ
の
の
疾
他
患
く
患
患
響
患
物
害
ょ
疾
疾
影
疾
生
障
じ
の
の
の
の
新
の
・産
系
織
因
系
動
娩
器
組
外
・分
消
・結
妊
系
・そ
器
・行
環
神
循
精
4,500
4,000
3,500
3,000
平成13年度
2,500
2,000
平成18年度
1,500
1,000
500
0
2%
4%
7%
気分感情障害( 含躁うつ病)
13%
74%
神経症性障害・ ストレス関連
障害・ 身体表現性障害
統合失調症、 統合失調症型
障害及び妄想型障害
その他の障害( ア ルコール依
存症等)
自律神経系の障害
160
138
140
134
129
120
120
80
122
112
104
100
124
134
129
96
105
100
71
62
60
40
20
0
65
68
安全配慮義務と人事院規則
国も安全配慮義務が適用
・ 国は、公務員に対し、公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理に
あたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負ってい
るものと解すべきである(最高裁判例)。
・ 具体的には、病気発症の予見義務、発症の状態や職場実態等の現状把握義務、発症
又は症状増悪の防止義務、自傷・他傷等被害発生の回避義務が考えられる。
国家公務員法第71条 能率の根本基準
職員の能率は、充分に発揮され、且つ、その増進がはかられなければならない。
同
第98条 法令及び上司の命令に従う義務
職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令
に忠実に従わなければならない。
人事院規則10-4第3条 各省各庁の長の責務
各省各庁の長は、法及び規則の定めるところに従い、それぞれ所属の職員の健康
の保持増進及び安全の確保に必要な措置を講じなければならない。
同
第4条 職員の責務
職員は、その所属の各省各庁の長その他の関係者が法及び規則の規定に基づい
て講ずる健康の保持増進及び安全の確保のための措置に従わなければならない。
職員の健康に関する管理監督者の責任
各省各庁の長が施設・労務の管理に当たって、
職員の生命・健康を危険から保護するよう配慮す
べき義務
※各省各庁の長が職員に負う国家公務員法・人
事院規則上の義務
「危険予知義務」と「結果回避義務」
各省各
庁の長
(権限委譲)
管理監督者に安全配
慮義務が求められる
安全配慮義務の実行責任者は管理監督者です
2 ストレスについて
ストレス要因(ストレッサー)と心身の
健康の関係について
個人要因
仕事上のストレッサー
ストレス反応
疾患
(強い場合)
仕事外のストレッサー
緩衝要因
職場不適応
(米国国立職業安全保健研究所(NIOSH)提唱モデルを一部改編)
身近なストレス要因の例
○仕事上:長時間勤務
過重な心理的負荷のかかる勤務
上司、同僚、部下との人間関係の悪化
異動による勤務環境の変化 など
○仕事外(家庭や個人):経済的問題
職員又は家族の健康
家庭内の人間関係
家族の介護
子の教育、進路 など
○ストレス要因は、よりよい人生を送るスパイスと
いう面もある。
ストレス反応とは
1 ストレスにより起こる心と身体の様々
な反応である。
2 心身の変化により、3つの段階があ
る。
3 ストレスが強かったり持続することで、
心身に障害や症状が現れることがある。
(ストレス関連疾患)
3 職場の心の健康づくりの
推進
職員の心の健康づくりのための
基本的考え方
○ 心の病気は身近な人はもとより自分もかかりうるもので
ある。
例えば、国民の5人に1人は一生のうちに次のどれかを
経験するとされる。
① うつ状態・うつ病
② 神経症
③ アルコール依存症等の精神に作用する物質による障
害
○ 心の三つの状況に応じた対策が必要である。
① 心が健康なとき ・・・・心の健康の保持増進
② 心が不健康なとき・・・ 早期対応
③ 回復したとき
・・・・円滑な職場復帰と再発の防止
職場におけるストレスの把握、評価、改善
心の健康づくりの方針表明、目標、計画、評価
方針表明 (例)各省各庁の長が年頭所感で「職員の心身の健康を大切にし、
明るく活気ある職場作りを推進する」と表明
目 (例)①管理監督者研修を年1回、90%以上参加
標
②職場環境改善のための調査、評価を行う
計 (例)①人事院のテキストを活用し、年○回に分
画
けて、管理監督者研修を実施。地方支分
部局には、・・・・。
②「仕事のストレス判定図」を活用して、職
場環境改善を図る。
評 (例)①管理監督者の7割が参加。次年度は、残
りの3割に参加してもらうために開催時間
価
・
や開催日を工夫
②職場環境改善を図ったが改善がみられな
改
善
い部署もあり、次年度は原因究明
効果的な職場環境改善手順
職場環境等の評価
「仕事のストレス判定図」等による職場
ごとのストレス要因の把握
組織づくり
関係者による委員会等の設置(管理監
督者、部下、健康管理者、専門家等)
職場環境改善計画
調査結果等を基に委員会等でストレス
要因を抽出し、「職場環境改善のため
のヒント集」等を活用し計画を策定
対策の実施
改善の効果評価
○○省の心の健康づくり体制(例)
○健康管理者
○健康管理担当者
○健康管理医
○相談窓口担当医
○医療スタッフ等
大臣官房人事課長
大臣官房人事課人事係長
○○省診療所長
○○医師
○○保健師、○○看護師
○○心理職
○外部委託医療機関 ○○病院
○○クリニック
○その他(電話相談等)
心の健康づくりのための
管理監督者の役割
1 部下の日常の状況について把握する。
2 職場の良好な勤務環境を作る。
3 部下の言動等の変化を早期に把握す
る。
4 部下の職場復帰に当たり、復帰後の職
員の状況等を把握し、必要に応じ仕事の
内容等を調整する。
各省各庁の長(健康管理者)の役割
1 組織全体の心の健康づくりに責任を持つ。
2 職員への体系的な研修を実施する。
3 長時間勤務等の職員の面接指導等の適切な実
施を図る。
4 相談窓口等を設け、周知する。
5 専門的な助言を行う医師等を確保する。
6 心の健康の保持増進のため勤務環境の整備等
を行う。
7 早期対応に努める。
8 職場復帰に当たり、具体的な受入方針を決定し、
実施する。
4 心の健康の保持増進
-管理監督者の役割-
職場のコミュニケーション・相互協力は心の健康と会社
の業績の基礎
会社の業績が上がった(%)
0
10
20
30
40
心の病気が増加傾向(%)
0
コミュニ
ケーション
が減った
助け合い
が減った
組織・職場
のつながり
を感じにくく
なった
20
40
60
80
はい
いいえ
はい
いいえ
はい
いいえ
100
人間関係
に満足
協力して
仕事をす
る雰囲気
3年前にくら
べて協力して
仕事をする雰
囲気が
満足
不満
強い
弱い
強まった
弱まった
平成19年版国民生活白書から抜粋し作図。元データの出典は財団法人 社会経済生産性本部
(2006)および労働政策研究・研修機構(2004)。
川上憲人(東京大学教授)より提供
22
勤務環境等の改善
1 部下の日常の状態を把握し、ストレッ
サーの軽減・除去に努める。
2 職場のコミュニケーションを良くし、職
場の良好な人間関係づくりに努める。
3 仕事の進め方等を工夫し、超過勤務
の縮減を図る。
相談しやすい関係について
1 部下と日頃から信頼関係を構築して
おくことが、部下が安心して早期に心
の状態を相談できることにつながる。
2 部下からの相談に適切に対応する。
部下から見た困った上司(例)
○ 細かい上司
必要以上に細かい指示を与えたり、資料を
作成させたりすることで、部下の業務量の増
加、モチベーション低下を招く。
○ 意見を押しつける上司、無理を言う上司
自分の意見だけを正しいと思い込み、他人
の意見を寄せ付けない
○ 責任を取りたがらない上司、頼りにならない
上司、コミュニケーションを取りたがらない上
司など
上司としての心構え(例)
1 声掛け
まず、上司から動いて部下に接していくこと
。その際、自分の本音を出すことが、信頼関
係を生む。
2 日常のやり取りが大事
上司が「叱り口調」、「小馬鹿にする」、無関
心では、部下は萎縮し、相談しなくなる。
3 部下のためを思って注意する
「こんなことも出来ないのか」、「全然ダメ」、「
責任取れ」はNG。また、部下の「逃げ道」を
全てふさがないよう、留意する。
集団レベルでのストレス評価法について(例)
簡易版ストレス調査票による質問項目(12項目)
あなたの性別に○をつけてください。
1)男性
2)女性
あなたのお仕事についてうかがいます。最もあてはまる回答の欄に○を記入してください。
そうだ
まあそうだ
ややちがう
ちがう
(1)一生懸命働かなければならない
(2)非常にたくさんの仕事をしなけれ
ばならない
(3)時間内に仕事が処理しきれない
(4)自分のペースで仕事ができる
(5)自分で仕事の順番・やり方を決め
ることができる
(6)職場の仕事の方針に自分の意見
を反映できる
あなたの周りの方々についてうかがいます。最もあてはまる回答の欄に○を記入してください。
非常に
次の人たちとはどのくらい
気軽に話せますか?
(7)上司
あなたが困ったとき、次の
人たちはどのくらい頼りに
なりますか?
(9)上司
あなたの個人的な問題を
相談したら、次の人たち
はどのくらい聞いてくれま
すか?
(11)上司
かなり
多少
全くない
(8)職場の同僚
(10)職場の同僚
(12)職場の同僚
○得点の計算方法:問1~6は、そうだ=4点、まあそうだ=3点、ややちがう=2点、ちがう=1点
を与えます。問7~12は、非常に=4点、かなり=3点、多少=2点、全くない=1点を与えます。
以下の式に従って各得点を掲載します:仕事の量的負担=問1+問2+問3、仕事のコントロール
=問4+問5+問6、上司の支援=問7+問9+問11、同僚の支援=問8+問10+問12。
「平成11年度労働省作業関連疾患の予防に関する研究班」報告書
職場ストレスを減らすための「職場環境改善ヒント集」
領域
項目
A 業務計画作
成への参加
と情報共有
①職場の業務スケジュール作成に参加、②裁量範囲を増やす、③個
人あたりの過大な作業量があれば見直す、④各自の分担作業を達成
感あるものにする、⑤必要な情報が全員に正しく伝わるようにする
B 勤務時間と
業務編成
⑥労働時間の目標値を定め、残業の恒常化をなくす、⑦国会や予算・
執行等多忙期の業務方法を改善、⑧休暇が十分取れるようにする、
⑨勤務体制を改善、⑩個人の生活条件に合わせた勤務調整の実践
C 円滑な業務
手順
⑪~⑮整理整頓、業務指示の明確化、反復・過密・単調な業務の改
善等
D 業務場環境
⑯~⑳温熱・音・視環境の快適化、受動喫煙の防止等
E 職場内の相
互支援
㉑上司に相談しやすい環境の整備、㉒同僚に相談でき、コミュニケー
ションが取りやすい環境の整備、㉓チームワークづくりの推進、㉔仕
事に対する適切な評価の推進、㉕職場間の相互支援の推進
F 安心できる職 ㉖個人の健康や職場内の人間関係について相談できる窓口を設置、
場のしくみ
㉗セルフケアについて学ぶ機会の設定、㉘組織や仕事の急激な変化
を普段から周知、㉙昇任等の機会を明確にし、チャンスを公平に確保、
㉚緊急の心のケア
「メンタルヘルスアクションチェックリスト」を改変
デンマーク職場環境局のWEBサイトに、職場
環境対策の優良企業ランキングが掲載
スマイリーシステム
川上憲人(東京大学教授)より提供
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5 早期発見・早期対応
部下の心が不健康な状態である
可能性のある場合
○ 日常と異なり、次のような状況が続く場合には
注意する。
1 仕 事 上:ミス、能率の低下、など
2 勤務態度:欠勤、遅刻、早退が増える、など
3 対人関係:孤立、口数の減少、いらだち、
飲酒による問題、など
4 原因不明の体調不良:
頭痛、倦怠感、肩こり、目の疲れ、
不眠、など
部下の心が不健康な状態である
可能性のある場合の対応
1 積極的に話しかけて事情を聞く。
普段から部下と信頼関係がないと応えてくれない可能性が
あり、このためにも日常から信頼関係の構築に配慮する。
2 必要に応じ同僚等に部下の状況の変化の
有無を聞く。 本人と親しい同僚等に、なんとなくおかしい状況、普段と違う印
象、又は不自然な感じがないかなどを尋ねてみる。ただし当該
職員の心が不健康という先入観を与えないように注意する。
3 健康管理者、健康管理医、専門家等と対応
部下が強いストレスを受けていると考えられた場合は、早
を相談する。 期に健康管理者等と相談する。一人で抱え込むことは自身
の大きな負担となるとともに、早期対応の機会を逸すること
にもなりうる。なお、プライバシーの配慮には十分注意す
る。
4 職場の面接指導等を活用する。
長時間勤務による健康障害防止のための面接指導制度を活用する。
部下と話す場合
1 十分時間を確保し、部下が安心して話
自らの気持ちが落ち着いていて、悩みを十分
せる場所で受ける。 聞く余裕があるときに相談を受けるようにす
る。
2 悩みを正面から受け止め、真摯に、落ち
気分転換の方法(レジャー、運動、旅行、
着いて話を聞く。
会合への参加)など、自らの経験に基づく
助言が必ずしも有効でないことに留意
特にうつ病、うつ状態の場合は注意
3 安易な叱責、激励などにより、部下の精
神的負担を増加させないようにする。
4 強いストレスがかかっていると考えられ
た場合は、健康管理者等と相談する。
○一人で抱え込むことで自身の負担や早期対応の機会を逸することにもなりうる。また、自殺
など危険な状態にある場合は、健康管理者、家族等と役割分担し、一人にしないようにする。
うつ状態、うつ病などの場合の
望ましくない対応例
「気合いを入れて乗り切れ」「あなたにはこれから重
要なポストが待っているはずだ」など
1 「頑張れ」など、激励をする。
2 「そんなことでどうする」など、批判がま
しいことを言う。「自分の立場がわかっているのか」「将来のために今は
辛抱すべきだ」「いつまでそんなことを言っているのだ」
3 「気にしないことが大事」など、気分の
問題にする。「そんなの気の持ち
方の問題だ」 など
4 「努力が足らない」など、努力の問題に
「もっとしっかりしないと」など
する。
部下の心が不健康な状態であると
思われる場合
1 健康管理者、健康管理担当者等と相談し、
専門家への受診・相談を勧奨する。必要に
応じ家族と連絡をとり、対応する。
活用できる相談窓口等を理
2 職場の面接指導等を活用する。
解し、部下に活用を勧め
る、又は自ら活用するな
3 活用できる相談窓口等
ど、利用を図るようにする。
・ 自府省設置の相談窓口、電話相談
・ 人事院こころの健康相談室
・ その他(精神保健福祉センター等)
従来と異なるうつ等への対応について
(例えばいわゆる「新型うつ」などを含む)
・ 最近は、若い世代を中心に、対応に苦慮するような、例えばいわゆる「新型うつ」などが
増えていると言われている(「新型うつ」は、医学用語ではなく、人事管理上の用語)。
・ 旧型・典型的なうつと異なり、「こうなったのはそもそも社会のせいだ」と思い、休みの間
は元気で、自分が嫌いな仕事をさせられると具合が悪くなるとか、休職中に海外旅行に出
かけてしまうような事例。薬効は少なく、しばしば慢性化すると言われている。
[一般的に言われる主な特徴(例)]
・若年者に多く、全体に軽症で、訴える症状は軽症のうつ病と判断が難しい。
・仕事では抑うつ的又は仕事を回避する傾向。ところが余暇は楽しく過ごせる。
・仕事や学業上の困難をきっかけに発症する。
・病前性格として、“成熟度が低く、規範や秩序又は他者への配慮に乏しい”などが指摘。
※ ただし、「病名」にとらわれず、状況の把握、対応に努めることが肝要。また、職員本人のみに責任を負わせるこ
とは適切でない場合がある。
[対応]<ポイント>
一人で対応しない。疑われる場合は、まず健康管理者や健康管理医と相談。
※ 職員への接し方によっては、悪化させることや職場に攻撃的な行動を取られる可能性もある。
※ 健康管理者としては、職員の主張の方向性を見極める、事実関係を把握しておく。
・ 職員の要求を全て聞くことはできず、職場で対応できないこともある。そのような場合には、人事
労務管理の枠組みで対応する必要があり、様々な場合が想定できることから、「許容範囲」を主治
医、健康管理医等と相談しながら、職員への伝え方も含めて要検討(必要に応じ法律家にも相談)。
6 心が不健康となり、長期間
休んでいた職員の職場復帰
に当たっての対応
職場復帰前の対応
1 管理監督者は、健康管理者等による
情報収集に協力する。
2 管理監督者は、健康管理者が作成し
た受入方針の内容を理解し、職場復帰
の際の対応方法の修得に努める。
職場復帰後の対応
予定通り実施されていない場合は、健康管理者等と相
談する。自分一人で判断することは避けるようにする。
1 受入方針に沿って、職員に対応する。
2 特に構えることなく、自然に接するよう
にする。
3 相談には積極的に対応する。
4 職員の状況に注意する。
5 定期的に健康管理者等に報告し、対応
方針を確認する。職場として対応に困難
が生じる可能性が出てきた場合は、速や
かに健康管理者に相談する。
「円滑な職場復帰及び再発防止のための
受入方針」改定のポイント
(1) 受入方針検討前(療養開始時
~療養期間中)の対応を明記
1 療養開始
2 療養期間中
復職前に行う「試し出勤」 (4) 受入先職場の管
の制度を新たに提案
理監督者、同僚等
への配慮を明記
3 職場復帰前
(受入方針の
検討)
職
場
復
帰
4
職場復帰後
(5) 復職後に勤務軽減を行
う場合の留意点を明記
(2) 職場復帰の各段階における健康管理医等の役割を明記
(3) 職場復帰の各段階における主治医との連携を重視すべき点を明記
「試し出勤」とは?
実施の
目的は?
一定期間継続して試験的に出勤することによ
り、職場復帰に関する不安を緩和するなど、職
場復帰を円滑に行うため
誰が?
心の健康問題に係る療養のため長期間職場を離
れている職員のうち、実施を希望する者
いつ?
職場復帰前で、主治医、健康管理医及び健康管
理者が「復職可能の時期が近い」と判断される程
度に回復した時期
どこで?
原則「元の職場」だが、元の職場に発症の要因
があると考えられる場合は別の職場でも可能
期間は?
原則1月程度。実施期間の短縮や、必要最小限
の範囲で延長することも可能
何をす
るの?
「実施プログラム」に基づき、実務に関連した
作業等を実施(職場復帰前なので職務には従事しない)
7 自殺防止に関する対応
自殺との関連がみられる状況
仕事上、人間関係、家庭内や個人が抱える悩み、また、うつ状態・うつ病など
の精神疾患などがある。また、ある人にとっては何でもないことが、ストレスへ
のもろさ、問題に対処する能力の違いなどから原因となることがある。
1 自殺の原因は様々である。
2 特に自殺との関連がみられる状況に
は次が挙げられ、留意する必要があ
①長時間・
過重な勤る。
務、②上
①経済的問題、②
司、部下等
・ 仕事上のストレス、家族や個人の
本人又は家族の健
との関係、
康、③親子、夫婦
③転勤・単
等家庭内の人間関
身赴任に伴 ストレスが深刻なとき
係、④家族介護、
う変化、④
⑤子の教育、進路
昇任による
・ 精神障害が背後にあるとき
責任増大
自殺者の多くが何らかの精神疾患にかかっているとの報告があり、早期の段階で
発見して、適切に治療することにより、自殺防止を図ることができる可能性がある
自殺との関連がみられる状況
にある職員への対応の留意点
1 状況の変化の気付き
① 言動の変化を見落とさないようにする。積極的に話しかけ、
真摯に悩み等を聴き
② 状況の把握に努め、必要に応じ勤務環境等
に配慮する。
飲食の会合、運動・レクリエーション、外出、レ
ジャーに安易に誘うことは避ける。また、職員
2 職場で留意すべき点 の出張については、専門家の意見を聞く。
① うつ状態、うつ病で治療中の職員に対しては、
精神的負担を増加させないよう配慮する。
② 相談対応を適切に行う。 特にうつ状態、うつ病の職員には安易
な激励、叱責等を行わないよう注意。
3 職員が精神的に危機的な状態(危険な状態)である
と感じた場合は、健康管理者に連絡し、相談する。
危険な状態にある職員への対応
1 危険な状態とは
自殺との関連がみられる状況にある職員に
何らかの言動の変化が現れたとき
(1)気分、体調の変化
(2)行動の変化
(3)職場における変化
2 言動の変化とは
自殺をほのめかす、唐突に辞表を提出してく
る、唐突に異動を申し出てくる、など
3 健康管理者に連絡し、相談する。また、一人
にしないように注意する。 危険な状態である可能性があ
る場合は、健康管理者に連絡
○受診・相談の際は、健康管理者とともに本人に同行
8 プライバシーの保護
プライバシーの保護
○ 職員の心の健康に関する情報等の多
くはプライバシーに関わるものである。
○ そのためその保護には十分注意す
る。
9 職場でみられる主な
心の不調
職場でみられる主な心の不調
①発症にストレスの影響が大きい。
②約15人に1人の割合でかかり、4分の
3は治療を受けていないといわれている。
1 うつ状態、うつ病
憂うつな気分、興味・喜びの喪失などが
持続し、日常生活に支障が現れるまでに
なった状態である。 ③心と身体の様々な症状が現れる。で
きるだけ早期に対応することが重要。
2 心身症
ストレスにより身体に症状が現れる病気
である。
3 不安障害(神経症)
不安な気持ちが生じ、それをコントロール
できにくくなった状態である。
①身体的原因やはっきりした理由はみつからない。
②症状は多彩で様々(パニック障害、全般性不安障害、強迫性障害、急性ストレス反応)
4 アルコール依存症
治療により、発症前と同等の
職務を期待できる例が多い。
アルコールを過量、習慣的に飲むことを止
められなくなり、そのことにより心及び身体
に様々な症状が生じている状態である。
5 統合失調症
主な症状として、存在しない声や音が聞こ
える幻聴、あり得ないことを信じてしまう妄
想、頭の中がまとまらなくなる思考障害等
(1)比較的若い世代(10~40代)に起きやすい。
がある。 (2)①陽性症状:幻聴、妄想、興奮症状、②陰性症状:意欲の低
下、自閉症状、感情鈍麻、③解体症状:混乱して考えがまとまらない
(3)本人が発病を自覚できず、周囲と問題を起こす可能性があり、
迅速な対応を要する。